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雇用保険被保険者証はいつ必要?離職票との違い・再発行方法を紹介

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こんにちは。社会保険労務士の舟根です。

雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることの証明書として、雇用保険加入時にハローワーク(公共職業安定所)から労働者へ発行される書類です。雇用保険被保険者証は、離職後の失業給付や、育児休業・介護休業時の給付金などの手続きの際に必要な重要書類であり、年金手帳とセットで会社が保管するケースも少なくありません。

今回は、雇用保険制度のあらましと雇用保険被保険者証を使う場面、万が一紛失したときの再発行手続きの方法について解説します。

雇用保険の概要と加入条件

雇用保険は、労働者の生活や雇用を安定させるために必要な給付を行う制度です。

離職後の失業給付に代表されますが、育児・介護休業の給付や教育訓練給付等を通じて、在職者に対する失業予防や職業能力向上に向けた取り組みも推進されています。

雇用保険の加入対象者は、次の2つの条件を満たす労働者です。

  1. 所定労働時間が週20時間以上である
  2. 31日以上の雇用見込みがある

シフト制の勤務や、週ごとに所定労働時間が変動する場合は、月の所定労働時間が87時間以上であれば雇用保険の加入対象となります。所定労働時間が20時間未満の週があっても問題ありません。

これらの条件を満たす限り、正社員だけでなくパートなどの有期雇用労働者も加入対象となります。個人の希望で、雇用保険に加入する・しないを選択できません。派遣社員は、派遣元で雇用保険に加入します。

経営者や役員(取締役など)・フリーランス(自営業)は、自分が所属する事業所では雇用保険に加入できません。ただし、別の事業所で働く場合は、加入条件を満たせば雇用保険に加入できます。また、役員と同時に労働者としての身分を持つ人(兼務役員)の場合は、労働実態に関する書類審査に通れば雇用保険の被保険者となります。

雇用保険について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

雇用保険被保険者証の記載内容

雇用保険被保険者証は、雇用保険の加入手続きを済んでいることを示す証明書です。雇用保険制度の各種給付を受ける権利があることを示す役割もあり、雇用保険の加入手続きを済ませた後に被保険者証が交付されます。

被保険者証は、「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」と一体になっています。通知書に記載されている、主な内容を確認してみましょう。

雇用保険被保険者資格取得等確認通知書

出典:ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」

被保険者番号

被保険者(加入者)一人ひとりに割り当てられた固有の番号です。雇用保険に加入していない期間が連続して7年を超えていなければ、転職しても番号は変わりません。

確認(受理)通知年月日

ハローワークで資格取得手続きを完了した日が記載されています。

資格取得年月日

雇用保険の加入資格を得た日が記載されています。入社当日、または雇用条件の変更日が基本ですが、前職で資格喪失手続きが遅れた場合は、資格喪失手続き完了日の翌日に変更される場合があります。

前職の離職後1年以内であれば、雇用保険の加入期間を通算できるので、資格取得年月日と入社日が異なっても問題は生じないでしょう。

事業所名略称

資格取得を行った事業所の名称が記載されています。転職者から受け取る資格取得等確認通知書には、前職の事業所名が記載されています。入社時に前職の雇用保険被保険者証の提出を求めるを告知することで、経歴詐称の未然防止にもつながるでしょう。

資格取得手続時にマイナンバーを届け出た場合は、資格取得等確認通知書に「個人番号登録あり」と印字されます。この印字があれば、雇用保険に関する別の手続き(資格喪失届の提出など)を行う際にマイナンバーの記載を省略可能です。

雇用保険被保険者証には、被保険者番号・被保険者氏名・生年月日の3点だけが表示されています。

離職票や健康保険証との違い

雇用保険被保険者証は、離職票・健康保険証と利用目的や提出先が異なります。

離職票とは

離職票は「離職票-1」と「離職票-2」の2枚一組で、離職時に会社から交付されるものです。一部の自治体では国民健康保険や国民年金に加入するときの退職証明書類として使用可能です。最終的には、求職申込み(ハローワークで個人情報を登録すること)を行う時にハローワークへ提出します。

健康保険証とは

健康保険証は、公的な健康保険(国民健康保険や協会けんぽ・健康保険組合など)に加入していることを証明する書類です。医療機関を受診するときに提示すると、医療費を全額(10割)負担しなくても必要な治療を受けられます。金融機関や宅配便の受け取りなど、本人確認書類として利用する場面も多いです。

これらの書類は手書きが基本となりますが、SmartHRでは電子申請に対応しています。労務業務の電子化によるメリットについては、以下の資料をご覧ください。

労務の課題を一挙解決!電子化が激変させる労務の世界

雇用保険の被保険者が受け取れる各種手当

雇用保険の被保険者は、離職後や在職中にさまざまな給付を受けられます。給付メニューの一例を確認してみましょう。

基本手当(失業手当)

