2026年11月の人事労務タスク|インフルエンザ対策と年末調整、12月施行の法改正を解説
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こんにちは。社会保険労務士法人名南経営の大津です。街路樹も少しずつ色づきはじめ、秋の深まりを感じる11月を迎えました。
人事・労務担当者の皆さまにとって11月は、内定者のフォローや来期の採用計画、本格化する年末調整の準備など、多忙な日々が続いているのではないかと思います。寒暖差も大きくなる季節ですので、体調管理に注意しながら仕事を進めていきましょう。今月も、これからの時期に押さえておきたい人事実務のポイントや最新のトピックをわかりやすくお届けします。日々の業務や課題解決のヒントとなれば幸いです。
11月のHRチェックリスト
11月に施行される法改正はとくにありませんが、冬季賞与の支給や年末調整を控え、実務面では忙しい時期になるでしょう。以下では、11月にチェックしておきたい重要タスクを確認していきます。

(1)インフルエンザ感染予防の呼びかけ・対策を進める
今年は、例年よりも大幅に早いインフルエンザの流行が続いています。10月5日~10月11日の週には、全国の定点医療機関1か所あたりの平均患者報告数が12.81人となり、早くも注意報レベルの目安とされる10人を超えました。
社内で従業員が相次いでインフルエンザに感染すると、職場での集団感染(クラスター)や、欠勤の増加による業務ラインの停止など、事業継続に直結するおそれがあります。そこで、予防対策と感染者が出た際の対応を早めに整理しておきましょう。
1. 予防接種の動線づくりを急ぐ
流行の前倒しに伴い、ワクチン接種の推奨や費用補助について、いますぐ従業員に案内したいところです。社内での集団接種の機会を設けるなど、従業員が接種を受けやすい環境を整えましょう。
2. 「休ませる基準」の再周知
体調不良時の無理な出社は厳禁です。「発症後5日、かつ解熱後2日を経過するまで」を出社停止の基本的な目安とし、社内のガイドラインとしてあらためて周知しましょう。38度以上の発熱など初期症状が出た段階で、スムーズに受診・自宅待機ができる雰囲気づくりも欠かせません。
3. 職場環境とバックアップ体制の点検
オフィスの換気や加湿、マスク着用基準の設定など、職場環境の整備を進めましょう。あわせて、特定の部署で感染が広がった場合に備え、業務の相互バックアップ手順やテレワークへの切り替えフローを確認しておきましょう。
今年は異例のスピードで感染が広がっています。早期の「予防周知」と「明確な社内ルールの運用」で、インフルエンザの流行に備えましょう。
(参考)インフルエンザに関する報道発表資料 2026/2027シーズン - 厚生労働省
(2)年末調整の準備を進める
いよいよ年末調整の時期が近づいてきました。今年の年末調整では、基礎控除額や給与所得控除の最低保障額が引き上げられるなど、大きな改正が反映されます。そのため、例年以上に慎重かつ確実に対応することが重要です。以下の表では、年末調整の担当者が11月に進めておきたい主な業務をまとめます。
11月に進めておきたい主な業務
1. システムの改正対応確認 | 給与ソフトが令和8年度税制改正に対応しているかを確認し、必要に応じてバージョンアップします。 |
2. 書類の配布と説明 | 基礎控除申告書や保険料控除申告書などの必要書類を従業員へ配布し、書き方や提出期限を周知します。クラウドシステムを活用している場合は、入力方法もあわせて案内します。 |
3. 控除対象の事前案内 | 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の1年目や医療費控除など、年末調整で処理できない控除を従業員に案内し、混乱を防ぎます。 |
4. 回収と進捗管理 | 従業員からの提出書類を回収し、記入漏れや証明書の添付漏れがないかを確認します。 |
年末調整がスムーズに進められるかは、こうした事前の段取りにかかっているといっても過言ではありません。とくに改正された部分については、従業員が混乱しないよう、あらかじめ情報を提供しておきましょう。なお、国税庁は給与所得者(従業員)向けのサイトを用意し、各種申告書の書き方の解説や動画などを提供しています。従業員にこうしたサイトを紹介することも効果的でしょう。
(参考)給与所得者(従業員)の方へ(令和8年分) - 国税庁
(参考)令和8年分 年末調整のしかた - 国税庁
書類の配布から回収・進捗管理までをオンラインで進めるには?
