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会社都合退職と自己都合退職はどう違う? 「失業保険受給」における3つの優遇措置とは

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こんにちは、社会保険労務士の原田 雄一朗です。

近年転職市場が活性化しているようで、ニッセイアセットマネジメントのマーケットレポートでは「2016年の労働力調査(詳細集計)によると、転職者数は前年より8万人増加して306万人となった」とされています(*1)。同年の就業人口6,466万人のうち、5,798万人が雇用者(*2)、これに対して306万人が転職したということで、5.28%、つまり20人に1人以上の人々が転職したということになります。

転職理由は様々で、新天地で更にチャレンジしたいという方もいれば、ひとりの人間ですから、単に「今の会社を辞めたい」と考えて退職する方もいらっしゃることでしょう。逆に、誰もが皆、スムーズに転職できるわけではなく、退職とともに失業を余儀なくされ「辞めたくないけど、辞めざるをえない」という方も数多くいらっしゃいます。

このように退職理由は様々ですが、「失業保険」はどう扱われるのでしょうか?

今回はその「自己都合退職」と「会社都合退職」とで異なる「失業保険の優遇ポイント」について解説していきます。

そもそも「会社都合退職」「自己都合退職」とは?

「会社都合退職」と「自己都合退職」の違いを説明する前に、そもそもそれぞれがどのようなことを指すのか説明します。

個人的な事情で退職する「自己都合退職」

「自己都合退職」は、個人的な事情で退職することです。通常は事前に退職届や退職願を提出して会社を辞めることになります。

心情としては「なんとなく辞めたい」から「どうしても辞めないといけない」まで、そのレベルは様々でしょう。

解雇など会社の事情による「会社都合退職」

一方「会社都合退職」の代表的なものは「解雇」、いわゆるクビです。

解雇の理由は様々ですが、懲戒解雇などの「解雇される本人に問題がある場合」と、「会社の事情で退職してもらう場合」とがあります。例えば倒産してしまった場合は、否が応でも解雇されるほかありません。

会社都合退職時の「失業保険受給」における3つの優遇措置

退職した場合に、概ね「自己都合」は個人的な事情によるものなので、退職時期の予測もできることもあり、失業時に優遇されません。

しかし、会社都合であれば、いきなり収入が無くなってしまうので、失業保険受給において、ある程度優遇されることがあります。

以下にその具体的なポイントを紹介します。

優遇措置その1:失業保険の「給付条件」が緩和

「自己都合退職」の場合、失業保険をもらうためには、過去2年間に12ヶ月以上の雇用保険の加入期間が必要です(1ヶ月に11日以上出勤等の条件があります)。

これが「会社都合退職」になると、「過去1年間に6ヶ月以上の雇用保険の加入期間」でOKになります。つまり、最短で半年働けば、失業保険がもらえることになります。

優遇措置その2:失業保険の「給付制限」が無い

退職してから失業保険をもらうまでのおおまかな流れは、

(1)会社から離職票を受け取る。
(2)ハローワークに行って失業保険の受給資格の決定手続をする。
(3)2の7日後以降に再度ハローワークに行き、1回目の認定を受ける。
(4)求職活動をする。
(5)3の4週間後まで職業が決まらなければ2回目の認定を受ける。
※ここでやっと失業保険がもらえます。以後4と5を繰り返します。

「自己都合退職」の場合は、3ヶ月間の「給付制限」というものがあり、(3)から3ヶ月間は失業保険をもらえないのです。

一方の、「会社都合退職」の場合は、この「給付制限」がありません。つまり失業保険がすぐにもらえるのです。

優遇措置その3:失業保険を長期間受給できる

「自己都合退職」の場合、失業保険をもらわずに働いた期間が10年未満だと、失業保険は90日で打ち切りです。10年以上勤務しても、最大で150日までが限度です(*3)。

これが「会社都合退職」になると、働いた期間が1年以上勤務で180日までもらえる場合があります。20年以上勤務であれば、最大330日まで伸びる場合があります(年齢によって差があります)。

退職理由別「自己都合 or 会社都合」判断例

退職には様々な理由がありますが、理由ごとにどのように扱われるのでしょうか? 下図をご覧ください。

退職理由と区分

このように、退職理由の違いで「自己都合退職」なのか「会社都合退職」なのか判断が分かれることになります。

そもそもの「退職」を防ぐためにできること

「会社都合退職」だと、確かに失業時に待遇はよくなりますが、ごく稀に「故意に会社都合を狙う方」もいます。

しかし、就労しやすい若い時代を「失業保険狙い」で浪費し、40代以降での就職に困窮している人もいるのも事実です。「不正受給」することなく、正しい手順・条件の中での受給を心がけ、そして自己のキャリアを積んでいって欲しいと願っています(ちなみに、不正受給が発覚すると、受給額に加え更にその2倍の額を支払う、いわゆる「3倍返し」などの厳しい処分がくだりますので、絶対に不正受給しないようにしてください)。

一方の会社としても、人材不足の昨今、職場環境を改善しなければ、人材を得られない時代になってきました。特に今後は、年々労働人口が減少し、ますます困難な状況になっていくのは間違いないでしょう。そんな中、退職が相次ぐことになると、会社としても在籍する社員も疲弊してしまいます。

退職者のポジティブな転職意向はさておき、「もうこの会社が嫌だ、退職したい」というネガティブな理由による退職は、そもそも努力や工夫によって防げることも多いはずです。

そのような退職者を生まないためにも、企業・労働者が、共に良い関係で成長できる職場環境を作る努力が必要かもしれません。

【参照】
*1:金融市場NOW 転職者数増加 300万人の大台回復 – ニッセイアセットマネジメント株式会社
*2:労働力調査 基本集計 平成28年(2016年)12月分(速報) – 総務省統計局
*3:労働期間10年以上20年未満の給付日数…120日 / 労働期間20年以上の給付日数・・・150日

*お詫びと訂正*

2017年6月14日に公開しました、当記事につきまして、「退職理由別「自己都合 or 会社都合」判断例」の内容に一部誤りがございましたので訂正するとともに、お詫び申し上げます。

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