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2026年9月の人事労務タスク|最低賃金改定と通知書見直しを社労士が解説

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こんにちは。社会保険労務士法人名南経営の大津です。先日発生した熊本地震については、被災された方々の不安や、かつての災害の記憶が呼び起こされた痛みに想いを馳せると、胸が締めつけられます。

この地震に伴う経済上の理由により事業活動を縮小する事業所については、雇用調整助成金の特例措置が設けられています。施設や設備の損壊に伴う休止・縮小は通常助成対象となりませんが、地震による直接的な被害の場合でも、経済上の理由があれば対象となります。

詳細は以下の厚生労働省のページご覧いただくとともに、労働局にお問い合わせください。一日も早く穏やかな生活が戻ることを、心より願っております。

令和8年熊本地震に伴う雇用調整助成金の特例を実施します - 厚生労働省

9月のHRチェックリスト

近年は最低賃金の引き上げ額が大きく、9月はその動向への関心が高まる月です。まずは引き上げの最新情報を押さえるとともに、それ以外の実務のポイントも漏らさないようにしましょう。以下のチェックリスト形式で確認していきます。

以下、本文で紹介する見出しをまとめた図(最低賃金改定に備えた情報収集、パート等労働条件通知書見直し)

(1)最低賃金の改定に備えた引き上げ情報の収集

最低賃金は、骨太の方針2025において「2020年代に全国平均1,500円」という高い目標が掲げられるなど、毎年、大幅に引き上げられています。

一方、今年度の骨太の方針では、達成時期が「遅くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成する」と改められ、昨年よりも引き上げ幅が抑制されています。

(参考)経済財政運営と改革の基本方針2026 「責任ある積極財政」元年 ~日本の挑戦を起動する!~ - 内閣府(p.11)

2026年9月2日時点では、各都道府県の新しい最低賃金は出そろっていませんが、中央最低賃金審議会が示した引き上げ額の目安は以下のとおりです。

中央最低賃金審議会が示した引き上げ額の目安(出典:令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について - 厚生労働省)

(出典)令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について - 厚生労働省

この目安にもとづき、各都道府県での議論を経て、最終的な最低賃金が決まります。東京都では、54円引き上げの時間額1,280円への改正が決定し、9月1日に官報公示されました。発効日は10月1日です。

(参考)東京都最低賃金を1,280円に引上げます - 厚生労働省東京労働局

最低賃金に関しては、地域間格差の縮小も大きなポイントです。Cランクの県を中心に目安よりも高い引き上げ額となることが予想されます。今後も公表される最新状況をチェックし、最低賃金割れがないかを確認しましょう。その際、発効日は都道府県ごとに異なるため、自社の事業所がある都道府県の発効日もあわせて確認が必要です。なお、確認方法は昨年9月のHRニュースで述べていますので、以下の記事をご覧ください。

(参考)最低賃金制度 - 厚生労働省

(2)10月改定のパートタイマーなどの労働条件通知書の見直し

先月のHRニュースでは、2026年10月1日に施行される改正同一労働同一賃金ガイドラインへの対応について解説しました。同一労働同一賃金関連ではこれに加え、パート・有期法施行規則改正に伴う雇い入れ時の労働条件明示事項の追加への対応も求められます。

労働条件の明示については、労働基準法第15条において「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定められています。

また、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート・有期法)」では、同法に定める短時間・有期雇用労働者について、以下の項目も明示が求められています。

  1. 昇給の有無
  2. 退職手当の有無
  3. 賞与の有無
  4. 雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

(参考)短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則 第二条 - e-Gov 法令検索

今回の改正により、上記の項目に加え、新たに「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」の追加が求められます。

次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。 部署名___ 担当者職氏名___ 連絡先___

「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」の追加例(モデル労働条件通知書 - 厚生労働省)

(出典)モデル労働条件通知書 - 厚生労働省

10月の施行に備えて、自社で使用している労働条件通知書の雛形を変更するとともに、説明を求められたときの対応を再確認しておきましょう。なお、モデル労働条件通知書も更新され、厚生労働省のホームページでダウンロードできますので、ご利用ください。

同一労働同一賃金特集ページ - 厚生労働省
主要様式ダウンロードコーナー (労働基準法等関係主要様式) - 厚生労働省

(3)定時決定に伴う社会保険料改定への対応

社会保険料に関しては、7月に定時決定として、算定基礎届を提出された企業が多いでしょう。今後、日本年金機構から「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」が順次届きます。

この書面には、今年9月分から適用される各被保険者(従業員)の新たな標準報酬月額が記載されています。これを給与計算ソフトに入力し、改定後の標準報酬月額にもとづく社会保険料を控除する準備をしておく必要があります。

その際、注意が必要なのが社会保険料控除のタイミングです。当月分の社会保険料を翌月分の給与から控除するのがもっとも一般的な対応です。その場合、定時決定により改定された9月分の社会保険料は、10月の給与から反映させ、控除します。自社の取り扱いを確認のうえ、間違えないように控除することが重要です。