SmartHRの「年末調整」機能では、従業員がスマートフォンからアンケート形式で回答して書類を提出でき、担当者は回答状況をステータスで確認しながら、不備があれば差し戻しを通知できます。
年末調整をきっかけにSmartHRを導入し、年末調整期間中の時間外勤務を大幅に減らした、株式会社マッシュホールディングスの事例もご覧ください。
(3)12月に施行される法改正(確定拠出年金法、公益通報者保護法)の最終準備を進める
最近は4月に限らず、さまざまな月に法改正が施行されます。直近で控えているのが、2026年12月1日に施行予定の確定拠出年金(DC)制度と公益通報者保護法の改正です。いずれも人事・労務の現場運用や就業規則の見直しに直結する重要な改正です。直前で慌てないよう、次のポイントを押さえて対応を進めましょう。
確定拠出年金(DC)制度の改正
今回の改正では、主に拠出限度額と加入可能年齢が引き上げられます。
ポイント | 解説 |
|---|---|
拠出限度額の見直し(月額6.2万円へ枠拡大) | 企業型DCやiDeCoの拠出上限が、月額6.2万円を基準とした枠組みに見直されます(他制度掛金などを控除)。また、従業員が自ら掛金を上乗せする「マッチング拠出」の上限枠も拡大するため、活用を進める企業の増加が予想されます。 |
加入可能年齢の引き上げ(最大70歳未満) | iDeCoの加入可能年齢が70歳未満に引き上げられます(老齢基礎年金等を受給していないなどの要件あり)。高年齢者雇用安定法にもとづく再雇用制度や、シニア層の退職金・年金規程との整合性も確認しておきましょう。 |
実務対応としては、幹事会社と連携しながら、必要に応じた企業型DC規約の変更手続きや給与計算システムの設定見直しを進めましょう。あわせて、従業員向けの手引きを作成し、オンライン手続き(e-iDeCoなど)も周知しましょう。
(参考)企業型DCの拠出限度額が5.5万円から6.2万円に引き上げられます! - 厚生労働省
(参考)iDeCoが大きく変わる! 2026年12月制度改正のポイントを分かりやすく解説 - 政府広報オンライン
(参考)e-iDeCoサービスマニュアル - 国民年金基金連合会
2. 公益通報者保護法の改正
改正公益通報者保護法では、企業の通報対応に関する規制と罰則が強化されます。
ポイント | 解説 |
|---|---|
保護対象の拡大 | 従来の正社員や派遣社員、退職者などに加え、業務委託先のフリーランス(特定受託業務従事者)なども保護対象に含まれます。 |
解雇・懲戒の直罰化と「不利益取扱いの推定」 | 通報を理由とした解雇・懲戒に、刑事罰(直罰)が導入されます。また、通報後1年以内の解雇や懲戒処分は、「通報を理由とした不利益取扱い」と推定されます。 そのため、企業側が「通報とは無関係な妥当な処分である」ことを立証できなければ、その解雇や懲戒は無効と判断される可能性があります。 |
通報妨害・通報者探索の禁止 | 正当な理由なく通報者を特定しようとする探索行為や、通報をしない旨の合意を求めるなどして通報を妨げる行為が、明確に禁止されます。 |
実務対応としては、就業規則の懲戒規定に通報者探索・通報妨害の禁止を明記したり、通報窓口の利用対象をフリーランスなどへ広げたりすることが求められます。なお、体制整備の義務そのものは今回の改正で加わったものではなく、現行法のとおり、常時使用する労働者が300人超の事業者は義務、300人以下は努力義務です。また、人事評価や配置転換の決定経緯を、日付入りの文書で記録・保管するといった運用も望まれます。
2つの制度の改正は、単なる手続きの変更にとどまらず、シニア層のエンゲージメント向上や健全な企業風土づくりの好機でもあります。制度変更への対応に抜け漏れがないかを確認し、従業員が安心して働ける職場環境を整えていきましょう。
(参考)公益通報者保護法が改正。「内部通報制度」で不正をストップ! - 政府広報オンライン
11月の重要トピック
働き方改革関連法は2019年4月から順次施行されましたが、同法の附則に設けられた施行5年後の見直し規定にもとづき、現在、その見直しや法改正の議論が進められています。今月の重要トピックでは、このうち2つの動きを取り上げます。
【トピック1】厚生労働省、同一労働同一賃金対応のチェックツールを更新(重要度:★★★★☆)
同一労働同一賃金のルールは、2020年4月(中小企業は2021年4月)に施行されたパートタイム・有期雇用労働法などにより再整備されました。その施行から5年が経過した昨年、これまでの制度の運用状況を踏まえ、ルールの見直しが議論され、今年4月に次の告示・施行規則が改正されました。改正内容は、10月1日から施行・適用されています。
