2024年人事・労務向け「法改正&実務対応カレンダー」
- 公開日
この記事でわかること
- 月別の「人事・労務関連業務」の対応内容と期限
- 2024年に新たに対応が必要な法改正に関する業務
目次
こんにちは。社会保険労務士の山口です。
2024年は、働き方の1つとして「フリーランス」が注目される年になりそうです。2020年に内閣官房が実施した調査では、組織に雇われずに個人として働くフリーランスは462万人で、就業者全体の約7%にあたります。増加傾向にある一方で、事業者がフリーランスと業務委託をする際は、労働法の保護対象とならないことに注意する必要があるでしょう。
まずは秋ごろまでに、「フリーランス・事業者間取引適正化等法(いわゆるフリーランス新法)」が施行される予定です。この法律は、フリーランスの取引を適正化し、就業環境を整備することを目的としています。
また、厚生労働省は労災保険の特別加入について、フリーランスの全職種を対象に追加する方向で検討を進めています。対象は約270万人で、開始はフリーランス新法の施行と同時期である2024年秋頃になる見込みです。
そのほか、育児・介護休業法についても改正に向けた審議がはじまっています。いずれも実務に直結する法改正ですので、動向を随時確認しましょう。
本稿では、主に人事・労務担当者向けに、各月の対応が必要な実務や法改正情報をまとめました。各月のポイントを解説していますので、1年間のスケジュールとやるべきことを計画する際にお役立てください。
※本稿は2023年12月15日時点での情報をもとに作成しております。
1月のトピック
領域 | 対応内容 | 対応期限 |
---|---|---|
労務 | 労働保険料(第3期分)の納付 ※延納申請をした場合 | 1月31日(水) |
税務 | 納期の特例による源泉徴収税額の納付 | 1月20日(土) |
従業員への源泉徴収票の交付 | 1月31日(水) | |
給与支払報告書の提出 | 1月31日(水) | |
法定調書の提出 | 1月31日(水) | |
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を従業員から回収 | 月給与支払日の前日 |
ポイント解説
1月は税務関連の届出が集中しています。12月の年末調整の仕上げとして、保険料払込証明書の提出も必要です。
2月のトピック
領域 | 対応内容 | 対応期限 |
---|---|---|
労務 | じん肺健康管理実施状況報告 | 2月29日(木) |
税務 | 決算準備 ※3月決算の法人のみ | 2月29日(木) |
ポイント解説
2月中には決算の仮締めを実施し、経営層に提示できるようにしましょう。関係部署への協力要請も重要です。
また、4月開始の36協定届は3月中に労基署へ提出する必要があるため、各事業所の従業員人数などを整理しておきましょう。とくに建設・運送事業者などは、時間外労働上限規制の適用猶予措置が3月末で終わり、4月分からは新しいフォーマットで届出する必要があるため、今のうちに書式を確認しておきましょう。
3月のトピック
領域 | 対応内容 | 対応期限 |
---|---|---|
労務 | 36協定の更新、届出 | 3月31日(日) |
次年度、介護保険の該当者(非該当者)の確認(40歳・65歳) | 3月31日(日) | |
有害物ばく露作業報告 | 3月31日(日) | |
税務 | 決算準備 ※3月決算の法人のみ | 3月31日(日) |
退職金の支払いと各種控除(所得税・住民税) | 3月31日(日) | |
退職所得の源泉徴収票提出(本人退職後1か月以内) | 3月31日(日) |
ポイント解説
定年退職をはじめ、退職手続きが集中する時期です。雇用保険の離職票や源泉徴収票、退職金の振り込みなど、段取りを確認しながら進めましょう。また、4月の法改正の目玉である「労働条件明示のルールの追加」に対する準備も必要です。
4月のトピック
領域 | 対応内容 | 対応期限 | |
---|---|---|---|
法改正 | 労働基準法施行規則改正 | 労働条件明示のルールの追加 | 4月1日(月)から |
裁量労働制の手続き見直し | 4月1日(月)から | ||
建設・運送等の時間外労働の上限規制開始 | 4月1日(月)から | ||
労務 | 新入社員の受入れ事務(入社手続きなど) | ||
健康保険料率、介護保険料率の変更確認 | |||
税務 | 決算準備 ※3月決算の法人のみ |
ポイント解説
4月は労働基準法施行規則の改正が予定されています。具体的には、労働条件通知事項として就業場所や業務の種類の「変更の範囲」などを追記する必要があります。自社の労働条件通知書(雇用契約書)のフォーマットを事前に確認しておきましょう。
また、裁量労働制についても新たな要件が追加されていることを確認しましょう。
