1. 人事・労務
  2. 労務管理

【2024年問題】物流×複数拠点こそペーパーレス化をすべき理由を事例で紹介

公開日
目次

2024年問題を前に、なぜ物流企業の皆さまが労務業務の効率化を進められているのか。物流業界特有の悩みを、SmartHR導入企業さまがどのように乗り越えたのか。

2023年4月21日セミナーにて、大翔トランスポート株式会社 鍋田さん、上野さん、池田さんにお話を伺った内容をご紹介します。

  • 鍋田 稔 氏

    大翔トランスポート株式会社 管理本部 部長

  • 上野 樹理 氏

    大翔トランスポート株式会社 管理本部 係長

  • 池田 志郎 氏

    大翔トランスポート株式会社 管理本部 人事課 係長

はじめに:2024年問題を前に、物流企業が労務業務の効率化を進める理由

物流業界全体の課題

以下の課題を抱える物流業界。その解決のためには、「労務業務の効率化」に鍵があると考えます。

  1. 慢性的な人手不足による労働力不足
  2. 長時間労働による現場ドライバーの疲弊
  3. 現場ドライバーの高齢化
  4. 若年層の定着率の低さ
  5. 業界内転職による高い離職率
  6. 2024年問題(残業時間の上限規制)

労務業務効率化の必要性

「労務業務の効率化」実現によって生まれる時間を活用して、人事・労務担当者には以下のことが叶えられます。

  1. 就労環境の整備
  2. 人事施策の検討
  3. 法改正に向けた準備

また、現場従業員の方にも、同様にいくつかのメリットがあげられます。

  1. 手続書類の記入・提出の効率化
  2. 記入ミスによる差し戻しの軽減
  3. 自身の主業務へ集中して取り組める環境

「労務業務の効率化」への取り組みが、バックオフィス部門の生産性向上に寄与し、従業員の働く環境の整備や法改正の準備など、課題解決にとりくむ時間を新たに生み出すことが可能です。また、従業員の働きがい・働きやすさへ貢献できます。

各拠点の業務負担、管理本部のスピード感やクオリティに課題。システム導入を検討

大翔トランスポートさまは、SmartHRを2022年5月からご活用いただいております。バックオフィス業務には、どのような課題がありますか?

上野さん

SmartHR導入前、入社手続きなどはすべて紙書類で手続きしていました。各拠点から入社手続きの書類を本社宛に送付するのですが、必要書類が抜けていたり、なかなか書類が届かなかったり、書類紛失が発生したりと、手続きがスムーズに進まないケースも。また、従業員の所属拠点変更に伴い、拠点間での書類移動や必要書類の確認に非常に手間がかかっていました
そして、給与明細も紙だったので、数名で手分けして明細を封詰し、各拠点へ郵送したのち、拠点の責任者が本人へ渡すという手作業を毎月行なっていました。

鍋田さん

今お話ししたように、以前は社内すべての情報が紙ベースであり、多くの課題を抱えていました。さらに複数拠点分の書類を取りまとめることに非常に労力を要していました。そのため、何か人事データや書類を蓄積して、一元管理できるようなシステムやソフトを導入したいという思いがあったのです。導入実現により、管理面の強化や業務の効率化、またペーパーレス化によるコストダウンにもつながると考え、弊社代表にも提案していました。

池田さん

以前は、大原則としての業務フローは社内でルール化されていたものの、退社手続き、各種の申請手続き、従業員・労働者名簿などについては、それぞれの拠点間で運用や管理方法などにばらつきがありました。そのため、SmartHR導入前は管理本部が各種人事業務を、各拠点の運用方法に合わせた実務対応をしていました。

上記を踏まえ、拠点では「各種業務対応への負担」、管理本部では「業務遂行のスピード感やクオリティ」に課題があったと考えています。

管理部門業務の中でも、とくに煩雑な人事・労務を重要課題と認識

人事・労務以外にも管理部門業務の中で取り組んでいることはありますか?

鍋田さん

経理業務ではインボイス制度や電帳法への対応を進めています。その他、経費精算や月末の振り込み、会計仕訳などについても、簡素化できる仕組みをつくりたいと考え進めています。法務業務では、契約書のリーガルチェックから押印、受け渡し、保管管理までをよりスムーズにできるよう、システム導入や運用の見直しを検討しています。このように、バックオフィス業務の課題はまだまだ山積みではあります。その中でも、従業員に直接関係する事項の多い人事・労務の管理はとくに煩雑かつ工数も多いため、管理部門の重要課題として積極的にシステム導入を検討・推進しました。将来的には、社労士事務所に依頼している人事手続きについても、自社で完結できることを目標に活用を進めています。

物流業界の企業さまの中には、人事・労務業務の見直しになかなか一歩踏み出せない企業さまも多いと思います。御社の場合は、まずは何から着手しましたか?

