2026年6月の人事労務タスク|労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届の準備を社労士が解説
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こんにちは。社会保険労務士法人名南経営の大津です。
6月は、人事・労務担当者にとって毎年対応すべき定例業務が集中する月です。高卒新卒採用の求人申し込み、住民税の切り替え、労働保険の年度更新など、期限のある手続きが次々と続きます。漏れなく、計画的に進めていきましょう。
2026年6月に対応すべき定例業務をチェックリスト形式で整理したうえで、押さえておきたい重要トピックを社労士の視点から解説します。
6月のHRチェックリスト
下記のチェックリストには、人事・労務担当者が2026年6月中に押さえておくべき5つの定例業務を、対応目安の時期とあわせてまとめました。上旬・中旬・下旬の3タイミングで対応業務が分かれているため、月初に全体スケジュールを把握しておくと、対応漏れを防ぎやすくなります。

(1)高卒新卒採用にかかる求人申込書の提出
2027年4月入社の高卒新卒採用は、ハローワーク(公共職業安定所)への求人申し込みから始まります。受付開始は2026年6月1日のため、高卒採用を予定する企業は早めに準備を進めましょう。
近年は大卒採用の難化を背景に、高卒採用に力を入れる企業が増えています。高校生を対象とした採用活動は、学業との両立や生徒の保護を目的として、学校とハローワークを経由して進めることが原則とされています。ハローワークは、企業からの求人内容を確認したうえで、各高校に求人票として提示します。
2027年4月入社 高卒採用の主なスケジュール
- 6月1日:ハローワークでの求人申込書の受付開始
- 7月1日:企業による学校への求人申込み・学校訪問の開始
- 9月5日:学校から企業への生徒の応募書類提出の開始(沖縄県は8月30日)
- 9月16日:企業による選考の開始・採用内定の開始
求人票の書き方や応募者対応に不安がある場合は、東京労働局が公開している高卒採用向けの冊子と動画もあわせて活用しましょう。

(参考):令和9年3月新規高等学校等卒業者の就職に係る採用選考期日等を取りまとめました - 厚生労働省
(参考):新規学校卒業者の採用について - 厚生労働省 東京労働局
(2)新年度の住民税特別徴収を開始
会社員などの給与所得者は、毎年6月から新年度の住民税控除が始まります。企業の給与計算担当者は、5月頃に市区町村から届く「特別徴収税額決定通知書」にもとづき、6月の給与計算から新しい税額の控除に切り替える必要があります。
住民税の納付方法には、納税者本人が金融機関などで納める「普通徴収」と、勤務先企業が給与から控除して納める「特別徴収」の2種類があります。会社員などの給与所得者は、原則特別徴収となります。
特別徴収では、企業が毎年6月から翌年5月までの12か月間、従業員の給与から毎月一定額の住民税を控除し、市区町村にまとめて納付します。年度の切り替わりは毎年6月のため、給与計算担当者にとっては、6月の給与計算の前に控除額を更新する作業が毎年発生します。
住民税特別徴収額の具体的な切り替え手順
- 5月頃、従業員の居住する市区町村から「特別徴収税額決定通知書」が企業に届く
- 通知書に記載された住民税額を、給与計算ソフトに入力する
- 6月の給与計算から、新しい税額を控除する
- 従業員には「特別徴収税額通知」を配布し、毎月控除される住民税額を知らせる
なお、近年は特別徴収税額決定通知を電子データで受け取り、給与計算ソフトに自動反映できるシステムも増えています。こうした機能を活用すると、転記ミスを防ぎながら効率的に切り替え作業を進められます。

