「やりたいこと」より「できること」。“得意”を軸にキャリアの可能性を拓く
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「PARKの人びと」は、SmartHRが運営するユーザーコミュニティ「PARK」に参加する人事・労務領域で活躍する方々のキャリアに焦点を当て、お話を伺うインタビュー企画です。
記念すべき第1回目の今回は、イベント登壇やPARK内での活動にも意欲的に取り組まれている、医療法人社団 東山会 調布東山病院の信夫 秋さんです。
現在は人事総務課に所属し、給与計算業務を中心に担当。人事部内での業務効率化にも取り組まれています。現職に至るまでの経歴と今後の展望、また、自身がオーナーとして活動しているPARK内の「病院コミュニティ」に込められた想いについて伺いました。
自分に向いていると感じられた、給与計算との出会い
これまでのキャリアの変遷を教えてください。
信夫さん
私は大学在学時に会計学を専攻していました。幼いころからそろばんを習っていたこともあり、卒業後は数字を扱う仕事に就きたいと考えていたんです。
大学3年生になるころには就職を見据えて、当時20店舗ほどあった飲食チェーン店の本社で経理のアルバイトをはじめました。そこで、今の仕事に通じる給与計算を経験しました。
飲食店なので店舗ごとに従業員に紐づく時給があります。私が業務として給与計算をしていると、約400名いた従業員のフルネームと時給の組み合わせをすべて覚えてしまったことに気づいたんです。そこで「あれ、この仕事向いているかも?」と思いました。
それはすごい特技ですね!
信夫さん
ただ、当時は大学で学んでいた簿記や法律の基礎知識こそありましたが、給与計算では社会保険の加入手続きなど知らないことばかりでした。未知の世界をもっと知りたいという好奇心もあり、大学卒業後は給与計算のアウトソーシングを請け負う会社に就職しました。
インハウスとアウトソーシングの違いに悩む日々
信夫さん
入社した会社では、給与計算ロジックの構築や要件定義、仕様変更などを担当しました。年末調整シーズンには、年末調整だけをアウトソーシングする顧客の窓口なども担当しましたね。
アウトソーシング部門では顧客企業を複数担当することもあり、1秒でも締切を過ぎたら対象外として扱わざるを得ないなどシビアな世界でした。「社内だったら1日くらい待つのに……」と思うこともあり、アウトソーシングならではの難しさを感じましたね。
同時に業務の性質上、担当顧客の根幹にある課題解決まで深く介入できないことをもどかしく感じることもありました。
業務の性質の違いに悩まれたのですね。
信夫さん
日常的に忙しい会社でしたので、もう少しプライベートも充実させたいという思いも募っていました。社内で従業員に近い立場で、それこそ“お互いに顔がわかる距離感”で給与計算や業務改善をしたいという思いが強くなった結果、インハウスの人事として仕事ができる職場への転職を決意しました。いま振り返ると、ここが私のキャリアの1つの転機でしたね。
たどり着くべくして、たどり着いた調布東山病院
そこで、現職の医療法人社団 東山会 調布東山病院と出会うわけですね。
信夫さん
はい。私自身が調布生まれ調布育ちで、以前から「あの病院の先生よかったよ」といった評判も耳にしていたので、もともと好印象だったんです。加えて、病院は給与計算をアウトソーシングしにくい業界と言われています。
背景にはドクターの給与計算が難しいことや、アナログ対応が多く根付いていること、給与計算のすべてをアウトソーシングするのは病院の限られた予算上ハードルが高いといった理由があります。一方、インハウスで給与計算の業務に携わりたい私としては好都合で、アウトソーシングしにくい業界のほうがむしろ自分の希望に合っていると感じていました。
現職ではどのような業務に携わっているのですか?
信夫さん
担当業務は給与計算を中心に、年末調整や年次業務、勤怠管理と人事内の業務効率化を担当しています。現在は、看護部の勤怠システムの導入にも携わっています。
SmartHRを起点に生まれた2つの嬉しいできごと
これまでのキャリアで、とくに嬉しかったできごとを教えてください。
信夫さん
まず頭に浮かぶのは、忖度抜きで現職でSmartHRに出会って以降の2つのできごとですね。1つ目は、2020年にSmartHRを導入して以来、職員の皆さんに感謝される機会が増えたことです。
人事・労務は、褒められる機会が少ない職種だと思うんです。それがSmartHRの導入により私たち担当者の負担が少なくなったうえに、職員や所属長からも「SmartHRは便利」「SmartHRってこんなこともできるんだ」といったように、導入して丸4年が経過した今でも感謝の言葉が届きます。
私がSmartHRを開発したわけではないですが、導入に携わった立場として、その度に誇らしい気持ちになりますね。
それは担当者冥利に尽きるお話ですね。
信夫さん
2つ目に嬉しかったことは、SmartHRユーザーのコミュニティ「PARK」でのできごとです。
「PARK mini」というイベントにお声がけいただいて、オンライン登壇した際のことです。私がSmartHRの年末調整機能の活用事例を紹介したところ、嬉しいことに他社の人事労務担当者さんから「わかりやすい」「真似させてください」という感想をいただいたんです。
普段はなかなか他社・他病院の担当者さんとやりとりをする機会がなく、しかも担当者目線で評価いただくのがはじめての経験だったので、とても嬉しかったですね。
それは素敵な経験になりましたね。
信夫さん
しかも、そこで私が紹介した年末調整のヒントメッセージ(※)を見ていた方が、内容を自社用にアレンジしたうえで、顧問社労士さんにチェックいただいたそうなんです。
すると「これは、きちんと年末調整をわかっている人が書いた内容ですね」といった回答をもらったそうで、その経緯をあとで教えていただいたんです。
社労士さんから間接的にお墨付きをいただいた形になりましたね!