鍋田さん

まずは、自社で今後どのような管理をしたいのか理想像を描き、何をシステムに求めるかを明確にしました。企業さまによって課題やシステムに求めることも違うと思いますので、自社の課題について明確にするのが大切です。また、実際に情報収集をすると、人事・労務システムと一概に言えど、他社システム含めさまざまな製品があります。それぞれ強み・特色があるので、自社にマッチした製品を見つけることも重要です。

そのためには、何社か情報収集し、詳しい説明を受けたうえで、比較検討することをおすすめです。弊社の場合は、以前、他社の人事・労務システムをトライアルしたものの、導入には至りませんでした。しかし今回、SmartHRさんからの連絡をきっかけに説明を受け、SmartHRのシステムに非常に魅力を感じて導入を進めることになりました。

求めていた機能の網羅性が導入の決め手

SmartHR導入の決め手や、重要視したポイントはありますか?

鍋田さん

決め手は、SmartHRには弊社の求めていた機能がほぼ網羅されていたことです。たとえば、個人ごとの人事データを従業員本人がシステムに入力し提出できる点や、紙で配付していた給与明細・年末調整・人事評価なども電子化できる点、そしてこれらの情報をシステム上に蓄積できる点です。このように、現場サイドの私からみても、当初から弊社の求めていた機能が揃った非常によいシステムだったため、「ぜひ導入したい」と一目惚れしました。導入後のサポートも手厚く安心ができたことも1つのポイントでした。正直、料金は決して安価であるとは言えません。しかし、これだけの人事・労務の管理ができるので、担当者1人を雇用したと考えれば十分に費用対効果を出せると判断しました。

社内での決裁は順調に進みましたか?

鍋田さん

上申時には、SmartHRに搭載された魅力的な機能を十分に伝えるために、SmartHRの担当営業であった平井さんにも同席をお願いしました。私から上層部へ大枠を説明しつつ、平井さんからも弊社の上層部のメンバーに詳細説明をしてもらう形で社内プレゼンをしました。上層部も、会社の成長に比べて管理体制が追いついていないという問題は認識しており、私からもシステム導入に対しての思いを事前に伝えていたため、プレゼン後にはSmartHRを非常に気に入ってもらえました。そこからは、予想していたよりもスムーズに導入決裁へ進みました。

大変な初期設定も、運用に乗せれば楽になると信じて進めた

今振り返ってみて、導入時にもう少し気をつけていればよかった点はありますか?

鍋田さん

SmartHRの知識がまったくない状態でのスタートだったので、初期設定ではかなり苦戦しました。既存の給与ソフトから従業員データを取り込んだり、各拠点の事業所情報を登録したり、組織や役職のランク付けや紐づけ・管理権限・閲覧権限を設定したりする中で、設定すべき箇所や影響範囲を把握するのが非常に難しかったです。

それでもSmartHRさんに質問しつつ試行錯誤をして、なんとか運用が開始できる状態までもって行きました。担当スタッフたちは、通常業務と並行して初期設定作業をしていたので、本当に大変だったと思います。ですが、ここを乗り越えて運用開始できれば、絶対将来的には業務が楽になる、とみんなで信じて進めました。

導入にあたり、これまでのやり方を変更することに対して抵抗感を示す方はいらっしゃいましたか?

鍋田さん

幸い、従業員からの大きな不平不満はありませんでした。ごく一部、個人メールアドレスを登録したくない従業員はいましたが、登録を強要はせず、柔軟に対応しました。また、システム・機械へ苦手意識を持つ従業員もいるので、新たなSmartHR上の運用を始める際には、操作画面を画像で載せたわかりやすい手順書を作成し、社内に発信・周知しました。それでも操作が難しい場合は、スタッフが直接電話で説明しながら進めてもらいました。

業務をシステム上で完結、工数やコストを大幅に削減

SmartHRを実際に運用してみて、期待された効果は得られましたか?

