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iDeCo・企業型DC改正|2026年12月施行までの実務対応を税理士が解説

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目次

2026年、iDeCo(個人型確定拠出年金)・企業型DC(企業型確定拠出年金)のルールが、年金制度改正法にもとづき4月と12月の2段階で見直されます。4月施行分では自動移換に関する説明時期が退職前に前倒しされ、12月1日には拠出限度額とiDeCoの加入可能年齢の引き上げが施行されます。

本記事では、改正内容を整理したうえで、企業に求められる対応を解説します。なお2026年1月には税制改正による退職所得控除の見直し(10年ルール)も施行されていますが、ここでは年金制度改正法による見直しを扱います。

※本記事の内容は2026年8月時点の情報にもとづきます。施行までに詳細が変更される可能性があるため、最新情報をあわせてご確認ください。

iDeCo・企業型DCはいつ・何が変わる?

今回の見直しは、2025年6月に成立した「年金制度改正法」によるものです。少子高齢化や働く期間の長期化、働き方の多様化を踏まえ、老後の所得保障機能を強化することを目的としています。各タイミングで実施される見直しと、企業に必要な対応は次のとおりです。

※「年金制度改正法」の正式名称は、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」です。

施行時期
主な改正内容
主な対象企業
対応区分

2026年4月1日

自動移換に関する説明時期の見直し

企業型DCを導入している企業

義務:退職前など、資格喪失が見込まれる段階での説明が必要

2026年4月1日

マッチング拠出における加入者掛金の制限撤廃

マッチング拠出を導入している企業

任意:掛金設定を見直す場合は、規約・給与控除などを確認

2026年4月1日

簡易型DCから通常の企業型DCへの統合

簡易型DCを導入していた企業

対象企業のみ:規約や制度運営上の取り扱いを運営管理機関などに確認

2026年4月1日

iDeCo+の届出手続きの簡素化

iDeCo+を導入・導入検討している企業

対象企業のみ:必要に応じて簡素化後の手続きを利用

2026年12月1日

企業型DC・iDeCoの拠出限度額引き上げ

企業型DCを導入している企業(iDeCoの引き上げは全企業の従業員に関係)

任意:掛金を見直す場合は、規約変更の要否や給与計算への影響を確認

2026年12月1日

iDeCoの加入可能年齢引き上げ

60歳以上70歳未満の従業員がいる企業

届出・規約対応は原則不要:対象従業員への情報提供と問い合わせ対応を準備

(参考)2025年の制度改正 - 厚生労働省

ただし、すべての改正に企業の対応が必要なわけではありません。たとえば、自動移換に関する説明時期の見直しは企業が対応すべき義務ですが、拠出限度額が引き上げられたからといって、企業が直ちに事業主掛金を増額する必要はありません。

対応は、義務・努力義務・任意の3つに分けて把握することが重要です。具体的には「法令上必要な義務」「加入者への情報提供など、法令上の努力義務に関わるもの」「制度をより活用するための任意の見直し」になります。

【実務1】4月施行分は対応済み?義務・任意を分けて棚卸し

2026年4月1日には、すでに複数の改正が施行されています。「知らないうちに義務違反になっていないか」「社内制度を変更する必要があるのか」といった点を、項目ごとに切り分けて棚卸しを進めましょう。

(1)【義務】自動移換の説明時期見直し|退職手続きフローに組み込む

従業員が退職・転職すると、企業型DCの加入者資格を失います。資格を喪失した日が属する月の翌月から6か月以内に、転職先の企業型DCやiDeCoなどへ資産を移す手続きをしなければ、資産は国民年金基金連合会へ自動的に移換されます。自動移換中は運用できず、手数料がかかるほか、その期間が通算加入者等期間に算入されないなどの不利益が生じます。

こうした不利益を避けるため、2026年4月1日からは、説明の実施時期が「資格喪失が見込まれるとき」、つまり退職前へ前倒しされました。

なお、企業型DCを終了しようとする場合も、同様に事前の説明が求められます。対応漏れのないよう、次の点を確認しておきましょう。

  • 退職手続きの案内に企業型DCの移換説明が組み込まれているか
  • 説明資料が最新の内容になっているか
  • 誰が、いつ説明するか決まっているか
  • 本人が対応する手続きと期限を具体的に伝えているか