(1)同一労働同一賃金ガイドラインの改正(告示)
(2)雇用管理の改善等に関する措置内容の改正(告示)
(3)雇入れ時の労働条件明示事項の追加(省令)
このうち、多くの企業が対応に苦慮しているのが、同一労働同一賃金ガイドラインの改正への対応です。とくに賞与や退職手当、家族手当、福利厚生といった待遇の相違をどう解決するか、新ガイドラインの適用が始まった10月1日を過ぎても結論が出ていない企業が多いのが実態です。また最近は、非正規従業員から、正社員との待遇の相違について内容と理由の説明を求められるケースも急増しており、私のもとにも多くの企業から相談が寄せられています。
厚生労働省は、こうした状況を背景に「パートタイム・有期雇用労働法等対応状況チェックツール」を公開しています。このツールでは、パートタイム・有期雇用労働法などの労働関係法令で義務・努力義務とされている事項について、自社の取り組み状況を点検できます。あわせて、パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善に向けて、どのように取り組むべきかも確認できます。
オンラインで質問に答えていくだけで、必要な取り組みが示されます。同一労働同一賃金への対応を進めている企業の皆さまは、本チェックツールを活用し、早期に対応を完了していただければと思います。

(出典)パートタイム・有期雇用労働法等対応状況チェックツール - 厚生労働省
(参考)同一労働同一賃金特集ページ - 厚生労働省
【トピック2】過半数代表者の適正な選出(重要度:★★★★★)
現在、労働政策審議会では、40年ぶりの大改正といわれる労働基準法などの改正に向けた議論が進められています。このうち労働時間法制に関するテーマは先月の本稿でもお伝えしましたが、改正議論で最大のテーマともいえるのが「労使コミュニケーション」です。この背景には、労働市場構造の変化や働き方の多様化、従来の労使関係メカニズムが機能不全に陥っていることなど、さまざまな社会的要因があります。議論の場では、現代の環境にあわせた労使コミュニケーションのあるべき姿が検討されています。
そうしたなか、あらためて重要性が増しているのが過半数代表者です。今回の議論では、過半数代表の任務・権限や、使用者から過半数代表への情報提供・便宜供与、不利益取扱いの禁止などが取り上げられており、なんらかの法改正が予想されます。とはいえ、法改正を待つまでもなく、過半数代表者の適正な選出は現時点でも非常に重要です。
なお、過半数代表者であることなどを理由とする不利益取扱いの禁止や、協定などの事務を円滑に進められるようにするための使用者の配慮は、現在も労働基準法施行規則で定められています(労働基準法施行規則第6条の2第3項・第4項)。
しかし実際には、使用者による指名や民主的な選出手続きの不備など、選出が形骸化している事例が少なくないようで、トラブルも増えています。過半数代表者の選出に瑕疵(不備)があり無効とされた場合、その過半数代表者が締結した労使協定なども無効となります。そのため、変形労働時間制や裁量労働制などを採用している場合は、多額の不払い残業代の支払いを求められるケースもあります。選出手続きが適正かどうか、あらためて確認しておくことが求められます。
【過半数代表者の要件と正しい選出手続き】
労働者の過半数を代表していること | 正社員だけでなく、パート社員やアルバイトなど、事業場で働くすべての労働者の過半数を代表している必要があります。 |
過半数代表者を選出する目的(36協定の締結など)を明らかにしたうえで、投票、挙手などにより選出すること |
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労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと | 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指します。 |
今後、過半数代表者を選出する際は、以上のポイントに注意したうえで、選出の経過を記録として残しておくようにしましょう。

(出典)36協定の締結当事者となる過半数代表者の適正な選出を! - 厚生労働省 茨城労働局
(参考)労働政策審議会(労働条件分科会) - 厚生労働省
インフルエンザ対策や年末調整、法改正の準備を進めて繁忙期を乗り切ろう
11月は急に寒くなり、体調を崩しやすい時季です。インフルエンザにも気をつけながら、年末調整や12月に施行される法改正の準備を進め、年末の繁忙期を乗り切りましょう。













