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五月病経験者の30%以上が休職に!新入社員のメンタルヘルスケアで生産性低下・離休職を防止

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こんにちは。社会保険労務士法人名南経営の大津です。

ゴールデンウィーク以降、職場でしばしば問題になるのが五月病です。誰でも新しい環境や仕事に適応するには、ある程度苦労するものですが、そのストレスで心身の不調をきたし、休職や退職につながってしまう例も少なくありません。

そこで今回は、多くの新入社員に見られる五月病を防ぐポイントとフォロー策について解説します。

五月病とは?

五月病とは、大きな環境変化があった際に、新しい環境にうまく適応できず、体調悪化や、やる気が出ないなどの心身の不調が現れる状態を指します。

4月に入社した新入社員がゴールデンウィーク明けなどにこのような状態になることが多いため、五月病といわれます。しかし、5月病は新入社員に限った話でもなく、配置転換や転勤、転職などの環境変化でも、同様の問題を抱えることがあります。

厚生労働省が運営する「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』」にも記載があるように、医学的には「適応障害」と関係があるとされることも多くあります。この状態が放置されて長引くと、うつ病などに進行する危険性がありますので、しっかりとした対策が求められます。

五月病の症状

典型的な五月病の症状としては以下のとおりです。

  • やる気が起きない・気分が落ち込む
  • 頭痛がする
  • だるく、疲れやすい
  • なにも興味がわかない
  • 強い不安や焦りを感じる

いずれもメンタルヘルスケアにおいて注意しなければ状態となりますが、このような症状によって、仕事においてもさまざまな問題が発生します。株式会社識学が2022年4月に実施した「五月病に関する調査」によれば、五月病になった際、仕事で以下のような影響があったという結果が出ています。

「業務に集中できなくなった」が1位で55.3%、続いて「作業スピードが落ちた」が32.7%、「ミスが増えた」の24.0%と続く。

※調査対象:自らが五月病になった者、同僚・部下が五月病になった者

(出典)五月病に関する調査 - 株式会社識学

なお、この調査では、「五月病をきっかけで『会社を辞めたい』と思ったことがある」という回答が60%にものぼっており、企業としては従業員の生産性の低下や離職リスクの観点から、適切な対応が求められます。

1か月程度で回復する事例が多いものの長引く場合も

実際に五月病になった場合、その回復にどの程度の時間を要するのでしょうか。この点については、ヘルスケアテクノロジーズ株式会社が2023年3月に実施した「五月病に関する意識調査」の結果を引用しましょう。この調査によれば、五月病になったことがあると自覚する人が五月病から回復するまでに要した期間は以下のとおりとなっています。

82.2%が1か月以内に回復している結果は出ているものの、なかには長期化するケースも見られる。

(出典)五月病に関する意識調査 - ヘルスケアテクノロジーズ株式会社

このように8割以上が1か月以内に回復しているという結果になっていますが、場合によっては長期化し、休職するようなケースも見られます。なかでも20代はその傾向が強く、五月病が原因で仕事を休んだ経験がある人は54.3%(全年代では46.8%)、休職した経験がある人は39.5%(全年代では31.4%)となっており、企業としては必要なケアなど、防止策の実施が重要になります。

20代で五月病が原因で仕事を休んだ経験がある人は54.3%、休職した経験がある人は39.5%と、他の年代に比べて多い傾向となっている。

(出典)五月病に関する意識調査 - ヘルスケアテクノロジーズ株式会社

企業に求められる五月病対策

ところが、実際の企業においては積極的に五月病対策が取られていないというのが実態であるようです。先ほどのヘルスケアテクノロジーズ株式会社の調査でも、五月病への会社や組織の実施状況について、実施していると回答した人はわずか22.1%にとどまっており、企業として五月病対策はほとんど実施されていないという結果が出ています。

五月病対策を実施している企業は、約8割にとどまっている。

(出典)五月病に関する意識調査 - ヘルスケアテクノロジーズ株式会社

しかし、五月病の原因の多くが、就職や社内での配置転換・転勤、社内外の人間関係であることを考えれば、企業としても一定の対策を実施する必要があるのは明らかです。その際、効果的なのは「五月病対策を含めたメンタルヘルスケア体制の整備」となります。

