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障害者法定雇用率2.7%へ|採用・定着の運用設計を社労士が解説

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目次

こんにちは。社会保険労務士法人名南経営の大津です。

2026年(令和8年)7月、民間企業の障害者法定雇用率が現行の2.5%から2.7%へ引き上げられ、雇用義務の対象企業も「常用労働者40.0人以上」から「37.5人以上」へと拡大します。新たに対象となる中小企業や、ギリギリで達成してきた企業にとって、影響の大きい改正です。

しかし、課題の本質は「採用すること」そのものではありません。いかに雇用した人を職場に定着させ、戦力になってもらうかという「運用設計力」こそがカギになります。

本記事では、現場の採用担当者や受け入れ責任者に向けて、運用フローの要となる「採用」「業務設計」「定着」「年間計画」の4つのフェーズ別に解説します。「法定雇用人数を満たすための雇用」から「組織の力となる雇用」へ、その転換を実現するための具体的なポイントを示します。

障害者雇用の実務はどう変わる?押さえるべき3つの変更点

ここでは、2026年7月の法改正で実務がどう変わるかを整理します。

厚生労働省が2025年12月に公表した「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」によれば、実雇用率は2.41%(図表1)、現行の法定雇用率2.5%に対し、過半数(54.0%)が未達成の状況です。現行基準すらクリアできていないなか、2026年7月にはさらにハードルが引き上がります。

【図表1:「実雇用率と雇用されている障害者の数の推移」】

実雇用率と雇用されている障害者の数の推移

出典:令和7年 障害者雇用状況の集計結果 - 厚生労働省

一方、未達成企業65,033社の内訳をみると、64.0%は「あと1人」を雇えば基準を満たせる企業であり、57.3%は障害者を1人も雇用していない企業です。多くの未達成企業にとって課題の本質は「大量採用するための採用力」ではなく、最初の1人を着実に雇用し、定着させるための「運用設計力」にあります。

障害者雇用の実務で押さえるべき3つのポイント

(1)法定雇用率の引き上げ

法定雇用率は、障害者雇用促進法にもとづき「労働者に対する対象障害者(身体障害者・知的障害者・精神障害者)である労働者の割合を基準とし、少なくとも5年ごとに、その割合の推移を勘案して設定すること」とされています。

前述の図表1にあるように近年は2〜3年ごとに引き上げられており、2024年4月の2.3%から2.5%への引き上げに続き、2026年7月からは2.7%が適用されます。

短期間での度重なる引き上げにより、企業は常に「追加採用」を迫られる構造になっています。法定雇用率から決まる必要雇用人数そのものが急増するわけではありませんが、既存の障害のある従業員が定着しなければ、退職分の補充に引き上げ分が上乗せされ、年々採用人数は膨らんでいきます。

(2)雇用義務対象企業の拡大

今回の2.7%への法定雇用率の引き上げにより、雇用義務の対象となる企業の常用労働者数の基準が、従来の40.0人から37.5人へと引き下げられます。ここでの常用労働者とは、週30時間以上勤務する労働者を1人、週20時間以上30時間未満の短時間労働者を0.5人として計算した合計人数です。

従業員規模が30人台後半の企業は、自社が義務化の対象になるかどうかの境界線上にあります。カウントを左右するのは一人ひとりの「週の所定労働時間」です。すでに働いている人は実績(日々の労働時間管理)で、これから採用する人は契約上の所定労働時間(見込み)で確認し、正確に把握しておきましょう。

(3)未達成企業に対するペナルティと社会的リスク

常用労働者数が100人を超える企業が法定雇用率を達成できなかった場合、不足する障害者1人あたり月額50,000円の「障害者雇用納付金」が徴収されます(納付金の対象は、常用労働者数が100人を超える企業に限られます)。

一方、これより重いペナルティとして、企業規模を問わず科されるのが、厚生労働省による企業名公表の仕組みです。

雇用状況が著しく悪い企業に対しては、ハローワークから「障害者の雇入れに関する計画」の作成命令が出されます。2年間の計画期間中に改善がみられない場合は、適正実施勧告や特別指導を経て、最終的に企業名が全国に公表されます(図表2)。

【図表2:障害者雇用率達成指導の流れ】

障害者雇用率達成指導の流れ

出典:障害者雇用率達成指導の流れ - 厚生労働省

新卒採用や労働市場でのブランドイメージ低下など、「社名公表」がもたらす社会的損失は、企業の存続や信頼そのものを揺るがしかねない、極めて重大なリスクであるとの認識が必要です。

