【社労士解説つき】2023年 人事・労務向け 法改正&実務対応カレンダー
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こんにちは。社会保険労務士の山口です。
2023年は、数年にわたって取り組んできた「働き方改革」の、いわば「仕上げ」の年になりそうです。4月からは、すべての企業において、60時間超え残業の割増率が25%から50%に引き上げられます。来年4月には、建設業や運送業に対する「時間外労働の上限規制の猶予措置」が終わるため、これらの業種では今年中までに、長時間労働の改善に取り組んでいく必要があります。
そのほか、4月から給与のデジタルマネー払いが解禁されますが、資金移動業者に対する認可がおりるまでは数か月を要すると見込まれるため、実務的な対応は当分先になりそうです。
本稿では、主に人事・労務担当者向けに、各月の対応が必要な実務や法改正情報をまとめました。各月のポイントを解説していますので、1年間のスケジュールとやるべきことを計画する際にお役立てください。
※本稿は2022年12月28日時点での情報をもとに作成しております。
1月のトピック
労務
- 労働保険料(第3期分)の納付(延納申請した場合)(~1/31)
税務
- 納期の特例による源泉徴収税額の納付(~1/20)
- 従業員への源泉徴収票の交付(~1/31)
- 給与支払報告書の提出(~1/31)
- 法定調書の提出(~1/31)
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を従業員から回収(1月給与支払日の前日まで)
ポイント解説
1月は税務に関する届出が多数あります。12月の年末調整の仕上げとして、保険料払込証明書の提出も必要です。
2月のトピック
労務
- じん肺健康管理実施状況報告(~2/28)
税務
- 決算準備(3月決算法人)
ポイント解説
3月決算を滞りなく進められるよう、書類の準備などをしておきましょう。また、4月開始の36協定届は3月中に労基署へ提出する必要があるため、各事業所の従業員人数などを整理しておきましょう。
3月のトピック
労務
- 36協定の更新、届出
- 次年度、介護保険の該当者(非該当者)の確認(40歳/65歳)
- 有害物ばく露作業報告(~3/31)
税務
- 決算準備(3月決算法人)
- 退職金の支払いと各種控除(所得税・住民税)
- 退職所得の源泉徴収票提出(本人退職後1か月以内)
ポイント解説
多くの企業で退職者が集中するのが3月です。雇用保険の離職票や源泉徴収票、退職金の振り込みなど、手続きが遅延しないようしっかり進めましょう。また、4月の残業代割増率引き上げにともない、賃金規程とシステムの改定もしておきたいものです。
4月のトピック
法改正
- 給与のデジタルマネー払い解禁
- 育児休業の取得状況の公表を義務づけ(1,000人超企業)
- 月60時間超の時間外労働の割増率を50%に引き上げ
労務
- 新入社員の受け入れ事務(入社手続きなど)
- 健康保険料率、介護保険料率の変更確認
税務
- 決算業務(3月決算法人)
ポイント解説
大企業・中小企業とも対応が必要な法改正があります。システムの変更やデータの集計など、漏れがないように取り組みましょう。
5月のトピック
労務
- 障害者雇用納付金の申告納付、障害者雇用調整金の申請(~5/15)
ポイント解説
5月は障害者雇用納付金の申告納付があります。計算内容が複雑なため、あらかじめルールを確認し、データを整理しておきましょう。
6月は人事・労務ご担当者にとって、繁忙期になります。繁忙期を順調に乗り切るためにも、この機に業務工数を見直しみてはいかがでしょうか。人事・労務領域の効率化すべき業務を以下の資料にまとめましたので、ぜひご活用ください。
6月のトピック
労務
- 労働保険の年度更新手続き(6/1~7/10)
- 賞与支払届の提出
- 高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書の提出(6/1~7/15)
税務
- 新年度・個人住民税の特別徴収の開始
ポイント解説
労働保険の年度更新手続き、高年齢者、障害者雇用状況報告書は、6月1日から受け付けがはじまります。7月は社会保険料の算定基礎届作成業務に注力できるよう、これらの業務を優先的に進めましょう。また住民税の改定も欠かさず確認が必要です。
7月のトピック
労務
- 健康保険・厚生年金の「算定基礎届」の提出(7/1~7/10まで)
- 労働保険の年度更新手続き(6/1~7/10)
- 高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書の提出(6/1~7/15)
税務
- 納期の特例による源泉徴収税額の納付(~7/10)
ポイント解説
7月15日まで、社会保険・労働保険のイベント業務が集中します。申告期限に遅れないよう、しっかり計画を立てて進めましょう。
8月のトピック
ポイント解説
夏真っ盛りの8月は、従業員にとっては疲労がたまりやすい時期です。熱中症や健康管理をしっかり対策しましょう。また、7月の繁忙期に漏れてしまった手続きなどがないか、今一度確認しておきたいものです。
9月のトピック
労務
- 新標準報酬月額の確認と通知
ポイント解説
年金事務所や健康保険組合から、新しい標準報酬月額が通知されます。給与システムへ間違いなく登録しておきましょう。
10月のトピック
労務
- 地域別最低賃金の改定
- 労働保険料(第2期分)の納付(延納申請をした場合)(~10/31)
ポイント解説
都道府県別の最低賃金は、毎年10月初旬に更新されます。最低賃金を下回ることがないよう、基礎時給を見直しましょう。
11月のトピック
ポイント解説
厚生労働省は毎年11月、「勤労感謝の日」にあわせ、「労働時間適正化キャンペーン」を実施しています。長時間労働による健康障害を防ぐため、自社の勤怠管理体制を整備しましょう。
12月のトピック
労務
- 賞与支払届の提出
税務
- 年末調整
- 退職金の支払いと各種控除(所得税・住民税)
- 退職所得の源泉徴収票提出(本人退職後1か月以内)
ポイント解説
年末調整をスムーズに進めるため、書類の準備や従業員への案内は早めに実施しましょう。
国税庁のホームページなどで、改正内容やフォーマットを確認しておくことも大事です。
労働法に沿った勤怠管理の徹底を
2023年は、「週休3日制」や「兼業・副業」の導入など、働き方がますます多様化する一方、勤怠管理についてはこれまで以上に厳格な運用が求められると予想されます。柔軟な働き方を実現しつつ、労働法に沿った勤怠管理を心がけましょう。