社会保険の加入手続きとは?必要書類・期限・手続きの流れを人事向けに解説
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目次
社会保険の加入手続きは、人事・労務で必ず対応する重要な業務です。所定の様式のほか、添付書類の準備も必要で、全体像を把握していないと手続きに時間がかかるでしょう。
本記事では、社会保険の加入手続きの全体像を整理し、必要書類や提出期限、進め方を紹介します。加入手続きとあわせて必要な業務も解説しており、業務効率化に役立つ情報をまとめています。
複雑な加入手続きをスムーズに、ミスなく進めるためのポイントを押さえましょう。
社会保険の手続きが必要な場面とは?
社会保険の手続きが必要な場面は多岐にわたり、大きく分けると事業所そのものに関する手続きと、従業員に関する手続きがあります。
全体像が把握できるよう、主な手続きを整理しました。

事業所に関する手続き
- 新規適用: 法人を設立したときや、個人事業所が加入要件を満たしたとき
- 廃止: 事業所の廃止や休止により、適用事業所に該当しなくなったとき
従業員に関する手続き
- 資格取得: 新たに従業員を採用したとき
喪失: 退職や解雇などで資格を失うとき - 死亡: 従業員本人が亡くなったとき
- 異動: 住所が変わったときや、支店へ転勤したとき
- 給付申請: 業務外の病気やケガで給与が支払われないとき、出産の費用がかかったときなど
- 定例の手続き: 算定基礎届、随時改定、賞与支払届など
社会保険の加入手続きの流れ
社会保険の加入手続きは、まず事業所が適用事業所に該当するかを確認し、そのうえで従業員ごとに加入条件や扶養家族の有無を確認して手続きを進めます。
ここでは、事業所と従業員にわけて社会保険の加入手続きの内容を解説します。
【事業所】社会保険加入手続き
事業所が条件を満たしたときは、事業所を社会保険に加入させる「新規適用」の手続きが必要です。事業所の手続きの流れを次の4ステップで整理したのち、「事業所の一括適用」の手続きを解説します。

(1)事業所の加入条件を確認する
事業所が次のいずれかに該当する場合、社会保険に加入しなければなりません。
- 法人(業種や従業員数を問わない)
- 従業員5人以上の個人事業所(一部の業種を除く)
ただし、無報酬の役員しかいない場合など、被保険者となる者がいない法人は適用事業所の要件を満たさず、適用を受けられません。一方で、加入条件に当てはまらない事業所でも、従業員の半数以上の同意と認可があれば社会保険に加入できます。
加入条件の詳細は次の記事をご覧ください。
(2)届出方法・届出先と期限を確認する
新規適用届の届出方法や期限、届出先は次のとおりです。
- 届出方法: 電子申請、郵送、窓口持参のいずれか
- 届出期限: 事実発生から5日以内
- 届出先: 管轄の事務センターまたは年金事務所
(3)必要書類・添付書類の準備
新規適用届には、公的な書類の添付が必要です。必要な書類は事業形態によって異なります。登記簿謄本や住民票は、発行から90日以内のものを用意しましょう。ただし、健康保険組合によっては「60日以内」など独自のルールを設けている場合があるため、各組合の規定を確認してください。
事業形態 | 必要な添付書類 |
|---|---|
法人事業所 |
|
個人事業所 |
|
共通 |
|
新規適用届を作成する
新規適用届は日本年金機構のホームページからダウンロードできます。「事業主記入欄」「事業所情報記入欄」に必要事項を記入しましょう。

