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制服への「着替え時間」は労働時間扱い!注意点を解説

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こんにちは、アクシス社会保険労務士事務所の大山です。

働き方改革など労働の質と量の見直しが進められていますが、大枠でとらえるこれらの議論と同時に考えるべきことがあります。

例えば、長時間労働の是正においても、そもそも労働時間とは何なのかをしっかりと把握する必要があります。超過労働となる始業時刻の前と終業時刻の後の行為を労働時間と見るか見ないかなどの細かい点についても、「何となくこれまでの慣習に従う」のではなく、正しい理解が求められます。

特に、制服が定められていることが多い、飲食・小売店などではより注意が必要です。

そこで今回は、労働時間の線引が曖昧だと思われている行為のうち、制服や作業着への着替え時間は労働時間に含まれるかどうかを考えていきたいと思います。

そもそも労働時間とは?

労働時間は、実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が使用者(会社)の指揮命令下に置かれているものと評価される時間とされています。

このうち、「使用者(会社)の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」が労働時間になるという点が重要です。

つまり、就業規則や労働協約で会社や会社および組合が、労働時間にあたる行為をいくら書き連ねようと、その定義にかかわらず「使用者(会社)の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」は労働時間であるというわけです。

着替え時間は労働時間にあたるのか

労働時間がどういうものかわかったところで、具体的に「着替え時間」は労働時間にあたるのかについて見ていきます。

これは、着替えないと安全上・衛生上等の理由から労働ができないとされているような着替えは、着替えること自体が使用者の命令といえるでしょう。

多くの場合、作業帽をかぶり、上下制服に着替え、靴まで履き替えるというケースですが、なかには上着を作業着や白衣に着替えるだけの場合もあります。

いずれにしても使用者の命令で行われているなら着替える時間も労働時間です。

では、セキュリティ上の理由から胸や首から吊るすことを義務付けられている名札の着用なども着替え時間になるのでしょうか。

これらは確かに身に着けることが避けられない命令であっても、着替え時間としてカウントできないので、これは労働時間にあたらないという解釈もできるでしょう(ただし、時間外労働として給与に反映できないほど短い時間だからという意味であり、名札をつける際に誤って怪我をしてしまった、などの話とは別です)。

「着替え時間」を労働時間として取り扱う運用上の工夫例

作業着への着替え時間は、例えば一律5分と決め、始業時刻が9時だとすると、9時5分までは自由参加のラジオ体操の時間として、9時5分からの朝礼に間に合えばよいとしている会社もあります。これなら時間外の着替えにはならないわけです。

また、終業時間帯は、タイムカードの終業時刻に一律5分加えて給与計算をしています。

1日8時間に満たない場合の注意点

ただし、1日8時間労働をしないアルバイト・パートタイマーについては、所定労働時間と法定労働時間の違いを本人が理解していないと、不要なトラブルを引き起こす可能性があります。

上の会社の例では、必ずしも9時に出社しないパートタイマーは、始業時刻についてもタイムカードの記録より一律5分早い開始時刻にしますが、各自の所定労働時間は、人によっては4時間であったり、5時間であったりします。

この所定労働時間でタイムカードを記録した場合、帰りの分についても着替え時間として一律5分加えての給与計算になるわけですが、この時間を超過残業としてとらえ、時給の1.25倍になっていないとクレームが入るケースがあります。

この場合には、所定労働時間と法定労働時間の違い、並びに超過時間残業代の取り扱いについて丁寧な説明をし、納得していただく必要があります。

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