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2026年10月の人事労務タスク|年末調整の準備と10月改正の対応漏れ確認を社労士が解説

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こんにちは。社会保険労務士法人名南経営の大津です。今年は各地で線状降水帯や台風による豪雨災害が続いています。まずは被害を受けられた皆さま、ならびにそのご家族やご関係者の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

こうした災害が頻発するなか、企業には、自社の防災体制や事業継続計画(BCP)が実際に機能するものになっているかを、あらためて点検することが求められます。従業員の安全確保はもちろん、出社・在宅勤務の判断基準や災害発生時の初動ルールが現場まで浸透しているかを再確認することは、企業の信用と事業を守るうえで欠かせません。台風シーズンはまだしばらく続きますので、この機会に確認しておきましょう。

10月のHRチェックリスト

今年10月は、労働関係のさまざまな法令改正が施行されました。すでに対応を進めている企業も多いでしょう。今月は、その対応漏れがないかを確認するとともに、冬季賞与や年末調整の準備を着実に進めることが重要です。以下、それぞれのタスクをチェックリスト形式で確認していきます。

(1)冬季賞与支給の準備を進める

近年、業績好調な大企業を中心に、賞与支給額の上昇が続いています。下のグラフは、厚生労働省「令和8年民間主要企業夏季一時金妥結状況」の調査結果です。賞与支給額は、新型コロナウイルス感染症の拡大で企業業績が落ち込んだ2021年を底に5年連続で増加しており、今年の夏季賞与の平均妥結額は、976,043円(前年比29,574円増)となりました。

この調査は、従業員1,000人以上で労働組合のある企業が対象のため、おおむね大企業の状況を示すものですが、冬季賞与も同様の傾向になると予想されます。賞与支給額を試算する際は、こうした世間の状況を押さえておくことが重要です。

(出典)第2表 夏季一時金妥結状況の推移 - 厚生労働省 をもとに執筆者作成

そのうえで実務としては、まず冬季賞与にかかる人事評価が円滑に進むよう、一次評価者に早めに人事評価表を展開するとともに、支給日から逆算したスケジュールを作成し、着実に支給準備を進めましょう。また、人事評価では、評価結果のフィードバックが納得感を高める大きなポイントです。具体的な評価理由を明確にしたうえで、効果的なフィードバックを実施しましょう。

(参考)令和8年民間主要企業夏季一時金妥結状況を公表します - 厚生労働省

人事評価業務の効率化のヒント

SmartHRの「人事評価」機能を使えば、評価シートの配付から評価者の入力、結果の集計までをシステム上で進められ、評価の進み具合も把握しやすくなります。

(2)年末調整の準備を進める

今年も年末調整の時季が近づいており、国税庁はすでにパンフレット「令和8年分 年末調整のしかた」の提供を開始しています。今年の年末調整に影響する変更点は、次の4つです。まずは、これらの変更点を確認するところから進めましょう。

  • 基礎控除の引き上げ
  • 給与所得控除の最低保障額の引き上げ
  • 扶養親族等の所得要件の改正
  • 年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例の創設

(出典)令和8年分 年末調整のしかた - 国税庁

年末調整の全体スケジュールは下表のとおりです。段取りがその後の作業を大きく左右しますので、従業員からの資料回収を期限までに確実に終えられるよう、早めに手配を進めましょう。従業員と企業の双方の業務負担を軽減するには、クラウドサービスを活用した年末調整の電子化も有効です。

時期

主なタスク

10月ごろ(準備期間)

対象者の確認/最新の税制改正内容や必要書類の確認・準備

10月下旬~11月(配付・回収)

従業員への各種申告書の配付/記入方法の案内と書類の回収、未提出者への督促

12月(計算・精算)

回収した書類の記入漏れ・証明書のチェック/年税額の計算と、給与での過不足額の精算(還付・追加徴収)

翌年1月(行政提出)

