社労士が解説! 今月のHRニュース 2021年5月編(年度更新の注意点、算定基礎届への対応、賞与支払届の対応など)


労働保険の年度更新の書類や、住民税の決定通知書が届きはじめ、各企業の人事労務部門の方々は繁忙期に入りはじめているのではないでしょうか?

6月に入ると算定基礎届の書類が届き、夏季賞与の支給の準備を進める必要があるなど、人事労務部門は大忙しです。

この繁忙期を効率的に乗り切れるよう、今回のHRニュースが情報収集や整理の助けになれば幸いです。

2021年5月のトピックの振り返り

(1) 雇用調整助成金の特例措置の一部延長

HRニュースのバックナンバーでも既にお伝えしている通り、雇用調整助成金の従来からの条件での特例措置(1人1日あたりの給付額を15,000円に引き上げ等)は4月30日で終了となり、5月1日以降は特例措置が段階的に縮小されることが決まっています。

この流れ自体に変更はないのですが、5月1日以降、全国一律で縮小を開始するのではなく、新型コロナウイルスの影響が深刻な業況または地域に関しては、6月30日まで従来の条件での特例措置が継続されることとなりました。

詳細については、厚生労働省のWebサイトより、リーフレットをご確認ください。

(参考)
雇用調整助成金(新型コロナ特例)|厚生労働省 

(2) 住民税の決定通知書の到着

この記事が公開される時点では、多くの市区町村から新年度分の住民税の特別徴収の決定通知書が届いているはずです。

住民税の特別徴収は、6月分(7/10納期限分)から翌年5月分(6/10納期限分)が「年度」となっていますので、6月支払分の給与から控除額が変更になります。給与計算ソフトのマスタのアップデートを忘れないようにして下さい。

なお、特別徴収の対象となるのは、令和2年の年末調整を自社で行った従業員(給与支払報告書で「普通徴収」を選択した者を除く)、および、令和3年1月以降に入社した従業員のうち「給与所得者異動届出書」を当該従業員が居住する市区町村へ提出し、普通徴収から特別徴収へ切り替えた方、旧勤務先から自社へ特別徴収を引き継ぐ手続きをした方です。

特別徴収の対象になるはずなのに、6月に入っても特別徴収の決定通知書が届かないという場合は、何らかの事務手続上のエラーが起きている可能性がありますので、市区町村の住民税に関する事務を取り扱う窓口に確認するようにしてください。

(3) 年度更新の提出・納付期間は延長なし

先月のHRニュースでお伝えした年度更新の書類ですが、そろそろ皆様のお手元に届いているのではないかと思います。

令和2年度の年度更新は、コロナ禍の影響を踏まえ、申告書の提出および労働保険料の納付期限が8月31日まで延長されました。しかし、令和3年度に関しては、特段の延長措置は設けられておらず、平年通り、6月1日~7月12日が提出・納付期間となっています。

(参考)
令和3年度労働保険の年度更新期間について(厚生労働省)

なお、新型コロナウイルスの影響により、労働保険料の納付が難しい場合には、猶予制度がありますので、活用をご検討ください。

(参考)
新型コロナウイルス感染症等の影響による労働保険料等の納付に係る猶予制度のお知らせ(厚生労働省)

2021年6月のトピック

(1) 労働保険の年度更新の実務における注意点

6月は、労働局から届いた申告書を基に、年度更新の実務を進めることになります。

申告書の全般的な記入方法つきましては既にインターネット上でも多々情報を得られるので、本稿では総論的な解説は割愛し、実務上で特に間違いが多い点についてリスト形式で紹介いたします。

  • 役員報酬は賃金総額の集計から除いているか
    • ただし兼務役員の労働者としての賃金部分は含める
  • 労災保険に関し、出向者の賃金を出向先でカウントしているか
    • 雇用保険は本人が加入している会社側でカウント
  • 集計している「1年分」の賃金の範囲は正しいか
    • 支払日ベースではなく、4月「勤務分」~翌年3月「勤務分」の賃金を集計する
  • 64歳以上の従業員の賃金を雇用保険の賃金総額に含めているか
    • 令和2年度以降は保険料免除が終了している
  • 労災保険料率・雇用保険料率は正しい数字を使っているか
    • 令和2年度から保険料率は据え置きだが、事業内容に変更があった場合等は注意

(2) 算定基礎届への対応

社会保険の算定基礎届に関する書類が6月中には日本年金機構より各会社に届きます。健康保険組合に加入している会社の場合は、健康保険組合からも届きます。

算定基礎届は、4月、5月、6月の3ヶ月間に支払われた報酬を従業員ごとに記載し、9月分以降の社会保険料を決定するために提出するものです。

令和3年度の算定基礎届の提出期間は7月1日〜7月12日となっています。年度更新と同様、新型コロナウイルスによる提出期間の延長はありません。

日本年金機構のホームページでは、下記のように説明されていますので、実務上はある程度の遅延は許容するスタンスのようです。

新型コロナウイルス感染症の影響により、上記期限までの提出が難しい場合は、7月12日以降も受付いたしますが、早期のご提出にご協力いただくようお願いいたします。

(引用・参考)
【事業主の皆さまへ】令和3年度の算定基礎届の記入方法〔説明動画〕等について(日本年金機構)

