1. 働き方
  2. 環境づくり

連休明けのそのひと言、逆効果かも?五月病のNG言動と組織的な対策法を解説

公開日
目次

精神保健福祉士・特定社会保険労務士の宮原です。

新年度が始まって約1か月が経過しました。慌ただしい毎日のなかで、現場から「部下の元気がなくミスが増えている」「チャットの反応が鈍い」といった声が届いてはいないでしょうか。

こうしたサインは、離職や休職に直結する「五月病」のリスクを孕んでいます。その対策を現場管理職だけに委ねると、管理職自身の疲弊を招き、組織全体の停滞という悪循環を生む恐れがあります。本稿では、人事・労務部門が主導すべき「組織的な五月病対策」を解説します。

人材流出のトリガーとなる五月病

5月の大型連休明けに心身の不調に陥ることを「五月病」と呼ぶようになって久しいですが、この時期の不調は「単なる一過性の状態」では済まない可能性があります。

五月病になったことがある割合の調査グラフ(2026年)。正社員全体の18.5%が経験ありと回答。年代別では20代・30代が20%を超え、若年層ほど高い傾向。

(出典)【正社員2万人に聞いた】ゴールデンウィーク休暇と五月病に関する調査2026年 - マイナビ

株式会社マイナビが実施した「ゴールデンウィーク休暇と五月病に関する調査2026年」によると、約20%の正社員が五月病を自覚し、五月病経験者の約40%が五月病を理由に転職を考えたことがあると回答しています。

五月病と転職意向の相関グラフ。五月病経験者の39.9%が転職を考えたことがあり、20.9%が実際に転職したと回答。離職リスクとの強い関連性を示すデータ。

(出典)【正社員2万人に聞いた】ゴールデンウィーク休暇と五月病に関する調査2026年 - マイナビ

五月病を放置すると、単なるメンタルヘルスの問題に留まらず、「人材流出のトリガー」になりかねません。それを防ぐためには、組織的な五月病対策が重要です。

五月病のケアを現場任せにしてはいけない理由

では、誰が対策を主導すべきでしょうか。「不調者は現場にいるのだから、まずは直属の管理職がケアすべき」と考えるのが一般的かもしれません。ここで見落とされがちなのが、管理職自身の疲弊状態です。

管理職の業務量に関するアンケート結果。56.8%の管理職が現在の業務量を「非常に多い」または「やや多い」と回答している円グラフ。

(出典)管理職のストレスや悩みについての調査 - ティーペック株式会社

ティーペック株式会社が実施した「管理職のストレスや悩みについての調査」では、半数を超える管理職が「業務量が多い」と回答しています。また、もっとも大きなストレス要因は「部下のマネジメント」との結果も出ており、現場管理職の業務余力がすでに限界に近い状態だとわかります。

管理職の業務ボリュームの内訳グラフ。業務量が多いと感じる管理職において「プレイヤーとしての実務(32.0%)」が最も多く、部下育成や成果管理を圧迫。

(出典)管理職のストレスや悩みについての調査 - ティーペック株式会社

この状況で五月病対策をすべて委ねてしまうと、管理職と部下の共倒れという最悪の事態を招きかねません。また、五月病対策を現場の裁量(属人的なスキル)に任せきりにすると、対応の質にばらつきが生じ、結果として離職リスクや組織の生産性低下を招く可能性があります。

組織全体がこうした事態に陥らないよう、五月病対策の仕組み化について考えましょう。まずは、五月病が生じるメカニズムから解説していきます。

そもそも五月病とはなにか?発症のメカニズム

五月病発症のメカニズムの図解。1.連休後のモード切り替え失敗、2.入社・異動後の理想と現実のギャップによるリアリティ・ショックと過剰努力の2つのパターンを解説。

五月病とは、新年度に環境の変化を経験した人などが、5月の大型連休明けに「意欲低下」「身体のだるさ」などを感じる症状を指します。医学的な正式病名ではありませんが、適応障害やうつ病の初期状態とも考えられています。

新年度は誰もが「頑張らなければ」と意気込み、「緊張状態=活動モード」が継続しがちです。その後5月の大型連休で緊張状態から解放され、「リラックス状態=休息モード」に切り替わり、大型連休終了後、モードの再切り替えがうまくできないときに五月病の症状が生じるのです。

