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戦略人事とは?戦略の立て方、成功のポイント、人事が果たすべき役割を解説

公開日

この記事でわかること

  • 戦略人事は経営目的のための人材マネジメントであり、近年社会や市場変化の加速や企業成長における“人”の重要性により注目されている
  • 人事部門には4つの機能・役割(HRBP、CoE、Ops、OD&TD)が求められ、経営戦略の理解と人事戦略の策定が重要である
  • 実践には経営陣との連携や従業員の理解、人事部門の負荷軽減が必要で、データの一元管理などのツール活用も効果的である。
目次

戦略人事とは?経営目的のための人材マネジメント

学習院大学の守島基博教授は、戦略人事を「端的に言えば、経営目的のために人材マネジメントを行うこと」と 述べています。

(参考)変革迫られる人材マネジメントと人事部 - 守島基博

2000年代にはウルリッチ教授の考えに影響を受け、「HRBP(Human Resource Business Partner)」などの機能・役割が外資系企業で実践されるようになりました。

近年は国内でもHRBPを設置する企業が増え「戦略人事」という言葉も広く使われています。その取り組みやあり方は企業によってさまざまです。ですが、基本的には経営目的の達成、経営戦略実行のための人材マネジメントの実践や担う役割を指すことが多いといえます。

戦略人事と経営戦略の関係

経営戦略は企業の「目標」であり、企業の目標を達成するための手段の一つが戦略人事です。戦略人事の実践においては人事が経営戦略を深く理解し、必要な人材マネジメントを実行することが求められます。

戦略人事と人事戦略の違い

人事戦略は、採用や配置、育成などの人事業務全般における課題解決のための戦略そのものを指します。戦略人事の実践において、経営目的・戦略に沿った人事戦略の策定やコミットが必要になります。

戦略人事が求められる理由

社会や市場の変化の加速

戦略人事が求められる理由の1つ目は、社会や市場の変化の加速です。社会の変化やテクノロジーの進化が加速するなか、企業はイノベーションや新事業をとおして新たな価値を創出する必要があります。そのために、従来とは異なる知識やスキルをもった人材を確保する重要性が増しているのです。

価値創出における「人」の重要性

2つ目に、企業の価値創出において「人」の重要性が増しています。守島基博教授は2000年代の初めから最近までは「資金があれば経営は成り立つ時代」であり「物も技術も特許も買える時代だった」と前置きしたうえで、今の時代を以下のように形容します。

今までのものを少しずつ改良・改善して新しいビジネスモデルをつくったり、新しい商品やサービスをつくるという時代ではなく、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)と呼ばれるビッグ・テックのように、今までとはまったく違ったものをつくり上げないと、企業が成長しない時代になっています

戦略人事の実現が困難な理由

戦略人事の重要性が増している一方、実践に悩む企業は少なくありません。「日本の人事部」が2022年に実施した調査によると、日本企業の人事部の9割近くが戦略人事の重要性を認識しています。

9割近くが戦略人事の重要性を認識していることを示す調査結果

(出典)日本の人事部 「日本の人事部 人事白書 2022

しかし、株式会社パーソル総合研究所が実施した調査では「自社において戦略人事が実現できているか」との問いに対しては41.6%が「否定」的な回答をしています。

調査結果を示す図

パーソル総合研究所「人事部大研究」 

さらに、Unipos株式会社が実施した「Unipos 戦略人事に関する調査2023」では、戦略人事の課題として、人事部門のリソース不足が1位となっています。ほかには経営へ関わる権限不足、従業員の理解や協力不足、経営陣の認識不足などの課題が上がりました。

調査結果を示す図

(出典)Unipos 「Unipos 戦略人事に関する調査2023

2021年の株式会社マクロミルの調査では、戦略人事の取り組みに満足していないと考える企業のうち、失敗理由を人手不足と考えている企業も多いことが明らかになっています。

調査結果を示す図

(出典)マクロミル 「従業員31名以上の企業に勤務する全国29~50歳の人事労務担当者551名を対象に実施」した調査

戦略人事において人事が果たすべき4つの機能・役割

デイビット・ウルリッチ氏は著書『MBAの人事戦略』で、「戦略パートナー」「変革エージェント」「管理のエキスパート」「従業員チャンピオン」という人事部門の4つの機能・役割を提唱しました。

