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所定労働時間とは?法定労働時間との違いと決め方、計算方法や実務のポイントを解説

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目次

所定労働時間は、雇用契約や就業規則で企業が定める労働時間です。給与計算や残業代の算出など、人事・労務業務のあらゆる場面で登場します。

しかし、法定労働時間との違いや、シフト制や時短勤務の考え方など、実務で迷う場面も少なくありません。本記事では、所定労働時間の基本や決め方、計算方法など実務のポイントを網羅的に解説します。

所定労働時間とは

所定労働時間とは、雇用契約書や就業規則などで企業があらかじめ定めた労働時間です。

業態や働き方にあわせて企業が自由に決められますが、労働基準法で定められた法定労働時間の範囲内におさめる必要があります。

たとえば始業を9時、終業を18時、休憩を1時間と定めた場合、所定労働時間は8時間になります。

休憩時間は所定労働時間に含まれるのか

休憩時間は、所定労働時間に含まれません。始業時刻から終業時刻までの時間から、休憩時間を差し引いた時間が所定労働時間になります。

休憩時間を含めた始業から終業までの全体の時間は、従業員が企業の指揮命令下に置かれている「拘束時間」です。指揮命令下とは、従業員が企業の指示に従って働いている、もしくは業務に備えて待機している状態を指します。

たとえば、「始業が9時、終業が18時、休憩が1時間」と定めた場合、拘束時間は9時から18時までの9時間、所定労働時間は休憩1時間を差し引いた8時間になります。

所定労働時間と法定労働時間・実労働時間の違い

法律上の労働時間には、次の3種類があります。

種類
定義
所定労働時間
就業規則や雇用契約書で定められた労働時間
法定労働時間
労働基準法で定められた上限の時間
実労働時間
従業員が働いた時間

給与、とくに残業代を計算するには、労働時間の違いを正しく理解しなければなりません。それぞれの定義や違いを解説します。

法定労働時間

法定労働時間とは、過重労働防止を目的として、労働基準法第32条で定められた労働時間の上限です。1日8時間・週40時間とされています。

法定労働時間は、企業が守るべき上限の時間です。所定労働時間は企業が自由に決めた従業員の働くべき時間です。

所定労働時間は、必ず法定労働時間の範囲内で設定しなければなりません。法定労働時間を超えて働かせた場合、企業は通常の賃金に25%以上を上乗せした割増賃金を支払う義務があります。

参考:労働基準法 第三十二条 - e-Gov 法令検索

実労働時間

実労働時間とは、従業員が実際に働いた時間です。残業や休日労働も含まれます。

所定労働時間は雇用契約や就業規則で定めた原則の労働時間です。実際に働いた時間とは必ずしも一致しません。

たとえば業務の期限が迫っており、所定労働時間を超えて時間外労働を命じた場合、実労働時間は所定労働時間より長くなります。一方で、1時間遅刻した従業員が、終業時刻どおりに退勤した場合は実労働時間のほうが短くなります。

労働時間に当たるかどうかの判断

労働時間に当たるかは、使用者の指揮命令下にあるかで判断します。所定労働時間外でも、実態として使用者の指揮命令下にあれば労働時間として扱わなければなりません。

たとえば、次のケースは労働時間に該当する可能性が高くなります。

種類
準備・後始末の時間
企業の指示で、着用を義務付けられた服装に着替える、業務終了後の清掃に従事する場合
手待ち時間
基本的には待機状態でも、指示があったらすぐ業務に従事する必要がある場合
研修
受講が企業から義務付けられ、参加しないと何らかのペナルティが発生する場合

労働時間の判断は、賃金の有無に直結する重要なポイントです。所定労働時間だけで判断すると、未払い残業代などの労務トラブルにつながるおそれがあります。判断に迷う場合は労働基準監督署などの行政機関や、社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

所定労働時間の決め方

所定労働時間は企業が独自に定めるため、決め方の判断に迷う場合もあるでしょう。所定労働時間の具体的な決め方を解説します。

所定労働時間の決め方の基本ルール

所定労働時間は、法定労働時間である1日8時間・週40時間の範囲内で企業が設定しますが、必ずしも法定労働時間と一致させる必要はありません。1日の労働時間を5時間にしたり、週の労働日数を4日にしたりもできます。

定め方としては、就業規則で企業一律のルールとする方法と、雇用契約書で従業員ごとに異なる時間を定める方法があります。ただし、就業規則や、契約締結の際に作成する労働条件通知書には労働時間の定めが必須のため注意しましょう。

