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ビジネスにおけるチームワークとは?高めるポイント、必要な能力を解説

公開日

この記事でわかること

  • ビジネスにおけるチームワーク意味
  • チームワークを高めるメリット
  • チームワークの高め方
目次

「チームワーク」は、チームの生産性向上や成果を出す組織づくりにおいて欠かせない要素のひとつです。急速なテクノロジーの発展や世界情勢の変化など、未来の予測が難しく市場が常に変化する現代において、チームで対応する必要が以前にも増して高くなっています。

本稿では、ビジネスにおけるチームワークの意味や高めるポイント、必要となる能力について解説します。

ビジネスにおけるチームワークの意味と意義

一般的にチームワークとは

「チームワーク」とは一般的に、チームのメンバーが情報交換や協力をしながら活動することを指す言葉です。「チーム」については多くの研究者によるさまざまな定義が存在しますが、共通する要素を整理すると、2人以上の人が共通の目標や目的の達成に向けて助け合う集団であると考えられます。

チームに所属する個人の取り組みは、タスクワークとチームワークの2種類に大別でき、個人で完結できる活動がタスクワークです。一方のチームワークは、ほかのメンバーとの連携や協同などの対人的な行為が当てはまります。陸上競技のリレーを例に挙げると、個々が走者として決められた距離を走ることはタスクワークであり、走者がバトンを受け渡す行為がチームワークに該当します。

ビジネスにおけるチームワークとは

ビジネスにおけるチームワークを説明した図表

ビジネスにおけるチームワークとは、メンバー個々の能力や強みを活かしつつ、ほかのメンバーと協力して弱みを補い合い、同じ目標に向かうことを意味します。数時間程度の短期課題のために集められ、常に共同で作業する団体スポーツとは異なり、中長期間にわたり継続的に課題に取り組むことを指します。同じ目標に向かうといっても、チーム全体ですべてを対処するのではなく、個々人に役割が分担されています。

チームワークは個々人の能力の合算ではなく、メンバーである一人ひとりの能力が最大化されることで、相乗効果により組織の力も最大化されるところが強みであり意義といえます。

参考)相川充, 高本真寛, 杉森伸吉, 古屋真「個人のチームワーク能力を測定する尺度の開発と妥当性の検討」
参考)九州大学 山口裕幸「チームワークの光と影」
参考)岡山大学 三沢 良「チームワークとその向上方策の概念整理」
参考)縄田 健悟, 山口 裕幸, 波多野 徹, 青島 未佳, 株式会社産学連携機構九州「企業組織において高業績を導くチーム・プロセスの解明」

チームワークが重視される背景

現代は、AIをはじめとする急速なテクノロジーの発展や世界情勢の変化など、未来の予測が難しいVUCA時代といわれ、企業においてチームワークがより重視される背景のひとつになっています。市場は常に変化し、ビジネスサイクルの短縮化・複雑化が進んでいることから、企業は経営課題や目標達成のために異なる能力を有したメンバーを集め、チームとして対応する必要が以前にも増して高くなっています

また、個人の保有するスキルセットも細分化していることから、個々人が自分の強みを活かしつつ、ほかのメンバーと協力して弱点を補い合うチームワークが必要です。さらにコロナ禍によってテレワークが広まったことで、社員間のコミュニケーションが希薄になり、一体感や結束力の低下が懸念されていることもチームワークが重視される背景として挙げられます。

チームワークを高めるメリット

チームワークを高めるメリットの4つを説明する図表

大きな目標の達成

チームワークを高めるメリットのひとつは、大きな目標の達成です。市場が常に変化しているなかでは、個々人の能力だけで対応できる範囲に限界があります。チームメンバーの専門知識やスキルを結集し、強みを活かして協力しあうことや、さまざまな意見やアイデアを出しあうなかで、思いつかなかった解決策や考えが生まれやすくなります。チームワークによって組織の力が最大化されれば、大きなプロジェクトや目標の達成もしやすくなります。