(3)労働保険の年度更新
労働保険の年度更新は、前年度の確定保険料の精算と、新年度の概算保険料の申告・納付を一括して進める年1回の手続きです。2026年度は、2026年6月1日(月)から7月10日(金)までが申告期間で、6月給与計算までに着手しましょう。
労働保険(労災保険・雇用保険)の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を「保険年度」と呼び、この期間中に支払われた賃金総額に事業ごとの保険料率を掛けて算定されます。
労働保険料は保険年度の開始時に概算で前払いし、年度末に賃金総額が確定したのちに精算する仕組みです。この精算と、新年度分の概算保険料の申告・納付をまとめて進める手続きが「年度更新」です。
2026年度の年度更新の流れは以下のとおりです。
- 2025年4月1日〜2026年3月31日の賃金を集計する(※3月時点で確定済み)
- 5月末頃に労働局・労働基準監督署から申告書が届く
- 集計した賃金額にもとづき、申告書を作成する
- 2026年6月1日(月)〜7月10日(金)の期間内に申告・納付する
3月までの賃金は確定しているため、申告書の到着前から賃金集計を進めておくと、申告期間に余裕をもって対応できます。集計方法や申告書の書き方は、下記の厚生労働省の案内をご確認ください。
なお、労働保険の電子申請が義務化されている事業場(資本金1億円超の法人など)は、2026年度の年度更新から紙の申告書が送付されません。代わりに、電子申請に必要な情報を記載した通知書が届くため、電子申請による手続きが必要となります。

(4)社会保険の算定基礎届の準備
社会保険の算定基礎届は、4月から6月に支払った賃金にもとづいて新しい標準報酬月額を決定する、年1回の手続きです。提出期限は7月10日のため、6月の給与計算が確定したらすぐに準備に取り掛かりましょう。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料は、従業員の賃金から算出される「標準報酬月額」を基準に計算されます。この標準報酬月額を毎年見直す手続きが、「定時決定(算定基礎)」です。
定時決定では、4月・5月・6月の3か月間に支払った賃金の平均額を「報酬月額」として算出し、これにもとづいて新しい標準報酬月額を決定します。決定された標準報酬月額は、原則としてその年の9月から翌年8月までの1年間、健康保険・厚生年金保険の保険料計算に適用されます。実際の賃金水準に見合った保険料が徴収されるとともに、将来の年金額にも反映される重要な手続きです。
提出期限は7月10日で、6月の給与計算が確定してから期限までの時間が限られています。担当者にとっては短期決戦となるため、6月給与の確定後にすぐ着手できるよう、準備を整えておきましょう。
算定基礎届の作成事務については、日本年金機構がYouTubeで解説動画を公開しています。今年初めて担当する方は、下記の動画やガイドブックもあわせてご活用ください。

(参考):【事業主の皆さまへ】令和8年度の算定基礎届のご提出について - 日本年金機構
(参考):算定基礎届の記入・提出ガイドブック 令和8年度 - 日本年金機構
(5)高年齢者・障害者雇用状況等報告の提出準備
従業員20人以上(障害者雇用状況報告は40人以上)の事業所は、毎年6月1日現在の高年齢者・障害者の雇用状況を厚生労働大臣に報告する義務があります。提出期限は7月15日のため、6月下旬から準備に着手しましょう。
高年齢者雇用安定法および障害者雇用促進法にもとづき、対象規模の事業所には毎年「高年齢者雇用状況等報告」と「障害者雇用状況報告」の提出が義務付けられています。両報告書は、毎年6月1日時点の雇用状況を報告することから、通称「ロクイチ報告」とも呼ばれます。
報告対象は次のとおりです。
報告書 | 対象事業所 |
|---|---|
高年齢者雇用状況等報告 | 常時雇用労働者が20人以上の事業所 |
障害者雇用状況報告 | 常時雇用労働者が40人以上の事業所 |
対象事業所には、厚生労働省(ハローワーク)から報告書用紙が郵送されます。6月1日時点の雇用状況を記載し、7月15日までに提出します(電子申請も可能です)。
高年齢者雇用状況等報告の主な記載事項
- 定年制の状況
- 継続雇用制度の状況
- 年代別労働者数
- 高年齢者の雇用人数 など
障害者雇用状況報告の主な記載事項
- 常時雇用労働者数
- 障害種別の障害者雇用人数
- 実雇用率 など
未報告や虚偽報告は、30万円以下の罰金の対象となります。報告漏れを避けるため、6月1日時点の社内データを早めに整理しておきましょう。
記入要領や電子申請の方法は、下記の厚生労働省の案内をご確認ください。