間違えやすい項目の記載内容をまとめました。
- 事業所所在地名称:登記簿謄本のとおりに記載します。
- 業態区分:「事業所業態分類票」から該当する業種と番号を記入します。
- 昇給・賞与:昇給月や賞与の支払予定月が複数ある場合はすべて記入します。
- 従業員情報:全従業員数と、社会保険に加入する人数を分けて記入します。社会保険に加入しない従業員がいる場合は、人数と勤務形態を記入します。
(4)新規適用届を提出する
必要書類が揃い、新規適用届が作成できたら、管轄の事務センターまたは年金事務所へ提出します。提出期限は事実発生(適用開始日)から5日です。不備があると差し戻しを受ける場合があるため、記載内容のヌケモレや誤り、添付書類の不足など、提出前に必ず再チェックしてください。
のちほど説明する「資格取得届」も同時に提出しましょう。
(5)公文書を保管する
新規適用届の手続きが完了すると「適用通知書」が届きます。適用事業所には、今後の届出で必要になる事業所整理記号や事業所番号などが載っているため、大切に保管しましょう。
スキャンしてデータを保管しておくと番号を確認しやすいため、おすすめです。
一括適用の場合
支店や営業所が複数ある場合は、一括適用の手続きもしましょう。一括適用とは、従業員の人事や労務を本社で集中管理している場合に、支店や営業所なども含めて一つの適用事業所として取り扱う手続きです。
一括適用が承認されると、本社で全事業所分の手続きができる、人事異動のたびに必要な資格喪失・取得の手続きが不要になるなど、管理の負担を大きく減らせます。複数の事業所を有する場合はほぼ必須の手続きといえるでしょう。
【従業員】の社会保険加入手続き
従業員を社会保険に加入させる場合は、まず従業員が社会保険の加入対象かどうかを確認します。対象となる場合は、届出方法や提出期限を確認したうえで必要書類を準備し、被保険者資格取得届を作成して提出します。
ここでは、図解の6ステップに分けて、従業員の社会保険加入手続きの流れを解説します。

(1)入社者が社会保険加入の対象か確認する
最初に、入社者が社会保険の加入対象か確認しましょう。加入条件は次のように雇用形態によって異なります。
雇用形態 | 加入条件 |
|---|---|
正社員・正職員 ※ 同種の業務に従事する無期雇用かつフルタイムの正規労働者のこと | 原則として加入 |
パート・アルバイト | 週の所定労働時間及び月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上 |
パート・アルバイト(特定適用事業所の場合) | 次のいずれか
|
特定適用事業所とは、厚生年金保険の被保険者が51人以上在籍する企業を指します。なお、51人の基準は今後段階的に引き下げられる予定です。
(2)届出方法・届出先と期限を確認する
届出方法や届出先、期限は次のとおりで、事業所の新規適用届と同様です。
- 届出方法: 電子申請、郵送、窓口持参のいずれか
- 届出期限: 事実発生から5日以内
- 届出先: 管轄の事務センターまたは年金事務所(健康保険組合加入の事業所の場合は健康保険組合にも併せて届出)
資格取得手続きが遅れると、健康保険の情報とマイナンバーが紐づけされず、従業員が医療機関で被保険者情報を提示できません。できる限り早めに対応しましょう。
(3)必要書類・添付書類を準備する
被保険者の資格取得に必要な書類は、従業員から提出してもらうものがほとんどです。入社時に、次の書類を回収します。
回収する書類 | 用途 |
|---|---|
マイナンバー確認書類 | 各種社会保険の手続き全般 |
扶養家族の続柄や収入がわかる資料(扶養家族がいる場合) | 健康保険の被扶養者認定 |
マイナンバー確認書類の代わりに基礎年金番号がわかる資料でも手続きはできます。しかしマイナンバーは社会保険の資格取得手続き以外でも必要になるため、マイナンバー確認書類を優先しましょう。
社会保険の加入条件を満たす従業員の多くは、雇用保険の加入条件を満たします。前職の雇用保険被保険者証など、雇用保険被保険者番号がわかる書類もあわせて回収すると効率的です。
雇用保険の詳細は次の記事もご覧ください。
(4)被保険者資格取得届を作成する

