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2026年8月の人事労務タスク|カスハラ・就活セクハラ防止義務化への対応を社労士が解説

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目次

こんにちは。社会保険労務士法人名南経営の大津です。サッカーワールドカップが閉幕しました。超一流のプロがチーム一丸となって戦う姿には、しばしば心を動かされました。日本代表は目標にこそ届きませんでしたが、ヨーロッパや南米の強豪国にも臆することなく戦う姿が印象に残り、4年後がまた楽しみになりました。

大会後は梅雨も明け、35度以上の猛暑日が続いています。体調を崩しやすい時期です。健康に注意しながら、無理のないペースで頑張っていきましょう。

8月のHRチェックリスト

8月は、10月施行の法改正への対応を確実に進めていきましょう。以下のチェックリストに沿って確認していきます。

以下、本文で紹介する見出しをまとめた図(カスハラ防止措置への対応、就活セクハラ防止措置への対応、同一労働同一賃金ガイドライン改正、保険料調整制度を利用する場合の手続き)

(1)カスタマーハラスメント・就活セクハラの防止措置への対応

今年10月1日に施行される改正労働施策総合推進法および男女雇用機会均等法の改正により、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)や求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下、就活セクハラ)の防止措置が義務化されます。

カスハラと就活セクハラについて、人事・労務担当者が実務で押さえるべきポイントは以下のとおりです。

1. カスハラ防止の義務化

顧客や取引先などによる暴言・過剰要求など、社会通念上許容される範囲を超えた言動から従業員を保護することが義務化されます。

事業主に求められる主な措置は、大きく以下の3つに分類できます。

求められる措置
詳細
体制整備(事前)
  • 経営層による毅然とした対応方針の表明
  • 相談窓口の設置・周知
  • 運用ルールの整備(一人対応を避け、組織対応とする)
悪質な事案への備え
  • 経営層による毅然とした対応方針の表明
  • 相談窓口の設置・周知
  • 運用ルールの整備(一人対応を避け、組織対応とする)
発生時対応(事後)
  • 事実確認の徹底
  • 被害者のメンタルケアや業務担当変更
  • 再発防止措置の実施

2. 就活セクハラ防止の義務化

面接やインターンシップなどに参加する求職者や実習生に対する、自社の従業員の性的な言動・過度な誘いなどの防止が義務化されます。

事業主には、まず次のような措置が求められます。

求められる措置
詳細
社内規範の周知
採用担当者や面接官に「就活生などへのセクハラ禁止」を周知徹底
面談ルールの明確化
1対1の個室面接や夜間・酒席での面談、私的なSNSでの連絡などを禁止・制限する規律を策定
相談体制の開放
求職者側からも相談を受け付けられる窓口・連絡先を事前案内

3. 8月中に着手したいハラスメント対策の実務対応

カスハラ・就活セクハラの措置を踏まえて、8月は以下の対応から着手しておきましょう。

対応
詳細
規程・マニュアルの改定
  • ​就業規則やハラスメント防止規程を改定し、社内周知
研修の実施
  • 管理職・従業員向けにカスハラ初期対応マニュアルを徹底
  • 採用担当者・面接官には就活セクハラ防止のコンプライアンス研修を実施
相談窓口の運用強化
  • 社内相談窓口の担当者教育を進め、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止を明記・周知

なお、この改正には企業規模による経過措置はありません。すべての企業で対応が求められます。規程例などは厚生労働省パンフレットでも紹介されていますので、資料を参考にしながら対応を進めましょう。

事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレットの表紙

(出典)事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット - 厚生労働省
(参考)職場におけるハラスメントの防止のために - 厚生労働省

(2)改正同一労働同一賃金ガイドラインへの対応

今年10月より「改正同一労働同一賃金ガイドライン」が施行されます。今月中に優先して取り組むべき要点を整理します。

1. 手当・福利厚生の判断基準が大幅追加

待遇差が不合理かどうかの判断基準について、退職手当や家族手当、住宅手当、無事故手当、賞与など、従来ガイドラインで明記されていなかった項目が追加・充実されました。

また「正社員の人材確保・定着のため」という抽象的な理由だけでは、待遇差の不合理性を否定できない旨が明確化されています。

2. 「説明義務」と「明示」の強化

雇入れ時に「待遇差について説明を求めることができる」旨を、書面(労働条件通知書など)で明示することが義務化されます。

また、パート・有期雇用労働者から説明を求められた際は、実際の職務内容・責任の程度・配置変更の範囲などの客観的根拠にもとづいた説明が必要です。

3. 無期転換後・定年再雇用者の見直し

無期転換後の労働者や定年後再雇用者についても、「定年後だから」「無期に転換したから」という一律の理由ではなく、個別の待遇の性質・目的に応じた合理性の点検が必要です。

企業が取り組むべき実務対応

対応
詳細

現状の待遇差チェック

雇用形態ごとに各手当・制度の支給目的と支給実態を再整理

説明資料の整備

「なぜ待遇に差があるのか」を職務分析にもとづき論理的に書面化

様式改定

雇用契約書・労働条件通知書に待遇差の説明に関する文言を追加

10月以降は、労働局との調査・指導(労働基準監督署との連携を含む)においても、この改正ガイドラインがベースとなります。退職手当のように、簡単には結論が出ない項目や制度整備に時間を要する項目も少なくありませんが、施行日までに可能なかぎり対応を進めておきましょう。

厚労省のポスター「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」の表紙

(出典)パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります - 厚生労働省
(参考)同一労働同一賃金特集ページ - 厚生労働省

