【2026年10月施行】就活セクハラ対策義務化|セクハラ防止との違いと実務を社労士が解説
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就職活動やインターンシップの過程で起こるハラスメントが、社会問題となっています。2026年10月から、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下、就活セクハラ)対策が全事業者に義務化されます。従来は「労働者」が対象だったセクハラ防止措置の対象に、新たに「求職者等」が加わります。
本記事では、就活セクハラ対策の義務化について、実務目線で押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。
就活セクハラ防止措置の義務化とは
就活セクハラ防止措置の義務化は、2025年6月11日に公布された改正法にもとづき、2026年10月1日から施行されます。義務の対象は従業員規模を問わず、すべての事業主・企業です。
この改正では、就活セクハラ対策とカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の2つが、新たに事業主へ義務づけられます。それぞれの根拠となる法律は次のとおりです。
なお、カスハラ対策も同じ改正で義務化されますが、以降は就活セクハラ対策に絞って解説します。
(参考)令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について、令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます! - 厚生労働省
カスハラ対策についてはYouTubeでくわしく解説していますので、よろしければご確認ください。
何が変わるのか?従来のセクハラ防止措置との差分
今回の改正で、セクハラ防止措置の対象が、これまでの「労働者」に加えて「求職者等」へと広がります。就活セクハラとは、事業主が雇用する労働者(従業員)の「性的な言動」により、求職者等の求職活動などが妨げられることです。ここでは、対象となる人・場面・言動の範囲と、改正の背景を解説します。

(1)対象となる「求職者等」の範囲と場面
就活セクハラは、「求職者『等』」「求職活動『等』」と定められているとおり、対象となる人と場面が広く設定されている点が特徴です。求人に応募する求職者だけではないので注意しましょう。
- 採用面接に参加する求職者
- 就職説明会に参加する求職者
- インターンシップの参加者(採用に資する活動への参加者)
- 従業員を訪問する求職者(OB・OG訪問)
- 教育実習や看護実習などの実習生
就活セクハラが起こり得る場面は、対面コミュニケーションだけでなく、SNSなどを介したやりとりや、オンライン上で実施される面接・説明会なども対象になる点に注意が必要です。
(2)「性的な言動」の定義と具体例
防止措置上の「性的な言動」とは、性的な内容の発言や行動を指します。具体的には次のとおりです。
- 性的な内容の発言:性的な事実関係を尋ねる、性的な内容の情報を意図的に流布する など
- 性的な行動:性的な関係を強要する、必要なく身体に触る、わいせつな情報を配布する など
就活セクハラに該当する例としては、次のようなケースが挙げられます。
- インターンシップ中に、従業員が求職者等へ性的な冗談やからかいを意図的に繰り返す
- OB・OG訪問の際に、従業員が求職者等に性的な関係を求める
- インターンシップ後に、従業員が求職者等を執拗に私的な食事に誘う
いずれも、求職者等の求職活動へのトラウマを与えたり、尊厳を傷つけたりするおそれのある行為です。就活セクハラは性別を問わず、異性に対する言動だけでなく同性に対する言動も該当します。
(3)改正の背景
厚生労働省の「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、約3人に1人が「就活等セクハラを経験した」と回答しています。
「就活等セクハラを経験した」と回答した人の割合
被害を受けた場面 | 全体 | 男性 | 女性 |
インターンシップ中 | 30.1% | 32.4% | 27.5% |
