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日本一は通過点。5,000名の組織を“最効率”に導く人事総務DXの全容

公開日
目次

業務プロセスの変革を通じて、従業員や企業の大幅なパフォーマンス向上を実現する企業が増えています。SmartHRでは、経営者・人事担当者の皆さまを対象とした少人数制の講演・交流会を定期的に開催しています。

今回の登壇者は、大物家具・家電の配送事業、家財量が少ない顧客向けの引っ越しサービスを手がけるヤマトホームコンビニエンス株式会社で、人事部門を起点とした社内改革に取り組む小関健介氏です。5,000名規模の組織を最速・最効率に変えるために実施された「人事総務DX」に迫りました。

  • スピーカー小関 健介氏

    ヤマトホームコンビニエンス株式会社 取締役執行役員 人事戦略部長

    2007年ヤマト運輸株式会社に入社。2011年より本社人事総務部に勤務し、労政、人件費管理、労務管理、総務、福利厚生など、管理職を含め、幅広い人事業務を担当。2016年以降、本社人事担当のマネージャー(管理職)としてヤマトロジスティクス株式会社、ヤマトホールディングス株式会社へのグループ出向を経て、2018年9月、ヤマトホームコンビニエンス株式会社の人事戦略部長に就任。以降、グループ方針に則った人事制度全般の改定からスタートし、「最効率」「最速」「実効性」を追求した人事運用、採用、育成の改革に取り組んでいる。

  • モデレーター今西 佑太

    株式会社SmartHR ブランディング統括本部 オフラインマーケティング部 マネージャー

    2011年に新卒で鉄道会社に入社。主に複合施設の開発および開業後の運営管理を担当し、集客イベントの企画、広報宣伝等のマーケティング業務を行う。2020年にSmartHRに入社し、関西支社にてマーケティング業務に従事。セールス支援を担うマーケティングも経験したのち、2023年7月よりマネージャーに就任。

スマホで気軽に申請。現場がラクを実感できるツール

登壇中の様子

今西

本日はありがとうございます。まず、SmartHRを導入しようと考えた背景を教えてください。

小関さん

1つめは「近くて、頼れる人事総務部門」をつくりたいと考えていたことです。当時の2020年3月時点で5,000名規模の社員をサポートするため、当社には全国11拠点の中間管理部門を置いています。そこには、45名もの人事・総務担当者が配置されていました。こうした規模で人材の専門性を高めながら育成していくことは、非常に困難だったのです。また、人事担当者のさまざまな業務が属人化していることも大きな課題でした。

2つめは、紙運用による書類不備率の高さです。宅急便サービスを展開するグループ内には、社内便という循環輸送があります。それを使って、入社手続きや契約更改・身上申請などの手続きをすべて紙ベースで実施してきたことが、社内での紙運用をより「当たり前」のことにしていました。そのため、全国に現在、約70名いる管理職の書類作成時間は、1人あたり年間100時間にものぼりました。それに伴い、管理職から紙の書類が送られてくる中間管理部門や本社の業務負荷も増していました。 

登壇中の様子

今西

人事総務部門のさらなる成長や、業務効率化を目指しておられたのですね。その後、どのような取り組みをはじめましたか?

小関さん

そもそも以前までの紙ベースの運用は、グループ内で共通した人事運用がベースにあり、全国の管理部門の組織体制はグループ内の主軸事業を手本とした体制でした。「私たちのような5,000名規模のグループ個社にとって、こうした運用と管理部門の組織が本当に理想的なのだろうか?」との問題意識から、私たちは4つの施策を実行しました。

1つめは、全国の人事総務業務の本社集約です。現場支店長と本社人事をダイレクトにつなぎ、現場支店長の負荷を軽減したいと考えました。

2つめは、人事運用の徹底的な業務標準化と運用フローの再設計です。属人化された業務を徹底的に洗い出し、中間管理職を介さないフローに変えていきました。

3つめは、「最速」「最効率」を意識した運用設計です。入社手続きや人事考課、契約更改、社員アンケートなど、社員とコミュニケーションをとる場面は多くあります。こうした場面で管理職を介さず社員とダイレクトにコミュニケーションをとり、運用を効率化したいと考えました。

そして4つめは、現場支店長からの人事総務業務の消滅です。現場支店長が担当していた入社手続き、身上申請などに関する書類作成・承認業務をすべてなくしたいと考えました。

登壇中の様子

(イベント当日の会場の様子)

