雇用保険料とは?令和8年度の料率・計算方法、申告・納付の仕組みを解説
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目次
毎月の給与計算で必ず発生する雇用保険料の計算では、「どの賃金が対象になるのか」「料率はいくらか」など、ミスの起きやすいポイントが潜んでいます。
本記事では、雇用保険料の基本的な仕組みから、賃金に含めるもの・含めないもの、令和8年度の雇用保険料率、計算方法、申告・納付の流れまでを解説します。
雇用保険料とは
雇用保険料とは、雇用保険制度の財源となる保険料です。
事業主と労働者が負担し、失業時や育児・介護などで雇用の継続が困難になった際の給付、および雇用の安定・能力開発を目的とした事業の財源となります。

雇用保険制度は広義の社会保険のひとつであり、給与計算や社会保険手続きなど実務に欠かせない制度です。
実務上は、毎月の賃金から被保険者負担分を控除するとともに、毎年6月から7月の「年度更新」で1年分をまとめて申告・納付するという、二段構えの仕組みです。
雇用保険とは
雇用保険は、労働者の生活の安定と雇用促進を目的とした国の保険制度です。政府が管掌し、実際の手続き窓口はハローワーク(公共職業安定所)です。
雇用保険は原則、週の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みがある労働者が対象です。正社員だけでなく、要件を満たすパートタイム労働者も被保険者です。
代表的な給付として、離職後に支給される基本手当(いわゆる失業給付)のほか、育児・介護に関する各種給付があります。
制度全体、加入条件の詳細は、次の記事をご確認ください。
雇用保険料の賃金控除
事業主は、被保険者に賃金を支払う都度、その賃金に対応する被保険者負担分の雇用保険料を賃金から控除できます
月給制であっても、1年分の被保険者負担分をまとめての控除は認められていません。賃金を支払うごとに控除するのが原則です。控除した雇用保険料の額は、被保険者に通知しなければならず、給与明細への記載がその役割を果たします。
また、控除額は賃金台帳に記載し、原則5年間(当分の間は経過措置として3年間)保存する必要があります。
雇用保険料の対象となる賃金|含まれるもの・含まれないもの
雇用保険料の計算に使う「賃金総額」には、含めるべきものと含めないものがあります。範囲を誤ると年度更新での申告額に影響するため、正確に把握しましょう。
雇用保険料の対象となる賃金
雇用保険料の対象となる賃金は、「名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのもの」です
毎月の給与だけでなく、賞与も雇用保険料の計算対象に含まれます。主な対象賃金は次のとおりです。
雇用保険料の計算|賃金総額に含まれるもの一覧 |
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上記のなかでも、とくに間違いやすいものは次の賃金です。
- 通勤手当
- 所得税では一定額が非課税ですが、雇用保険料の計算では全額を賃金に含めます。社会保険料(健康保険・厚生年金)の取り扱いと同様です。
- 休業手当
- 使用者の都合で休業させた際に支払うものです。労働の対償として支払われるため雇用保険料の対象となります。「傷病手当金」「育児休業給付金」などの保険給付とは異なります。
- 前払い退職金
- 退職金は原則として対象外です。ですが、在職中の給与や賞与に上乗せして支払われる形式のものは、労働の対償とみなされ雇用保険料の算定対象です。
(参考)労働保険の保険料の徴収等に関する法律 - e-Gov法令検索
雇用保険料の対象にならない賃金
雇用保険料の対象にならない賃金は次のとおりです。
雇用保険料の計算|賃金総額に含まれないもの一覧 |
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賃金総額に含まれないもので、とくに注意したいのは次の項目です。
- 休業補償:業務上の傷病により休業した際に労働基準法第76条にもとづき支払われます。使用者の都合による休業で支払われる「休業手当」とは異なります。
- 恩恵的・任意的な金銭:慶弔見舞金など、労働の対価ではなく贈与的性格をもつ金銭は、就業規則などによる支払い義務がなければ賃金に該当せず、雇用保険料の対象外です。
雇用保険料率とは

雇用保険料率は、賃金総額に乗じて雇用保険料を算出するための料率です。
