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人事・労務担当が知っておきたいHRニュース|2024年3月振り返りと4月のポイント

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目次

こんにちは!元SmartHR社員で開業社会保険労務士の岸本です。HRニュースの投稿は2回目となります。今回も自身の強みでもある豊富な企業内での人事・労務経験も活かして、実務目線での解説も盛り込みながら、皆さまにとってお役に立てる情報を、よりわかりやすくお伝えしていきたいと思います。

気づけばあっという間に新年度を迎える季節となり、人事・労務担当者にとっても、これから7月まで忙しい期間かと思います。最新情報をキャッチアップしながら早めに必要な準備をして、効率的に業務を回していけるとよいですね。

それでは、直近で知っておきたい情報をまとめましたので、ぜひご覧ください!

3月のトピックを振り返る

3月は、新年度へ向けた準備や4月施行の法改正対応など、やるべきことも数多くあったのではないかと思います。

これから繁忙期に入っていく時期でもありますが、ぜひリフレッシュの時間も適宜確保しつつ、このタイミングで対応漏れの有無やこれから対応すべき事項についても、あらためて確認しておきましょう。

トピック1:定額減税についての続報

前回も取り上げましたが、人事・労務担当者の実務に大きな影響を与える今年最大のトピックともいえる、6月からの定額減税の続報となります。

定額減税は所得税と住民税の2つが対象となりますが、まず住民税については、令和6年度分の特別徴収において6月分の控除がなく、7月分から翌令和7年5月分までの11か月での控除となる点が例年と異なるポイントです。今後送付される各市区町村からの通知書の内容に沿って対応する形なので、実務面での混乱も少ないのではないかと思われます。

一方で所得税については、実務面において住民税と比べてかなり複雑な部分も多くみられるので、担当者はその内容をしっかりと理解しておきたいところです。

なお、直近では国税庁からわかりやすい解説動画も公開されているので、6月からの実務対応が始まる前にぜひ一度目を通しておくとよろしいかと思います。

出典:国税庁ホームページ「定額減税に係る源泉徴収事務(動画)」

また、詳細は国税庁ホームページ「定額減税 特設サイト」をご参照いただく形となりますが、情報量もかなり多いため、現時点で把握している所得税の定額減税について、実務目線でとくに気をつけたいポイントを抜粋したので、以下参考までにご紹介します。

ポイント(1)月次減税事務と年調減税事務の2つのプロセスに分かれる

月次減税事務は、今年6月以降の給与・賞与の計算時に対応すべき内容のため、早めに詳細を確認しておきたいところです。

なお、年調減税事務についても、その名のとおり年末調整時での対応とはなりますが、海外転勤時のいわゆる出国時年末調整など、年末より前に年調対応が発生するケースもあるので、こちらもあらかじめ概要を確認しておきましょう。

ポイント(2)月次減税の対象者は6月1日を基準に判断

月次減税の対象となるのは、令和6年6月1日時点で在籍する所得税の甲欄が適用される従業員です。したがって、同日時点で乙欄・丙欄の従業員や、その後に雇用された従業員は対象とならず、年調減税や確定申告での処理となります。

ポイント(3)非居住者は対象外

減税対象となる同一生計配偶者や扶養親族は居住者のみであり、非居住者は対象外となるのでとくに注意が必要です。実際に対応する際には、扶養控除申告書等で居住者 or 非居住者を必ず確認してから進めましょう。

ポイント(4)合計所得金額が1,805万円を超える人も月次減税の対象

定額減税の対象者は合計所得金額が1,805万円以下とされているため、6月1日時点でそれを超える見込みの方については、そもそも月次減税の対象外ではないかと思われそうですが、月次減税の適用は受けることとなっているのでこれも注意しましょう。

なお、最終的に合計所得金額が基準を超えて定額減税の対象外となった場合は、年末調整や確定申告にて差額精算されるようです。

ポイント(5)給与明細や源泉徴収票への追記対応

給与計算等のシステムをご利用されている場合、あらためてシステム会社から改修や個別のご案内などがあるかもしれません。6月に入る前までには、それぞれの会社ごとに具体的な対応方法を確認しておきましょう。