インターンシップ以外の就職活動中 | 31.9% | 34.3% | 28.8% |
「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書P.232〜236(厚生労働省)」をもとにSmartHR Mag.で作成
立場的に、求職者等は被害を受けても拒否や相談をしにくいのが実情です。こうした状況にある求職者等を守ることが、今回の改正の狙いです。
義務づけられる4つの措置の全体像
事業主・企業に義務づけられる対策として、大きく4つの措置が定められています。これら4つは、すでに社内(従業員)向けに義務づけられているセクハラ防止措置を、求職者等にも広げて適用するものです。

- 方針等の明確化と周知・啓発
- 「就活セクハラをしてはならない」「行為者を厳正に対処する」旨を方針として明確化し、従業員に周知・啓発する
- 採用活動等のルールも明確化し、従業員と求職者等に周知・啓発する
- 相談体制の整備
- 相談窓口を設けて求職者等に周知する
- 窓口担当者が適切に対応できる体制を整える
- 事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認する
- 被害者への配慮の措置と行為者への適正な措置を講じる
- 再発防止に向けた措置を実施する
- そのほかあわせて講ずべき措置
- 相談者などのプライバシーを保護する措置を講じる
- 事実関係の確認への協力などを理由に、不利益な取扱いをしない旨を定めて従業員に周知・啓発
4つの措置それぞれの具体的な進め方は、後の章「方針策定と周知・啓発の方法」「相談窓口の設計方法」「発生時の対応と再発防止」の3つに分けて解説します。
(1)企業と従業員の責務
4つの措置に加えて、企業と従業員には、それぞれ就活セクハラ防止に努める責務が定められています。
- 企業
- 従業員に就活セクハラをしてはならないことやそのほか就活セクハラへの問題意識を高めるよう促す
- 従業員が求職者等に対する言動に必要な注意を払えるよう、研修の実施など必要な配慮をすること
- 事業主(トップ)が率先して就活セクハラへの問題意識を高め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うこと
- 従業員
- 就活セクハラへの問題意識を高めて言動に注意を払う
- 企業が講じる雇用管理上の措置に協力する
(2)望ましい取り組み
義務ではないものの、次の取り組みが望ましいとされています。
- 大学などの教育機関と連携し、就活セクハラの情報提供を受け、適切に対応する
- 顧客等による就活セクハラへの適切な対応
なお、就活セクハラだけでなく、求職者等に対するパワハラ・カスハラに類する行為についても望ましい取り組みが定められています。
(参考)令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!(p.6)- 厚生労働省
ここまで、義務となる4つの措置から責務・望ましい取り組みまで解説してきました。まずは、必ず実施しなければならない4つの措置を中心に、優先順位をつけて進めることが重要です。
また、就活ハラスメント対策に取り組む企業10社の事例をまとめた事例集を厚生労働省が公開しています。他社の取り組みも参考にしながら、自社のルールや体制を検討しましょう。
(参考)就活ハラスメント防止対策 企業事例集 - 厚生労働省
就活セクハラを放置した場合に企業が抱えるリスク
就活セクハラが発生した際に企業が抱えるリスクは大きく、具体的には、次のようなリスクが想定されます。
- 社会的信用を失うリスク:SNSや報道を通じて被害が公になれば、企業ブランドや既存取引先との関係にも影響します
- 損害賠償責任を追及されるリスク:被害を受けた求職者等から、企業の安全配慮義務違反などを理由に損害賠償を請求される可能性があります
- 刑事責任を問われるリスク:行為の内容によっては、行為者個人だけでなく企業の管理責任が問われるケースもあります
人材不足が深刻化するなか、就活セクハラは採用活動にも深刻な影響を及ぼしかねません。自社の採用活動と企業価値を守るためにも、施行までに確実に対応を進めましょう。
【実務1】方針策定と周知・啓発の方法