再就職活動を行う間の生活費を保障する目的で支給される手当です。離職理由や加入期間により、90日~360日の間で給付日数が決まります。

再就職手当・就業促進定着手当

再就職の早期実現と、再就職先での長期勤続に対するインセンティブとして位置づけられた手当です。

基本手当の支給残日数を3分の1以上残して再就職すると、残日数に応じた額の再就職手当を受給できます。再就職先の給与が前職(離職前)より低い場合には、6か月以上の勤続を条件に、就業促進定着手当を受給できます。

教育訓練給付金

働く人のキャリア形成をサポートする目的で、教育訓練の受講費用の20%(最大10万円)を支給する制度です。専門性が高い教育訓練を受ける場合は、支給額の上乗せが行われます。

育児休業給付金・介護休業給付

育児離職・介護離職を防ぎ、家庭と職場との両立を支援する目的で支給される給付金です。

1歳未満の子を育てるために育児休業を取得した場合は、賃金日額(休業前6か月間の1日あたりの単価)の50%が育児休業給付金として支給されます。育児休業開始後6か月は、賃金日額の67%に増額されます。

要介護状態にある家族を介護するための休業を取得した場合は、賃金日額(休業前6か月間の1日あたりの単価)の50%が介護休業給付として支給されます。給付日数は、要介護状態の家族1名ごとに最大93日分です。

雇用保険被保険者証が発行されるタイミングと発行手続き方法

雇用保険の被保険者資格取得手続き(加入手続き)は、被保険者となる要件を満たした月の翌月10日まで(休日の場合は翌開庁日)です。例えば、9月15日に被保険者となった場合は、10月10日までに資格取得手続きを行います。

資格取得手続きを行う際は、ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。電子申請や郵送での手続きも可能です。被保険者の氏名・生年月日やマイナンバーなどを記入します。

取得区分欄は、雇用保険の加入歴がない人は「1(新規)」、加入歴がある人は「2(再取得)」と記入します。雇用保険の加入歴がない人は、新卒採用者や公務員からの転職者、過去7年間に1度も雇用保険に加入していない人が大半です。

被保険者番号がわからない場合は空欄でも大丈夫ですが、前職の勤務先名称を備考欄に記入しておきましょう。ハローワークでは、過去の職歴をもとに被保険者番号を特定するからです。電子申請の場合は「0000-000000-0」と入力します。

資格取得手続きが済むと、資格を取得した事業所名が入った雇用保険被保険者証が発行されます。窓口では即日、電子申請では2~3開庁日で手続きが可能です。郵送でも手続きできますが、1週間ほどかかるため注意が必要です。

被保険者証は個人宛に発行されますが、年金手帳とあわせて会社が保管するケースが少なくありません。労働者と会社のどちらが保存するか、あらかじめ決めておくようにしましょう。

労働者が雇用保険被保険者証を使う3つの場面

労働者が雇用保険被保険者証を使う場面は、次の3つです。

(1)教育訓練給付金の支給申請

労働者がハローワークで教育訓練給付金の受給資格確認や支給申請を行う際に、雇用保険被保険者証の添付が必要です。被保険者期間が3年以上(訓練を初めて受講する人は1年以上)あるかを確認する資料として用いられます。

(2)厚生年金保険の決定請求

65歳未満の人が老齢厚生年金を請求する際は、年金請求書と共に雇用保険被保険者証を年金事務所に提出する必要があります。年金を請求する人の月収によって年金額の減額が行われることから、在職状況をハローワークに問い合わせるためです。

(3)別の会社への転職時

転職先で雇用保険に加入する際に、被保険者番号を確認するため、転職先企業から提出を求められます。なお、ハローワークで基本手当(失業手当)を申請するときは離職票を提出すればよく、雇用保険被保険者証の提出は不要です。

社員が離職したときは労務担当者が「資格喪失手続き」を行う

社員が離職したときは、離職日から10日以内に雇用保険の資格喪失手続きが必要です。資格喪失手続きを行う際は離職票を作成し、離職者に渡します。離職票を作成する流れを確認しておきましょう。

資格喪失手続きの際は、退職理由がわかる書類をハローワークに提示する必要があるため、次のような書類を準備します。

  • 離職者が提出した退職願(退職届)
  • 有期雇用契約の終了に伴う離職の場合は、労働契約書
  • 解雇の場合は、解雇通知書や就業規則

会社と社員との協議で離職が決定した場合は、退職合意書など話し合いの経緯がわかる書類を提示しても差し支えありません。

資格喪失手続きが完了したら、離職者に次の書類を送ります。

  • 年金手帳と雇用保険被保険者証(会社が預かっていた場合)
  • 離職票(1・2をセットで)
  • 健康保険資格喪失証明書(様式は自由)
  • 厚生年金基金加入員証(基金に加入している場合)
  • 源泉徴収票
  • 退職証明書(請求があった場合)

中退共(中小企業退職金共済)などの退職金制度に加入している場合は、退職金請求書も忘れずに送付しましょう。

雇用保険にまつわる代表的な手続き【基本手当(失業給付)】について

転職先を決める前に離職した労働者は、ハローワークで基本手当(失業給付)を受けられます。基本手当(失業給付)を受けるための手続きは、離職票を受け取った後、自分の住所地を管轄するハローワークで求職申込みを行い、失業給付の受給資格決定を受けます。離職日の翌日から11日以上経過していれば、離職票を受け取っていなくても手続きが可能です。