生産性の向上

チームワークを高めるとメンバー間に良好な信頼関係が築かれ、一体感や結束力が生まれやすくなることから、生産性の向上につながります。また、メンバーはお互いに協力しあい、チーム内のノウハウや情報を蓄積・共有するようになるので、効率的な業務も可能になります。問題が起きた場合でも、専門知識をもつメンバーが手を取り合うことで問題に対し多角的にアプローチでき、柔軟な対応が可能です。

モチベーションやロイヤリティの向上

チームワークがよくなるとメンバー同士が能力を認めあいながら業務を進めることから、自分に自信をもてるようになります。また、切磋琢磨しあうことにより仕事へのモチベーションがアップする点もメリットです。

モチベーションが高まることで、帰属意識や忠誠心といった組織に対するロイヤリティの向上も期待でき、目標に対する貢献度も高まります。企業における人材の定着率向上や、仕事のモチベーションアップにも期待がもてる「ワークエンゲージメント」を高めることにもつながります。

チーム内のサポート体制の構築

メンバー同士が協力し、弱点を補い合いながら活動するチームワークは、チーム内のサポート体制の構築にも寄与します。困難な状況に陥っても助け合いや試行錯誤によって乗り越えようとするため、課題に対する解決能力が高く、効率的な目標達成が可能です。また、異なる意見が出て対立しても、コミュニケーションによって解決する姿勢が見られます。そのため良好な人間関係を築くことができ、離職率の低下にもつながります。

チームワークが悪いことによるデメリット

生産性の低下

チームワークが悪い場合、円滑なコミュニケーションが取れず、業務にかかわる情報も伝達されづらくなります。一人ひとりのもっている能力が最大限活かされない状況になり、メンバー同士のフォローや協力体制も構築されないため、生産性の低下につながります

意見の衝突や他責

意見の衝突や他責もチームワークが悪いことによって起こるデメリットです。メンバー間での信頼がないため、意見が対立しやすく、建設的な議論が成り立ちません。また、何かトラブルが起きた場合も助け合いがなく、他者に原因があると考える傾向にあります。その結果、目標の達成はもちろん、チームとしての活動自体が困難になってしまいます。

モチベーションの低下

チームワークが悪いと良好なコミュニケーションの減少や、ぎすぎすした関係により、働くモチベーションが低下します。メンバー間でアドバイスや意見を交わすことも減り、仕事に積極的に取り組まない「ぶらさがり社員」が増加するのも問題です。終わらない仕事をほかのメンバーが穴埋めするため、不満やストレスが溜まりやすく、意欲のあったメンバーのモチベーションも低下する悪循環に陥ります。

チームワークを高める4つのポイント

チームワークを高めるためにチームで心がけたいポイントが4つあります。

チームワークを高めるポイントの4つを説明する図表

1. 目標の設定・共有

優れたチームワークを発揮するには、達成すべき目標の設定やゴールまでの道筋などを明確にし、メンバーに共有することです。メンバーがしっかりと目標を理解し、同じ目的に向かって進んでいることも大切です。チーム目標だけではなく、各メンバーの目標も設定することで、モチベーションが高まり、主体的な行動へとつながります

目標達成を実現するためには、短期目標・中間目標を定めておくことも重要です。進捗状況の確認や業務のフィードバックを実行でき、必要であれば軌道修正することも可能です。

2. 役割の明確化と相互理解

各メンバーが活躍し着実に成果を出せるよう、一人ひとりが果たすべき役割を明確にする必要があります。それぞれのメンバーが所属するチームでどのように貢献できるのかを理解することで、モチベーションの向上が期待でき、チームワークの向上につながります

役割を分担する際は、メンバーの専門性や能力を理解したうえで進めることが大切です。また、メンバー間の協力や助け合いをあらかじめ役割として伝えておくと、サポートする雰囲気が生まれやすくなります

3. コミュニケーションの円滑化・心理的安全性の担保

チームワークを高めるには、コミュニケーションが非常に重要で、多くの研究者が構成要素のひとつとして取り上げています。エン・ジャパン株式会社が公表した「職場でのコミュニケーション」の調査では、コミュニケーションが取れている効果として、「働きやすさ」に次いで「チームワーク」が高まることを実感している人が多いとの結果が得られています。

