2026年5月の人事労務タスク|地方労働行政運営方針、助成金改正を社労士が解説
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こんにちは。社会保険労務士法人名南経営の大津です。4月には新入社員を迎えた会社も多いのではないでしょうか? 希望と不安を抱えた彼らが、よい社会人人生を歩んでいけるようにするためには、いまはとても大切な時期です。社会人の先輩として丁寧にサポートしていきましょう。
5月のHRチェックリスト
4月は女性活躍推進法や労働安全衛生法などの法改正対応が求められましたが、5月に施行される法改正はありません。一方で円滑な職場運営のための対応や毎年定例の実務などがありますので、漏れがないように対応していきましょう。それでは5月のチェックリストを確認していきたいと思います。

以下では各項目のポイントについて解説します。
(1)新入社員を中心に5月病対策のメンタルケアを実施
新入社員は、4月に社会人生活が始まって以降、新しい環境への適応で心身ともに疲労がたまった状態です。ゴールデンウィークは、適度な休息の機会となる一方で、環境変化の大きさから、連休明けに心身のバランスを崩す人も少なくありません。また、これは新年度となり職場環境が変わった既存社員も同様です。調査によれば45%の人が5月病を経験したことがあると回答しています。

疲労感やだるさ、やる気の低下などが代表的な症状ですが、これらはメンタルヘルス不調のきっかけになることもあるため、未然の対策が重要です。具体的には、ゴールデンウィークで乱れがちな生活リズムを取り戻すことが第一歩です。睡眠の質を高めるために、夜のスマートフォン使用は控え、ゆっくり湯船に浸かることを促しましょう。
また、軽い運動と食事の見直しも効果的です。ウォーキングやストレッチで身体を動かし、バランスのよい食事を心がけるようアドバイスしましょう。とくに、トリプトファン(セロトニンやメラトニンの原料となる必須アミノ酸)を含む食品の摂取が望まれます。セロトニンは「幸せホルモン」、メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、心身の安定や良質な睡眠に関わる物質です。
症状が重く仕事を休むような状態であれば、メンタルヘルス疾患の進行を防ぐためにも心療内科などへの受診勧奨も検討しましょう。
(2)試用期間の管理
多くの企業では、正社員の採用時に3か月から6か月間程度の試用期間の設定が一般的です。試用期間は、採用者の能力・適性を見極め、本採用の可否および適正な配置を判断するための期間ですが、管理されておらず、気づいたら試用期間が終了していたケースも少なくありません。
ミスマッチによる早期離職や能力不足を防ぎ、組織の生産性を維持するためには、試用期間の管理が重要です。試用期間中は上司と定期面談を実施し、問題がある場合は人事部門とも連携のうえで、目標設定およびその支援、業務状況を記録しましょう。効果的な試用期間の運用のため、いま一度、試用期間における人事と配属部門の役割分担やタスク、スケジュールについて確認しましょう。
(3)夏季賞与支給の準備
6月から7月の間に夏季賞与を支給する企業が大半で、5月は各部門での人事評価を実施し、支給額を計算する時期です。
今期の各シンクタンクの夏季賞与支給額予測では、昨年比で2.2%~2.5%のプラスの結果が示されています。こうした分析も参考にしながら、夏季賞与の支給準備を進めましょう。
(参考)第一ライフ資産運用経済研究所「2026年・夏のボーナス予測」
(参考)三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2026年夏のボーナス見通し」
(参考)日本総合研究所「2026年夏季賞与の見通し」
(4)障害者雇用納付金の申請・納付
障害者雇用促進法では、障害者の職業の安定のため、法定雇用率を設定しており、現在、民間企業においては2.5%(令和8年7月以降は2.7%に引き上げ)とされています。
障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備、特別な雇用管理などが必要なケースが多く、経済的負担を伴います。そのため、雇用義務を履行している事業主とそうでない事業主とでは、経済的負担に差が生じます。
障害者雇用納付金制度は、この経済的負担の調整を図るとともに、障害者を雇用する事業主に助成・援助し、障害者の雇用促進と職業安定を図るために設けられた制度です。
具体的には、常用労働者の総数が100人を超え、かつ法定雇用率を達成していない事業主から不足人数1人当たり月額50,000円の納付金を徴収します。その納付金を財源として、障害者雇用調整金、報奨金などが支給されています。
そのため、常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主は、令和8年4月1日から5月15日までの間に障害者雇用納付金・調整金の申告・申請を忘れずに済ませましょう。また、今年は7月に法定雇用率の引き上げが予定されています。雇用数の不足が生じている、または生じる見込みの企業は、早めに解消に向けた障害者雇用の採用活動を進めておきましょう。