鍋田さん

SmartHRで給与明細を電子化したところ、紙での配布に比べて、業務工数・業務時間・コストを大幅に削減できました。年末調整では、かなりの時間を要していた複数拠点の用紙配布・回収について電子化したことで、大きく時間短縮に繋がりました。

上野さん

SmartHR導入前は年末調整書類に不備事項があった場合、各拠点長を介して本人に確認するフローであったため、書類・正確な情報の回収に非常に時間がかかっていました。しかし、SmartHRではシステム上で一斉に提出依頼ができ、各拠点ごとに書類管理もできます。また、以前までは別途一覧を作成して進捗管理をしていましたが、SmartHR導入後は一覧の作成は不要で、誰が何の書類を提出していないか瞬時に把握できます。昨年がはじめてのSmartHRでの年末調整だったため、作業の手戻りや従業員からの質問対応なども発生しましたが、2年目からは前年度の情報とも比較することもできるので、よりスムーズにできると思っています。

池田さん

給与明細については、従来は、紙で明細を出力し、内容確認後に封筒への封入作業が必要でした。3人〜4人で手わけして、1時間30分ほどかかっていました。一方、SmartHRを利用する場合は、給与システムから抽出・加工したデータをSmartHRへ取り込み、システム上で内容を確認後、公開・通知設定をしています。この一連の作業は1人で1時間ほどで完了できます。比較すると、実質5時間程度の作業時間が短縮できました。給与明細用紙や封筒用意、拠点への送付が不要になったので、コスト改善にもつながりました。

人事評価もワンストップで完結、データベースとしてもSmartHRを活用

人事評価機能の活用状況はいかがでしょうか?

池田さん

従来は、エクセルで評価対象者人数分の評価シートを作成していました。また、各拠点への評価シート配付や、各拠点にあわせたスケジュールのアナウンス・進捗管理が必要でした。しかし、SmartHRで人事評価をすることで、今までのフローをシステム上で設定でき、評価シートもSmartHR内で作成・配付したため、準備・配付業務にかかる工数を大きく削減できました。SmartHR上でワンストップの対応が可能になったことで、人事評価業務のクオリティ・スピード向上を実感しています。

従業員の情報を一元的に管理できる、従業員データベースとしての活用はいかがでしょうか?

上野さん

以前までは新入社員のデータは紙で保存しており、書類を見るだけでも手間がかかっていました。現在は、SmartHRに雇用契約書の情報があるため、必要な情報を一瞬で検索・閲覧でき、スムーズに給与計算業務ができます。有期雇用の方については雇用期限ごとに従業員リストの検索フィルターを設定・確認しており、雇用契約書の更新漏れを防げています。運転免許証や自動車の任意保険等の有効期限もすべてSmartHRで管理しているので、免許更新時期も確認できます。データさえ入力しておけば必要な情報はSmartHRで検索できるので、業務時間もストレスも軽減されました。

また、導入前までは各拠点で行なっていた業務を本社で一括管理するようになったので、各拠点の負担は大幅に減ったと思います。私自身も、SmartHR導入で業務時間の削減ができ、より広い範囲・部門を把握できる余裕ができました。

今後取り組んでいきたい施策・挑戦

今後、取り組んでいきたい施策や挑戦したいことはありますか?

鍋田さん

導入してちょうど1年経過しましたが、給与明細、人事評価、年末調整などひととおりの機能を運用でき、役員・幹部にも便利なシステムだと評価してもらえています。今後は、通常機能以外にも、従業員サーベイや分析レポートといった便利機能を有効活用し、さらなる費用対効果を出したいです。

上野さん

分析レポートを利用して、各拠点の従業員人数、平均年齢、有給取得日数、残業時間、新入社員数など、さまざまな情報が把握できる状態をつくりたいです。初期設定が完了すればいつでも最新情報が確認できるので、快適に業務を遂行できると考えています。

池田さん

よりSmartHRのシステム活用・習熟を進め、管理本部が人事・労務業務のイニシアティブをとることで、各拠点の業務負荷を軽減できるようにもしたいです。時間的な負荷を軽減すれば、2024年問題や、2023年4月から適用される「月60時間超の時間外労働への賃金率50%割増」に対して、間接的な効果があると考えています。私自身も、担当業務の効率化で得られた時間的なアドバンテージを、電子申請機能などのSmartHR他機能へのアプローチに使いたいです。

SmartHRのシステムを介することで生み出される改善効果は大きいと感じています。間接部門で生み出した改善効果や負荷軽減を、直接部門にも還元することで、全社としてよい環境づくりにも挑戦したいです

人気の記事