果たすべき4つの機能・役割をまとめた図

戦略人事を実践するには、以下の4つの機能・役割を担うことが必要といわれています。

  • HRビジネスパートナー(HRBP)

  • センター オブ エクセレンス(CoE)

  • 組織開発&人材開発(OD&TD)

  • オペレーションズ(Ops)

(参考)グローバル企業におけるHRBPのあり方 - デロイト トーマツ グループ

HRビジネスパートナー(HRBP)

HRBPは、経営や事業戦略の達成にコミットする戦略パートナーとしての役割を指します。経営層のパートナーとして人事戦略の策定や人事課題解決の実行を推進します。

センター オブ エクセレンス(CoE)

「センター オブ エクセレンス」は、採用や人材育成といった人事領域における高いスキルや知識を有する集団を指します。

HRBPの立てた人事戦略を施策に落とし込む際に、人事制度や人材育成プログラムの選定や効果検証などへの専門性を発揮します。

オペレーションズ(Ops)

「オペレーションズ」は、従業員の採用や給与計算、勤怠管理などの人事業務を指します。従来の人事の基本的な業務を効率的に遂行することも戦略人事の役割の一つです。

シェアードサービスの利用やアウトソーシング化、HR Techの活用によって従来の人事業務にかける労力を削減するなど、人事部門のリソース不足対策を図ることも求められます。

組織開発&人材開発(OD&TD)

経営戦略や経営計画を実行・実現するには、実行に必要な人材の育成、組織の生産性を高めるための組織開発が必要です。近年では多様な人材が活躍する組織づくり・環境づくりなども重要性が増しています。

戦略人事の進め方5ステップ

ステップ1:経営戦略や経営計画の理解

戦略人事を実行する目的は経営戦略の実現です。まずは企業としてのビジョンやミッション、中長期の経営計画などの理解が欠かせません。

ステップ2:経営戦略をもとに必要な人材像を明確化する

経営戦略の達成に必要なスキルや経験などを洗い出します。望ましい人物像を明確化します。

ステップ3:人事戦略・方針の策定

理想像を描いたら、組織の現状を踏まえて人事戦略を策定します。

人材像にあてはまる既存社員の人数などを確認し、いつまでに、何人を新たに採用・あるいは育成する必要があるかなども整理します。

戦略や方針については、経営陣や人事部の担当者ともディスカッションを重ねながら練るとよいでしょう。

ステップ4:戦略に沿って各種人事施策の検討

人事戦略を明確化した後は、採用や人材育成、組織開発など、各種必要な施策を検討します。必要に応じて各領域を担う人事部の担当者とも戦略を議論したうえで、施策に落とし込みましょう。

戦略人事を実践するためのポイント

(1)会社のビジョンや経営戦略への理解

戦略人事を成功させるには、会社のビジョンや中長期的な目標への深い理解が欠かせません。必要に応じて経営陣との面談なども実施し、会社としてのビジョンをインプットしましょう。

(2)現状の組織課題と理想とのギャップを把握

ビジョンや経営戦略の達成のために必要な組織の姿と現状のギャップを把握することも重要です。経営戦略に沿って必要な人材像やスキルを明確化しましょう。

「会社のビジョンや経営戦略への理解」と同様、経営陣や現場マネージャーと面談を重ね、理想と現状への理解を深めましょう。

(3)人事戦略と人事施策と一貫性をもたせる

戦略人事の実行においては、人事戦略と各種施策の一貫性が重要です。人事戦略を各領域を担う人事担当者が理解できるよう、しっかりと共有や説明をしましょう。

(4)従業員の十分な理解を得る

人事戦略に対して従業員の理解が十分に得られていないと、採用や異動について理解を得られず、不満が生じる原因になる恐れもあります。

目的を人事が従業員に対してしっかりと説明し、十分な理解と協力を得ましょう。人事が経営陣と従業員の橋渡し役となれるのが理想です。

(5)人事部門の業務負荷軽減を図る

戦略人事を成功させるには、人事部門の業務負担を軽減する適切な対策を講じることも必要です。

戦略人事を担う人事部門には、従来の人事業務に加えて、経営目的のための人事制度の設計や経営陣との折衝など、これまでとは異なる業務が求められます。

人事部門の要員が不足している場合、戦略人事の実践がうまくいかない可能性は高まるでしょう。人員に余裕がない場合、ツールを導入して既存の業務の効率化を図ることも有効です。