コミュニケーションが取れることは、何に効果があるのかを調査した結果がグラフでまとめられている

参考)エン・ジャパン株式会社 「職場でのコミュニケーション」をもとに作成

チーム内で円滑なコミュニケーションを実施するには、誰もが対等に忌憚なく発言でき、異なる意見が生じた場合でも、お互いを認めあって着地点を見つけられる心理的安全性の高い環境をつくることが重要です。エン・ジャパン株式会社の調査「職場でのコミュニケーション」においても、コミュニケーションが取れている場合、心理的安全性を感じる従業員の割合が高いことがわかっています。

現在、職場に心理的安全性があると思いますか?という調査の結果がグラフで示されている

参考)エン・ジャパン株式会社 「職場でのコミュニケーション」をもとに作成

心理的安全性を確保するには、上司が部下に積極的に声をかけるなど、日頃から風通しのよい雰囲気づくりがポイントです。また、業務の基本に挙げられる報告・連絡・相談を実施することや、チームミーティングで情報を共有し、コミュニケーションの円滑化を図ることも大切です。

4. リーダーシップの発揮

チームワークの形成には強いリーダーシップが欠かせません。目標達成のためには、各メンバーの自主性を高め、パフォーマンスを最大化させる必要があります。また、現状の課題を把握するとともに、意見の対立や問題が起きた場合も全員が納得できるように解決する調整力や統率力も必要です。メンバーとの日頃のコミュニケーションを大切にし、仕事へのモチベーションを高めることが大きな目標の達成につながります。

参考)岡山大学 三沢 良「チームワークとその向上方策の概念整理」
参考)田原直美, 三沢良, 山口裕幸「チーム・コミュニケーションとチームワークとの関連に関する検討」​
参考)エン・ジャパン株式会社 「職場でのコミュニケーション」

チームワークを高めるためは、個々人の能力向上も重要

チームワークを高めるには、チームだけではなく、所属する一人ひとりのメンバーの能力も高めていく必要があります。論文「個人のチームワーク能力を測定する尺度の開発と妥当性の検討」(相川 充ほか,2012)では、チームワークを実行するために必要な個人の能力を「チームワーク能力」と定義しています。

チームワーク能力は、Dickinson & McIntyre(1997)のモデルにならい、「チーム志向能力」「バックアップ能力」「モニタリング能力」「リーダーシップ能力」の4つの構成要素と、それらに影響を与える基礎的なスキルの「コミュニケーション能力」から成ります。それぞれの要素について解説します。

Dickinson & M cintyre (1997) にならった個人のチームワーク能力のモデル

参考)相川充, 高本真寛, 杉森伸吉, 古屋真「個人のチームワーク能力を測定する尺度の開発と妥当性の検討」をもとに作成

1. コミュニケーション能力

「コミュニケーション能力」は具体的に以下の3つが挙げられます。

  1. 表情の豊かさや自分の意思を素直に表現できる能力(記号化)
  2. ほかのメンバーに自分の意見を伝える能力(主張)
  3. ほかのメンバーの考えや思いを適切に理解する能力(解読)

コミュニケーション能力には、言葉以外の非言語的コミュニケーションも含まれ、これらはチーム一人ひとりとの関係を形成・維持することにつながります。適切な情報の共有は、問題の対処や関係性の強化などに関係し、組織全体のコミュニケーションの質を高める役割を果たします。

コミュニケーション能力を高めるには、相手の話に真剣に耳をかたむけ、内容を理解するよう努力することが大切です。また、誰にでもわかる言葉で複雑な情報を伝えるスキルを磨くことで、理解しやすいメッセージを伝えられるようになります。

2. チーム志向能力

「チーム志向能力」とは、チームに所属することが重要であるとの思考で、自分の目標よりもチーム目標を優先する能力を指します。

  1. ほかのメンバーと価値観や意見の違いがあっても歩調を合わせて進む能力(同調)
  2. チームの和や決定、価値観を大切にする能力(調和)
  3. 自分の意見や考えをもつ能力(自主)