源泉徴収税額の納付/法定調書・給与支払報告書の提出/従業員への源泉徴収票の交付

(参考)令和8年分 年末調整のしかた - 国税庁

電子化による業務効率化のヒント

SmartHRの「年末調整」機能では、従業員がスマートフォンからアンケート形式で申告書に回答できます。さらに、「給与明細」機能では、その計算結果をもとに作成した源泉徴収票をそのまま従業員に配付でき、従業員と担当者の双方の業務負担を軽減できます。

全国約150事業所をもつ鴻池運輸株式会社では、SmartHRの年末調整機能を導入し、社用端末をもたない現場の従業員も含めて年末調整を電子化しました。その結果、書類の回収期間を約1か月から約9日に短縮しています。

(3)10月施行の法改正への対応漏れをチェックする

2026年10月は、労働に関するさまざまな制度改正が施行されました。いずれも企業に対応が求められるものです。次の3つの観点で、未対応のものがないか確認しておきましょう。

1. 同一労働同一賃金関係

改正同一労働同一賃金ガイドラインへの対応

最高裁判所の判例を踏まえ、手当や休暇、福利厚生に関する判断基準や具体例が追加・拡充されました。正社員とパート・有期雇用労働者などのあいだに不合理な待遇差がないか、確認と対応が必要です。

労働条件の明示事項の追加

パート・有期雇用労働者を雇い入れる際、労働条件通知書などに「正社員(通常の労働者)との待遇の相違の内容・理由などについて説明を求めることができる旨」を明示することが、新たに義務付けられました。

(参考)同一労働同一賃金特集ページ - 厚生労働省

2. ハラスメント対策の強化

カスタマーハラスメント(カスハラ)防止措置の義務化

顧客や取引先などからの、社会通念上許容される範囲を超えた言動(カスハラ)から従業員を守るため、企業に防止措置を講じることが義務付けられました。

求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)防止措置の義務化

インターンシップ生や就職活動中の学生などに対するセクハラを防ぐための措置も、あわせて義務付けられました。

(参考)職場におけるハラスメントの防止のために - 厚生労働省

3. 最低賃金改定

地域別最低賃金の引き上げ額と効力発生日の確認

10月1日から、地域別最低賃金の引き上げが順次発効しています。効力発生日は都道府県によって異なるため、新しい最低賃金額と効力発生日を確認し、最低賃金割れがないように対応しましょう。

(参考)令和8年度地域別最低賃金の全国一覧

10月の重要トピック

今年は、労働・社会保障関連法令の細かな改正が非常に多い年です。今月の重要トピックでは、12月に施行される2つの法改正のポイントと、ついに再始動した労働基準法改正議論の最新情報を取り上げます。

【トピック1】確定拠出年金の拠出限度額引き上げ(重要度:★★★★☆)

2026年12月1日に確定拠出年金(DC)制度の改正が施行され、拠出限度額が引き上げられます。その概要と実務上のポイントは次のとおりです。

1. 改正の概要(上限額の引き上げ)

確定給付企業年金(DB)などの他制度の有無を問わず、月額62,000円(年額744,000円)を上限とする枠組みに一律で移行します。

  • 他制度なしの場合:現行の月額55,000円から62,000円に引き上げられます。
  • 他制度ありの場合:月額62,000円から「他制度掛金相当額」を差し引いた額が、各社の限度額となります。

2. 実務対応ポイント

規約変更と社内手続きの確認

改正にあわせて自社の掛金の上限を引き上げる場合は、企業型DC規約の変更手続きが必要です。運営管理機関への確認・相談を早めに進めましょう。

従業員への周知と説明

今回の改正により、従業員が拠出する掛金の全額が所得控除となる「拠出時の税制メリット」を受けられる枠が広がります。従業員の資産形成を後押しするため、掛金変更の手続き方法やスケジュールを社内で周知しましょう。

関連する法改正との連動

今年4月には、企業型DCの加入者掛金(マッチング拠出※)の要件緩和が実施されました。また12月には、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入年齢上限の引き上げも実施されます。近年の株式相場の上昇もあり、従業員の資産形成への関心は高まっています。これらを一連の福利厚生・退職金制度の拡充として一体的に周知すると効果的です。

