雇用契約書を電子化し、入社手続きを楽に。おすすめ導入方法を解説
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採用業務を行う人事・労務担当者であれば、「入社手続きを楽にしたい」「書類のやり取りなどの工数を減らしたい」と誰もが思っているはず。実際に筆者も、クライアント企業の人事・労務担当者さんから「入社手続きをスリム化したい」というご相談をいただくことがあります。
そんな悩める人事・労務担当の皆様におすすめしたいのが「入社手続きのオンライン化」。ここ数年、雇用契約書の電子化についてはよく耳にするようになりましたが、まだまだ紙の雇用契約書が大多数です。しかし、導入の効果は予想以上であり、実際にオンライン化を実施した企業からは「1週間近くかかることがあった入社手続きが、半日で終わるようになった」などと喜びの声が上がっています。今回は、注目が高まっている雇用契約書の電子化や、入社手続きのオンライン化について解説します。
そもそも、雇用契約書とは?
雇用契約書とは、労働条件について双方で合意した契約書類を指します。雇用契約の効力そのものは口頭でも発生しますが、「言った・言わない」のトラブルを避けるため、書面化することが一般的です。
雇用契約書についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
労働条件通知書との違いは、法的な作成義務があるかどうか
では、「労働条件通知書」との違いはなんでしょうか。
労働基準法15条は、採用時に労働者に対し賃金や労働時間、休日などの労働条件を明示することを会社に義務づけています。そして、これらの明示された労働条件が実際と相違していた場合は、雇用契約の即時解除が可能であるとしています。
労働基準法第15条
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
労働条件のなかでも、「雇用契約の期間」や「勤務場所や仕事の内容」といった人それぞれの事項については、口頭ではなく書面で明示することと決められています。これらを記載したのが「労働条件通知書」です。
雇用契約は書面化せずとも当然に成立するものであるため、雇用契約書の作成義務はありません。一方、労働条件通知書は、労働基準法によって作成、交付が義務づけられています。しかし、多くの会社が労働条件通知書だけでなく、雇用契約書を作成しているのはなぜでしょうか。
その理由は、雇用契約書は「会社と労働者、互いの意思が確認できるもの」だからです。雇用契約書には会社と従業員双方の記名押印が必要ですが、これにより「会社も労働者もお互いに納得してこの労働契約を結んだ」ということが明らかになります。対して労働条件通知書は、「通知書」という名前が表すとおり、従業員に対する一方的な交付となります。
法的に必須なのは「労働条件通知書」ですが、労務トラブル予防のため「雇用契約書」も一緒に取り交わすことが、リスクヘッジとなるのです。一般的には「雇用契約書 兼 労働条件通知書」という一体型の書面を作成し、従業員のサインをもらうことが多いです。
雇用契約書 | 労働条件通知書 | |
---|---|---|
法律上の作成義務 | なし | あり |
罰則規定 | なし | 30万円以下の罰金 |
記載すべき事項 | 定められていない | 定められている |
労働者の署名押印 | 必要 | 不要 |
法的効力 | あり | あり |
電子化(FAX、メール、SNSメッセージなどでの交付) | 自由にできる。ただし、雇用条件通知書を兼ねる場合は労働者からの承諾が必須 | 書面での交付が原則。労働者から承諾を得れば、電子化が可能 |
労働者に渡すタイミング | 労働開始日(試用期間含む)までに締結されているべき。労働者から質問がある可能性などを踏まえ、労働開始当日までに渡すことが望ましい | 法律上は雇入日(入社日) 一般的には内定時など、入社日より前に渡すことが多い |
雇用契約書のテンプレートを使って、業務を効率化
労働条件通知書については、厚生労働省のホームページにフォーマットが掲載されています。
記入の仕方などより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
雇用契約の締結を含めた入社手続き、いま何日かかっていますか?