雇用保険料率は、以下の3つの区分で構成されます。
1.失業等給付費等充当
2.育児休業給付費充当
3.二事業費充当(雇用安定事業・能力開発事業)
「1.」「2.」は労使折半、「3.」は事業主のみが負担します。給与から控除するのは「1.」「2.」 の労働者負担分のみです。
なお、令和8年度の雇用保険料率は前年度から全体で0.1%引き下げられます。
令和8年度の雇用保険料率(一般の事業)
区分 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
失業等給付費等充当 | 0.3% | 0.3% | 0.6% |
育児休業給付費充当 | 0.2% | 0.2% | 0.4% |
二事業費充当 | ― | 0.35% | 0.35% |
合計 | 0.5% | 0.85% | 1.35% |
農林水産業(一部を除く)・清酒製造業、建設業は失業等給付費等充当分が高く設定されており、建設業は二事業費充当分も異なります。
(参考)令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内 - 厚生労働省
詳しくは次の記事をご参照ください。
雇用保険料率の変更と適用タイミング
雇用保険料率の変更は通常、前年度末(2〜3月ごろ)に告示され、4月1日から適用されます。
給与計算上の新料率の適用は、4月1日以降に到来する締め日に対応する賃金からが基本です。
支払日ではなく締め日で判断するため、締め日・支払日のパターンによって切り替えのタイミングが異なります。
締め日・支払日 | 具体例 | 適用料率 |
|---|---|---|
締め日が3月・支払日が4月 | 3月31日締め・4月25日払い | 旧料率(締め日が3月のため) |
締め日が4月・支払日が5月 | 4月30日締め・5月25日払い | 新料率(締め日が4月のため) |
なお、賞与は支払い月で判断します。たとえば、3月中に支払った賞与は旧料率、4月以降に支払った賞与は新料率で計算します。
雇用保険料の計算方法
被保険者負担分の雇用保険料は、次の計算式で求めます。
被保険者負担分の雇用保険料=賃金総額×被保険者負担の料率 |
毎月の給与から控除する雇用保険料の計算例
毎月の給与計算では、一人ひとりの賃金に料率を乗じて被保険者負担分を算出し、給与から控除します。
【計算例(令和8年度・一般の事業の場合)】 |
通勤手当も対象賃金に含まれるため、15,000円を含む320,000円全額が計算の基礎となります。
年度更新で申告する雇用保険料の計算例
年度更新では、1年間に全被保険者へ支払う賃金の合計(賃金総額)をもとに、会社全体の保険料を計算します。事業主負担・労働者負担それぞれの料率を乗じて計算します。
年度更新の計算例(令和9年申告の令和8年度分・一般の事業・賃金総額5,000万円の場合)
区分 | 計算式 | 保険料 |
|---|---|---|
雇用保険料(労働者負担) | 5,000万円×0.5% | 250,000円 |
雇用保険料(事業主負担) | 5,000万円×0.85% | 425,000円 |
雇用保険料合計 | 675,000円 |
実際の年度更新では、雇用保険料に労災保険料を加えた労働保険料として申告・納付します。なお、労災保険料率は業種によって異なります。
また、石綿健康被害救済法にもとづく「一般拠出金」(賃金総額×0.02%)もあわせて申告・納付します。
雇用保険料計算の端数処理
被保険者負担分の雇用保険料に1円未満の端数が生じた場合の処理は、次のとおりです。
50銭以下の場合:切り捨てて処理します
50銭超の場合:切り上げて処理します
【計算例】 ・月給261,500円×0.5%=1,307.5円→1,307円(50銭以下切り捨て) ・月給261,600円×0.5%=1,308円(端数なし) |
ただし、事業主と被保険者の間に「1円未満の端数は切り捨て(または切り上げ)とする」旨の特約がある場合は、その特約に従います。
雇用保険料の申告・納付方法|年度更新の仕組み
毎月控除する雇用保険料は、労災保険料とともに「労働保険料」として、毎年6月1日〜7月10日の「年度更新」でまとめて申告・納付します。
なお、労働保険の手続きは事業の種類によって異なります。ここでは、雇用保険料の申告・納付方法である「年度更新」の仕組みを解説します。
年度更新の対象となる事業の種類
雇用保険料の申告・納付方法は、事業の種類によって手続きが異なります。強制適用事業と暫定任意適用事業の違いや、継続事業や有期事業の意味をおさえておきましょう。