(2)【任意】マッチング拠出の制限撤廃|規約・給与控除を確認

マッチング拠出とは、企業型DCの事業主掛金に従業員自身が上乗せして拠出する仕組みです。

2026年4月1日からは、加入者掛金に設けられていた「事業主掛金を超えてはならない」制限が撤廃され、拠出限度額の範囲内で、従業員が従来より多く拠出できるようになりました。

ただし、制限の撤廃によって、自社の掛金設定が自動的に変わるわけではありません。従業員が新しい上限まで拠出できるようにする場合は、規約や掛金設定の見直しが必要です。制度を見直す場合は、規約や運営管理機関の取り扱いを確認したうえで、次の対応を進めます。

  • 給与控除額と控除開始時期の見直し
  • 給与計算システムへの反映
  • 従業員への周知

なお、マッチング拠出とiDeCoは同時に利用できないため、企業はそれぞれの仕組みや手続きの違いを示し、最終的な選択は従業員本人に委ねるのが基本です。

(3)【対象企業のみ】簡易型DCの統合・iDeCo+の届出簡素化

2つの改正は対象企業が限られるため、まず自社に関係があるかを確認します。

簡易型DCの統合

従業員300人以下の企業向けに手続きを簡素化した簡易型DCは、通常の企業型DCへ統合されました。簡易型DCを導入していた企業は、統合にともなう規約の取り扱いや社内資料の変更要否を運営管理機関に確認してください。

iDeCo+の届出簡素化

iDeCo+(イデコプラス)は、企業年金を実施していない従業員300人以下の企業が、従業員のiDeCo掛金に上乗せして事業主掛金を拠出する制度です。2026年4月1日から届出先が国民年金基金連合会に一本化され、事業主の手続きが簡素化されました。すでに導入している企業は、今後の届出について提出先と手続き方法を確認しておきましょう。

2026年4月施行分の棚卸しポイント

4月施行分の対応チェックリスト

確認項目
区分
対応ポイント

自動移換の説明時期見直し

義務

企業型DC導入企業は対応必須。退職手続きフローへの組み込みを確認

マッチング拠出の制限撤廃

任意

マッチング拠出導入企業のみ。規約を確認のうえ、掛金設定の見直しを判断

簡易型DCの統合

対象企業のみ(制度上の措置)

簡易型DCを導入していた企業。規約の取り扱いを運営管理機関に確認

iDeCo+の届出簡素化

対象企業のみ

iDeCo+の導入・検討企業。新しい提出先と手続き方法を確認

【実務2】12月施行の拠出限度額・加入可能年齢の引き上げに備える

2026年12月1日には、拠出限度額とiDeCoの加入可能年齢が引き上げられます。「上限が増える」という理解だけでは従業員に誤解を与えやすいため、制度ごとに整理します。

なお、施行日と掛金への初回反映のタイミングは一致しません。iDeCoでは、引き上げ後の限度額は2026年12月分の掛金(2027年1月26日引き落とし分)から適用される予定です。

(1)企業型DCの限度額は月額55,000円から62,000円へ

企業型DCの拠出限度額は、2026年12月1日に月額55,000円から62,000円へ引き上げられます。ただし、確定給付企業年金(DB)などを併用している場合は、一律に62,000円となるわけではありません。月額62,000円からDBなどの「他制度掛金相当額」を差し引いた金額が、自社の拠出限度額となります。

なお、2024年12月1日時点で一定の企業型DC規約にもとづき掛金を拠出していた企業には、経過措置が適用されている場合があります。本来の拠出限度額が月額27,500円を下回る場合でも、一定の要件を満たせば従前の拠出が認められる措置です。

適用の有無や終了条件は企業ごとの制度設計によって異なるため、規約を確認するとともに、運営管理機関などにも確認しておきましょう。

※他制度掛金相当額:DBなど企業型DC以外の企業年金について、給付の水準を掛金額に換算した金額のこと

(2)iDeCoは第2号の枠が「企業年金などとの合計62,000円」に統合

iDeCoの拠出限度額も、次のとおり引き上げられます。

  • 第1号加入者(自営業者など):国民年金基金との共通枠で月額75,000円
  • 第2号加入者(会社員・公務員など):企業年金などとの共通枠で月額62,000円
  • 第3号加入者(被扶養配偶者):月額23,000円のまま変更なし