ほかにも、建設・運送事業者は時間外労働の上限規制猶予措置が終了し、この4月から新しい基準に則って管理する必要があります。自社の労務管理の体制を今一度見直してください。
5月のトピック
領域 | 対応内容 | 対応期限 |
---|---|---|
労務 | 障害者雇用納付金の申告納付、障害者雇用調整金の申請 | 5月15日(水) |
ポイント解説
5月は障害者雇用納付金の申告納付があります。早めにデータを取りまとめ、申告書の作成ルールを確認しておきましょう。
6月のトピック
領域 | 対応内容 | 対応期限 |
---|---|---|
労務 | 労働保険の年度更新手続き | 6月1日(土)〜7月10日(水) |
賞与支払届の提出 | 賞与支払日から5日以内 | |
高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書の提出 | 6月1日(土)〜7月15日(月) | |
税務 | 新年度・個人住民税の特別徴収の開始 | 特別徴収した月の翌月10日 |
ポイント解説
労働保険の年度更新手続き、高年齢者、障害者雇用状況報告書は、6月1日(土)から申告が可能となります。7月は短い期間で社会保険料の算定基礎届を作成しなければならないため、先にこれらの業務を進めておきましょう。また住民税の改定も要チェックです。
7月のトピック
領域 | 対応内容 | 対応期限 |
---|---|---|
労務 | 健康保険・厚生年金の「算定基礎届」の提出 | 7月1日(月)〜7月10日(水) |
労働保険の年度更新手続き | 6月1日(土)〜7月10日(水) | |
高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書の提出 | 6月1日(土)〜7月15日(月) | |
税務 | 納期の特例による源泉徴収税額の納付 | 7月10日(水) |
ポイント解説
算定・年更と、社会保険・労働保険関係の業務が集中します。申告期限に遅れないよう、しっかり計画を立てて進めましょう。
8月のトピック
ポイント解説
猛暑の時期であり、従業員にとっては疲労がたまりやすい時期です。労務管理の一環として、熱中症対策や健康管理をしっかり実施したいところです。また、7月の繁忙期に漏れてしまった手続きなどがないか、今一度確認しましょう。
9月のトピック
領域 | 対応内容 | 対応期限 |
---|---|---|
労務 | 新標準報酬月額の確認と通知 | 7月中旬から |
ポイント解説
年金事務所や健康保険組合から、新しい標準報酬月額の通知書が届きます。給与システムへの登録を忘れずに行いましょう。
10月のトピック
領域 | 対応内容 | 対応期限 |
---|---|---|
法改正 | 社会保険の適用拡大 ※51人以上の企業 | 10月1日(月)から |
フリーランス新法施行 | 2024年秋ごろの施行見込み | |
フリーランス全職種を労災の特別加入に追加 | 2024年秋頃の開始見込み | |
労務 | 地域別最低賃金の改定 | 10月1日(月)から |
労働保険料(第2期分)の納付 ※延納申請をした場合 | 10月31日(木) |
ポイント解説
10月からは、従業員数51人以上の企業において月収入8万8,000円以上(年収約106万円)で週20時間以上働くパート・アルバイトも社会保険加入の対象となります。
厚生労働省は、対策への支援として、賃上げしたり所定労働時間を延長したりする企業に対し、最大50万円の助成金(キャリアアップ助成金)や、130万円を一時的に超えたとしても一定期間被扶養者でいられる仕組みなどを設けています。また、フリーランスにかかわる大きな法改正が見込まれています。
11月のトピック
ポイント解説
厚生労働省は毎年11月23日の「勤労感謝の日」にあわせ、「労働時間適正化キャンペーン」を実施しています。長時間労働による健康障害を防ぐため、自社の勤怠管理体制を整備しましょう。
12月のトピック
領域 | 対応内容 | 対応期限 |
---|---|---|
労務 | 賞与支払届の提出 | 賞与支払日から5日以内 |
税務 | 年末調整 | |
退職金の支払いと各種控除 ※所得税・住民税 | ||
退職所得の源泉徴収票提出 | 本人退職後1か月以内 |
ポイント解説
年末調整をスムーズに進めるため、書類の準備や従業員への案内は早めに実施しましょう。国税庁のホームページなどで、改正内容やフォーマットの確認も大事です。
労基署などの調査も増加中。労働環境の見直しと適正化を!
2023年から、労働基準監督署や労働局の調査が増えてきています。時間外労働の上限規制や年次有給休暇の5日取得義務に加え、同一労働同一賃金に関するヒアリングが実施されることもあります。
2024年はフリーランスにかかわる大きな法改正が続きますが、雇用されている労働者についても、今一度労働環境を見直しましょう。