雇用契約書(労働条件通知書)を作成・締結する場合、通常はWordやExcelのテンプレートを使うことが多いと思います。
しかし、紙ベースでのやり取りは時間がかかるもの。送付に1日、返信までに1日、その間に確認の作業をすると3日、4日はすぐに経ってしまいます。また雇用契約書は個人情報のオンパレード。紙を本社まで持参する場合には、持ち運び時の紛失リスクもあります。
クラウドで管理できるようにすれば、これらの時間を大幅に短縮でき、個人情報の流出リスクも減らせます。
雇用契約だけでなく、入社手続きをオンライン化すれば、工数を削減できるうえ、転記ミスや抜け漏れといったトラブルも防止できます。また、作業時間を短縮できるため、採用などのコア業務に人事部のリソースを割けます。
SmartHR導入で各種手続きをペーパーレス化
SmartHRを導入した株式会社テクノスジャパンでは、入社手続きをはじめ、各種手続きのペーパーレス化を実現。ミスの発生防止や効率化につながり、ほか業務に取り組む時間が確保できています。
- 課題
- 労務業務を紙で実施しており手間がかかっていた
- 常駐先で勤務する従業員が書類を本社に持参する必要があった
- 転記ミスや抜け漏れが発生することも
- 解決策
- 入社手続きや年末調整の労務手続きをSmartHRで実施
- 身上変更手続きもSmartHR上で実施し、出社せずにすむ業務フローに改善
- 効果
- 入社手続き業務が3営業日→半日まで短縮
- 年末調整準備にかかる作業が1週間→1日に短縮
- 身上変更手続きも効率化
電子契約の基礎知識、印鑑や署名は不要
電子契約とは、「電子的に作成した契約書を、インターネットなどの通信回線を用いて契約の相手方へ開示し、契約内容への合意の意思表示として、契約当事者の電子署名を付与することにより契約を締結するもの」を指します。
(出典)電子契約活用ガイドラインP.3 – 公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)
つまり、電子文書のやり取りだけで契約を完結させる手法のことです。
労働条件通知書は2019年4月から電子交付が可能になりました。ただし基本はあくまでも従前の紙での交付であり、以下の条件を満たした場合のみ電子化が可能とされています。なお、印鑑や署名は不要です。
- 労働者本人の電子化に対する希望があること
- 労働者本人のみが確認できること
- 印刷(プリントアウト)が可能であること
(参考)「労働基準法施⾏規則」 改正のお知らせ – 厚生労働省
雇用契約は、どこからどこまで電子化できる?
では、雇用契約書・労働条件通知書はどこまで電子化できるのでしょうか。以下の3パターンが考えられます。
(1)労働条件通知書のみを電子化する
労働条件通知書の交付は義務ですが、雇用契約書の発効は義務ではありません。しかし、雇用契約書を締結しなかったことで従業員が不安に感じたり、お互いに合意していることが客観的に把握できなくなったりするというリスクはあります。やはり雇用契約書も交わしておいた方がよいでしょう。
(2)労働条件通知書と雇用契約書をそれぞれ作成し、両方とも電子化する
労働条件通知書も雇用契約書もどちらも電子化が可能です。ただし書類をそれぞれ作成するので、手間はかかります。
(3)「雇用契約書兼労働条件通知書」を電子化する
一体化した書類を作成し、電子化する方法です。工数が削減され、かつトラブル予防になるため、こちらがおすすめです。
雇用契約の電子化は、人事担当者・従業員の両方にメリットあり
雇用契約の電子化は、人事・労務担当者と従業員、双方に大きなメリットがあります。
人事・労務担当者にとってのメリット
紙での対応に比べ、時間も工数も削減できます。また法改正があった場合、フォーマットも修正しなければなりませんが、電子化していれば改正対応もスムーズです。
従業員にとってのメリット
従業員にとっても、スマホやPCで、いつでも、どこからでも対応できるのは大きな魅力です。たまにしかない身上変更(引っ越しなど)があったときも、画面案内に従って進めるだけなので、迷わず申請できます。「社内説明会すら不要だった」という声も聞かれます。