戦略人事の実践事例

三井化学株式会社

三井化学株式会社は、2016年に経営計画と連動した人材戦略を初めて策定しました。2021年には長期経営計画「VISION2030」に基づいた人事戦略の主要課題を優先課題として特定し、解消に向けて取り組んでいます。

総合化学メーカーとして、多岐にわたる事業のけん引役となる人材育成のため、後継者計画やグローバルレベルでのタレントマネジメントを実施中です。

また、グループ人材情報や組織ごとのエンゲージメントレベルの可視化、グローバルな企業体の人事ガバナンスポリシーの制定、タレントマネジメントシステムの導入も同時に議論しています。

三井化学株式会社が実施した戦略人事の詳細は、以下の記事で詳しく紹介しています。

ダイドードリンコ株式会社

ダイドードリンコは、グループ理念に「人と、社会と、共に喜び、共に栄える。その実現のためにDyDoグループは、ダイナミックにチャレンジを続ける。」を掲げています。

心身ともに健康で一人ひとりが最大限の力を発揮できる「ワーク・ライフ・シナジー」の実現に向けた環境づくりを推進。従業員の健康リテラシーの向上を図るとともに、「新たな働き方」や「副業制度」などに取り組んでいます。

従業員が新しいアイディアを出し合う「DyDo チャレンジアワード」で生まれた副業制度をはじめ、従業員を巻き込んだ施策でエンゲージメントの向上に成功しています。

双日株式会社

双日株式会社は、2030年の目指す姿を「事業や人材を創造し続ける総合商社」とし、そのための人材戦略として「多様性を活かす」「挑戦を促す」「成長を実感できる」の3つの柱を掲げ実践しています。

これまで管理中心の業務だった人事も、戦略人事を目指しています。2019年から実施している新規事業創出に向けた「Hassojitz プロジェクト」では、未来構想力や戦略的思考の定着だけではなく、従業員の挑戦を促す取り組みとなっており、人的資本経営の実践によって組織に活力をもたらしています。

双日の人材戦略を示した図

双日株式会社が実施した戦略人事の詳細は、以下の記事で詳しく紹介しています。

戦略人事の第一歩は、人材データの一元管理から!

事業環境の変化が激しい時代において、戦略人事の重要性は今後も増していくでしょう。しかし実践の課題も多く、なかでも人事部門の人手不足が大きな障壁となっています。

戦略人事を担う人事部門は、従来の人事業務に加えて人事制度の設計や経営陣との折衝など、これまでとは異なる業務も担う必要があります。円滑に進めるためには負荷軽減の対策も必要でしょう。

タレントマネジメントシステムの「SmartHR」は、人事労務業務のペーパーレス化による効率化から、データを活用した人材マネジメントまで支援します。

業務を通して日頃から従業員にまつわるデータを収集・管理することで、データにもとづく人材マネジメントを負担少なくはじめられます。

SmartHRのタレントマネジメントシステムを詳しく知りたい方は、以下の資料もご覧ください。

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5分でわかるタレントマネジメント

  1. Q1. 戦略人事とは何ですか?

    「戦略人事」とは、人事部門が従来の管理やオペレーション業務に加えて、企業の経営戦略を実現するために実行する人材マネジメントのことです。人的資源を最大限活用することで、経営戦略の実現や競争優位性・差別化を図れます。

  2. Q2. 戦略人事の4つの機能とは?

    戦略人事において人事が果たすべき機能は以下の4つです。

    • HRビジネスパートナー(HRBP)
    • センター オブ エクセレンス(CoE)
    • オペレーションズ(Ops)
    • 組織開発&人材開発(OD&TD
  3. Q3. 戦略人事を成功させるポイントは?

    戦略人事を成功させるポイントは以下の点が挙げられます。

    • 会社のビジョンや経営戦略、現状課題への理解
    • 戦略人事の成果・目標を明確にする
    • 人事戦略と人事施策と一貫性をもたせる
    • 従業員の十分な理解を得る
    • 人事部門の業務負荷軽減を図る

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