もうひとつ五月病の要因となるのが、とくに新入社員に多い「期待と現実のズレ」です。入社前は「この会社で活躍できる」と期待していたのに、入社してみると「思っていた仕事と違う」「仕事の難易度が高い」といった、理想と異なる現実を目の当たりにすることがあります。この「リアリティ・ショック」に適応しようと過剰に努力することで、大型連休に入って緊張の糸が切れてしまうのです。新入社員だけでなく、新任管理職や部署異動者もこの「理想と現実のズレ」に悩まされるケースがあります。

これにより、不眠や無気力状態などといった五月病の症状が現れますが、これは決して「気のせい」「甘え」ではないのです。

五月病を放置で招く悪影響

五月病を「一時的な不調」として放置すると、さまざまな悪影響が生じます。心身の不調を放置した結果、うつ病の罹患、休職や離職、最悪の場合には人命に関わる事態を招きかねません。

また、その影響は個人に留まらず、ドミノ倒しのように組織全体へ波及します。不調によって一人のパフォーマンスが低下、あるいは欠勤が発生すると、周囲のメンバーや管理職は代理で対応することになります。

とくに負荷が集中するのが現場の管理職です。「不調者のケア」と「遅延した業務のフォロー」という二重の重責を背負わされます。前述のとおり、すでに限界に近い状態にある管理職にとっては、こうした負荷から「マネジメントの放棄」や「管理職自身の精神的な不調」につながりかねません。

組織を健全に運営し生産性を高めるためには、五月病のサインを早期にキャッチし、管理職の役割を補完する仕組みを整えることが重要です。次章から具体的な対策を解説します。

【人事・労務担当者向け】五月病を悪化させない仕組み

五月病の影響を最小限にとどめるために、管理職の存在は欠かせません。そして、管理職をフォローアップし、不調の実態をキャッチするのが人事・労務部門の大きな役割です。

人事・労務担当者向けの五月病悪化防止策。人事・現場間のエスカレーション基準の明確化、定期的なセルフチェックの実施促進、勤怠状況のモニタリングの3つの仕組み。

(1)人事・労務と現場間の「エスカレーション基準」の明確化

五月病対策を「現場任せ」にせず、人事・労務部門と現場が二人三脚で動く体制を整えます。まずは役割を明確化し、「現場は異変の発見、人事は専門的判断と解決」などの分担を周知して管理職の心理的負担を軽減しましょう。

そのうえで、人事・労務部門へのエスカレーション基準を具体化します。「3日以上の連続欠勤」や「ケアしても反応が薄い」など、数値と行動の両面で基準を設けることで、管理職の迷いを排除します。

あわせて、管理職自身の不安を人事・労務部門が受け止めるホットラインも不可欠です。管理職が「会社に守られている」と確信できる環境こそが、部下への質の高いケアを生む土壌となります。

(2)定期的なセルフチェック実施促進

ストレスチェックやアラートチェックを配布し、自身のメンタル状態への「気づき」を促す機会を増やしましょう。アラートチェックについては、あとの章でくわしく解説します。

(3)勤怠状況のモニタリング

遅刻、早退、欠勤や長時間労働などの勤怠状況を確認します。管理職が現場で実施する「アラートチェック」の結果とあわせて、客観的指標によるリスクを把握しましょう。

1. 不自然な勤怠パターンをチェック

これまで精勤だった従業員が急に「午前半休」を繰り返すようになるなど、勤怠パターンの変化を確認します。

2. アラートチェックとの照合

アラートチェックの結果(報告・連絡・相談の減少やミス増加など)と突き合わせ、「勤怠」と「実際の行動や心境」の両面から確認することで、「ガス欠」状態を早期に発見します。

3. 管理職の過重労働への配慮

部下のケアや遅延した業務のフォローにより生じる管理職自身の負荷も、あわせてモニタリングします。具体的には、長時間労働や休日出勤が増えるなどの変化をチェックしましょう。

【管理職向け】共倒れを防ぐ五月病対策のポイント

管理職は、同じ悩みを共有できる相談相手が限定されやすく、孤立感が強まりがちです。しかし管理職自身が疲れ果てていては、部下への適切なフォローも難しくなります。五月病対策を個人の資質に頼らず、組織的な仕組みとして構築することが、管理職の自己防衛にもつながります。