用語 | 意味 | ポイント |
|---|---|---|
強制適用事業 | 労働者を1人でも雇用しており、労働保険への加入が義務づけられる事業 | |
暫定任意適用事業 | 農林水産業の一部(個人経営で常時5人未満)など、加入が任意の事業 | |
継続事業 | 工場・事務所など、事業の終期が定まっていない事業 | 一般的な企業のほとんどが該当します |
有期事業 | 建設工事など、終了時期があらかじめ決まっている事業 | 労働保険の手続きが継続事業と異なります |
一元適用事業 | 労災保険と雇用保険を一括して申告・納付する事業 | 一般的な企業のほとんどが該当します |
二元適用事業 | 労災保険と雇用保険を別々に申告・納付する事業 | ・農林水産業・建設業・港湾運送業などが該当します ・適用労働者の範囲が両保険で異なるため、個別に手続きします |
次の章からは、一般的な企業に該当する強制適用事業・継続事業・一元適用事業の手続きを前提に解説します。それ以外は手続きが異なるため、管轄の労働基準監督署または労働局にご確認ください。
雇用保険料は労災保険料と「年度更新」でまとめて納付
雇用保険料は、労災保険料とあわせて「労働保険料」としてまとめて計算・申告します。毎月の給与控除はあくまで徴収のための処理であり、実際は年に一度の年度更新で納付します。
労災保険制度の詳細は次の記事をご確認ください。
労働保険料の年度更新とは
年度更新とは、前年度(4月1日〜翌3月31日)の確定保険料と当年度の概算保険料をまとめて申告・納付する仕組みです。
- 確定保険料:前年度に実際に支払った賃金総額をもとに保険料を計算し、精算します。前年度の概算保険料と比べて過不足があれば、追加納付または充当・還付されます。
- 概算保険料:当年度(4月1日〜翌3月31日)の賃金総額の見込み額をもとに保険料を計算し、前払いして納付します。

雇用保険料(労働保険料)の申告と納付期限
申告・納付期限は原則として毎年6月1日〜7月10日です。期限が土日に当たる場合は、次の日程です。
- 6月1日が土曜日の場合:6月3日(月)から受け付け開始
- 6月1日が日曜日の場合:6月2日(月)から受け付け開始
- 7月10日が土曜日の場合:7月12日(月)が期限
- 7月10日が日曜日の場合:7月11日(月)が期限
雇用保険料の納付方法
雇用保険料の納付方法は次のとおりです。
- 口座振替:事前申込が必要です。引き落とし日は「雇用保険料の分割納付」の表をご参照ください。
- 金融機関(銀行・郵便局など)の窓口:納付書を持参して納付します
- 電子納付(ペイジー):インターネットバンキングやATMで納付できます
- 電子申請(e-Gov)と組み合わせた納付:電子申請後、ペイジーなどで納付します
雇用保険料の分割納付
概算保険料は年度分を前払いするため、金額が大きくなる場合があります。企業の資金繰りへの負担を軽減するため、概算保険料が40万円以上(労災保険または雇用保険のどちらか一方のみ成立の場合は20万円以上)の場合、3期に分割して納付できます。
なお、労働保険事務組合に事務を委託している場合は、概算保険料の金額にかかわらず分割納付が可能です。
当該保険年度の途中に保険関係が成立した場合は、成立時期によって分割できる回数と第1期の納期限が異なります。
保険関係の成立時期 | 分割回数 | 初期の納期限 |
|---|---|---|
前年度以前または4月1日〜5月31日 | 第1期・第2期・第3期(3回) | 7月10日 |
6月1日〜9月30日 | 第2期・第3期(2回) | 成立の日から50日以内 |
10月1日以降 | 分割不可(一括納付) | 成立の日から50日以内 |
各期の納期限と口座振替の引き落とし日は次のとおりです。
期 | 通常の納付期限 | 口座振替の引き落とし日(2025年度) |
|---|---|---|
第1期(全期) | 7月10日 | 9月6日 |
第2期 | 10月31日 | 11月14日 |
第3期 | 翌年1月31日 | 翌年2月14日 |
納付期限が土日・祝日に当たる場合は、翌営業日が期限となります。
口座振替を利用すると、通常の納付期限より引き落とし日が後ろにずれます。引き落とし日が土日・祝日に当たる場合は、翌営業日が引き落とし日となります。
雇用保険料のよくある質問
雇用保険料の実務でよくある質問をまとめました。給与計算や年度更新の参考にしてください。
Q1. マルチ高年齢被保険者にも雇用保険料はかかりますか?