採用のポイント:必要雇用人数の把握と採用チャネルの多様化

実務の第一歩は、自社の障害者雇用の現状を正確に把握することです。以下のステップで進めていきましょう。

障害者雇用 採用時の3ステップ

ステップ(1)障害者必要雇用人数の算定基準と特例カウントの理解

障害者の雇用が義務付けられている人数は、常用労働者数に法定雇用率2.7%を乗じたもの(1人未満の端数は切り捨て)となります。ここでの常用労働者とは前述のとおり、「週30時間以上勤務する労働者は1人」「週20時間以上30時間未満の短時間労働者は0.5人」に換算して計算します。

必要雇用人数の計算式

  • 常用労働者数 × 2.7%

「常用労働者数」のカウント基準

  • 週30時間以上勤務する労働者:1人換算
  • 週20時間以上30時間未満の短時間労働者:0.5人換算

【図表3:規模別必要人数早見表(常用労働者数と障害者法定雇用人数)】

常用労働者数
現行2.5%
(〜2026年6月)
新2.7%
(2026年7月〜)
差分

37.5人

対象外

1人

新たに義務発生

50人

1人

1人

±0人

100人

2人

2人

±0人

300人

7人

8人

+1人

500人

12人

13人

+1人

1,000人

25人

27人

+2人

出典:「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について - 厚生労働省」をもとに筆者作成(必要数は常用労働者数×法定雇用率で算出。1人未満は切り捨て)

障害者の就労が困難とされる特定の業種においては、雇用義務のある労働者数を計算する際に、一定の割合を控除(免除)できる仕組み(除外率制度)が設けられています。詳細は、厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」をご確認ください。

ステップ(2)障害者雇用人数の正確な把握

自社の障害者雇用人数は、常用労働者と同じ換算(30時間以上=1人、20時間以上30時間未満=0.5人)で数えます。ただし、重度の障害をもつ人のダブルカウントや、精神障害がある短時間労働者を当分のあいだ1人とみなす措置(※)など、障害の程度や特性に応じた細かな算出ルールが設けられています。

自社の対象者がどの区分に該当するかを、次の図表4で正確に確認しておきましょう。

【図表4:障害者雇用率制度におけるカウント基準一覧表】

週所定
労働時間
30時間以上
20時間以上
30時間未満
10時間以上
20時間未満

身体障害者

1人

0.5人

重度身体障害者

2人

1人

0.5人

知的障害者

1人

0.5人

重度知的障害者

2人

1人

0.5人

精神障害者

1人

1人(※)

0.5人

出典:「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について - 厚生労働省」をもとに筆者作成(カウント基準は障害者雇用促進法および同施行規則にもとづく)

ステップ(3)採用チャネルと選考基準の整理

採用活動では、ハローワークだけでなく、障害者専門の民間人材紹介会社、就労移行支援事業所、特別支援学校など、複数のチャネルを組み合わせることが効果的です。

そのうえで、採用選考では「障害名」や「障害の程度」だけで合否を判断しないことが大切です。重視したいのは、本人が自身の得意・不得意や体調のサインをどの程度把握しているか、どのような環境やサポートがあれば力を発揮できるかを、対話を通じて互いに確認していく姿勢です

こうした相互理解が進むほど、入社後のミスマッチは起こりにくく、現場での合理的配慮の合意形成もスムーズになります。

業務設計のポイント:業務を切り出して「活躍の場」をつくる

「障害をもった従業員に、どのような業務をお願いすればよいかわからない」という声は、多くの企業から聞かれます。しかし、これは任せられる仕事がないのではなく、「既存の業務プロセスのなかに、障害のある従業員が担当できる業務が埋もれているだけ」と考えられます。

業務設計は、採用後の障害者雇用の成否を分ける最大の山場です。

業務設計のポイント〜業務を切り出して「活躍の場」をつくる〜

(1)業務切り出しの考え方と狙い

業務には、高度な判断を要するコア業務と、定型的・ルーティン的なノンコア業務が混在しています。これらを分解し、まずは定型業務を抽出・再構成して、障害をもった従業員が入社初期から無理なく力を発揮できる「新しい職務」を設計します。この職務はあくまで定着に向けた出発点であり、習熟度にあわせて担当範囲を広げていくことを前提とします。

このアプローチは、単に障害をもった従業員の業務を創出するだけではありません。既存の従業員のルーティンワークの負荷を軽減し、コア業務(企画、顧客対応、新規開発など)に時間を集中できるようになるため、「組織全体の生産性向上と残業削減」という副次的メリットをもたらします。