今西

なかでも3〜4つめの取り組みにSmartHRをご活用いただいています。導入の決め手や選定の理由、導入後の取り組みについて教えてください。

小関さん

SmartHRの利用にあたっては現場に「ラク」を実感してもらうことを最優先に考え、現場業務への影響が大きいところから順に導入を進めていきました。具体的には2022年11月に身上申請や入社手続き、雇用契約書の電子化、2023年2月から4月にかけて契約更改と人事評価の電子化に着手しました。さらに同年6月には従業員サーベイを導入しています。

社員と経営陣、本社人事部をダイレクトにつなげるか。ツールの選定にあたってはこの点にこだわり、社員になじむデザインかどうかサポート体制が万全かどうかも重視しました。社員の使いやすさを考えると、スマートフォンで操作できることも必須でした。

入社手続きの工数は半減、中間管理部門の業務は消滅

登壇中の様子

今西

もともと使っていたシステムとSmartHRを、どう使い分けていますか?

小関さん

当社の人事システムは、人材管理・勤怠管理・給与計算・社員評価の4つに分かれます。従来はグループ全体の人材管理システムに、勤怠管理や給与計算、他社の社員評価システムが紐づいている形でした。入社手続きや家族異動、住所変更、雇用契約書などの申請・契約書類は紙ベースで記入・押印し、人材管理システムに手動で入力していました。

人事関連システムの全体像

小関さん

新体制では、グループ全体の人材管理システムと給与計算システムを残しつつ、フロントシステムとしてSmartHRを導入しました。これにより、入社手続きや契約更改、身上申請、雇用契約書の締結などのほか、目標設定や自己評価、同僚評価の実施といった人事考課の手続きも社員本人が個人のスマートフォンで直接申請できるようになりました。マイページや人事評価システムを通して評価結果や給与明細の閲覧、社内報をはじめとする各種お知らせもスムーズになり、社員と会社がより深くつながるシステムへとグレードアップしたのです。

SmartHR導入によるフローの変化

小関さん

SmartHRを通して社員が申請した内容は本社人事部が確認し、承認されたデータを基幹の人材管理システムに手動で登録する形をとりました。人材管理システムと自動連携させなかったのは、実効性と費用対効果の低い自動連携を避けたかったからです。人事情報を取り扱ううえで、手動登録を選択するリスクも理解していました。しかし検討を重ね、グループ内での懸念の声にも丁寧に説明しながら、最終的にこの形を選びました。

カスタマイズをしないことも、チーム内で事前に決めていました。自分たちのこだわりでカスタマイズするよりも、人事・労務のプロであるSmartHRさんの設計に任せたほうが理にかなっていると考えたからです。その結果、4月に検討を開始して8月に決裁、11月から導入開始というスピード感で導入できました。

その結果、入社手続きの工数は6工程から3工程、契約更改の工数は6工程から2工程に軽減されました。業務が減ったぶん、現場支店長には営業にリソースを振り向けてもらっています。業務効率が改善されたためか、入社者が増えているのも嬉しい効果でした。業務がまるごとなくなった中間管理部門については、段階的に体制の見直しを検討してきました。

SmartHR導入後の運用フローの変化

今西

社員とダイレクトにつながるという目的が、導入によって達成されたと伺えてとても嬉しく思いました。導入にあたって苦労されたのは、どのような点でしたか?

小関さん

グループ全体のシステムに新しいシステムを入れるわけですから、不安の声は少なからずありました。とくに人事領域には、高い機密性が求められます。グループ内での実績がないシステムを入れることには、二の足を踏みたくなるのも無理はありません。こうした声に対して丁寧に説明を重ねながら、申請や審査でグループのコンセンサスを得る作業は簡単ではありませんでした

現場支店長の間にも、新しいやり方に対する不信や拒絶がありました。支店長を介さない社員とのダイレクトコミュニケーションがはじまったことで、戸惑いもあったでしょう。「書類が来ないから、従業員の結婚や転居がわからなくなった」との声もありました。ですが、現場支店長の仕事がラクになったのは間違いない事実です。そのためか、時間とともに不信や拒絶の声は減っていきました。

従業員サーベイで「社員のホンネ」が見えた

登壇中の様子

今西

SmartHR導入後の効果はいかかですか?

