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大改正がない年こそ危ない。小さな法改正と働き方の多様化に耐えうる、給与計算とリスク管理

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こんにちは、社会保険労務士法人ウィズダムワークスの藤井雅之です。

私はこれまで、数名から数千名規模まで、さまざまな顧客企業の給与計算アウトソーシング(BPO)に携わってきました。その経験を通じて、給与計算のミスは必ずしも「大きな法改正」で起きるわけではないと考えています。むしろ、毎年積み重なる法改正の“マイナーチェンジ”と働き方の多様化が、ミスの発生リスクを押し上げます

本記事では、「担当者の勘」に依存した給与計算・チェック体制がなぜ危ういのかを整理し、令和の時代に求められる給与計算とリスク管理について、実務目線で考えます。また、その解決策として、勘や経験に頼らないチェック体制の仕組み化についても紹介します。

大改正がない年こそ危ない。「マイナーチェンジ」という落とし穴

法改正と聞くと「働き方改革」や「インボイス制度」のような、メディアで報道される大きな変化を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、給与計算には、ニュースになりにくい法改正の“マイナーチェンジ”の積み重ねが大きく影響します。

たとえば、社会保険料率は毎年のように改定され、2026年度は協会けんぽの健康保険料率や介護保険料率が見直されました。2026年4月には「子ども・子育て支援金」が施行され、医療保険料に上乗せされる形で、給与や賞与から徴収が始まっています。

また、いわゆる「106万円の壁」の撤廃により、社会保険の加入対象となる従業員が増えていきます。そのほかに雇用保険料率の改定なども加わると、一つひとつは小さくても、「いつ・誰に・どの率で」反映するかを取り違えれば、給与計算ミスとして多くの従業員に影響が及びます

厄介なのは、こうした改定では施行月と、給与への反映月がずれることがある点です。健康保険料率の改定では「料率適用のタイミング」により、子ども・子育て支援金では「労働月と控除月」により、給与への反映が1か月ずれます。

誰もが身構える大改正は、かえってきちんと対応されやすいものです。本当に危ないのは法改正の“マイナーチェンジ”で、「今年は大きな改正がないから大丈夫」という油断がミスにつながります。

なぜ「いつもどおり」の給与計算で対応漏れが起きるのか

従来、給与計算は毎月繰り返す「定型業務」だと考えられてきました。しかし、その前提は以下の理由で崩れつつあります。

理由(1)ルール変更や適用時期が複雑

前述のとおり料率改定や新制度が毎年のように発生し、しかも施行月と給与への反映月が制度ごとに異なります。担当者は、こうしたルール変更や適用時期について正確にキャッチアップしつづけなければいけませんが、これらは担当者の頭のなかでのみ管理されがちで、属人化しやすい領域です。

理由(2)働き方の多様化で、誰もが「例外」に

時短勤務、育児・介護中の短時間勤務、パートや有期契約、副業・兼業、定年後の再雇用、出社とリモートワークのハイブリッドなど、同じ「月給者」でも、適用される控除や手当が一人ひとり異なります。そのため、定型業務として決められたフローに則るだけでは、対応漏れが生じる可能性があります。

給与計算が「定着業務」でなくなりつつある2つの理由

給与計算を「人の勘」に頼る危険性

多くの現場では、経験豊富な担当者が「違和感のある数字」を嗅ぎ分け、給与計算ミスを水際で止めています。これは、リスク管理の観点では極めて脆いといえます。以下のケースを見てみましょう。

ケース(1):「Aさんの残業30時間、なんだか多くない?」は再現できない

ベテラン担当者は、「先月は10時間だったのに、今月は30時間。これはおかしいのでは」と気づけます。

しかし、その判断基準は本人の頭のなかにしか存在しません。その担当者が異動・退職・休職した瞬間、あるいは繁忙で手が回らない月に、チェックの網はごっそりと抜け落ちてしまいます。人の勘に頼ったチェックは、対象人数や処理件数が増えるほど破綻しやすいのです

ケース(2):「最低賃金改定は毎年10月だから今年もそうだろう」という思い込み

ベテラン担当者は業務経験が豊富なため、毎年見直されるものが例年と同じタイミングで変更されるだろうと思い込んでしまうことがあります。

一例を挙げると、2025年は大幅な最低賃金引上げの影響もあり、都道府県ごとに10月~3月のいずれかのタイミングでの引上げとなりました。「今年もきっと例年どおりだ」という固定観念は、ベテラン担当者が陥りやすい落とし穴といえるかもしれません。

給与計算システムで、いかにチェックを仕組み化するか

毎年発生する法改正の“マイナーチェンジ”と働き方の多様化を受け、給与計算システムに求められる基準も変化しています。法改正への自動対応に加え、その会社ならではのチェック基準を、いかに仕組み化できるかがポイントになります。

従業員情報がそのまま給与計算に連携され、転記や二重入力が不要なら、料率改定や新制度にも一元的に対応できます。手作業によるデータ入力がなくなれば、そもそも確認すべき対象が減るでしょう。また、ベテラン特有の勘を、「残業代が前月比で±◯%を超えたらチェックする」「基本給に前月差が1円でもあればチェックする」などの条件として給与計算システムに登録すれば、質の高いチェックを誰でも再現できるようになります。

給与計算はそれ単独では完結しません。入退社手続き、勤怠管理、年末調整などの諸業務が一本の線でつながることでデータの一貫性が保たれ、チェックの仕組みが機能します。以下の記事では、SmartHRの給与計算を使って、チェックを「作業」から「設計」へと変える方法について解説していますので、あわせてご覧ください。

SmartHR「給与計算」のデータ入力レスとチェックパターンで、給与計算のルーティンはどう変わる?

お役立ち資料

給与計算がラクになる。手作業削減のしくみづくり

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