経営層や現場の部門長に協力を仰ぐ際は、この「組織全体のメリット」を共通の目的として共有することが、合意形成をスムーズに進めるポイントです。

(2)業務切り出しの具体的プロセス

業務の切り出しは以下のステップで進めましょう。

1.業務棚卸しシートの配布

各部署に対し、日次・週次・月次で発生している定型業務(データ入力、書類スキャン、ファイリング、発送物準備、清掃、データチェックなど)を洗い出してもらう

2.切り出し対象業務の選定

洗い出された業務内から、「手順がマニュアル化されているもの」「判断の余地が少ないもの」「プロセスがわかりやすいもの」を抽出する

3.業務の組み合わせと職務記述書の作成

抽出した断片的なタスクを組み合わせ、1人分の1日の就業時間を満たすボリュームの職務を設計する

(3)合理的配慮の決定と現場との合意形成

障害者雇用促進法にもとづき、事業主には2016年4月から、雇用分野における「合理的配慮の提供」が義務付けられています。合理的配慮とは、障害をもつ従業員が職場で働くうえでの障壁を取り除くための柔軟な対応(例:口頭ではなく書面を用いて指示する、体調不良時に休憩を取れるスペースを確保する、机の配置を車椅子対応にするなど)を指します。

ただし、合理的配慮は「過度な負担」にならない範囲で、企業と本人が話し合い、納得のうえで決めるものです。企業側が一方的に内容を決めてしまうと、障害をもった従業員本人の可能性を、かえって狭めてしまうおそれがあります。

また、目的が共有されないまま現場に配慮だけが下りてくると、「なぜあの人だけ」という戸惑いを生むこともあります。配慮は特別扱いではなく、誰もが働きやすい状態に近づけるための調整だと捉えることが大切です。

受け入れ責任者も交えて、「本人が力を発揮し、自分らしく働けるように、この配慮をする」と目的を共有しながら合意形成を進めることが、現場の納得につながります

出典:事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化 - 政府広報オンライン

定着のポイント:受け入れ後の3か月・6か月・1年で何を見るか

障害者雇用を進める企業において、採用と並んで重要なのが、この定着フェーズです。障害をもった従業員(とくに近年採用数が急増している精神障害・発達障害)の離職は、特定の時期に集中する傾向があります。入社後の節目ごとに適切なチェックとケアを実施するためのタイムラインモデルを提示します。

【図表5:入社後定着タイムラインと実務アクション】

経過時間
注視すべき
ポイント・リスク
人事がとるべき
具体的アクション
障害特性別の留意点

入社直後〜1か月

  • 職場環境への物理的・心理的適応
  • 初期疲労による体調崩し、勤怠の乱れ
  • 「指示の受け方」の戸惑い
  • 丁寧なオンボーディングの徹底
  • 週1回以上の定期面談(悩み確認)
  • 業務マニュアルの整備と共有
  • 【精神・発達】
    環境変化による過緊張から急な体調不良を起こしやすいため注視が必要

3か月時点

  • 業務量の過不足(暇すぎる、過多)
  • 人間関係の摩擦・すれ違い
  • 合理的配慮の機能検証
  • 業務内容の微調整(タスク増減)
  • 産業医・支援機関との連携面談
  • 現場の受け入れ負担感ヒアリング
  • 【知的】
    作業がパターン化され安定する一方、イレギュラーな指示への迷いが生じやすい

6か月時点

  • 中だるみ、モチベーション低下
  • 将来への不安(このままでいいか)
  • 評価のギャップ顕在化
  • ステップアップ面談(新業務打診)
  • 中間評価の実施(客観的フィードバック)
  • 周囲向けの障害理解ミニ勉強会
  • 【精神・身体】
    雰囲気に慣れ、配慮が現状に合っているか、逆に無理を重ねていないかを確認する

1年時点

  • 完全な戦力化への移行期
  • 長期勤怠の安定化(通院管理)
  • 契約更新・キャリアへの期待と不安
  • 年間振り返り面談(次期目標設定)
  • 契約見直し(無期雇用転換検討)
  • 自律的な業務遂行への移行
  • 【全般】
    1年を乗り越えた達成感を共有し、組織へのエンゲージメント向上を図る

表のアクションを「なぜ実施するのか」という観点で補足します。

入社直後〜1か月:まず安心して相談できる状態をつくる

入社直後〜1か月は、本人がもっとも緊張する時期です。「何をすればいいかわからない」状態は強いストレス要因になります。相談先が曖昧なまま面談を怠ると、悩みを抱え込み、突然の退職に至るリスクが高まります。