管理職向けの五月病悪化を防ぐ運用ポイント。兆候の早期発見、ソフトランディングを前提とした業務調整、人事部門との連携、管理職自身のセルフケアの4項目。

(1)客観的指標による「兆候」の早期発見

アラートチェック(後述)を実施し、部下の変化を確認しましょう。自らの主観や直感ではなく、客観的指標を取り入れることで、管理職自身の判断の負担を軽減します。

(2)連休明けの「ソフトランディング」を前提とした業務調整

大型連休明けの体調変化リスクを認識し、「大型連休明けはソフトランディングで」と割り切るのも重要です。不調を抱える部下だけでなく、チーム全体として業務の優先順位を見直すことで、結果的に持続的成果を生み出す組織運営が可能になります。

(3)人事部門との連携

管理職は部下が抱える不調について「自分だけで対処しなければ」と抱え込む傾向があります。人事・労務部門との連携は決して「大袈裟」ではなく、「自らの負担を軽減する受け皿」と捉えることも大切です。

(4)管理職自身のセルフケア

「自分も人間だから、疲れることもある」「連休明けはエンジンがかかりにくい」と認識し、自分自身のケアを怠らないように心がけます。具体的な自己防衛策については、あとの章「部下も自分も守る、五月病アラートチェックリスト」でくわしく解説します。

【管理職向け】これだけは避けたい、五月病の部下へのNG対応

管理職向けの五月病の部下へのNG対応例。精神論・励まし型、回避・放置型、一方的支援型、素人診断型の4つのカテゴリーと具体的なNG言動リスト。

五月病が疑われる部下への対応は、管理職個人の経験則に委ねると対応の質に差が出やすく、良かれと思った言動が、かえって部下を追い詰め、離職や症状悪化を招くケースがあります。精神論での励ましや、安易な素人診断などの「NG対応」を具体例とともに周知し、不適切な初期対応による五月病の悪化を防ぎましょう。

【NG対応の例】

カテゴリ

管理職の心理状態

NG言動の具体例

望ましい対応

精神論・励まし型

「気の持ちよう」と解釈し、鼓舞しようとする

「気のもちようだよ」

「連休でリフレッシュできたでしょ?」

「期待しているよ」

  • 現在の状態を「心身の不調」として受け入れる
  • 現在の状態にあわせて期待値を調整する

回避・放置型

部下の不調への戸惑いから、距離を置く

「とりあえず様子見で」(先延ばし)

「声をかけにくい」(放置)

  • いつでも相談してほしいというメッセージの継続的発信
  • 変化をキャッチし、具体的に人事部門に相談

一方的支援型

「自分が支えなければ」という視点から、本人の同意なく判断する

「代わりにやっておくから」(意思確認せず業務量を調整)

「心配だから休職して」

  • 本人と共に業務を整理し、優先順位を確認
  • 一緒に考えるというスタンスで接する

素人診断型

原因を深追いし、医学的診断を下そうとする

「それはきっとうつ病だよ」

「なにが原因なの?」(個人的なことまで詮索)

  • 目の前で起きている事実に目を向ける
  • 経験による憶測をまじえない

【全従業員向け】五月病にならないための自己防衛策

五月病は、新しい環境に真摯に向き合い、努力する人ほど陥りやすい傾向があります。五月病を回避するためには、「自分自身の状態に気づき、早期に対処する」マインドセットが重要です。

全従業員向けの五月病自己防衛策。いきなり全力疾走しない、小さな成功体験を意識する、睡眠・食事を整える、セルフチェックをするの4つのポイント。

(1)いきなり全力疾走しない

大型連休明けはモードの切り替えが難しいと自覚し、いきなりギアをトップに切り替えて無謀な業務量設定をしないようにしましょう。自らの体調を見きわめて、周囲に助けを求めることも大切です。

(2)「小さな成功体験」を意識する

大型連休明けは「元気に挨拶できた」「溜まったメールを午前中に処理できた」「期日より早めに資料を完成できた」……など、些細なことで構わないので、できていないことよりも「できた!」という成功体験を脳に意識させましょう。