しかし、算定基礎届の提出が遅れると、年金事務所からの標準報酬の決定通知書の到着が遅れます。結果として、新しい標準報酬による社会保険料の控除が反映される10月分以降の給与計算に影響する可能性があるため、可能な限り提出期限を遵守したいものです。

(3) 賞与支払届

6月は、夏季賞与の支給を予定している会社も多いのではないでしょうか。

賞与を支払った場合、日本年金機構へ賞与支払届を提出しなければなりません。賞与に対しても社会保険料が発生するため、社会保険料を賦課するための情報提供として賞与支払届が必要です。

賞与支払届の提出が漏れた場合には、年金事務所の調査の際などに指摘を受け、遡って納付をする手間が生じてしまいますので、漏れのないよう対応をお願いします。

なお、令和3年4月から、賞与支払届等に係る「総括表」は廃止されています。

同様に、令和3年4月から、定期賞与が不支給であった場合には、「賞与不支給報告書」の提出義務が新設されていますので、コロナ禍の影響などで賞与を支給しなかった場合には、こちらの「賞与不支給報告書」を忘れないようにしてください。

(参考)
【事業主の皆さまへ】令和3年4月からの賞与支払届等に係る総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設について(日本年金機構)

(4) 労働者派遣事業報告書

派遣事業を営んでいる会社は、毎年6月1日~6月30日の間に、都道府県労働局へ「労働者派遣事業報告書」を提出しなければなりません。

「労働者派遣事業報告書」は、その年の6月1日現在の労働者派遣事業の状況を取りまとめて報告する書類です。

6月1日の現状に加え、過去1年間の労働者派遣実績(派遣人数や派遣金額等)や、キャリアアップ研修の実施状況など、かなり詳細に報告しなければならない内容となっています。

また、派遣労働者の同一労働・同一賃金について、労使協定方式を採用している場合は、労使協定書の添付も必要となります。

「労働者派遣事業報告書」をまとめるには、かなりの時間を要しますので、余裕をもって着手しましょう。

労働者の派遣実績が無かった場合にも提出が必要となりますので、ご注意ください。

人事労務ホットな小話

年度更新、算定基礎届が人事労務部門によっては一大イベントである反面、昨今、筆者の周囲では、「劇的に工数を減らすことに成功した」という話を耳にすることも増えました。

突き詰めていえば、年度更新は、従業員の月別、属性別の賃金を正しく集計することがポイントです。

算定基礎届は、4月、5月、6月に支払われた報酬の3ヶ月平均を、いくつかの例外(たとえば勤務日数が17日未満の月は除くなど)に気を付けながら算出することがポイントです。

HRテクノロジーの進化により、これらの集計や算出は、かなりの部分が自動化できるようになりました。しかし、導入すれば魔法のように年度更新や算定基礎届の書類が完成するわけではありません。

「劇的に工数を減らすことに成功した」会社は、社内でHRテクノロジー関連のツールを利用する上での運用ルールを定めたり、入社や退職、人事異動があるたびにマスタのアップデートをコツコツ確実に行ったりして、信頼できるデータベースを構築しています。

信頼できるデータベースがあるからこそ、HRテクノロジーによる書類の自動作成結果も正確であり、人の手によるチェックや修正も最小限で済みます。

どんなに高性能なツールを導入したとしても、その運用をしっかりと行わなければ「宝の持ち腐れ」になってしまいます。HRテクノロジーを導入したにも関わらず、年度更新や算定基礎届で手こずってしまった場合は、日々の運用状況を振り返り、改善の可能性を検討してみてはいががでしょうか。

まとめ

今年は全国的に梅雨入りが早いようで、外出が億劫ですね。そして、コロナ禍も引き続き予断を許さず、引き続き外出自体を控えることが望ましい状況です。

そのような状況の中、昨年11月からe-Govが大幅アップデートで使いやすくなりました。また、SmartHRを始めとするHRテクノロジーも日進月歩で進化していますので、今年の年度更新や算定基礎届は、電子申請やクラウドソフトを活用して、是非とも効率的に対応を進めたいですね。

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最新の労務関連情報やトレンドを踏まえて決定いたします。過去に解説したトピックは以下の通りです。

  • 介護休暇の時間単位取得義務化など法案改正情報の解説
  • 新型コロナウイルスに関連した労災給付についての解説
  • 在宅勤務者への安全配慮義務についての解説

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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