人事異動の内示とは?伝えるタイミング・伝え方・注意点を解説
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人事異動の際、従業員本人や関係者にだけ先に異動を通知することを「内示」といいます。辞令の発令前に行われる内示は、伝えるタイミングや伝え方が重要です。
本稿では、従業員にストレスを与えないスムーズな内示のやり方や伝えるタイミング、注意点を解説します。
人事異動の内示とは、関係者にだけ先に知らせること
人事異動における内示とは、人員配置の変更や異動について、全従業員に伝える前に当人や関係者にだけ先に通知することを指します。直属の上司または人事担当者が知らせることが一般的です。
以下のような目的で内示は実施されます。
異動にまつわる当人の意思確認
当人やチームメンバーの業務・体制の移行準備
社内外への情報漏洩の防止
(転勤を伴う場合)物件探しや引っ越しといった転居に関わる準備
内示と辞令・発令の違い
内示は、当人と関係者にのみ非公式に伝えることを意味します。辞令は異動や昇進など、人事の決定事項を全従業員に対して正式に通知するものです。なお発令は、公式に示すことを意味し、「人事異動の発令」「辞令が発令された」などの使い方をします。
内示と辞令・発令を含めた人事異動決定後の流れ
人事異動の内示は、異動対象となる従業員の決定後に実施されます。内示の後に人事異動の辞令が発令され、異動が実施されます。
内示は義務か?
企業に対して内示を義務付ける法律はありません。ですが、人事異動に伴う当人の準備期間や、業務の引き継ぎなどによって起こる社内への影響を考慮して実施する企業が多くあります。
人事異動の内示を伝えるタイミング
内示を伝えるタイミングに正式な決まりはなく、企業によって対応は異なります。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した調査では、転勤前の打診を何日前までに実施するかを調べています。その結果「2週間超~1か月前」が34.9%ともっとも高く、ついで「1か月超~2か月前」と答えた企業が32.5%いました。およそ1か月前に伝える企業が多いことがわかります。
転勤を伴う内示を伝える場合、従業員が独身の場合と家族のいるケースでは準備の大変さも異なります。家族への大きな影響が想定される場合は、少し早めに内示するほうが望ましいでしょう。
(参照)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「企業の転勤の実態に関する調査(2016年8月~9月実施)」
人事異動の内示の伝え方
人事異動に伴う内示の伝え方は、主に口頭で伝えるか、メールや書面で伝えるかのいずれかです。
(1)口頭で伝える
人事異動の内示を口頭で伝える場合、1on1などの個別面談を実施します。口頭のほうが表情や雰囲気から、当人の反応をより細かく把握しやすいでしょう。
一方で直接対峙しているからこそ、従業員側が素直な考えや反応を表に出しづらい可能性もあります。日頃からの信頼関係の構築が鍵です。
(2)メールや書面で伝える
当人と口頭で面談を実施できない場合、メールや書面で伝える方法もあります。メールや書面で伝える際の注意点として、人事異動の結論のみを伝える形だと、当人である従業員が理由に納得できない可能性が高まります。口頭で伝えられない場合は、結論だけではなく経緯や判断理由を適切に付け加えることが大切です。
また直接反応を確認できないからこそ、従業員の意向に大幅に反していないかなどは丁寧に確認するようにしましょう。
内示を伝えるときの注意点
内示の詳細を正確に把握し、当人へ丁寧に説明する
内示を担当する上司や人事担当者は、内示の意図や背景を理解し、当人に対して丁寧に説明することが求められます。
内示に至った背景や人事異動の意図の説明はもちろん、異動先で期待されているミッションや、異動によって開かれる今後のキャリアの可能性なども伝えられるとよいでしょう。
ネガティブな反応があった場合は、早めにフォローする
内示は、必ずしも本人の意向や希望に沿うものではない可能性があります。とくに希望していたわけではない転勤や部署異動などの場合、内示にネガティブな反応があれば早めにフォローしましょう。
フォローを怠ると業務のパフォーマンスの低下が起こり、退職につながる可能性もあります。内示を伝える際には、意図や背景、期待をしっかりと伝え、前向きに捉えられるよう努めましょう。
また、大前提として「従業員が被る不利益が著しく大きい」人事異動は避けましょう。以下の記事ではやってはいけない人事異動についてまとめていますので、ぜひご覧ください。
内示情報を漏洩しないように注意する
内示は、全従業員に伝える前に当人や関係者にのみ事前に通知される情報です。内示情報が関与しない従業員に漏れないよう、管理は慎重に実施しましょう。
また、内示を受けた当人が情報を漏洩しないよう、口頭や書面などで忘れず注意喚起します。
内示の漏洩で生じるリスク
内示情報の漏洩は、当人を含む従業員に不信感を抱かせます。当人が説明を受ける前に内示情報を知ってしまう状況は避けなければいけません。また、情報管理の徹底されていない会社として社会的信用を失う可能性もあります。漏洩が起こらないよう注意が必要です。
内示の情報が漏洩する原因
内示の情報漏洩は、以下のような原因から起きやすいと言えます。
- 口頭で内示を伝える際にほかの人に聞かれてしまった
- 口の硬いことを信用して独自の判断でほかの従業員に話してしまった
- 人事異動に関するデータが誰でもアクセスできる場所に保管されていた
- 内示情報がわかるパソコン画面をほかの従業員に見られた
- 内示情報がわかる書類を置き忘れた
- すでに情報を知っていると勘違いして内示情報の内容を話してしまった
企業も従業員も内示情報の取り扱いには細心の注意を払うことが求められます。
内示の漏洩を防止するためにできること
上記のような内示情報の漏洩を未然に防ぐには、以下のような方法が考えられます。スムーズに内示を行うには、決められた漏洩防止のルールをしっかり守ることが大切です。
- 内示の手順について社内ルールを事前に決めておく
- 内示情報を共有する関係者の範囲をあらかじめ定義しておく
- 口外してはいけない期間を明確にし徹底する
- 口外した場合の懲罰を規定しておく
- 当人や関係者に対し内示情報の管理を徹底させる
内示をミスなく行い、従業員が満足する人事異動を成功させよう
人事異動は従業員にとって大きな変化。理由や背景、期待、今後のキャリアなど丁寧に説明することが大切です。
また、内示後の辞令交付業務も重要です。なかでも「辞令交付前後が慌ただしくなりがち」とお悩みの方に向けて、以下の記事ではSmartHRを活用し、異動検討から辞令交付まで業務効率化する方法をご紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。
Q1. 人事異動の内示とは?
人事異動の内示とは、人員配置の変更や異動について、全従業員に伝える前に、当人のほか関係者にだけ先に通知することを指します。内示は、直属の上司または人事担当者が知らせることが一般的です。
Q2. 人事異動の内示を伝えるタイミングは?
内示を伝えるタイミングには正式な決まりはなく、企業によって対応は異なります。独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した企業の転勤の実態に関する調査によると、およそ1か月前に伝えることが多いとの結果が出ています。
Q3. 人事異動の内示の伝え方は?
人事異動に伴う内示を伝える方法は、主に口頭で伝えるか、メールや書面で伝えるかのいずれかになります。口頭で伝える場合、1on1などの個別面談を用います。書面で伝える場合は、適切な説明を付け加えることが大切です。