4つの義務のうち「方針等の明確化と周知・啓発」は、「就活セクハラを許さない」という企業トップ(経営者)の重要なメッセージにもなります。社内の決議・決裁などにかかる時間も十分に考慮したスケジュールを組んでおくことが重要です。
(1)方針に盛り込むべき内容
就業規則などには、すでに法的義務となっている「パワーハラスメント」「セクシュアルハラスメント」「妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント」の防止規定が定められています。そちらに、就活セクハラ防止規定として以下の内容を追記しましょう。
- 就活セクハラをしてはならないこと
- 対象範囲に、従業員以外の求職者等(インターンシップ参加者や教育実習生なども含む)が含まれること
- 就活セクハラをした者への懲戒規定
- 相談者・行為者などのプライバシー保護と、相談などを理由とする不利益取扱いの禁止に関する規定
実務ポイント
義務ではありませんが、求職者等に対するハラスメント全般の禁止がより望ましいとされています。どこまでを対象とするかは、各企業が自社の方針に応じて判断することになります。就活セクハラに限定せず、求職者等に対するハラスメント全般を禁止する形にしておくと、対象の線引きで迷わずに済み、企業にとっても望ましい対応といえます。
企業によっては、ホームページや会社案内のパンフレットなどにハラスメント防止の方針を掲げている場合もあるので、それらの改訂もあわせて検討します。まずは、自社でハラスメント対策がどう規定されているかをあらためて確認するところから始めましょう。
(2)面談・面接などのルールを定める
自社の採用活動の内容を踏まえ、求職活動等に関する適切なルールを定めて明確化しましょう。ルールの例は次のとおりです。
- 面談時間:日中のみの実施、会社への事前申請を必須にする など
- 面接場所:個室での実施を不可とする など
- 連絡手段:SNSなどの個人アカウントの利用を禁止する など
実務ポイント
OB・OG面談は業務時間外や個室での実施を不可とする、内定者懇親会などで飲酒する場合の留意点を設けるなど、ハラスメントが起きやすい場面を具体的に想定してルールを検討すると、より効果的です。
(3)周知・啓発の対象と方法
方針やルールは、対応する従業員や求職者等に浸透して初めて機能します。運用に落とし込むために、周知・啓発は重要なプロセスです。
周知・啓発の対象者
周知の対象は、社内の従業員に加えて社外の求職者等にも広がる点が、既存のセクハラ防止措置との大きな違いです。
- 従業員全般(特に採用活動にかかわる者、OB・OG訪問の対応者など)
- 求職者等(採用面接や説明会への参加者、インターンシップ参加者、実習生など)
周知・啓発の方法
周知・啓発の方法としては、次のものが有効です。
- 全社集会などで、企業のトップ自らが方針を口頭で周知する
- 採用活動にかかわる従業員に、ハラスメント防止研修の受講を義務づける
- 面談・面接時のマニュアルやシートに、方針やルールを明記する
- 採用情報サイトや会社案内のパンフレットに、方針と相談窓口を記載する
実務ポイント
就活セクハラは、発覚した場合に懲戒処分の対象にもなる重大な行為であることを示し、企業として絶対に許さないという姿勢を明確にすることも重要です。
【実務2】相談窓口の設計方法
4つの義務のうち「相談体制の整備」の措置を講じるうえでは、相談窓口が確実に機能するよう、体制と運営フローを整えましょう。
(1)既存のハラスメント相談窓口との違い
既存のハラスメント相談窓口との違いは大きく2つあります。
- 相談者:従業員ではなく、求職者等が対象になる
- 担当者の配置:採用活動にかかわる人事担当者は当事者になり得るため、公平性・中立性を確保する観点から、採用活動に関与しない部署や担当者を配置することが望ましい
既存のハラスメント窓口のノウハウを活かす目的などで、人事担当者を配置する場合は、採用業務には関与させないことが重要です。
実務ポイント
社内で担当者を立てるほか、外部委託も検討材料になります。公平性・中立性を確保した体制を求職者等に明確に伝えることで、窓口を利用する際の安心感につながります。
(2)窓口の周知方法