(参考)定時決定(算定基礎届) - 日本年金機構

9月の重要トピック

今月は、労働基準監督署による労働時間関連の指導の見直し、そして男性育児休業取得率の最新情報です。いずれもニュースやSNSで大きな話題となったトピックです。

【トピック1】労働基準監督署による「残業月45時間以内」の一律指導が9月1日から見直し(重要度:★★★★☆)

厚生労働省は2026年8月19日に「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」という文書を公開しました。そのなかで、1か月45時間以内への時間外労働の削減を求める一律の指導を9月1日より見直す方針を示しました。

以下はその原文です。

労働基準監督署における対応の見直し

 時間外・休日労働時間数のみに着目して1か月45時間以内への削減を求める一律の指導を見直し、各事業場が36協定で定める健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を重点的に確認し、確認した状況に応じた必要な指導を行うこととします。なお、個々の事業場の実態を踏まえて、過重労働による健康障害が生じるおそれが高い場合には、引き続き必要な指導を行います。

SNSなどでは厚生労働省が労働時間削減の指導を緩め、長時間労働を容認するのではないかといった批判的な意見もみられます。

しかし、実際にはそのような意図のものではないと筆者は捉えています。今回見直されるのは労働基準監督署の指導運用です。特別条項にかかる労使合意を尊重したうえで、「健康及び福祉を確保するための措置」が実施されているかを重点的に確認し、過重労働による健康障害の防止を強化するという内容です。本質を理解したうえで、あらためて安心して働ける職場環境の構築を進めましょう。36協定や労働時間管理に不安がある場合は、無料の相談窓口も活用できます。

厚生労働省の無料の相談窓口案内(労務管理の「困った!」を解決私たちが重点的にサポートします - 厚生労働省)

(出典)労務管理の「困った!」を解決私たちが重点的にサポートします - 厚生労働省

【トピック2】男性の育児休業取得率が過去最高を更新(重要度:★★★☆☆)

厚生労働省から、毎年注目を集める「男性の育児休業取得率」が公表されました。令和7年度は50.9%と、ついに50%を突破しました。前年度の40.5%より10.4ポイントの大きな上昇です。男女別の育児休業取得率の状況は以下のとおりです。

(1)女性

令和5年10月1日から令和6年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、令和7年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は88.3%と、前回調査(令和6年度:86.6%)より1.7ポイント上昇

(2)男性

令和5年10月1日から令和6年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、令和7年10月1日までに育児休業(産後パパ育休を含む。)を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は50.9%と、前回調査(令和6年度:40.5%)より10.4ポイント上昇

この調査では、令和5年10月1日から令和6年9月30日までの1年間に出産した女性(男性は同期間に配偶者が出産した人)のうち、令和7年10月1日までに育児休業を開始または申し出た人の割合を集計しています。

区分
令和7年度
前回調査(令和6年度)
増減

女性

88.3%

86.6%

+1.7ポイント

男性

50.9%

40.5%

+10.4ポイント

※男性の取得率には産後パパ育休(出生時育児休業)を含みます
(参考)令和7年度雇用均等基本調査 概要 全体版(p.25) - 厚生労働省をもとに編集部作成

男性の育児休業取得率の推移

男性の育児休業取得率の推移(令和7年度雇用均等基本調査 概要 全体版(p.26) - 厚生労働省)

(出典)令和7年度雇用均等基本調査 概要 全体版(p.26) - 厚生労働省

今回、男性の育児休業取得率が大幅に伸びていますが、よく課題とされるのが取得期間です。かつて男性の育児休業取得期間は数日から1週間程度と非常に短い傾向がみられました。しかし令和7年度調査では、1か月~3か月未満が30.3%と最多になっています。

令和7年度の男性の取得期間別育児休業後復職者割合

育児休業の取得期間
復職者に占める割合

5日未満

6.8%

5日~2週間未満

14.1%

2週間~1か月未満

28.0%

1か月~3か月未満

30.3%

3か月~6か月未満

10.1%

6か月~8か月未満

5.2%

8か月~10か月未満

1.1%

10か月~12か月未満

2.4%

12か月~18か月未満

1.8%

18か月~24か月未満

0.1%

24か月~36か月未満

0.1%

36か月以上

0.1%

不明

0.1%

(出典)令和7年度雇用均等基本調査 概要 全体版(p.32) - 厚生労働省をもとに編集部作成

また、厚生労働省が実施した「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査」の速報結果では、育児休業取得を希望する割合は男性で83.5%、女性で91.4%となっています。今後、男性の育児休業取得率はさらに上昇し、女性と近い水準になることが予想されます。

これからの時代は、夫婦が家事や育児を分担することが当たり前になっていきます。それが実現できない企業は求職者から選ばれず、人材確保に苦戦することとなるでしょう。安定的な事業運営のためにも、性別にかかわらず、育児休業を取得できる職場づくりを進めていきたいものです。

(参考)若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)(p.5) - 厚生労働省

10月施行の法改正と社会保険料改定への対応を抜かりなく

9月は、社会保険料の改定に加え、10月の各種改正の対応が求められる重要な月です。なかでも最低賃金の引き上げはコスト面だけでなく、企業の賃金制度にも大きな影響を与えます。早めの影響分析と対応を進めましょう。

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