必要な情報が揃ったら「被保険者資格取得届」を作成します。書き方のポイントは次のとおりです。
- 事業所整理番号・事業所番号:適用通知書で確認します。
- 取得区分:該当する番号を丸で囲みます。多くの場合「11健保・厚年」を選びます。
- 個人番号[基礎年金番号]:マイナンバーまたは基礎年金番号を記入します。
- 取得年月日:入社日など、社会保険の資格を取得した日を記入します。
- 報酬月額:原則として次の額を記入します。
- 月や週など一定期間で報酬が定められている場合、
資格取得日時点の報酬額 ÷ 期間の総日数 × 30 - 日、時間、出来高または請負によって報酬が定められている場合、
資格取得前1か月間に、同じ事業所内で同様の業務に従事し、同様の報酬を受ける従業員が受け取った額の平均
- 月や週など一定期間で報酬が定められている場合、
- 被扶養者:扶養に入れる家族がいる場合「1.有」を選択します。「1.有」を選んだ場合は、あわせて健康保険被扶養者(異動)届の提出が必要です。
(5)資格取得届を提出する
資格取得届が作成できたら、管轄の事務センターまたは年金事務所に提出します。健康保険組合が保険者の場合は健康保険組合にも提出しましょう。
届出の期限は資格を取得した日から5日以内です。2024年12月に健康保険証の新規発行が終了し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の利用が基本となりました。マイナ保険証への被保険者情報の登録が完了していないと、医療機関の受診時に従業員が一時的に全額を自己負担しなければならない可能性もあるため、資格取得届の期限にかかわらず、資格取得の手続きは早めに行ないましょう。
(6)資格確認書類を交付する
届出に不備がなければ、原則2〜3営業日で審査が完了し「資格取得確認及び標準報酬決定通知書」が発行されます。受け取ったらすみやかに従業員へ交付しましょう。
企業でも通知書のコピーやデータを保管しておくと、手続きの際に整理番号や標準報酬月額を確認できて便利です。
複数の事業所で被保険者に該当する場合

従業員がほかの企業にも勤めており、2か所以上の適用事業所で社会保険の加入要件を満たす場合は、それぞれの事業所で社会保険の資格を取得します。
2以上の適用事業所で社会保険の加入要件を満たした場合、従業員は主たる事業所を1つ選択し、2以上の適用事業所勤務となった日から10日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」を提出します。提出先は資格取得届と同様、事業所を管轄する年金事務所または事務センターです。
手続き完了後、各事業所で受ける報酬の月額を合算して「標準報酬月額」が決まります。決定した標準報酬をもとに社会保険料を算出し、各事業所の報酬割合に応じて按分した額をそれぞれの企業で控除・納付します。
毎月の給与計算では、通常の被保険者とは社会保険料の算出方法が異なるため注意しましょう。

入社時の社会保険手続き
入社時は社会保険への加入だけでなく、扶養手続きや標準報酬月額の算定も必要です。それぞれの手続き方法を解説します。
扶養の手続き
従業員から家族を扶養に入れたいと申し出があった場合は、「被扶養者(異動)届」を年金機構に提出します。健康保険の扶養に入った家族は従業員と同じ健康保険制度を利用でき、自身で健康保険料を納める必要がありません。
扶養家族の条件は次のとおりです
項目 | 条件 |
|---|---|
収入要件 |
|
家族の範囲 |
|
健康保険の被扶養者の範囲や、手続きの詳細は次の記事でも解説しています。
標準報酬の資格取得時決定
従業員が入社したときや、社会保険の加入条件を満たしたときは、資格取得届の提出とあわせて標準報酬月額の資格取得時決定を行ないます。標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金保険料を計算する基礎となる金額です。従業員の報酬月額をあらかじめ定められた等級区分に当てはめて決まります。
資格取得時決定で定めた標準報酬月額は、原則次の時期まで適用されます。
- 1〜5月に資格を取得した場合:その年の8月まで
- 6〜12月に資格を取得した場合:翌年の8月まで
短時間労働者(パート・アルバイト)の加入条件
パートやアルバイトなどの短時間労働者は、正社員・正職員とは異なる基準で社会保険の加入可否を判断します。まずは通常の従業員と同様に「4分の3基準」を満たしているかを確認しましょう。4分の3基準を満たさない場合も、特定適用事業所であれば労働条件によって加入が必要となるケースがあります。
ここでは、短時間労働者の社会保険の加入条件を解説します。
原則
週の所定労働時間及び月の所定労働日数が通常の従業員と比較し4分の3以上であれば加入
特定適用事業所(厚生年金保険の被保険者51人以上)の場合
次のすべてを満たせば加入
- 週20時間以上の労働
- 月額賃金8.8万円以上
- 2か月超の雇用見込み
- 学生ではない
なお、2026年10月には、月額賃金88,000円以上の要件が撤廃される方針です。今後は、月収以外の要件をすべて満たせば、社会保険の加入対象となる見込みです。