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雇用契約を電子化する場合のデメリット、注意点
電子化を導入するにあたって気をつけたいのが、「電子契約が法に沿っているかどうか」です。2022年4月施行の改正電子帳簿保存法では、取り引きデータの電子保存などが義務づけられました。労働条件通知書(雇用契約書)についても、今後は、労働基準法の法改正などに伴い、ルールが変更されていく可能性があります。
「法改正の際に正しく対応できるかどうか」が、サービスを選ぶポイントです。また、セキュリティ対策や運用コストもチェックすべきでしょう。これらの要件をクリアし、社内の理解をいかに得られるかが人事・労務担当者の腕の見せ所です。
雇用契約を電子化したい!社内承認を得るための5ステップ
(1)現状の課題と、要望をまとめる
まずは、具体的に雇用契約書作成、送付、締結、回収にかかっている時間、コストを客観的に把握しましょう。そして、入社手続き業務全体を電子化したいのか、雇用契約だけ電子化したいのか、範囲を明確にします。
(2)電子契約導入による、改善点をまとめる
続いて、電子契約導入時に、どのような効果が期待できるのかを数値化します。たとえば、SmartHRを導入した場合、雇用契約にかかる時間が66%削減というシミュレーション結果が出ています。
実際のSmartHR導入企業からの効果実感の声をまとめています。ぜひ参考にしてください。
(3)無料トライアルを導入してみる
サービス紹介ページでどれだけ便利そうに見えても、「イメージしていた操作感と違った」「機能が思ったよりも不十分だった」といった落とし穴もあります。実際に利用検討しているサービスがあれば、ぜひ無料トライアルが可能か問い合わせてみてください。
SmartHRなら15日間無料でトライアル可能です。
(4)無料トライアルによる導入効果を把握し、社内共有する
無料トライアルで業務効率化したポイントをまとめましょう。可能な限り、「書類送付にかかる工数が今までの10%まで削減できた」など、数値化して効果測定すれば、決済者からの理解を得られ、導入に向けて検討が進みやすくなるでしょう。
(5)導入決定
決済者からの承認を経て、導入決定となります。
雇用契約を電子化できるサービス3選
代表的な電子契約関連サービスをご紹介します。
(1)クラウドサイン
「紙と印鑑」を「クラウド」に置き換え、契約作業をオンラインで完結できるクラウドサイン。官公庁や金融機関などセキュリティ基準が高い事業所でも導入実績があり、安全面を重視したい企業におススメです。
(2)Shachihata Cloud
印鑑で有名なシヤチハタのプロダクト。紙と同じ印面が使用でき、証跡や履歴も管理できる電子印鑑は、シヤチハタならでは。セキュアな電子印鑑を使った電子契約サービスが利用可能です。
(3)MoneyForward クラウド契約
マネーフォワードクラウド契約の特長は、契約送信通数・保管数による従量課金がないこと。バックオフィスに必要なサービスを安心して使えます。
Q1. 雇用契約書は電子化できますか?
A.雇用契約書を電子化することは可能です。2019年4月から労働条件通知書の電子化が解禁されたことに伴い、雇用契約書についても電子化を進める企業が増えています。
Q2. 雇用契約書を電子化すると、どんなメリットがありますか?
A.会社と労働者、双方が労働条件に納得したことを示すには押印が必要ですが、電子印鑑を利用すれば手続きもスムーズです。入力漏れや転記ミスなどがなくなるというメリットもあります。
Q3. 雇用契約書の電子化にあたり、特に注意すべき点はなんですか?
A.大切なのは自社に合ったサービスを選ぶこと。各社から多様なサービスがリリースされていますが、電子印鑑に強みがある・雇用契約以外の契約書も一元管理可能などさまざまな特長があります。自社のニーズに合わせて選ぶことが重要です。