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チームビルディングとは?重要性や効果、成功のポイント、手法を紹介!

公開日

この記事でわかること

  • チームビルディングで生まれる効果
  • チームビルディング成功のポイントと注意点
  • 具体的な5つの取り組み方法
目次

企業における従業員の離職率低下や、仕事のモチベーションアップに期待がもてる「ワークエンゲージメント」が注目を集めています。ワークエンゲージメントの取り組みは、労働人口減少や人材の流動化による優秀な人材の確保・定着に課題をもつ企業にとって、大きな力になってくれるでしょう。

本稿では、ワークエンゲージメントを向上させるメリットや向上のポイント、測定方法について解説します。

チームビルディングとは
スキル・能力を活かすための環境づくりや取り組み

「チームビルディング」とは、共通の目標の達成を目指し、チームの一人ひとりのスキルや能力を最大限に引き出し、活かすための環境づくりや取り組みを指します。

チームビルディングにおける「チーム」とは、それぞれのメンバーが共通の高い目標や理想に対して力を合わせ、成し遂げようとする集団を意味します。企業における「部署」は似た存在ですが、所属メンバーが共通の目標や理想に向かっていない場合はチームとはいえません。

「チームビルディング」とは、共通の目標の達成を目指し、チームの一人ひとりのスキルや能力を最大限に引き出し、活かすための環境づくりや取り組みを指します。

参考:令和元年 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について - 厚生労働省をもとにSmartHR Mag.編集部で作成

チームビルディングは、もとはチーム内の社会的相互作用や対人関係改善のために考案されたものです。現在では、チームに存在する問題の発見と解決、成果を挙げるチームづくりや組織開発の手法として普及しており、ビジネスの場でも取り入れられています。

チームビルディングの目的・重要性

チームビルディングの目的は、メンバーとなる各個人のスキルや経験を最大限に引き出してチームのパフォーマンスを最大化し、目標を達成することです。

チームビルディングの重要性が高まっている背景は、以下の理由から個々人でできる対応に限界が出てきたからです。

  • 国際情勢の不安定化
  • 従業員のニーズの多様化
  • テクノロジーの高度化・複雑化

多様化が進むビジネスシーンにおいて、企業が迅速・柔軟に対応するためには、個性あるメンバーが主体性をもって働き、お互いの弱みを補い、強みを活かせる組織づくりが必要不可欠になっています。

チームビルディングで生まれる5つの効果

(1)心理的安全性が構築される

チームビルディングで生まれる効果として、自分の言動を安心して表現できる心理的安全性の構築が挙げられます。

共通の目標を目指すチームビルディングでは、メンバー同士の会話が増え、コミュニケーションが活発になります。

風通しのよい環境で相互理解や信頼を深められれば、心理的安全性が構築され、組織コミットメント、ひいては従業員エンゲージメントの向上にもつながります。

また、メンバー間の距離が近くなることで、ほかの人の弱点をカバーするような動きも期待できるでしょう。

「心理的安全性」については、以下の記事でより詳しく解説しています。

「従業員エンゲージメント」については、以下の記事でより詳しく解説しています。

(2)メンバーのモチベーションが向上する

チームビルディングは、一人ひとりのスキルや能力を最大限に引き出すための環境づくりや取り組みです。能力を発揮する場と自身の役割が明確になることで、モチベーション向上が期待できます。

また、チーム内での働きが評価されることや、ほかメンバーの仕事に刺激を受けることで、能動的にチームに貢献する意欲も生まれやすくなります。

(3)チームの生産性や問題解決能力が向上する

チームの生産性や問題解決能力が向上することも、チームビルディングによって生まれる効果の1つです。

メンバーのスキルや能力が高まり、モチベーションのアップやほかメンバーの自主的なサポートは、生産性の向上につながります。

またチームビルディングにより、コミュニケーションの量が増加することで情報の伝達漏れがなくなり、知識の共有や相談が積極的に実施されるため、課題の解決もスムーズになります。

(4)新しいアイデアが創出される

チームビルディングでは、さまざまな価値観や考え方をもったメンバーと関わることで、個人の能力を超えた相乗効果も期待できます。

ほかにも、コミュニケーションの量が増加することから、新しいアイデアやイノベーションの機会も生まれやすくなります。

(5)メンバーのリーダースキルや変革力が育成される

チームをうまく機能させるためには、各メンバーが主体的に働くことが重要になります。その過程で変革力や指導力など、マネジメントに必要な要素を育成できます。

リーダーとしての役割を担っている場合、メンバーの意識を目標達成に向かわせることや、メンバーと目線を合わせるなど、チーム構築にかかわる行動を起こすことで、自身のスキルも磨けます。