雇用保険受給者初回説明会に参加した後、初回の失業認定を受けます。2020年10月現在、集合形式での説明会は中止されているので、初回の失業認定日までに「基本手当を受給されるみなさまへ」という動画を見るよう案内されます。動画の所要時間は、約45分です。

離職後の具体的な手続きは、ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」で確認しましょう。

雇用保険被保険者証の再発行手続きの流れ

雇用保険被保険者証を紛失した場合でも、簡単な手続きで再発行できます。最寄りのハローワークで手続きできますが、在職中の場合は企業の担当者が代理で手続きを行うケースが多いです。被保険者が自分で再発行手続きを行っても問題ありません。

ハローワークの窓口では、即日での再発行手続きを行っています。郵送で手続きを行う場合は、雇用保険被保険者証の到着まで4~5日かかるため、急ぎの場合は窓口で手続きしましょう。電子申請で手続きする場合は、被保険者名義の電子証明書が必要です。マイナンバーカードに搭載された電子証明書をパソコンにインポートできます。

企業担当者が電子申請を行う場合は、企業名義の電子証明書を利用できます。被保険者の電子証明書の代わりに「記載内容に関する確認書・提出代行に関する同意書」の画像データを添付します。

雇用保険被保険者証の再発行手続きには、「雇用保険被保険者証再交付申請書」と、被保険者の本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)1点が必要です。代理人が申請する場合は、委任状を代理人の本人確認書類も別途必要となります。

雇用保険被保険者証再交付申請書の書き方

雇用保険被保険者証再交付申請書の書き方について解説します。

雇用保険被保険者証交付申請書

出典:厚生労働省「雇用保険被保険者証再交付申請書」

1.申請者の氏名・性別・生年月日・現住所を記入します。

本人確認書類の住所と現住所が異なる場合は、現住所を証明できる書類を別途持参するとよいでしょう。

2.事業所の名称・所在地・電話番号を記入します。

在職中の場合は現在勤めている職場の情報を、離職中の場合は最後に被保険者として雇用されていた事業所の情報を記入します。

3.取得年月日や被保険者番号は、空欄のままで差し支えありません。

履歴書など職歴のわかる資料を添付すると、被保険者番号の特定がスムーズです。

4.被保険者証の滅失又は損傷の理由欄は「紛失のため」と記載します。

事細かく紛失理由等を聞かれることはありません。

5.申請者氏名欄に被保険者氏名を署名します。

署名に代わり記名(印字)・押印での対応も可能です。

雇用保険被保険者証再交付申請書は、ハローワークインターネットサービス「帳票一覧」からダウンロードできます。

雇用保険被保険者証のよくある質問

雇用保険被保険者証に関する「よくある質問」を、3つまとめてみました。

【Q1】雇用保険被保険者証はコピーでも使えますか?

雇用保険の被保険者番号を鮮明に確認できれば、コピーでも使えます。電子申請で雇用保険被保険者証が発行されるケースも増えており、普通紙に印刷するためコピーかどうかの判別が難しいのが現状です。

【Q2】雇用保険被保険者証を提出すると、転職のとき経歴がばれてしまうのでしょうか?

前職の勤務先名と資格取得年月日(入社時期)は、転職先に知られてしまいますが、退職時期までは知られません。ただし、源泉徴収票と組み合わせて、前職の退職日や転職前のブランクが判明する可能性はあります。なお、個人の雇用保険加入歴を事業所側で調査する制度は用意されていません。

【Q3】雇用保険被保険者証は、本人確認書類として使用できますか?

被保険者の住所が記載されていないため、本人確認書類として使用できません。ただし、別の書類と組み合わせる条件で本人確認書類と認める運用を行う自治体もあります。

雇用保険被保険者証が必要な場面は3つだけ、紛失時の再発行も簡単

社員を雇用保険に加入させると、雇用保険被保険者証が必ず発行されます。被保険者証を会社で保管するか、社員の管理に委ねるかは、会社それぞれの考え方で差し支えありません。

雇用保険被保険者証は、事業所名と資格取得年月日が明記された「雇用保険被保険者資格等確認通知書」とセットになっています。転職者を受け入れる場合は、入社時に前職の雇用保険被保険者証の提示を求めることで、経歴詐称の未然防止にもつながるでしょう。

雇用保険被保険者証が必要な手続きは、

  1. 教育訓練給付金の支給申請 
  2. 再就職先への提出 
  3. 厚生年金の裁定請求(65歳未満)

の3つに限られます。仮に被保険者証を紛失した場合でも、簡単な手続きで再発行ができるため、在職中であれば会社が手続きを代行するとスムーズです。

お役立ち資料

【2023年版】人事・労務向け 法改正&政策&ガイドラインまるごと解説

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