アルバイト・パートなどシフト制の所定労働時間

アルバイトやパートタイム労働者など、シフト制の労働者の場合も所定労働時間は就業規則や雇用契約で定めなければなりません。しかし、シフト制の場合は直前まで勤務時間が確定しなかったり、週・月ごとに労働時間が変動したりするケースもあるでしょう。

明確に定められていない場合は、所定労働時間が必要なケースごとに算出方法が異なります。

(1)割増賃金を計算する場合

割増賃金を計算する場合は、賃金形態にあわせた平均所定労働時間を算出する必要があります。賃金を所定労働時間で割った1時間あたりの賃金に、時間外労働の時間を掛けて割増賃金を計算するためです。

たとえば月給制の場合、次の流れで1時間あたりの賃金額を計算します。

  1. 年間の所定労働時間を出す
  2. 年間の所定労働時間を12で割り、月の平均所定労働時間を計算する
  3. 月給を2.で計算した月平均所定労働時間で割り、1時間あたりの賃金額を算出する

(2)雇用保険の被保険者資格を判断する場合

週の所定労働時間が20時間以上の従業員は、雇用保険に加入する必要があります。週の所定労働時間が定まっていない場合、勤務サイクルに応じた平均の所定労働時間を用いて該当の有無を判断します。

たとえば1日7時間働く従業員の勤務日が「月・水・金」の週と「火・木」の週を交互に繰り返すケースを考えます。この場合、週の所定労働時間は2週間の平均で算出します。

7時間 × 5日 ÷ 2週 = 17.5時間

週の所定労働時間が17.5時間で20時間に満たないため、従業員が雇用保険に加入する必要はありません。

時短勤務の所定労働時間

時短勤務とは、当初の契約で決めた時間よりも所定労働時間を短くする働き方です。所定労働時間が1日8時間の従業員が、育児を理由に一時的に1日6時間勤務に変更する場合などが該当します。

時短勤務の導入要件や短縮する時間は、企業が自由に定められます。ただし、育児・介護休業法にもとづき、3歳に満たない子を養育する従業員には、所定労働時間を原則6時間とする短時間勤務制度の利用を認めなければなりません。

参考:育児・介護休業法 第二十三条 - e-Gov 法令検索 

時短勤務の賃金

時短勤務の賃金は、所定労働時間との割合で計算するのが一般的です。たとえば月給20万円、本来の所定労働時間が8時間の従業員が、時短勤務で1日6時間に変更した場合は、次のように計算します。

(20万円 ÷ 8時間) × 6時間 = 15万円

変形労働時間制やフレックスタイム制の所定労働時間

変形労働時間制やフレックスタイム制の場合、所定労働時間は日や週によって異なります。

変形労働時間制

変形労働時間制は、1か月や1年以内など、あらかじめ定めた期間を平均して、週の労働時間が40時間におさまるよう調整する働き方です。

平均して週40時間を超えなければ問題なく、特定の日や週に1日8時間・週40時間を超えた所定労働時間を設定できます。定めた期間の合計労働時間が法定労働時間を超えなければ、10時間労働の日や、48時間労働の週が発生しても問題ありません。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、3か月以内の一定期間(清算期間)の「総労働時間」を労使協定で定め、総労働時間の範囲内で、従業員が始業・終業時刻を自由に決められる働き方です。清算期間とは、フレックスタイム制において労働時間を清算する単位となる期間を指します。

フレックスタイム制では、従業員の清算期間全体で所定労働時間を考えます。

所定労働時間の計算方法

1日・週・月単位の所定労働時間の計算方法は、残業代を算出する場合など、実務では欠かせない知識です。具体的な計算方法を解説します。

1日・週の所定労働時間の計算方法

1日の所定労働時間は、雇用契約書や就業規則で定めます。週の所定労働時間の求め方は、労働条件や働き方によって次のように異なります。

労働条件
週の所定労働時間の算出方法
1日の所定労働時間や週の労働日数が原則同一の場合
所定労働時間 × 労働日数
週の所定労働時間が短期的・周期的に変動する場合(4週5休など)
当該期間の平均で算出
所定労働時間を1か月単位で定めている場合
1か月の所定労働時間 × 12 ÷ 52