チーム思考能力は、ほかのメンバーがかかわる活動において、チームワークを高め目標を達成するためには不可欠な要素となっています。

3. バックアップ能力

「バックアップ能力」とは、励ましたり同情したりする情緒的サポートのほか、問題を解決する方法を提供することや解決に導く情報を与える道具的なサポート能力を指します。

  1. 落ち込んでいるメンバーがいたら励まし、成功すれば一緒に喜ぶ能力(情緒支援)
  2. 他のメンバーが抱える悩みや問題に対して道具的サポートなどの解決方法を提供する能力(情報支援)
  3. 困っていることに対して具体的に支援し協力する能力(手段支援)

バックアップ能力は、チーム全体の業務効率の向上にもつながります。適切にバックアップするためには、メンバーの気持ちを日常的にくみとり、常に状況を理解する姿勢を保つことが大切です。

4. モニタリング能力

「モニタリング能力」は具体的に以下の3つが挙げられます。

  1. チームの現在の状況を把握する能力(状況把握)
  2. ほかのメンバーの言動を観察するとともに、それに対する自身の言動を確認する能力(意見比較)
  3. 比較したことを受けて状況によって調整する能力(調整思考)

ほかのメンバーの状況やチームが目標に向かって計画どおりに進んでいるかなどを把握することで、適切な対応や戦略の立案が可能になります。

5. リーダーシップ能力

「リーダーシップ能力」とは、メンバー間の働きかけを促すことや、チーム目標の達成に向けて働きかける能力を指します。

  1. 自分がお手本となって各メンバーに指導する能力(遂行指導)
  2. メンバー全員が馴染みやすい雰囲気をつくる能力(関係構築)
  3. 各メンバーを公平に扱い、重要事項をチーム全体に伝える能力(公平対応)
  4. チーム内に起こった問題の対処や、解決方法を見つける能力(問題対処)

チームワークの形成には、メンバーが主体的・能動的に動くことが重要です。そのため、リーダーシップ能力は、リーダーだけではなくメンバー全員に求められる能力といえます。

参考)相川充, 高本真寛, 杉森伸吉, 古屋真「個人のチームワーク能力を測定する尺度の開発と妥当性の検討」
参考)渡部麻美「チームワーク能力トレーニングによる基礎的・応用的スキルの変化」

チームワークを高め、成果の出る組織づくりを!

ビジネスにおけるチームワークとは、メンバー個々人の能力や強みを最大限活かすため、ほかのメンバーとも協力して弱みを補い合う活動を指します。メンバーの相互援助により、一人ひとりの能力が最大化され、結果としてチームの力も最大化される点が特徴であり強みです。

リーダーは、チームワークの意義や高めるポイントを理解し、成果の出る組織をつくることが求められます。優れたチームワークを形成するには、チーム内の心理的安全性を高めることも大切です。メンバー全員が安心して自分の意見や考えを言える組織づくりがチームワークの向上につながります。

お役立ち資料

あなたの組織は対応できている?「心理的安全性」を低下させる3つの問題

  1. Q1. チームワークとは?

    ビジネスにおけるチームワークとは、メンバー個々人の能力や強みを最大限活かすため、他のメンバーとも協力して弱みを補い合う活動を指します。一人ひとりの能力が最大化され、結果としてチームの力も最大化される点が特徴です。

  2. Q2. チームワークを高めるために大切なポイントは?

    チームワークを高めるために心がけたいポイントは4つです。

    1. 目標の設定・共有
    2. 役割の明確化と相互理解
    3. コミュニケーションの円滑化・心理的安全性の担保
    4. リーダーシップの発揮
  3. Q3. チームワーク能力とは?

    「チームワーク能力」とは、チームワークを実行するために必要な個人の能力として定義されています。チームワーク能力は、「コミュニケーション能力」「チーム志向能力」「バックアップ能力」「モニタリング能力」「リーダーシップ能力」の5つの要素で構成されています。

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