(3)保険料調整制度を利用する場合の手続き準備

2027年10月から、被保険者数50人以下の事業所への社会保険(健康保険および厚生年金保険)の適用拡大が段階的に始まります。

これにあわせて、2026年10月1日に「保険料調整制度」がスタートします。事業主が従業員の保険料を一時的に負担し、従業員の保険料負担を通算3年間軽減できる制度です。

この制度を活用すると、事業主は軽減分を一時的に負担する必要がありますが、一定期間経過後に追加負担分が調整されるため、最終的に事業主が納付する保険料は増えません。従業員が将来受け取る年金額にも影響はありません。

※対象となる保険料は健康保険料・厚生年金保険料です
※保険料の軽減は、事業所が制度の利用を開始してから3年間が対象です

対象となるのは、厚生年金の被保険者数が50人以下の事業所です。該当する事業所では、リーフレットなどを確認しておきましょう。

(出典)2026年10月1日から短時間労働者の社会保険料負担を支援する制度が始まります- 日本年金機構
(参考)保険料調整制度のご案内 - 日本年金機構

8月の重要トピック

先日、今春の新入社員の初任給調査の結果が公表されました。ここでは、その結果を確認するとともに、一部取り扱いが変更されたシフト制で働く労働者の年次有給休暇付与のルールも押さえておきましょう。

【トピック1】2026年度新卒初任給(重要度:★★★★☆)

近年、初任給の大幅上昇が続いており、世間相場に見合った初任給の設定は重要なテーマとなっています。産労総合研究所から2026年4月入社の新卒者を対象とした初任給の調査結果が公表されました。

これによれば、77.9%の企業が初任給を引き上げています。学歴別の初任給は以下のとおりです。

学歴
区分
初任給
対前年増加率
大学院卒
博士
281,924円
4.90%

修士
274,728円
5.08%
大学卒
一律
250,880円
4.86%

格差あり・最高額
259,650円
6.13%

格差あり・最低額
233,996円
5.50%
短大卒
事務
229,526円
6.03%
高専卒
技術
240,897円
6.18%
高校卒
一律
211,814円
6.56%

格差あり・最高額
221,940円
4.63%

格差あり・最低額
208,848円
4.80%
専修・専門技術学校卒
2年修了
233,143円
5.78%

3年修了
234,031円
5.08%

(出典)2026年度 決定初任給調査(2026/7/6) - 産労総合研究所

このうち、注目の大卒初任給は、平均で250,880円と25万円の大台に乗っています。より詳細にデータを見ていくと、企業規模による初任給水準に大きな格差があることがわかります。

大企業
265,632円
(前年比+14,115円)
中堅企業
252,502円
(前年比+13,194円)
中小企業
240,836円
(前年比+9,018円)

同じ大卒初任給であっても、大企業では前年比14,115円増の265,632円に対し、中小企業では同9,018円増の240,836円となり、約25,000円の格差が発生しています。高校卒など他の学歴においても同様の傾向がみられます。

ここ数年のベースアップにより、中小企業の初任給も大幅に上昇しました。しかし、賃上げ余力がかなり厳しい状態を踏まえると、この差はさらなる拡大が予想されます。

(参考)2026年度 決定初任給調査(2026/7/6) - 産労総合研究所

【トピック2】シフト制で働く労働者に関する年次有給休暇の付与ルール変更(重要度:★★★☆☆)

規制改革推進会議が2026年6月29日に公表した「規制改革推進に関する答申」では「シフト制における適正な年次有給休暇の取得等」という項目が掲げられていました。

背景には、シフト制労働契約では「具体的な労働日や労働時間がその都度確定されるため、年次有給休暇の日数の算定において参照される所定労働日数を判断し難い場合があり、実務上の支障が生じている」という課題認識があります。

そのうえで答申は、訪問介護労働者の非定型的パートタイムヘルパーなどと同様に、「シフト制労働者についても基準日において所定労働日数を算出し難い場合には、基準日直前の労働日数の実績を考慮して所定労働日数を算出することとして差し支えないとすべきである」としていました。

(参考)規制改革推進に関する答申(令和8年6月29日) p.8 - 規制改革推進会議

こうした議論を受け、2026年6月19日に「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」が改正されました。労働日数の実績にもとづく所定労働日数の算出が、シフト制労働者についても認められるようになりました。内容は以下のとおりです。

1. 年休付与日数に関する原則
労働契約により定められた所定労働日数にもとづき年休付与日数を算出する

2. 今回の改正による対応

シフト制で働く労働者の場合、あらかじめ所定労働日数が定められていないケースがある。そのような場合には、次の日数を、基準日における1年間の所定労働日数とみなして年次有給休暇の付与日数を算出して差し支えない。

  • 雇入れ6か月経過後の年次有給休暇の付与にあたっては、雇入れから6か月間の労働日数の実績を2倍した日数
  • 雇入れ1年6か月経過後以降の年次有給休暇の付与にあたっては、前年の労働日数の実績

これは実務への影響がかなり大きな改正です。ぜひ改正された「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」をチェックし、実務に反映させてください。

(参考)いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項(改正 令和8年6月19日)p.8 - 厚生労働省
(参考)いわゆる「シフト制」について - 厚生労働省

10月の法改正に向けて、8月から対応を進めておこう

8月は10月の法改正の対応が求められる重要な月です。まずは、そうした改正対応を早めに進め、今後の最低賃金引き上げへの対応に備えましょう。まだまだ暑い日が続きますので、健康にはくれぐれもご注意ください。

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