小関さん

1年後の削減金額は3,327万1,000円にのぼり、導入前の想定だった2,826万円を上回る効果が出ました。ただ、それ以上にプライスレスな効果を感じています。とくに社員満足度が高かったのは、スマートフォンを利用した時間と場所にとらわれない申請でした。たとえば配達スタッフにとっては、配達が終わってから事務所に戻り、パソコンで申請作業をするのは大変です。その点、社員個人のスマートフォンを使えば、自分の好きな時間・場所で、配達の合間の空き時間などを利用して申請を完了できると非常に好評でした。

実は、それまで業務上で個人のスマートフォンを使うことは許可していなかったのですが、SmartHRの利用にあたって個人端末での利用を許可することにしました。案内の際は社員から不安の声もあったのですが、いざ利用が始まるとそういった声はまったくなく、むしろ利便性の向上を喜ぶ声があがるなど、従業員体験の向上につなげられたことを嬉しく思っています。

今西

それは嬉しい反響ですね。ほかに、経営目線で何か効果を実感した点はありますか?

小関さん

経営において重宝しているのは、従業員サーベイです。社員の声は正しい経営判断をするための宝の山です。しかし、面と向かって上司から「どういう働き方を望んでいるの?」と聞かれても、社員は建前しか話せないものです。それがスマートフォンを通してなら、正直に書けるのでしょう。実際に従業員サーベイをとってみると、予想とは逆の結果となることが多く、驚きの連続でした。ふだんは聞けない、社員のホンネがわかる。それが従業員サーベイのプライスレスな価値だと思います。

ほかにも工夫とアイデア次第で、SmartHRの活用の幅はどんどん広がっていきます。当社ではマイページ上で給与明細や社内報を閲覧できるほか、社内アンケートに回答したり、リファラル採用をはじめとする社内の各種申請ができるようにしています。さらに社内イベントやお得情報を積極的に発信しています。さまざまな取り組みで認知度を上げ、利便性に早く気づいてもらうには、人事主導でコンテンツを増やしていくことが大切です。SmartHRを使えば、それがスムーズにできると感じています。

登壇中の様子

今西

人事評価機能の導入背景や、活用状況を教えてください。

小関さん

人事評価機能については、もともと使っていた他社のツールをSmartHRに切り替えました。人事評価における当社のこだわりは360度評価で、そのために以前までは完了までに4か月もの時間がかかっていました。SmartHRへ切り替え後は360度評価を継続しつつも、必要期間が1か月まで短縮されたうえ、コストも2分の1になりました。今後はさらに社内でSmartHRの使い手を増やしたいと考えています。

「人が辞めない会社、採用と育成が得意な会社」を実現する

今西

最後に、御社では「日本一効率的な人事総務部門」を掲げていると伺いました。あらためて、その背景を教えてください。

小関さん

「日本一」という言葉を使ったのは、誰が見てもわかりやすいと考えたからです。それに日本一を実現できたら、活気のある管理部門に対して社員はエンゲージメントを感じてくれるでしょう。そういう期待も込めました。日本一なら社員への支援も、コスト面における人事部門の経営貢献も最大化できるはずです。誰かと競っているわけではないんです。最速のリードタイムと省人化を実現すれば、結果として日本一の業務効率を達成できると考えています。

小関さん

一方で、当社の最大の強みは、実は「採用」にあると考えています。これまで当社は「最速」「最効率」の採用システムを基盤に大量採用を実現し、ノウハウを蓄積してきました。これからは「日本一の採用」に「日本一の人事総務部門」をジョイントして、社員と会社とのダイレクトコミュニケーションを深めていきます。具体的にはSmartHRを骨格として、人事総務と人材確保、人材開発という3つの領域を接続していきたいと考えています。

「日本一効率的な人事総務部門」は、あくまでも通過点です。これをベースとして、人材確保と人材開発にリソースを集中できる組織にシフトしていきます。さらにコスト面やコンプライアンス面にとどまらない経営貢献を実現し、「高収入と高品質を生み出す人材開発」に本気で向き合う組織をつくり上げていきます。人が辞めない会社、採用と育成が得意な会社。これらを目指して、今後も人事総務部門の業務効率化に取り組んでいきたいです。

SmartHR Mag.編集部

人事総務DXを通して経営貢献を最大化したい。そんな小関さんの想いがひしひしと伝わってくるお話でした。セミナー終了後は、登壇者と参加者が一堂に会した懇親会を開催。人事総務部門のあり方や人事DXの未来について、さまざまな角度からの意見交換がなされました。

名刺交換中の様子
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