以上となりますが、他にも確認すべきポイントが多く複雑な内容でもあり、今後も最新情報が適宜更新されていくものと思われます。こちらの国税庁「令和6年分所得税の定額減税Q&A」も引き続き確認していきましょう。

トピック2:2024春闘の動向

毎年、この時期は春闘(春季生活闘争)のニュースで世間も賑わいますが、今年はとくに高水準の賃上げが目立つので、人事・労務担当者としても注目しておきたいところです。

3月22日付の連合のプレスリリースでは、1,446組合の定昇相当込み賃上げの加重平均は16,379円・5.25%とのことです。タイトルにも「中堅・中小組合含め、高水準の回答続く!」とありますが、記録的な物価上昇も背景とした歴史的な高い賃上げ水準となっています。

2000年以降はデフレ下で賃上げ率も2%前後にとどまっていましたが、昨年から賃上げ率も上昇傾向にあり、これからさらに注目すべきトピックといえます。

また今後においては、人材確保の観点からも、いわゆる大企業だけではなく、中小・零細企業も他社の賃金水準のトレンドをしっかり把握しながら、自社の採用活動や賃金制度の調整などの対応がさらに求められる時代になるでしょう。

4月は年度更新のご準備もお早めに

トピック1:令和6年度の労災保険率と年度更新

令和6年度の労災保険率、特別加入保険料率および労務費率が変更されているので、厚生労働省のホームページをご確認ください。

また、3月分の賃金が確定した後は、労働保険の年度更新へ向けて、算定基礎賃金の集計作業を早めに進めておくとよいでしょう。

今年は冒頭で取り上げた定額減税の対応に追われることも想定されるので、できることはなるべく前倒しで対応しておくことがとくに重要となります。

なお、事務組合に加入されている会社は、労働保険料算定基礎賃金等の報告の提出期限が7月10日ではなく、それぞれの組合ごとに4月などの早めの期日が設定されていると思いますので、遅れないように対応しましょう。

トピック2:障害者の法定雇用率引上げ等

今年4月から障害者の法定雇用率が2.5%(旧2.3%)に引き上げられ、令和8年7月からは2.7%となる予定です。

詳細は厚生労働省リーフレット「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」をご覧ください。当メディアでも関連記事を公開しているので、あわせてご確認ください。

なお、障害者雇用における障害者の算定方法ですが、今年4月以降は週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者および重度知的障害者について、雇用率上0.5カウントとして算定できることになりました。

これは、障害の有無にかかわらず、より多くの人が多様な働き方を可能とする社会の実現について、ますます企業に求められる時代となってきた象徴のひとつともいえるでしょう。そのため、人事・労務担当者としても、重要なトピックとしてしっかりと認識しておく必要があります。

トピック3:育児介護休業法などの改正案

政府は令和7年施行の育児介護休業法等の改正案を国会に提出しています。

概要は、以下のとおりです。

  • 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
  • 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
  • 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化 など

このなかでとくに気になったのは、育児休業の取得状況の公表義務を常時雇用する労働者数300人超(現行1,000人超)の企業まで拡大することと、新たに100人超の企業に目標の設定を義務づける点です。人的資本開示の動きも含めて今後の動向が注目される内容でもあります。

増加が続く「法改正」。人事労務の価値をお届けします

今回ご紹介した内容をみても、昔と比べて間違いなく人事労務に関する法改正などは増えていて、その注目度も年々高まってきていると実感しています。

その理由はさまざまだと思いますが、主に産業構造の変化や日本国内の高齢化および人口減少による影響が大きいと考えられます。結果として人事・労務担当者の業務負荷や、対応の難易度上昇にもつながっているといえるでしょう。

一方で、それらの対応による貢献度や価値は数値化が困難なものも多く、人事・労務担当は周囲から認識されづらい職種の一つでもあります。私自身も同じ立場の人事・労務担当者を労いつつ、少しでも多くの人にその価値が伝わる活動もできればよいなと思っております。

ここまでお読みいただきありがとうございました。それでは、次回もぜひご覧ください!

お役立ち資料

社労士解説つき 2024年版人事・労務向け法改正&実務対応カレンダー

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