たとえば1日8時間・毎週5日勤務であれば、週の所定労働時間は「8時間 × 5日 = 40時間」です。

月平均所定労働時間

月平均所定労働時間とは、年間の所定労働時間を12で割って算出した、1か月あたりの平均値です。残業代の計算で1時間あたりの賃金を求める際は、月平均所定労働時間を用います。

月ごとの労働日数は、カレンダーに応じて異なるのが一般的です。月給制の場合、各月の所定労働時間で1時間あたりの賃金を計算すると、額が毎月変動します。月によって計算単価が変わらないよう、1時間あたりの賃金は月平均所定労働時間を用いて算出します。

月平均所定労働時間の算出方法は次のとおりです。

(365日 − 1年間の休日日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月

たとえば年間休日が120日、1日の所定労働時間が8時間の従業員であれば、月平均所定労働時間は「(365 − 120) × 8 ÷ 12 = 約163.3時間」となります。

所定労働時間と残業代の関係

所定労働時間を超えて従業員を働かせた場合、残業代が発生します。ただし、所定労働時間を超えた労働に必ず割増賃金が発生するわけではありません。ここでは、所定労働時間と残業代の関係を解説します。

法定内残業と時間外労働

残業には「法定内残業」と「時間外労働」の2種類があり、それぞれ割増賃金の取り扱いが異なります。違いは次のとおりです。

  • 法定内残業:所定労働時間は超えているものの、1日8時間・週40時間の法定労働時間にはおさまっている残業
  • 時間外労働:法定労働時間を超えた残業

所定労働時間が1日7時間の従業員の場合、7時間を超え、8時間に達するまでの1時間は法定内残業に該当します。割増賃金は時間外労働に対して発生するため、法定内残業の1時間分は割増のない通常の賃金を支払います。

ただし、就業規則などで「所定労働時間を超えた労働に対しては割増賃金を支払う」と定めている場合は、法定内残業にも割増賃金を支払わなければなりません。

残業代の計算方法と割増率

残業代は「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間数」で計算します。割増率は残業の種類によって異なるため、正しく種類を判断しなければなりません。以下に残業の種類と割増率をまとめました。

残業の種類
概要
割増率

法定内残業

所定労働時間は超えるが、法定労働時間は超えない範囲の残業

原則として割増なし

時間外労働

法定労働時間を超えた残業

25%以上を上乗せ

時間外労働(月60時間を超えた場合)

1か月の時間外労働のうち、60時間を超えた部分

50%以上を上乗せ

休日労働

法定休日(※1)の労働

35%以上を上乗せ

深夜労働

午後10時〜翌午前5時の労働(※2)

25%以上を上乗せ


※1 法定休日とは、労働基準法に定められた従業員に最低限与えるべき、週1日または4週4日の休日です。  
※2 深夜労働は「労働する時間帯」に関する規制のため、時間外労働や休日労働と重なる場合は割増率が合算されます。

所定労働時間と36協定

36協定は、法定労働時間を超えて従業員を働かせる場合に必要な労使協定です。法定労働時間を超えて労働させるには、従業員の過半数で組織する労働組合か、過半数を代表する従業員と書面で36協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。

36協定の届出なしに法定労働時間を超えた残業を命じた場合、労働基準法違反で罰則の対象となります。

36協定が必要となる基準は法定労働時間であり、所定労働時間と直接は関係ありません。たとえば所定労働時間が7時間の従業員に1時間残業させた場合、合計8時間で法定労働時間は超えないため、36協定を届け出ていなくても法律違反にはあたりません。

しかし、法定労働時間を超えた残業は突発的に必要になるケースも少なくありません。特別な事情がないかぎり、36協定を締結し、届け出ましょう。

所定労働時間が人事・労務の実務で使われる場面

人事担当者の実務では所定労働時間が関係する場面が多々あります。代表的な場面を改めて整理しました。

(1)残業代を計算するとき

残業代の計算に必要となる「1時間あたりの賃金」は、所定労働時間をもとに算出します。

1時間あたりの賃金は、割増賃金の対象となる賃金の総額を、月平均所定労働時間で割って計算します。たとえば、賃金総額が32万円、月平均所定労働時間が160時間の場合、1時間あたりの賃金は次のとおりです。

32万円 ÷ 160時間 = 2,000円

1時間あたりの賃金は、残業代計算のベースとなる重要な数値です。月平均所定労働時間を誤って算出すると、残業代を正しく計算できません。年間の休日数が確定したあとは必ず所定労働時間を見直しましょう。