チームビルディングの5段階プロセスとリーダーの役割

チームはプロセスを経て発展します。チームビルディングにおけるチームの状態を5段階に分けたフレームワークを提唱したのが、心理学者のブルース. W. タックマンです。

フレームワークは通称「タックマンモデル」として知られており、発表された1965年当時は4段階の階層でしたが、1977年に1段階が追加となり5段階のプロセスに変わりました。(Bruce W Tuckman & Mary Ann C. Jensen 1977)

タックマンモデルでは以下の5つのプロセスを経てチームは発展するとされており、次の段階を目指すために必要な要件を示しています。

タックマンモデルでは5つのプロセスを経てチームは発展するとされており、次の段階を目指すために必要な要件を示しています。

参考:Stages of Small-Group Development Revisited

第1段階:形成期(Forming)

第一段階の「形成期(Forming)」は、チームが形成されたタイミングの初期段階を指します。この段階ではメンバーはお互いのことを知らず、チームの目標も明確ではありません。メンバー間には遠慮があり、様子を見ながら他の人を知ろうとしている状態です。

形成期では、リーダーがチームの方向性や目標を明確にし、メンバーへ浸透させることが重要です。また、メンバー同士が理解を深められるようなコミュニケーションの場の提供も大切です。

形成期におけるリーダーの役割

形成期においてはリーダーがメンバーのスキルや価値観などをチーム内で共有し、それぞれが役割を意識できるように促すことが重要になります。

また、初対面のメンバーや関わることが少ないメンバーを組み合わせる「ペアインタビュー」も有効で、相互理解の促進につながります。

第2段階:混乱期(Storming)

「混乱期(Storming)」は、目標が定まりチームは進み始めているが、メンバー同士の主張のぶつかり合いや対立、価値観の違いなどがあらわれる段階です。

メンバー同士がお互いのことを理解し始めているからこそ、価値観や考え方の違いが浮き彫りになりやすいといえます。

混乱期では、メンバー同士のコミュニケーションの質が重要で、お互いが納得するまで対話をし、理解を深めることがチームの発展につながります。

混乱期におけるリーダーの役割

混乱期で起こるメンバー同士の意見の衝突を避けたり、あるメンバーの発言に迎合する雰囲気が生まれると、メンバー間で不信感や不満が蓄積する可能性があります。

チーム活動への影響を避けるためにも、率直に意見・議論できる雰囲気の醸成が重要です。リーダーは、各メンバーの意見をヒアリングし、必要に応じたアドバイスや、メンバー同士の対話の機会を設けるなど、チームの円滑なコミュニケーションの促進が求められます。

第3段階:統一期(Norming)

「統一期(Norming)」は、共通の規範が形成される段階で、メンバーがお互いの価値観の理解によって調和が生まれ、チームも安定します。各メンバーがチームの目標を意識し、担うべき役割も共有されているため団結力が高く、生産性も向上します。

活発に議論が交わされますが、混乱期とは異なり、お互いの意見を尊重したコミュニケーションが交わされます。価値観の違いがあっても、柔軟に対応するケースが増えるのも統一期の特徴です。

統一期におけるリーダーの役割

食い違う意見が出ても衝突することなく前向きに議論されるため、間違った方向へ進まないように必要に応じた軌道修正の役割が、リーダーには求められます。

次の段階へ向け、メンバー間で取り決めた目標達成やチームで決めたルールの遵守など、チームとしての結束力が促進するような働きかけも重要です。

第四段階:機能期(Performing)

「機能期(Performing)」は、それぞれのメンバーが自分の役割を果たすだけではなく、仲間をフォローする体制も整っている段階です。

お互いをサポートし合う体制により、チームには結束力が生まれます。また、共通の目標に向かって各メンバーが能動的に行動することで、自身の役割を果たすとともに、チームも機能した状態を生み出せます。

機能期では、難易度の高いことにもチャレンジしようとする気概が生まれやすい傾向にあります。できるだけ長期にわたり、高いパフォーマンスを持続させ、結果を出すことが重要です。

