指導をためらう原因は“能力不足”だけではない|部下をもつ管理職に対する調査レポート
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この記事でわかること
- 必要な指導をためらう管理職は約7割。部下のモチベーション低下や、ハラスメントと指摘されるリスクへの懸念がブレーキになっている
- 指導の停滞は、表立ったトラブルがなくてもチームの挑戦や成長を静かに止める。とくに部下5人以上で強まる「部下5人の壁」がみられる
- ためらいの原因は個人のスキル不足ではなく、判断材料の不足。感覚や記憶に頼らないデータの蓄積と、共通の基準づくりが求められている
目次
「厳しく伝えたいけれど、関係がこじれたら怖い」。部下へのフィードバックを前に、言葉選びに迷った管理職の方もいるのではないでしょうか。チャットの文面を打っては消し、結局「引き続きよろしくお願いします」と無難な言葉に書き換えてしまう。そんな場面は、いまや多くの管理職に共通する悩みです。
SmartHRが2026年6月に部下をもつ管理職548名に実施した調査では、70.8%が厳しい指導を見送ったり、表現を極端に和らげたりした経験をもつことがわかりました。これらは、管理職のスキル・経験不足によるものなのでしょうか。ためらいを越えるにはどういった支援が必要なのでしょうか。
本記事では、必要な指導が静かに滞っていく実態と、組織として支える糸口を、調査データにもとづいて解説します。
※出典:部下を持つ管理職に対する調査(SmartHR調べ/インターネット調査/調査期間:2026年6月2日〜6月4日/有効回答:部下をもつ管理職層 548名)。以下、本記事の数値はすべて同調査によります。
指導をためらう管理職が増えている背景
ハラスメント研修やコンプライアンス教育は、多くの企業に定着しました。一方で現場には、リスクを恐れるあまり必要な指導まで控えてしまう、という新しい葛藤が生まれています。
必要な指導の停滞は、部下の成長機会を奪うだけではありません。チームが目指す水準を少しずつ下げ、組織の成果や能力を静かに弱らせていくと言われています。そこで本調査は、明確な基準がないまま個人の判断に任されがちな指導の実態を明らかにするために実施しました。
見送られる指導と、成長が止まる組織
ここでは、指導をためらう実態について、ブレーキとなる要因とチームに生じる変化の両面からみていきます。
(1)回答者の70.8%が必要な場面で指導を見送った経験をもつ
直近1年で厳しい指導が必要な場面において、「あえて指導を見送ったり、表現を極端に和らげたりした経験があるか」とたずねたところ、70.8%が「ある」と答えました。

※図中の数値は四捨五入の関係上、本文の記述(70.8%)と一部表記が異なります。
(出典)部下を持つ管理職に対する調査 - SmartHR
指導のブレーキになっている要因は、「部下のモチベーションを下げてしまう懸念」が62.1%で最も多く、「パワハラと指摘され、自身の評価や立場が悪くなるリスク」が21.6%で続きます。多くの管理職が、適切な指導と過度な指導の境目に迷いながら判断している様子がうかがえます。
(2)指導が滞ると、組織に何が起きるのか
指導をためらった経験がある人(n=388)に、「必要な指導を曖昧にした結果としてチーム内に起きている変化」を複数回答でたずねました。最も多い回答は「特に変化は起きていない」(35.8%)でした。一方で変化が生じている項目のなかでは、「大きなトラブルはないが、新しい挑戦や成長が止まっている」が34.5%、「部下のミスが再発し、改善が見られない」が17.0%と続きます。
表立ったトラブルがなくても、現状維持にとどまり、成長が止まりつつあると感じている管理職が、一定数いることがわかります。
※図中の数値は四捨五入の関係上、本文の記述と一部表記が異なります。
(出典)部下を持つ管理職に対する調査 - SmartHR
(3)指導のためらいが強まる「部下5人の壁」
この課題を部下の人数別にみると、抱える人数が多い管理職ほど、より強いジレンマを抱えている傾向がみえてきました。
指導を見送った経験は、部下が「4人以下」の層で63.8%だったのに対し、「5人以上」の層では75.9%に達します。部下から「納得がいかない」と反論された経験も、「4人以下」の14.7%に対し「5人以上」では29.4%と、およそ2倍にのぼります。
管理する人数が増えるほど、一人ひとりと向き合う時間は削られ、対話の手がかりも不足しがちです。その結果、指導を見送る状態に陥りやすくなる実態が読み取れます。

※図中の数値は四捨五入の関係上、本文の記述と一部表記が異なります。
(出典)部下を持つ管理職に対する調査 - SmartHR
個人の裁量に頼らず、組織で指導の不安を乗り越える
指導のためらいは管理職個人の問題なのでしょうか。ここでは、評価の実態と管理職が求める支援から、組織として何を整えればよいのかを読み解きます。
管理職の3人に1人は「印象や記憶」で評価している
評価やフィードバックの際に最も重視する情報は、「システム等に蓄積された日々の行動記録や進捗データ」が40.1%で最も多い結果でした。一方で、「直近の印象や記憶」が30.7%、「手元の個人メモ」が23.0%と続きます。3人に1人近くが、事実よりも記憶や印象を頼りに評価していることになります。
この結果は、指導をためらう原因が管理職個人のスキル・経験不足だけではないことを示しています。判断の支えとなる事実や、「ここまでは正当」といえる基準が手元にないことが、指導の迷いを生んでいると考えられます。
実際、指導とハラスメントの境界について会社の支援をたずねると、「現場の指導に直結する基準はない」が29.4%、「管理職個人の裁量・判断に委ねられている」が28.8%を占めました。管理職が孤立しやすい状況が、数字にもあらわれています。

※図中の数値は四捨五入の関係上、本文の記述と一部表記が異なります。
(出典)部下を持つ管理職に対する調査 - SmartHR
必要なのは「正当性の基準」と「共有された事実」
では、何があれば管理職は安心して指導に向き合えるのでしょうか。求める支援をたずねると、「『ここまでは正当な指導である』という基準やガイドラインの明確化」が33.0%で最も多く、「上司と部下間で、目標や期待値が常に同期・共有されている状態」が30.1%、「指導の根拠となる日々の行動や成果が可視化・蓄積される仕組み」が25.0%と続きました。
一方で「客観的な対話ができるフィードバックツールの導入」は19.5%にとどまります。求められているのは、ツールそのものよりも、「正当性の基準」と「共有された事実」といえます。

※図中の数値は四捨五入の関係上、本文の記述と一部表記が異なります。
(出典)部下を持つ管理職に対する調査 - SmartHR
仕組みで支えることが、納得感のある対話を生む
部下からみた評価の納得感は、上司の話し方だけでは決まりません。「評価の根拠が継続的に共有されているか」が、大きな分かれ目になります。日々の行動や成果を、上司と部下が同じ事実としてみながら対話できる環境を整えること。それが、リスクへの不安から管理職を解放し、健全なフィードバック文化を育てます。
調査が示すように、指導をためらう管理職を支えるのは、「ここまでは正当」といえる基準と、上司と部下が同じ事実をみながら対話できる状態です。評価や1on1の記録を客観的なデータとして蓄積し共有できれば、感覚や記憶だけに頼らない、納得感のある対話に近づきます。組織が「事実の土台」を整えることは、管理職に迷いではなく判断の手がかりをもたらし、部下にとっても納得感のある評価につながるはずです。
指導のためらいを「仕組み」で減らすには、何から始めればよいのか。以下の記事ではSmartHRでの実現方法を実践編でご紹介します。ぜひあわせてご覧ください。

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