第2号加入者は、勤務先の企業年金の有無などで上限額が分かれていた従来の仕組みが整理され、「企業年金などとiDeCoの合計で月額62,000円」の共通枠になります。

企業型DCに加入している従業員のiDeCo限度額は、62,000円から企業型DCの掛金額と他制度掛金相当額を差し引いて計算します。企業型DC側の限度額(62,000円から他制度掛金相当額のみを差し引く)とは、差し引く対象が異なる点に注意してください。

(3)iDeCoの加入可能年齢は70歳未満へ引き上げ

これまで原則65歳未満だったiDeCoの加入可能年齢は、2026年12月1日から、一定の要件のもとで70歳未満まで引き上げられます。

60歳以上70歳未満で国民年金の被保険者ではない人も、次のいずれかに該当すれば、「第5号加入者」としてiDeCoへの加入・継続拠出が可能になります。

  • iDeCo加入者
  • iDeCo運用指図者
  • 企業年金からiDeCoへ資産を移換する人

このほか、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないこと、本人が企業型DCでマッチング拠出をしていないことなども要件です。また、施行から3年間は経過措置が設けられ、上記3類型に該当しない60歳以上70歳未満の人も加入可能とされています。

詳細な加入要件は、厚生労働省「2025年の制度改正」やiDeCo公式サイト(運営:国民年金基金連合会)で最新情報を確認しましょう。「誰でも70歳まで加入できる」わけではないため、60歳前後の従業員や定年後再雇用者には、通常の要件と経過措置を分けて説明することが重要です。

【2026年12月施行】限度額・iDeCoの加入可能年齢の引き上げ

12月施行分の準備チェックリスト

12月施行に向けて、次の3点を確認しておきましょう。

確認項目
区分
対応ポイント

規約・掛金設定の確認

任意(要判断)

DBなどとの併用や経過措置の適用を確認し、事業主掛金や加入者掛金の設定を変更するか判断

給与控除・事業主払込の確認

掛金変更時

給与計算への反映時期や掛金の払込スケジュールを運営管理機関と確認

説明資料の更新

全企業推奨

全従業員向け、60歳以上・再雇用者向けなど、対象者別に説明資料を用意

【実務3】従業員にどう伝えるか(説明設計)

拠出限度額やiDeCoの加入可能年齢が引き上げられても、従業員がその内容を知らなければ制度は活用されません。ここでは、「誰に・いつ・何を」伝えるかを整理します。

なお、企業型DCを実施する事業主には、加入者が運用を判断するための情報提供を継続的に実施する努力義務があります。今回の改正の周知は、制度活用の観点だけでなく、この努力義務にも関わるものです。

(1)対象者別に「伝えること」を設計する

今回の改正は、従業員によって関係する内容が異なります。全員に同じ資料を配布するだけでは、自分に関係する部分がわからず読み流されやすいため、対象者に応じて次の4つに分けて準備しましょう。

  • 全従業員向け:拠出限度額の引き上げや、自社の企業型DC制度に変更があるかどうか
  • 掛金を見直せる従業員向け:マッチング拠出の変更可能額、申込方法、給与控除の開始時期
  • 60歳以上・再雇用者向け:企業型DCの加入資格、iDeCoの加入可能年齢、老齢給付金との関係
  • 退職予定者向け:退職後6か月以内に資産移換の手続きが必要であることと、具体的な手続き方法

(2)伝えるタイミングと手段

新たな説明の機会を設けるだけでなく、既存の人事イベントに組み込むと、対応漏れや従業員の負担を抑えられます。

  • 規約変更のタイミング:マッチング拠出などを見直す場合は、規約変更の周知とあわせて説明する
  • 年末調整・給与改定の時期:拠出限度額の引き上げは、年末調整や翌年の福利厚生・給与に関する案内とあわせて周知する
  • 退職手続きのタイミング:自動移換の説明は、既存の退職手続きフローに組み込む
  • 再雇用・定年前の面談:60歳前後の従業員には、再雇用時の労働条件説明などとあわせて案内する

なお、SmartHRの「お知らせ」機能のように、パート・アルバイトを含む全従業員のスマートフォンへ直接届けられるツールを活用すると、周知漏れを防ぎやすくなります。

(3)中立的な情報提供の注意点

企業による制度説明と、個別の金融商品の推奨は、明確に区別する必要があります。企業は、制度の仕組みや選択肢を中立的に説明し、従業員自身が判断できるよう情報を提供する立場です。