機能期におけるリーダーの役割

機能期は、成果が見え始める時期でもあるので、リーダーは細かなことに対して指示したりアドバイスしたりするよりも、メンバーの自立をサポートする取り組みやメンタルケアなどの役割を担うのが適切です。

また、チームワークをより高めるために必要なアクティビティの実施や、状況によっては役割分担や方向性の見直し・調整もリーダーの役割に挙げられます。

第五段階:散会期(Adjourning)

「散会期(Adjourning)」は、プロジェクトや目標の達成によりチームが解散する段階で、メンバーが満足感や達成感を味わっていることが理想です。

チームが解散する際、メンバー同士が別れを惜しんだり、称賛したりする行動が見られた場合は、チームビルディングが成功した証と考えられます。

散会期におけるリーダーの役割

散会期は、チームの各メンバーにとって、培った経験やスキルを他の場で活かすための新たなスタートでもあります。リーダーは、これまでの活動のフィードバックや感謝を伝え、よりモチベーションが高まるような締めくくり方で送り出すことが求められます。

メンバーの気持ちをスムーズに切り替えるため、チームとして区切りをつけるイベントの開催も有効です。

チームビルディングを成功させるポイント・注意点

チームの目標・方向性を明確に設定し、浸透させる

チームビルディングを成功させるためには、大前提としてチーム共通の目標が欠かせません。方向性やビジョンも明確にし、一人ひとりのメンバーへの浸透も重要です。

設定した目標があいまいで抽象的な場合、目指す先が不透明なことからチームビルディングが成功しない可能性も高まるため注意しましょう。

適切に人材を配置し、役割を明確にする

適切な人材配置と役割を明確にすることも、チームビルディングを成功させる重要なポイントです。

リーダーは適切に人材を配置し、各メンバーに具体的なミッションと役割を与えたうえで、一人ひとりのスキルや経験などの必要な情報をメンバー間で共有しましょう。

コミュニケーションをとおして役割が適正化されるようになりますが、役割を決める際は、当事者意識の醸成のためにも、各メンバーの得手不得手を把握することはもちろん、本人の希望も加味することが大切です。

チームビルディングはメンバー同士のコミュニケーションと主体性が非常に重要です。とくに形成期においては、メンバー間の理解が浅いからといってリーダーが指示を与えてばかりいると主体性は育ちません。

多様な価値観の容認

チームビルディングでは、お互いのことを知らないメンバーが集うため、多様な価値観が容認されるチームの構築が重要になります。自分の意見や考えを安心して発言できる「心理的安全性」を構築することで風通しのよいチームづくりが可能になります。

リーダーは、活動がスムーズに進むよう各メンバーの考えや価値観に耳を傾け、本音を引き出し信頼関係を築くことが大切です。

多様な価値観を否定することなく、尊重する環境を整えることで、お互いをより理解でき、団結力の高いチームを構築できます。

チームビルディングに適した5つの取り組み

さまざまな手法を活かすことで、チームとしての完成度が高まります。今回は5つの取り組みをご紹介します。

(1)緊張を解きほぐす「ゲーム」

形成期のチームは、メンバー同士の理解が進んでいないため、緊張や遠慮などのぎこちなさが漂います。お互いの緊張感をできるだけ早く解きほぐすには、ゲームがおすすめです。複数のチームに分かれて取り組めるゲームは、楽しみながら友好関係を深められ、一体感も形成できます。

たとえば「ドミノ倒し」は、チーム別でドミノを並べて倒すゲームで、もっとも長くドミノを倒せたチームを競うシンプルなルールです。一人ひとりがドミノを配置するため、責任感やチームワークを形成できます。

価値観の相違があらわれる混乱期には、お互いの意見を出し合えるゲームをすることで、それぞれのメンバーの考え方を共有できます。在宅ワークのメンバーがいる場合は、オンラインでも参加できるゲームを選択し、ぎこちなさを解消しましょう。

(2)信頼関係を築く「1on1」

チームメンバーだけでお互いの理解を深め距離を縮めようとしても、難しいこともあります。形成期や混乱期においては、リーダーが一人ひとりのメンバーと信頼関係を築き、正しい方向へ進めるようにコントロールすることも重要です。