求職者等が相談窓口の存在を認識できるよう、求職者等と接点が生まれるあらゆる場面で案内します。具体的には、次の媒体への記載が有効です。
- 採用情報サイト(採用ページのトップや「お問い合わせ」付近)
- 求人票、募集要項、エントリー受付フォーム
- 会社案内、採用パンフレット
- 面接や説明会の案内メール(本文または署名欄)
- 説明会・面接当日に配布する資料、インターンシップのオリエンテーション資料
媒体ごとに目立つ位置に配置し、相談先(電話番号・メールアドレス)と、相談しても選考で不利益な取扱いを受けない旨をあわせて記載すると、より相談しやすい環境につながります。
(3)相談窓口の運用に必要な準備
相談の受付から対応までの流れと、担当者の役割をあらかじめ明確にしておくと、スムーズな運用につながります。
相談窓口設立にあたって事前に整備しておくとよい項目
- 相談方法:電話、メール、フォームなど
- 連絡先:相談窓口専用の電話番号、メールアドレスなど
- 一次対応フロー:誰が担当し、誰にどこまで情報を共有するか
- 事実確認ヒアリングシート:相談者・第三者(関係者)・行為者への事実確認に使う様式
【実務3】発生時の対応と再発防止
4つの義務のうち「事後の迅速かつ適切な対応」と「そのほかあわせて講ずべき措置」では、社内のセクハラ対応フローの多くを転用できますが、相談者が求職者等になる点で、一部の対応に違いが生じます。

(1)事実確認
相談窓口の担当者が中心となり、相談者・行為者・第三者(就活セクハラ被害について見聞きした可能性のある人)に対して、中立的な視点で速やかに事実関係を確認します。
実務ポイント
相談者(求職者等)が社外の人になる点が、社内対応との大きな違いです。また、場合によっては第三者も、説明会やインターンシップの同席者など社外の人となる可能性があります。いざとなったときにヒアリングができるよう、連絡手段やヒアリング手法などをあらかじめ決めておきましょう。
(2)被害を受けた求職者等への配慮措置
事案の内容や状況に応じて、被害者への配慮措置を速やかに講じましょう。具体的には、次のような対応が考えられます。
- 被害者への謝罪を実施する
- 被害者と行為者を引き離す
- 行為者を採用活動から外す
(3)行為者への対応と再発防止策
事実確認の結果を踏まえ、コンプライアンス委員会や懲罰委員会での審議、就業規則の規定にもとづいて、行為者への適切な措置を講じます。
あわせて、再発防止に向けた次のような措置を講じましょう。
- 社内での注意喚起
- 全従業員を対象とした研修の実施
- 採用活動に関するルール・マニュアルの見直し
(4)プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
【実務1】で就業規則に盛り込んだプライバシー保護と不利益取扱いの禁止に関する規定を、実際の運用に落とし込みます。具体的には、対応の手順や情報共有の範囲をマニュアルに定め、相談窓口の担当者はそれにもとづいて対応しましょう。相談窓口担当者向けの研修を実施することも効果的です。
実務ポイント
求職者等のプライバシー保護にあたっては、連絡経路や情報の取扱いが社内対応と異なる点に注意が必要です。
【チェックリスト】施行日までに準備すべきこと
ここまで、企業が対応すべき内容を解説してきました。最後に、2026年10月1日の施行に向けて準備すべきことを、スケジュールに沿っておさらいしましょう。

7月:方針策定・規程改定
- 改正内容の理解
- 現状把握(就業規則・防止規程の確認)
- 方針策定
- 就業規則・防止規程の改定
8月:相談体制と事後対応フローの整備
- 相談窓口の設置
- 相談対応フローの構築
- 情報管理体制の整備
9月:周知・啓発と研修
- 方針・ルール・相談窓口の周知
- 従業員向け研修の実施
求職者と従業員、双方から選ばれる企業であるために
企業のハラスメント対応は重要性を増し、相次ぐ法改正で対応すべき範囲も広がっています。本質は法令遵守の先にあり、求職者と従業員が安心できる採用・職場環境をどうつくるかが問われています。
ハラスメント防止対策の全体を見直すことは、求職者等だけでなく従業員からの信頼獲得にもつながります。法改正を機に、前向きに取り組みましょう。

お役立ち資料