「130万円の壁」などの扶養基準に変更はありません。
社会保険の加入手続きのよくある質問
社会保険は加入要件が厳格に決まっており、従業員からも質問を受けやすい分野です。日々の業務で疑問が湧きやすいポイントをまとめました。
社会保険の加入日(資格取得日)・喪失日とは?
社会保険の加入日・喪失日の判定は、実務で重要なポイントです。社会保険加入手続きにおける「資格取得日」と「喪失日」の意味を解説します。
加入日(資格取得日)
加入日は被保険者資格を取得する要件を満たした日です。入社時点で要件を満たしている場合は、原則として入社日(事実上の使用関係が生じた日)が資格取得日になります。
喪失日
喪失日は原則として退職日の「翌日」です。退職日当日は事業所に使用されている状態のため、資格は喪失しません。たとえば11月30日に退職した場合、喪失日は12月1日です。
なお、私傷病休職や育児休業などで一時的に休職している期間中は、社会保険資格を喪失しません。そのため、喪失届の手続きは不要です。
社会保険の手続きはいつからいつまで?
社会保険の手続きの多くは、事実発生から5日以内に提出する必要があります。期限が短く、いずれも事実発生前の届出はできません。入社や退職などの手続きが発生した場合は、速やかに届出ができるよう事前準備をしましょう。
主な手続きと提出期限は、次のとおりです。
手続き | 期限 |
|---|---|
新規適用届 | 事実発生から5日以内 |
資格取得届 | 取得の日から5日以内 |
資格喪失届 | 喪失の日から5日以内 |
被扶養者異動届 | 該当した日から5日以内 |
社会保険はオンライン申請できる?
社会保険の手続きは、e-govからオンラインで申請(電子申請)できます。e-govとは、デジタル庁が運営する行政の総合ポータルサイトです。
電子申請を活用すれば、年金事務所へ来所する手間や郵送コストを削減できます。初期設定などに手間はかかりますが、業務効率化につながるためぜひご活用ください。
社会保険の手続きが間に合わない場合の罰則は?
手続きが遅れても罰則はありませんが、未加入のまま放置した場合は罰則の対象です。従業員が加入要件を満たしたにもかかわらず、資格取得の届出をしなかった場合、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を科される可能性があります。
実務上、罰則が科されるのは、日本年金機構の督促や立入検査を受けても手続きを怠るなど悪質と判断された場合です。手続きが数日遅れただけで罰則を科されるリスクは低いものの、従業員にも影響があるため、期限の正確な把握と迅速な対応が大切です。
法人設立時の社会保険加入手続きは?
法人を設立した場合、事業所の社会保険加入手続きと、従業員の資格取得の手続きが必要です。法人の場合は、代表者も原則として社会保険の加入対象者となります。代表者のみが在籍する「一人法人」の場合も同様です。事業所の新規適用届と、代表者自身の資格取得届を法人設立から5日以内に提出しましょう。
なお、代表者は労働保険には加入できないため、一人法人の場合は雇用保険や労災保険の手続きは不要です。
社会保険の加入手続きをスムーズに進めよう
社会保険の加入手続きは要件が複雑で、慣れていないと処理に時間がかかりがちです。効率よく進めるには、全体像の理解と必要な手続きの整理が欠かせません。
加入手続きを効率的に進められれば、人事担当者の業務に余裕が生まれ、企業全体の満足度向上にも寄与します。入社や退職の手続きがスムーズに進めば、従業員も安心して働けるでしょう。
必要な手続きをスムーズかつ適切に行ない、業務の効率化や職場の法令遵守の徹底につなげましょう。