信頼関係を深めるには、リーダーとメンバーが1対1で面談する「1on1」の実施が有効です。コミュニケーションを図るなかで本音や考えを引き出せるでしょう。

また、1on1で得られた意見をチーム全体に波及させることで、各メンバーの主体性が育まれ、組織への積極的な関与も期待できます。

リクルートマネジメントソリューションズが公表した「1on1ミーティングに関する実態調査」によると、1on1を実施している企業では、上司と部下のコミュニケーションが増えたと6割以上が実感しています。本音で話せる関係性を築けている割合も4割以上と、良い効果が表れていることが確認できます。

1on1を実施している企業では、上司と部下のコミュニケーションが増えたと6割以上が実感しています。本音で話せる関係性を築けている割合も4割以上と、良い効果が表れていることが確認できます。

出典:​導入の課題を乗り越え、効果的な実施をするために 1on1ミーティングに関する実態調査 - 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

「1on1ミーティング」については、以下の記事でより詳しく解説しています。

(3)相互理解を深める「イベント」

相互理解を深め、より結束力の強いチームを構築するには、仕事以外で親睦を深められるイベントを開催するのもおすすめです。

期ごとに実施するキックオフミーティングや、メンバーのプライベートに近い一面を知ることが可能なバーベキューや社員旅行などにより、より深く相手を理解できれば、仕事でコミュニケーションを図る際にも役立ちます。

株式会社エイチ・アイ・エスが公表した「1,000社の従業員に聞いた社内行事の傾向と意識調査結果を公開」によると、社員旅行や懇親会といった社内イベントを実施している組織のほうが、していない組織に比べて上司や部下と円滑なコミュニケーションを実現できている割合が高く、チームワークの向上にも寄与することがわかっています。

社員旅行や懇親会といった社内イベントを実施している組織のほうが、していない組織に比べて上司や部下と円滑なコミュニケーションを実現できている割合が高く、チームワークの向上にも寄与すると判明しています。

出典:1,000社の従業員に聞いた社内行事の傾向と意識調査結果を公開 - 株式会社エイチ・アイ・エスをもとに編集部で作成

(4)団結力強化には「アクティビティ」

機能期などにおいて、チームとしてより団結力を強化したいときには、全員で体を動かせるスポーツをはじめとした「アクティビティ」が有効です。

シンプルなルールのアクティビティは、思考を必要以上にめぐらす必要がなく、素直なコミュニケーションのきっかけになります。チーム全員で汗を流し楽しむことは、フラットな関係性を築きやすく、信頼を高めることにもつながります。

(5)主体性を引き出す「ワークショップ」

メンバーの主体性を引き出したいときには、参加者が主体的に参加できる「ワークショップ」の実施がおすすめです。

共同作業とともに、メンバーが議論や試行錯誤をしながら成果に向けた取り組みを経験できます。チームで活動する基礎を学べ、成果を出すことでより実力が増していきます。

組織の発達段階に合わせた適切な手法で
チームビルディングを実施しよう

チームビルディングは、共通の目標に対して一人ひとりのメンバーが主体的に能力を発揮し、成長・協力し合えるような環境づくりや取り組みによって成し遂げられます。

これからチームを率いるリーダーやチームがうまく機能していない場合に有効で、プロジェクトの成功や成果を出す組織づくりに効果的です。リーダーはタックマンモデルに代表される5つの段階における役割を理解するとともに、チームの状態に合った戦略を立てることが重要です。信頼関係を築く1on1や団結力を強化するアクティビティなどを実施するとともに、組織の発達段階に応じて適切な手法を用いることがチームビルディングを成功へと導きます。

お役立ち資料

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  1. Q1. チームビルディングとは何ですか?

    A.「チームビルディング」とは、プロジェクトの成功や成果を出す組織づくりのために有効な手法です。目標の達成を目指し、チームの一人ひとりのスキルや能力を最大限に引き出し、活かすための環境づくりや取り組みを指します。

  2. Q2. チームビルディングのやり方は?

    A.チームビルディングにおけるチームの状態は以下の5つのプロセスを経て発展します。

    • 第一段階:形成期
    • 第二段階:混乱期
    • 第三段階:統一期
    • 第四段階:機能期
    • 第五段階:散会期

    リーダーは、はじめにチームのビジョンを明確に示し、メンバー間の円滑なコミュニケーションを促進できる環境の整備が求められます。

  3. Q3. チームビルディングを成功させるポイントは?

    A.チームビルディングを成功させるポイントは以下のとおりです。

    • チームの目標・方向性を明確に設定し、浸透させる
    • 適切に人材を配置し、役割を明確にする
    • 多様な価値観の容認

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