※企業の掛金に従業員が上乗せして拠出する仕組み

(出典)2025年の制度改正 - 厚生労働省

【トピック2】公益通報者保護法改正(重要度:★★★☆☆)

改正公益通報者保護法も、2026年12月1日に施行されます。通報者保護の実効性を高めるため、規制が強化される内容です。今回の改正は、主に次の4つの柱で構成されています。

1. 解雇・懲戒処分に対する罰則の強化と立証負担の軽減

通報を理由とする解雇や懲戒処分に対して、刑事罰が導入されます。また、公益通報をした労働者が通報後1年以内に受けた解雇・懲戒処分は、通報を理由とするものと推定する規定が設けられ、労働者側の立証負担が軽減されます。

2. 通報妨害および通報者探索(犯人捜し)の禁止

正当な理由なく、守秘義務契約などを盾にした通報を妨げる行為や、通報者が誰かを特定しようとする「犯人捜し」行為を明確に禁止する規定が盛り込まれています。

3. 保護対象者の拡大

従来の労働者や役員、退職者に加え、業務委託で働くフリーランスなども広く保護対象として位置付けられます。

4. 内部通報体制の整備と周知の強化

内部通報に対応する体制の整備・運用や、従業員などへの通報窓口の周知についても、実効性を高める見直しが実施されます。ただし、体制整備が義務となるのは従業員300人超の事業者で、300人以下の事業者は努力義務です。

多くの企業でハラスメントの相談窓口の整備は進んでいますが、公益通報者保護法への対応が十分でないケースも少なくありません。消費者庁のサイトには、この法律の研修動画などが用意されていますので、こうしたコンテンツを活用し、自社の仕組みづくりを進めましょう。

(出典)【動画】令和7年改正 公益通報者保護法 研修動画 - 消費者庁
(参考)公益通報者保護制度 - 消費者庁

【トピック3】労働基準法改正が再始動(重要度:★★★★☆)

2019年に施行された働き方改革関連法の「5年後見直し」規定にもとづき、労働基準法改正の議論が進められています。骨太の方針2026で示されたとおり、厚生労働省の労働政策審議会での議論が始まりました。

下の画像は、2026年9月16日に開催された第211回労働政策審議会労働条件分科会の資料です。労働時間法制については、次の論点を中心に議論が進められるとされています。

  1. 勤務間インターバル制度
  2. 連続勤務規制
  3. 「つながらない権利」
  4. 裁量労働制
  5. 変形労働時間制
  6. 副業・兼業
  7. テレワーク・フレックスタイム制
  8. その他、2025年1月から同分科会で議論してきた論点
    1. 過半数代表者等
    2. 法定休日
    3. 年次有給休暇 など

このほか、過半数代表者の選出手続きや便宜供与などを論点とする労使コミュニケーションの議論も進められており、今後の法改正の動向が注目されます。

今後のスケジュールについて筆者は、年内をメドに労働政策審議会の議論が取りまとめられ、2027年3月ごろに改正法案が国会に提出されると見込んでいます。順調にいけば6月ごろに改正法が成立し、2028年4月以降の施行となる見通しです。

昨年の今ごろは、YouTubeやSNSなどで不正確な情報が大量に発信され、企業の人事労務担当者が振り回される状況も少なからず見られました。今回はそのようなことがないよう、正確な情報をつかんで対応していきましょう。

(出典)労働条件分科会における今後の議論の進め方(案)について(第211回労働政策審議会労働条件分科会 資料No.2-1) - 厚生労働省
(参考)第211回労働政策審議会労働条件分科会(資料) - 厚生労働省

冬季賞与・年末調整の準備と12月施行の法改正への対応を着実に進めよう

10月は、冬季賞与の支給に向けた人事評価の準備や年末調整の手配など、実務的なタスクが多い月です。12月施行の法改正への対応も含め、一つひとつ着実に進めていきましょう。

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