メンタルヘルスケアの種類と対策

メンタルヘルスケアには以下の4つの種類(段階)があるとされます。

(1)セルフケア

従業員自らができるケア。従業員が自らのストレスに気づき、予防対処し、また事業者はそれを支援すること。

(2)ラインケア

管理監督者が実施するケア。日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応など。

(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケア

企業の産業医、保健師や人事労務管理スタッフが対処するケア。労働者や管理監督者などの支援や、具体的なメンタルヘルス対策の企画立案など。

(4)事業場外資源によるケア

会社以外の専門的な機関や専門家を活用し、 その支援を受けること。

(出典)こころの耳 - 厚生労働省

このうち、まず重要なのが「(1)セルフケア」と「(2)ラインケア」です。自ら、そして部下の異変に早く気づくことが、もっとも基本的な対策となります。

「セルフケア」の対策

セルフケアとしては、自分自身に以下のような異変がないか注意し、もしそのような状況にあれば、早めに上司や医師などに相談することが重要です。

  • ひどく疲れた
  • へとへとだ
  • だるい
  • 気がはりつめている
  • 不安だ
  • 落ち着かない
  • ゆううつだ
  • 何をするのも面倒だ
  • 気分が晴れない

「ラインケア」の対策

一方、ラインケアは、部下や職場の仲間で以下のような状況が見られる場合に、早めに声を掛け、相談を受けることが必要です。そのうえで、必要に応じて産業医などの医療スタッフの支援を受けられるような手配が求められます。

勤怠に関して

  • 遅刻・早退・欠勤が増える
  • 残業・休日出勤が不釣り合いに増える
  • 休みの連絡がない(無断欠勤がある)

仕事に関して

  • 仕事の効率が悪くなる
  • 業務の結果がなかなか出てこない
  • 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいは多弁になる)

行動に関して

  • 表情に活気がなく、動作にも元気がない
  • 不自然な言動が目立つ
  • ミスや事故が目立つ
  • 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

管理職の方であれば、部下の言動に注意しておきたいところです。この機に、労務知識を身につけてみてはいかがでしょうか。以下の資料に管理職の方が知っておきたい労務知識をまとめましたので、ぜひご活用ください。

社労士監修!中間管理職が知っておきたい労務知識

この春の新入社員には細かな気配りを!

近年の新卒採用は激戦で、インターンシップから内定、そしてそのフォローまでかなりの手間を掛けて、採用活動を展開している企業が大半です。時間をかけて採用した新入社員の離職は避けたいところですが、現実には早期離職も多く発生しており、SNSでは「短期間で多くの新入社員が退職した」という書き込みが注目を集めていました。

それでは、どのようにすれば新入社員の早期離職を防止し、安定的な雇用が実現できるのでしょうか。そのポイントは、入社半年の初期キャリア時点での「仕事内容や自らの仕事に対する考え」「キャリアに対する積極性」にあるという調査結果が出ています。

(出典)2022年卒新卒者の入社後追跡調査 - 公益社団法人全国求人情報協会(p.7)

この調査によれば、

  • 「やりたい仕事がある」
  • 「仕事をするうえで目標となる人がいる」
  • 「自分がどんな仕事に興味や関心があるのかを理解している」
  • 「自分がどんな仕事に適性があるか理解している」
  • 「自分のキャリアの責任は自分にあると思っている」
  • 「自分が希望するキャリアを実現するために自分なりに努力している」

という各設問の回答率が高いほど、「自分はこの会社で仕事をするのに向いていそうだと感じた」という適職意識が高く、さらには今後の勤続志向も高いことがわかります。

この結果からは、新入社員に対するメンタルヘルス面のサポートとともに、仕事やキャリアとの向き合い方へのサポートが、安定した勤務の実現につながるとわかります。

そのためにも、従業員の考えを把握するために、アンケートなどを定期的に実施するのも効果的といえるでしょう。SmartHRの従業員サーベイ機能を使えば、就業意識や仕事に対する考えを調査可能です。

五月病への積極的な対策で安定勤務を実現しよう

新型コロナウイルス感染症の拡大によって社会の閉塞感が高まったこともあり、メンタルヘルス不調の問題がかつてないほど大きなものになっています。

五月病も「しばらくすれば治まる」と考えず、企業として積極的に対策することで、社員の健康を守るとともに、勤務の安定につなげていきましょう。

お役立ち資料

【2023年版】人事・労務向け 法改正&政策&ガイドラインまるごと解説

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