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【雇用保険】氏名変更届廃止により不要に。社会保険は注意点あり

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目次

雇⽤保険の⽒名変更届は、2020年5⽉31⽇をもって廃⽌されました。ただし、正確には、氏名変更の手続きが完全に不要になったわけではないため、別のタイミングでの⼿続きが必要です。また、社会保険では、扶養家族の⽒名が変更となった場合は必要な⼿続きがあるなど、例外的な事項もいくつかあります。

そこで本稿では社会保険労務士 吉田 崇氏監修のもと、雇用保険の氏名変更手続きの廃止の概要を確認するとともに、氏名変更の手続きが必要なケースについて解説します。

雇用保険の⽒名変更⼿続きは2020年に廃⽌

従来、婚姻などによって従業員の氏名に変更が生じた場合は、事業主は速やかに「雇⽤保険被保険者⽒名変更届」を管轄のハローワークに提出する必要がありました。しかし2020年5月31日にこの手続きは廃止され、今では変更届の提出が不要です。

ただし厳密には、氏名変更の手続きが完全に不要になったことを意味するのではありません。氏名変更のためだけに個別に手続きする必要がなくなっただけで、別の手続きが発生したタイミングで、その届出とあわせて氏名変更も知らせる形になったというのが正確な説明です。

たとえば以下の⼿続きの際に、変更後の⽒名を届け出ます。

  • 被保険者資格喪失届
  • 転勤届
  • 個⼈番号登録変更届
  • 各種給付⾦の⽀給申請
  • 育児休業給付⾦
  • 介護休業給付⾦
  • ⾼年齢雇⽤継続基本給付⾦
  • ⾼年齢再就職給付⾦

なお、住所については、雇用保険ではもともと住所を管理していないため、変更になっても手続きは不要です。

従業員が⽒名変更したときに、⼿続きが必要となるケース

上記のように、雇用保険の氏名変更は単独での⼿続きでは不要です。

また、社会保険においても、マイナンバーと基礎年金番号をひもづけて被保険者を管理できるようになったため、氏名変更届は原則不要です。なお、マイナンバーの提供がない従業員の届出時は、備考欄などに「本人事由によりマイナンバー届出不可」などと記載して申請します。

場合によっては、個別に手続きが必要になることもあります。以下では、その具体的なケースについて解説します。

社会保険の⽒名変更届が必要となるのは?

社会保険では、被保険者が以下のいずれかの条件に当てはまる場合は、「被保険者氏名変更届」を管轄の年金事務所または事務センターに提出します。

  • マイナンバーと基礎年⾦番号のひもづけが済んでいない
  • マイナンバーを有していない海外居住者である
  • 短期在留外国⼈である

上記に当てはまる方が住所も変更した場合は、「被保険者住所変更届」の提出も必要です。

マイナンバーと基礎年金番号のひもづけが済んでいない従業員がいる場合は、日本年金機構から「マイナンバー未収録者⼀覧」が届くので、事業主はそれを確認するようにしましょう。「ねんきんネット」を利用するか、年金事務所に問い合わせることで本人でも確認可能です。

なお、氏名変更にともなう健康保険証の再発行は、以下の流れで対応します。

  1. 新しい⽒名が反映された保険証が会社に届く
  2. 従業員から変更前の⽒名が記載された保険証を回収し、新しい保険証を渡す
  3. 管轄の⽇本年⾦機構事務センターへ、回収した保険証を郵送する

マイナンバーと基礎年金番号のひもづけが済んでいる従業員の場合、住民票情報が変更されると、自動的に社会保険情報も更新されますが、最大2か月程度のタイムラグが発生する場合があります。その場合、新しい保険証が届くまでの期間は、氏名変更前の古い保険証が問題なく使用可能です。

扶養家族の⽒名も変更した場合は?

社会保険の氏名変更届が不要なのは、マイナンバーと基礎年金番号をひもづけた「被保険者」です。被保険者に扶養される「被扶養者」が氏名を変更したときは、これまでと同様に「健康保険 被扶養者(異動)届」を提出しなければいけません。提出先は管轄の年金事務所または事務センターです。被扶養者(異動届)のフォーマットはこちらから確認できます。

被扶養者(異動届)のフォーマット

提出期限は、氏名変更の事実が発生してから5日以内です。パートナーが退職して被扶養者になる場合には、退職⽇の翌⽇からカウントして5⽇以内になります。いずれにしても、早急の届け出が必要です。手続き方法は窓口への持参のほか、郵送、電子申請など複数ありますので、必要に応じて使いわけましょう。

電子申請をご検討の場合、このタイミングで他の業務に関するペーパーレス化も視野に入れてみてはいかがでしょうか。以下の資料では、電子化によって労務の課題を解決するヒントをまとめているので、ぜひご活用ください。

労務の課題を一挙解決!電子化が激変させる労務の世界

また、手続きには「被扶養者(異動)届」と一緒に、以下の2種類の書類も必要です。

  • 続柄が確認できる書類
    • 被扶養者の戸籍謄(抄)本または住民票の写し(被保険者が世帯主でかつ被扶養者と同一世帯の場合)
  • 収⼊要件が確認できる書類
    • 源泉徴収票、給与明細など

ただし、一定の基準を満たすことで提出が不要になったり、逆に追加書類が必要になったりします。たとえば、退職によって収入要件を満たす場合は、退職証明書などの追加提出が必要です。詳細はこちらのページもしくは、事前に提出先の年金事務所などに確認してください。

法改正の情報をまとめて確認

雇用保険の氏名変更手続きの廃止も含め、⼈事・労務の業務は、法改正の影響を頻繁に受けます。しかし、日々の業務に追われるなか、こうした法改正の最新情報を逐一チェックするのは非常に手間でしょう。

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FAQ

  1. Q1. 雇⽤保険の⽒名変更届はいつ廃⽌されたのですか?

    A.雇⽤保険の⽒名変更届は2020年5月31日をもって廃止されました。

  2. Q2. 雇⽤保険の⽒名変更⼿続き⾃体が不要になったのでしょうか?

    A.雇用保険の氏名変更手続き自体は現在でも必要です。ただし、氏名変更のためだけに手続きをする必要はなく、他の届出をする際にあわせて氏名変更手続きも実施します。

  3. Q3. ⽒名変更した従業員に確認すべき事項を教えてください。

    A.社会保険上の扶養家族や住所変更の有無を確認しましょう。被扶養者の氏名などに変更があった場合、事業者側が「被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。また、マイナンバーを届け出ていない被保険者が住所変更した場合は、「被保険者住所変更届」の提出が必要です。

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