今回の改正で拠出額や加入期間の選択肢が広がるため、従業員が自ら運用方法を判断するための情報提供も、あわせて見直しておくとよいでしょう。

従業員にどう伝えるか?説明設計のポイント

【スケジュール】12月の施行までに人事がやるべきこと

最後に、2026年12月1日の施行に向けて準備すべきことを、スケジュールに沿っておさらいしましょう。次の順序で進めると、対応漏れを防ぎやすくなります。

時期
やること
詳細

9月まで

自社制度の対象範囲を確認

企業型DC・DB・マッチング拠出・iDeCo+など、自社が採用している制度を整理。DB併用時は経過措置の適用有無もあわせて確認

9〜10月

運営管理機関・受託先への確認

規約変更の要否、変更後の拠出可能額、給与控除への反映時期、従業員からの申込方法を確認

10〜11月

制度を変更するか決定

限度額の引き上げと、事業主掛金の増額・マッチング拠出の設定変更は別の判断。費用や福利厚生施策とのバランスも含めて検討

11月

従業員への周知

全従業員、掛金を見直せる従業員、60歳以上・再雇用者など、対象者別に説明資料を用意して周知。掛金変更時は申込期限・給与への反映時期も案内

12月1日

改正制度の施行

企業型DC・iDeCoなどの拠出限度額の引き上げと、iDeCoの加入可能年齢の引き上げが施行

施行後

給与控除・掛金の反映を確認

給与控除額や事業主掛金が予定どおり反映されているか確認。iDeCoは2026年12月分の掛金(2027年1月26日引き落とし分)から新しい限度額が適用される予定のため、初回の反映時期を運営管理機関・給与計算担当者と共有

対応区分を切り分けて、12月の施行に備えよう

今回のiDeCo・企業型DC改正には、法令上必要な義務、情報提供などの努力義務、制度をより活用するための任意の見直しが混在しています。まずは4月施行分の義務対応を確実に押さえたうえで、12月施行分は自社の制度設計にあわせて対応を判断しましょう。

iDeCo・企業型DC改正に関するQ&A

実務で判断に迷いやすい質問を5つご紹介します。従業員から質問を受けたときの参考にしてください。

  1. Q1. 自動移換の説明は「誰に・いつ・何を」伝えれば義務を果たせる?

    退職などで資格喪失が見込まれる従業員に、退職前の手続き案内のなかで説明します。伝える内容は、以下の3点です。

    (1)資格を喪失した日が属する月の翌月から6か月以内に移換手続きが必要なこと
    (2)放置した場合の不利益(運用停止・手数料の発生・通算加入者等期間への不算入)
    (3)本人が対応する手続きと問い合わせ窓口

  2. Q2. マッチング拠出とiDeCo、従業員にはどちらを案内すべき?

    企業が特定の選択肢を勧める必要はありません。両制度は同時に利用できないため、仕組みや手続きの違いを説明し、従業員自身に選んでもらいましょう。

  3. Q3. DB併用企業の「62,000円枠」はどう計算する?

    月額62,000円から、DBなどの「他制度掛金相当額」を差し引いた金額が拠出限度額です。たとえば、他制度掛金相当額が15,000円なら、企業型DCの事業主掛金と加入者掛金を合計した拠出限度額は47,000円になります。

    また、2024年12月1日時点でDBと企業型DCを併用していた企業の一部には、経過措置が適用されている場合があります。本来の拠出限度額が月額27,500円を下回っても、一定の要件を満たせば従前の拠出が認められる措置です。適用の有無や終了条件は、規約を確認するとともに、運営管理機関にも確認しましょう。

  4. Q4. 従業員への案内では、どこまで説明すればよい?

    制度の仕組みや選択肢、自社での手続き方法を、中立的に説明しましょう。個別の金融商品や特定の運用方法を企業として勧めることは避け、最終的な判断は従業員本人に委ねます。

  5. Q5. 60歳以上・退職予定の従業員にはどう伝える?

    退職予定者には、退職後6か月以内に必要な資産移換の手続きを、退職前に案内します。60歳以上・再雇用者には、企業型DCの加入資格や、iDeCoの加入可能年齢が70歳未満へ引き上げられること、老齢給付金との関係を説明します。

    誰でも70歳まで加入できるわけではない点に注意し、対象者別に案内しましょう。

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