(出典)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構- 令和8年度版ご案内
(参考)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金」
(5)子ども・子育て支援金の徴収
令和8年4月より、子育て世代を支える新しい分かち合い・連帯の仕組みとして、子ども・子育て支援金制度が始まっています。この4月分の保険料を、5月の給与から徴収・納付します。新たな制度ですので、忘れずに対応しましょう。

2026年4月から新たにスタートする「子ども・子育て支援金」。社会保険労務士の岸本先生をお招きし、制度の正しい仕組みから、「子ども・子育て拠出金」との違い、そして人事労務担当者が準備すべきポイントをわかりやすく解説していただきました。
5月の重要トピック
新年度を迎え、年度単位で見直されるさまざまな情報が出てきています。以下では2つの重要事項を解説します。
トピック1 令和8年度地方労働行政運営方針(重要度:★★★★☆)
厚生労働省は、令和8年4月10日付けで「令和8年度地方労働行政運営方針」を策定しました。
令和8年度の内容を令和7年度と比較すると、前年度の「三位一体の労働市場改革」を継承しつつ、深刻化する労働供給制約(人手不足)への対応をより具体化・加速させる内容です。主なポイントは以下のとおりです。
1. 賃金引上げと「年収の壁」対策の深化
令和7年度から続く賃上げの流れを強化し、最低賃金の全国平均1,500円の高い目標達成に向けた環境整備が強調されています。
- 「年収の壁」への新たな支援
令和7年7月に新設された「短時間労働者労働時間延長支援コース」などの活用勧奨が明記されました。 - 不合理な待遇差の解消
同一労働同一賃金の施行5年後見直しを踏まえた指針改正への対応が求められます。また、正社員との待遇差に関する「理由説明」が不十分な企業への点検要請が強化されます。
2. リ・スキリングと「ジョブ型人事」の本格普及
令和8年度は、個人の学び直しを支援する制度が本格的に動き出します。
- 新たな給付・融資制度の普及
令和7年10月に創設された「教育訓練休暇給付金」や「リ・スキリング等教育訓練支援融資」の周知・活用が重点課題となっています。 - 非正規雇用者向け訓練の本格実施
働きながら学びやすい職業訓練の本格実施が令和8年度の項目として追加されました。 - 全世代型国民運動の展開
全世代のリスキリングを促進する「国民運動」の実施が新たに盛り込まれています。
3. 分野別の人手不足対策(医療・介護・保育など)
人手不足対策において、令和8年度は「医療・福祉ささえる求人充足プロジェクト」など、特定分野へのアウトリーチ支援が強化される点が特徴です。
- スポットワークへの対応
多様な働き方の広がりを受け、いわゆる「スポットワーク」の雇用仲介事業者への対応が明記されました。
4. 職場環境の整備とハラスメント対策
- カスタマーハラスメント対策
前年度に引き続き重視されていますが、令和8年度は「求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策」が項目に加わり、ハラスメント防止の対象が広がっています。 - 熱中症予防の義務化
令和7年6月に施行された改正労働安全衛生規則に基づき、報告体制の整備や実施手順の作成など、事業者の義務履行確保が求められています。
各都道府県労働局においては、この運営方針を踏まえつつ、管内の事情に即した重点課題・対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図ります。
令和8年度は、「賃上げ原資の確保(価格転嫁)」と「リ・スキリングによる生産性向上」がセットで求められます。また、同一労働同一賃金に関する再点検、熱中症対策の規定整備など、法改正にあわせた実務対応を早期に進めることが重要です。
(参考)厚生労働省「『令和8年度地方労働行政運営方針』の策定について」
トピック2 令和8年度雇用関連助成金制度の改正(重要度★★★☆☆)
雇用関連の助成金は年度にあわせて見直されますが、その情報が出揃いました。令和8年度の雇用関連の助成金は、「処遇改善(賃上げ・正社員化)」と「多様な人材の活用・両立支援」に重点が置かれています。以下のポイントから助成金の傾向を把握し、活用できる場合は準備を進めましょう。
- キャリアアップ助成金の拡充(非正規の処遇改善)
- 多様な人材の活用と教育訓練
- 両立支援等助成金の要件緩和と新設
- 生産性向上と賃上げへの連動
各助成金の詳細は、厚生労働省のホームページで確認できますので、チェックしてみてください。

(出典)厚生労働省「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」
(参考)厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」
5月病対策と夏の定例実務を着実に
5月は新入社員の受け入れが終わり、一段落する月ですが、夏季賞与の支給準備を進めるとともに、労働保険年度更新・社会保険算定基礎の段取りにも着手しておきましょう。メンタルヘルス不調を訴える社員も増加する時期でもあるため、現場の状況に目を配りながら、着実に業務を進めていきましょう。