マルチ高年齢被保険者にも雇用保険料はかかります。
マルチジョブホルダー制度は、以下のすべてに該当する場合に、本人の申出により雇用保険に加入できる制度です。
- 65歳以上の労働者
- 複数の事業所で勤務
- それぞれの事業所で週10時間以上勤務
- 複数の事業所の労働時間を合計して週20時間以上
マルチジョブホルダーとして雇用保険に加入した場合(特例高年齢被保険者)、雇用保険料は資格取得日以降の賃金に対して発生します。
各事業所の賃金から控除し、各事業主が事業所分を申告・納付します。
Q2. 賞与やボーナスも雇用保険料の対象ですか?
賞与やボーナスも雇用保険料の対象です。ただし、賞与の定義には注意が必要です。
労働保険料の計算における賞与とは、名称を問わず、臨時に支払われるもの、または3か月を超える期間ごとに支払われるものを指します。ボーナス・決算賞与・寸志など、名称にかかわらず該当すれば賃金総額に含めます。
ただし、慶弔見舞金のように、労働の対価ではなく恩恵的・任意的に支払われる金銭は、就業規則等に支払い義務が定められていなければ賃金に該当せず、雇用保険料の対象とはなりません。
なお、健康保険・厚生年金の保険料計算では賞与を「標準賞与額」に切り捨てて計算しますが、雇用保険料は賞与の実際の支払い額に料率を乗じて計算します。社会保険料との計算方法の違いに注意しましょう。
Q3. 育児休業中の賃金や賞与も雇用保険料の対象ですか?
育児休業中の賃金や賞与も雇用保険料の対象です。
育児休業中に賃金や賞与を支払った場合、雇用保険料は通常どおり発生します。
健康保険・厚生年金保険料は育児休業中に免除される仕組みがありますが、雇用保険料に免除制度はないため注意しましょう。Q4. 雇用保険料の申告・納付を怠った場合はどうなりますか?
雇用保険料の申告・納付を怠った場合、ペナルティとして「追徴金」と「延滞金」の2つが発生します。
追徴金:申告を怠った場合や申告内容に誤りがあった場合に、政府が保険料の額を認定決定したときに課されます。納付すべき保険料額(1,000円未満切り捨て)の10%が徴収されます。
延滞金は、納期限までに保険料を納付せず、督促状の指定期限を過ぎてもなお未納の場合に課されます。
本則では納付すべき保険料額に年率14.6%(納期限翌日から2か月を経過するまでは7.3%)を乗じた額が延滞日数分徴収されます。ただし特例基準割合の適用により、令和8年は納期限翌日から2か月を経過するまでは年2.8%、2か月超は年9.1%です。なお、延滞金は税務上の損金に算入できません。
それでも納付がない場合は、財産調査や差し押さえなどの滞納処分に至ることもあります。年度更新の期限(7月10日)の厳守を徹底しましょう。
雇用保険料の計算方法や対象となる賃金を正しく理解しよう
雇用保険料は、毎月の給与計算から年度更新まで、人事労務の実務のあらゆる場面にかかわる保険料です。対象となる賃金の判断を誤ると、年度更新の確定保険料の申告額に影響するほか、追徴や還付が発生するリスクもあります。
「何が賃金に含まれるか」「端数はどう処理するか」「納付のタイミングはいつか」これらの正確な理解が、トラブルのない給与計算・年度更新への近道となります。
料率は毎年度見直されるため、年度切り替えのタイミングで最新情報を確認する習慣をつけ、正確な実務対応につなげましょう。