(参考):令和8年高年齢者・障害者雇用状況等報告の提出について - 厚生労働省
6月の重要トピック
2026年10月から、パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者および有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の施行規則および関連告示が改正されます。改正の全体像は、下記の厚生労働省リーフレットで確認できます。
ここでは、改正のなかでも実務への影響が大きい同一労働同一賃金ガイドラインの改定に焦点を当てて解説します。

トピック1 改正同一労働同一賃金ガイドラインへの対応(重要度:★★★★★)
2026年4月28日に公布された改正同一労働同一賃金ガイドラインが、2026年10月1日から適用されます。実務への影響が大きいため、9月までに自社の待遇制度を点検し、必要に応じて見直しを進めましょう。
同一労働同一賃金は、2020年4月のパートタイム・有期雇用労働法改正により、すべての企業に対応が求められるようになりました。施行から約5年が経過したことを受け、厚生労働省は実際の裁判例の蓄積などを踏まえてガイドラインの見直しを進め、今回の改正が公布されました。
改正ガイドラインの主なポイントは、4点です。
【ポイント1】裁判例を踏まえた記載の見直し
待遇に関する事項
各種手当・休暇について、非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用労働者)への支給ルールが具体化されました。主な内容は次のとおりです。
待遇項目 | 改正のポイント |
|---|---|
賞与・退職手当 | 通常の労働者と同様に「労務の対価の後払い」「功労報償」などの性質・目的が当てはまる場合は、職務内容等の違いに応じた均衡のとれた支給が必要。支給がないと不合理と判断される可能性がある |
無事故手当 | 通常の労働者と業務内容が同じ非正規雇用労働者には、同額を支給 |
家族手当 | 労働契約の更新を繰り返すなど、継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者にも、同額を支給 |
住宅手当 | 通常の労働者と同様に転居を伴う配置変更がある非正規雇用労働者には、同額を支給 |
病気休職・休暇 | 継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者にも、通常の労働者と同じ期間の給与を保障 |
夏季冬季休暇 | 非正規雇用労働者にも、通常の労働者と同じ日数を付与 |
褒賞 | 通常の労働者と同じ期間勤続した非正規雇用労働者にも、同じ褒賞を付与 |
いわゆる「正社員人材確保論」の取り扱い
企業が通常の労働者(正社員)と非正規雇用労働者の待遇に差を設けている場合、その理由として「正社員として活躍する人材を確保し、定着させるため」といった目的を挙げることがあります。改正ガイドラインでは、こうした目的の存在だけを根拠に、待遇差が合理的なものと自動的に認められるわけではないことが明記されました。
つまり、企業には人材確保の目的を挙げるだけでなく、待遇差そのものに合理的な理由があることを別途説明する責任が課されたといえます。
【ポイント2】通常の労働者の待遇引き下げによる解消への留意
待遇差を解消する際は、通常の労働者の労働条件を引き下げるのではなく、非正規雇用労働者の労働条件を引き上げることで対応すべきと明確化されました。これはパートタイム・有期雇用労働法の目的に照らした記載趣旨の整理です。
【ポイント3】パートタイム・有期雇用労働法第8条「その他の事情」の明確化
同法第8条の「その他の事情」について、これまで行政通達で示されてきた具体例(職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行など)がガイドラインに明記されました。
あわせて、事業主が非正規雇用労働者の意向を考慮せず一方的に待遇を決定した場合、不合理と判断される要素になりうることも明記されています。
【ポイント4】無期雇用フルタイム労働者等へのガイドラインの趣旨の波及
無期雇用フルタイム労働者は、同法上の「パートタイム・有期雇用労働者」には該当しません。ただし、これらの労働者と労働契約を締結・変更する際の「均衡の考慮」においても、ガイドラインの趣旨を反映すべきであることが追記されました。
6月の定例業務と法改正対応で、働きやすい職場づくりを進めよう
6月は、住民税の切り替えや労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届準備など、定例業務が集中する月です。あわせて、2026年10月適用の改正同一労働同一賃金ガイドラインへの対応も控えていますので、早めに自社の待遇制度を点検し、社内での議論にも着手しておきましょう。

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