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一緒くたに考えてはいけない「業務委託契約」の注意点

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こんにちは。浅野総合法律事務所 代表弁護士浅野英之です。

皆さんの会社では、システム開発やホームページや特設キャンペーンページのデザイン・制作、最近のトレンドでは動画制作など、エンジニアやデザイナーなど専門性の高い技術を要する業務が発生した際、どのようなチーム編成で行っているでしょうか?

社内リソースが潤沢であれば社内メンバーをアサインするでしょうし、人材はいてもタスクの関係からアサインできない、もしくはそもそも対応可能なスキルを持った人材がいないということであれば、社外リソースの活用も考えられます。

そのような、外部の業者にお願いする場合に締結するのが「業務委託契約」です。しかし、一口に「業務委託」といっても、それがどのような契約を意味するのかは意外と知られていないように思います。

そこで、今回は「業務委託契約」に関する基礎知識や、契約締結時の注意点についてざっくり解説していきます。

そもそも業務委託契約とは?

業務委託契約とは、会社の行う業務を外部の第三者に委託するために結ぶ契約のことをいいます。

業務委託の内容には、それぞれの会社が委託を考えている業務に応じて様々なバリエーションがあります。

典型的なものとしては、冒頭で言及した「システム開発」「ホームページ制作」についての契約のほか、「システム保守(点検・修理)」についての契約などが挙げられます。

「請負契約」と「準委任契約」の違いは?

実は、「業務委託契約」という契約は法律上存在しません

民法で定められた契約を「典型契約」といい、「売買契約」「賃貸借契約」などが定められていますが、「業務委託契約」という民法上の定めはないのです。

そこで、「業務委託契約」の法的な性質は、契約の内容によって「請負契約」と「準委任契約」の2つに大きく分かれます。

皆さんが締結する「業務委託契約」がどちらの法的性質を持つかによって次のようなルールの違いがあるので注意が必要になります。

(1)「請負契約」と「準委任契約」の違い

請負契約」とは、「仕事の完成」を目的として結ばれる契約を指します。

「請負契約」の場合、「仕事」である成果物(例えば、開発を委託したソフトウェア)の完成・検収した後ではじめて報酬が発生します。

一方、「準委任契約」は「業務の遂行」自体を目的としており、契約に定められた業務が遂行されれば、成果物の完成などの結果は問いません。

(2)発注検討にあたっての注意点

以上の「請負契約」と「準委任契約」の違いを踏まえて契約書をチェックするようにしましょう。

つまり、貴社が「何らかの成果物を求めて業務委託をする場合」には、「請負契約」を結ばなければなりません。

このようなケースでは、「請負契約」であることをきちんと当事者間で合意し、成果物がどのようなものであるかを合意しておかなければ、報酬を支払うタイミングになって揉めごとの種になってしまう危険があります。

業務委託契約書の内容で、法的に注意が必要なこと

業務委託契約を結ぶ際には、後のトラブルを避けるために、当然契約書を作成しておく必要があります。

契約書を作成しておかなければ、契約の内容について争いとなるおそれがあるのはもちろんのこと、契約があったかどうかすら、証明することが不可能になってしまいかねません。

しかし一方で、契約書に盛り込む事項に不備があると、かえってトラブルを引き起こしかねません。

そこで、契約書に盛り込む事項として、法的な観点から特に注意が必要なポイントをいくつかご紹介します。

(1)「成果物の定義」と「委託業務の範囲」画定

「請負契約」の場合には、どのような成果物を完成させる必要があるかについて、成果物に求められる機能の定義を明確にし、正確かつ具体的に記載してください。

「準委任契約」の場合には、成果物の完成がゴールではなく、業務の遂行自体が求められるため、具体的にどのような業務を委託するかについての定義を明確にする必要があります。

これらが曖昧だと、代金支払いの段階などでトラブルになりがちです。

(2)「報酬」に関する事項

契約書を巡るトラブルでもっとも多いのが、お金に関するトラブルです。

報酬の金額や支払い方法、支払条件や時期は非常にトラブルになりやすいので、それぞれ詳しく定めておくべきです。

そのほか、追加報酬が発生するかの確認は特に重要です。

(3)免責事項等

成果物の瑕疵などに関する免責事項や、交通事故などの不可抗力による納品不能のリスクをどちらの当事者が負うかについても確実に記載してください。

おわりに

今回は現行法における契約の注意点として、ざっくり解説いたしましたが、改正民法によって契約ルールが120年ぶりに見直されると話題になっているように、時代の変化とともに事業者が注意すべきポイントも変化すると考えられます。

その改正民法における注意点については、また別の機会で解説させていただきます。

【編集部より】働き方改革関連法 必見コラム特集

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