信夫さん
そのやりとりが嬉しかったですし、同時に、社外に発信することの大切さも学んだできごとでした。
※ヒントメッセージ:年末調整のアンケート画面に、従業員が設問に答えやすいようにヒントのメッセージを追加できる機能。
2022年9月27日「PARK mini〜先人に学ぶ!年末調整のKUFUと心構え〜」の様子
交流が少ない病院人事同士でフランクに交流ができる場を求めていた
SmartHRユーザーのコミュニティ「PARK」のお話が出ましたが、信夫さんはこのPARK内で病院のSmartHRユーザーさんのみが集まる「病院コミュニティ」を運営されています。活動内容を教えてください。
信夫さん
病院コミュニティには、北は青森、南は長崎まで全国各地、計13の病院人事のSmartHRユーザーさんが参加しています。(2023年末時点)
2023年3月に活動がはじまり、月に1度オンラインで座談会を開催。SmartHRの活用事例や回ごとに決められたトークテーマに沿って参加者同士でお話をしています。
毎回病院ならではの内容で、「医師の働き方改革」や「非常勤ドクターの対応」「コロナ対応や各種手当て」などのテーマを取り上げてきました。
私からは調布東山病院での事例として、SmartHRの具体的な使い方をお話ししたり、参加者の皆さんからも各々の病院のことを教えていただいたりしています。
病院同士、普段からこういった交流はあるものなのですか?
信夫さん
なかには普段から交流があるという病院さんもいらっしゃいますが、一般的にはあまり多くはない印象です。
もともと理事長同士でつながりがあり、結果として病院同士の交流が生まれるケースはありますね。「病院見学」と呼ばれていますが、たとえば独自の取り組みをしている病院があれば、その設備や仕組みを見せていただくために見学に行くような機会はあります。ただ割と大掛かりで、出張で行くようなレベルになることも多いです。
印象として、たとえば「給与システムのここはどうしてますか?」などフランクに質問ができる場ではないので、もう少し担当者同士でお互いに聞きたいことを気軽に聞ける場が必要だと思っていたんです。
そういった課題意識が、病院コミュニティの立ち上げにつながったのですね。
信夫さん
そうなんです。理事長など役員の方々だけでなく、担当者同士が病院の枠を超えて直接つながり、お互いに支え合えるような関係を目指して、病院コミュニティを立ち上げました。
PARK内で共有された「病院コミュニティ」案内資料抜粋
病院コミュニティ運営の根底にあるのは危機感
病院コミュニティ立ち上げ以降も、率先した情報共有やイベント登壇などのご活躍が印象的です。そのモチベーションの源泉はどこからくるのでしょうか?
信夫さん
私たちの病院は「遅れているかもしれない」という危機感が根底にあり、そのためほかの病院のことをもっと知りたいと思っています。
SmartHRの導入でいえば、病院のなかでは早い段階で導入している方だと思うので、病院コミュニティ内でも提供できる話は多々あると思っています。一方で、それ以外のテーマでは知識や経験が少ないこともあるので、自ら率先して情報を共有しながら、ほかの方々と交流できたら嬉しいなと思っています。
参加者のなかには、社労士の資格をもっている方や役職に就いている方もいます。一般企業に勤務している方のなかでも、私たちの病院に関係のある話が出てくることもよくあります。最近では「多店舗ユーザーコミュニティ」のイベントをのぞいたりするんですが、病院でも同じだなと学ぶことも多いですね。
PARKの場をうまく活用して、ご自身の業務に役立てられているのですね。
信夫さん
情報交換が活発にされている場はとても貴重だと感じています。PARKのユーザー全員で一緒に成長していきたいなと勝手ながら思っています。
できることを軸にキャリアの可能性を広げていく
信夫さんの今後のキャリア展望を教えてください。
信夫さん
私自身、横に広げるよりも1つの分野を突き詰めていくタイプと自覚していることもあり、給与計算を中心とした現在の業務が自分に向いているなと感じています。学生時代のアルバイトのころから経験を重ねていますが、飽きるどころかまだまだ足りないくらいの気持ちなので、できることは数多くあるなと思っています。
自分に向いていると思えることを見つけられたことも、大きいですよね。
信夫さん
私にとっては、「やりたいこと」よりも「できること」を基準に仕事を選んだのが合っていたのかなと思います。
学生時代に、当時の年齢で50〜60代くらいの経営者の方とお話をする機会があったのですが、「何をするかよりも、誰と仕事をするかが大事」とおっしゃっていたんです。新卒のころの私にはあまり響かなかった言葉ですが、最近では納得する機会も増え、共感できたんですね。
職場として調布東山病院を選んだのも、最終的には「一緒に働く人」が決め手になっていると思っているので、そこも間違っていなかったなと思っています。新卒当時と比べても、違う視野がもてたという意味では、自分自身少しは成長したのかなとも感じましたね。
今後も引き続き、給与計算を中心に専門性を高めていくのと同時に、並行して自らのミッションと位置づけているPARKの病院コミュニティを盛り上げていけたらと思っています。
ご自身の“得意”を深めていくこと、病院コミュニティの運営を通じて交流の輪を広げていくこと、ともに今後のキャリアにとって重要な軸になりそうですね。素敵なお話をありがとうございました!
働く& 〜両立を考える〜