3か月時点:業務量を本人と確認し、過不足を防ぐ

3か月時点には罠があります。「優秀だから」と本人の確認なしに業務を足すと処理しきれなくなり、逆に絞り込みすぎると「必要とされていない」と感じさせます。量と質の両面で適切かを確認しましょう。

6か月時点:「慣れ」による配慮の形骸化を防ぐ

6か月時点は、現場に「慣れ」が生じ、配慮が薄れがちです。本人が「見放された」と誤解したり、評価のズレが不満に転じたりするため、明確なフィードバックを伝え、本人に存在意義を再確認してもらいます。

1年時点:戦力化を共有し、次の目標につなげる

1年時点は戦力化の移行期です。1年を乗り越えた達成感を共有し、2年目以降のエンゲージメント向上につなげます

年間計画:ロクイチ報告を起点にした12か月サイクル

障害者雇用を成功させている企業に共通しているのは、雇用を「人事の年間プロジェクト」として構造化し、ルーティン業務としてPDCAサイクルを回している点です。

障害者雇用は、毎年6月1日の「ロクイチ報告(障害者雇用状況報告)」を起点に動きます。これを軸に、12か月の運用カレンダーを設計しましょう(図表6)。

【図表6:障害者雇用 年間運用カレンダー】

時期
主要実務アクション
経営層・現場巻き込みの
ポイント

6月

  • ロクイチ報告書の提出(6月1日現在の確定値)
  • 前年度実績、納付金・調整金の確定算出
  • 翌年7月に向けた不足人数の予測
  • 経営層へのトップ報告:現状の達成率と、未達成時の最大財務リスク(納付金額)および社名公表リスクの明確な見通しを提示する

7月〜9月

  • 採用計画の策定・見直し
  • 全社的な業務棚卸しの実施(受け入れ部署選定)
  • ハローワーク、人材紹介、支援機関などアプローチ
  • 各部門長への協力要請:役員会などを通じて「全社最適としての障害者雇用」の方針を発信し、重要性を理解してもらう

10月〜12月

  • 本格的な採用活動(求人、面接、実習の実施)
  • 支援学校インターンシップ(実習)受け入れ
  • 内定者選定と合理的配慮の事前調整
  • 現場での「職場実習」の実施:いきなり採用するのではなく、1週間程度の実習を取り入れることで現場の心理的ハードルを下げ、ミスマッチを激減

1月〜3月

  • 受け入れ準備(デスク、PC、マニュアル整備)
  • 配属先メンバー向け「障害理解研修」の実施
  • 内定者フォロー面談(不安解消)
  • 現場受け入れ責任者へのケア:現場が過度な負担を感じないよう、人事が相談窓口となり、孤立させないサポート体制を確約

4月〜6月

  • 障害者従業員の入社・オンボーディング
  • タイムラインにもとづく定期面談(1、3か月)
  • 支援機関を交えた定着支援会議の開催
  • 全社への周知と風土醸成:社内報などで紹介し、特別な存在ではなく「共に成果を出す一員」としての認知を広げる

障害者採用市場は、とくに法改正前後は深刻な売り手市場(企業間の争奪戦)となる傾向があります。秋口(10月〜12月)に採用活動のピークをもっていくと、安定的に人材を確保できます。

数値達成の先にある「働き続けられる職場づくり」を

2026年7月の法定雇用率2.7%への引き上げは、企業にとって一見、厳しい規制強化にみえるかもしれません。民間企業の54.0%が未達成であり、そのなかの64.0%が「あと1人」に泣いている現状は、これまでのやり方の延長線上では対応できないことを明確に示しています。

しかし、これまで解説してきた運用フローを実践すれば、この危機は組織改革の大きなチャンスへと変わります。障害者の雇用義務を「企業の価値」に転換するために、あらためて以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 採用:数合わせではなく、必要人数を正確に把握し、自己理解の進んだ人材を見極める
  • 業務設計:既存業務を切り出し、既存従業員の生産性を高めつつ、障害をもった従業員が活躍できる職務を創出する
  • 定着:1か月・3か月・6か月・1年の節目管理で、離職リスクを抑える
  • 年間計画:ロクイチ報告を起点とした12か月サイクルで、経営層と現場を巻き込み推進する

数値に追われるだけの雇用は長続きしません。障害者雇用の本質は、誰もが安心して「働き続けられる職場づくり」そのものです。

1人が定着し、戦力化されることで現場の理解が進み、次の受け入れ土壌が耕されます。この好循環をひとたび回し始められれば、2.7%という数字は決して高いハードルではなく、企業の多様性を証明する誇るべき指標へと昇華するはずです。

本記事が、法改正に悩むご担当者さまの一歩を踏み出す一助となれば幸いです。

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