(3)睡眠、食事を整える

心の健康を維持するためには、生理的な基盤の構築が不可欠です。就寝や起床時間を一定にする、就寝前のルーティーン(深呼吸などのリラックス時間)を決める、そしてバランスのとれた食事を心がけましょう。

運動も心の健康に大きく寄与しますが、「今日も運動できなかった」と自己嫌悪に陥りやすいため、「エレベーターで1つ下の階で降りて階段を昇る」「昼食後に少し散歩する」といった、継続できるスモールステップを意識してみてください。

(4)セルフチェックする

次に紹介するアラートチェックリストを活用し、客観的に自分の状態を把握します。以前と異なる状態が継続するようであれば、迷わず上司や人事部門、産業保健スタッフなどへ相談しましょう。

部下も自分も守る、五月病アラートチェックリスト

チェックリストは、自らの状態を振り返るためのセルフチェックと、部下のリスクをキャッチするためのアラートチェックに分かれています。

共倒れを防ぐ五月病アラートチェックリスト。全従業員向けのセルフチェック項目と、管理職が部下の異変に気づくためのチェック項目を左右に並べて掲載。

(1)セルフアラートチェック:全従業員向け

結果を誰かに開示する必要はありませんので、自分のペースで正直に回答しましょう。たとえ1つの項目でも「該当状態が継続している」あるいは「以前は該当しなかった項目が該当する」ようであれば、五月病のサインかもしれません。「助けを求めること」を検討してみましょう。

対象者

チェック項目

全従業員

睡眠状態が悪い

(寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝起きられないなど)

全従業員

疲れがとれない感覚がある

(しっかり寝ても身体がだるいなど)

全従業員

頭痛、肩こり、胃痛など身体に不調を感じる

全従業員

仕事に行くのが嫌だと思う

全従業員

やる気がでない、気分が重い

全従業員

イライラしたり、怒りっぽくなる

全従業員

楽しいことを考えても気持ちが盛り上がらない

全従業員

職場で、周囲の人との会話が減った

管理職

部下の些細なミスにイライラする

管理職

部下に任せるより自分がやった方が早いと考える

管理職

休日も仕事のメールなどが気になり、休んだ気がしない

管理職

仕事の辛さを誰にも共有できず、孤独を感じる

(2)部下の五月病アラートチェック:管理職向け

部下の様子を振り返り、変化があれば記録します。「監視」ではなく「見守り」のために利用しましょう。「過去」と「現在」を比較して変化をキャッチすることが重要です。該当項目が1つでもあれば、まずは声かけ、必要に応じて人事・労務担当者に相談しましょう。

チェック項目(すべて管理職向け)

遅刻・早退・欠勤が増えている

報告・連絡・相談が減った、または遅くなった、あるいは増えすぎている

ケアレスミス(誤字脱字・計算ミスなど)が増えている

業務遂行のスピードが目に見えて落ちている

(今日はなにをしていたのか、と感じるほどの状態)

チャットなどの返信が「承知いたしました」といった定型文になりがち

リモート会議の際にカメラをオフにすることが増えた、あるいは表情が硬い

会議や朝礼などでの発言が極端に減った

小さなミスや指摘で、過度に落ち込んだ様子をみせる

新しい業務の指示を受けると不安そうな様子をみせる

挨拶の返事がない、目を合わせない

組織的な五月病対策で、従業員と組織の双方を守る第一歩を

五月病対策は、まずは管理職自身が「自分の限界」に気づくことから始まります。部下を支える管理職が疲れ果てていては、いかなる対策も機能しません。人事・労務部門は「組織全体の仕組みづくり」、管理職は「現場の対応」に集中し、互いに補完し合いながら五月病に悩む人のサポートを進めましょう。

また、個々の管理職の主観や判断力に頼る「対応の属人化」を避け、仕組みとして対応する工夫が欠かせません。管理職の負担を軽減しつつ、同時にサポートの質を高めるという難しい課題への対処は、「人事部門と現場の連携」「今できることに集中する」というマインドセットから始まります。

五月病への対策は、従業員と組織の両方を守る第一歩です。本稿を参考に、まずは「人事と現場の役割分担」から着手してみてください。

お役立ち資料

リベンジ退職が増加中 防ぐ方法と、これからの人財定着戦略

人気の記事