(2)年次有給休暇を取得したとき

従業員が年次有給休暇(以下、有給休暇)を取得したときは、賃金の計算に所定労働時間が関係します。

有給休暇を取得すると、働く義務が免除され、所定労働時間働いたとみなされます。したがって、有給休暇の期間にも賃金を支払わなければなりません。

従業員が有給休暇を取得したときの賃金の計算方法は、次の3つのいずれかを就業規則に定める必要があります。

  • 所定労働時間どおりに労働した場合に支払われる通常の賃金
  • 平均賃金
  • 健康保険の標準報酬月額の1/30に相当する金額

多くの企業では、もっとも簡易な「所定労働時間どおりに労働した場合に支払われる通常の賃金」を採用しています。1日の有給休暇を取得した場合は、その日の所定労働時間分の賃金の支払いが必要です。

(3)社会保険の加入条件を判断するとき

パートタイマーやアルバイトなど、短時間労働者が健康保険や厚生年金保険などの社会保険に加入する必要があるかは、週の所定労働時間と月の所定労働日数で判断します。

週の所定労働時間や月の所定労働日数がフルタイム従業員の4分の3以上の場合、原則として社会保険に加入させなければなりません。4分の3未満の場合でも、週の所定労働時間が20時間以上であれば加入が必要になるケースもあります。

所定労働時間と実労働時間の乖離が続くケースに注意しましょう。所定労働時間が週20時間未満でも、実労働時間が週20時間を超える状態が続いている場合は、実労働時間を基準に社会保険の加入を判断するケースもあります。

労働時間は正確に把握し、必要であれば加入の手続きや労働条件の見直しも検討しましょう。

(4)労働条件通知書・就業規則を作成するとき

雇用契約を締結する際に交付する労働条件通知書や、企業のルールである就業規則を作成するときは、所定労働時間の定めが必要です。

労働基準法では、労働時間に関する事項が明示すべき労働条件として定められており、労働条件通知書や就業規則には、始業・終業時刻や休憩時間などを具体的に記載しなければなりません。

新たに募集するポジションの勤務条件を決める場合も、所定労働時間を設定する必要があります。募集要項に記載した労働時間と、採用が決まり契約した所定労働時間が一致していないと、トラブルの原因になるおそれもあります。

人事担当者が押さえておきたい実務ポイント

所定労働時間の知識は、日々の労務管理に欠かせません。人事担当者が日常業務で押さえておきたい実務のポイントを2つ紹介します。

【ポイント1】所定労働時間と実労働時間の乖離を防ぐ

契約上の所定労働時間と実労働時間が大きく乖離するケースは少なくありません。主な原因は次のとおりです。

  • 業務量過多による恒常的な残業
  • 退職者の補充が間に合わないなどの人員不足
  • 始業前や終業後の作業を労働時間に含めない不適切な勤怠管理
  • 雇用契約と実態の不一致

所定労働時間と実労働時間の乖離を放置すると、従業員から未払い残業代を請求される、過重労働で従業員の健康が害される、労働基準監督署による是正勧告を受けるなどのリスクがあります。

乖離に気づいた場合は放置せず、原因を特定して、適切に対処しましょう。早めに対応できれば、労務リスクの防止につながります。

【ポイント2】勤怠管理と労働時間の適正な把握をする

勤怠管理と労働時間の適正な把握は、労務管理の基本です。

労働基準法では、労働時間を適切に管理する義務が企業に課されています。労働時間を適切に把握するには、客観的な記録にもとづく勤怠管理が欠かせません。

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働者の始業・終業時刻の確認や記録は、使用者が自ら確認するか、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間などの客観的な記録を用いることを原則としています。

長時間労働を是正し、労務トラブルを防止するためにも、ガイドラインにのっとり適切に勤怠管理をしましょう。

参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン - 厚生労働省

所定労働時間を正しく設定して適切に管理しよう

所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で企業が自由に設定できる労働時間です。残業代の計算や社会保険の加入判定、有給休暇の賃金計算など、さまざまな人事・労務の実務に関係します。

所定労働時間を適切に管理しないと、未払い残業代の発生や従業員の健康被害など、大きな労務リスクにつながります。所定労働時間の基本ルールや計算方法、実務上のポイントを踏まえ、適切に労働時間を把握し、従業員一人ひとりが力を発揮できる労働環境の整備に活かしましょう。

お役立ち資料

令和の労働時間管理ハンドブック

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