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経営者と現場をつなぐ戦略総務の役割 - 効果的なコミュニケーションで組織力を最大化する方法とは

公開日

この記事でわかること

  • 戦略総務と一般的な総務の違い
  • 経営、人事との効果的なコミュニケーション
  • 現状把握が戦略総務の第一歩
目次

“人事・労務DXをリアルの場で加速させる”をテーマに6月13日(火)に実施されたオフラインイベント「SmartHR Connect」。

一般社団法人FOSC名誉会長小山義朗さんと株式会社エフエム・パートナーズ・ジャパンの代表取締役社長クレイグカックスさんを迎え、「経営者と現場をつなぐ戦略総務の役割 - 効果的なコミュニケーションで組織力を最大化する方法とは」と題した特別セッションが講演されました。モデレーターはProFuture株式会社代表取締役社長の寺澤康介さんです。

  • 登壇者小山 義朗 氏

    一般社団法人FOSC名誉会長 / 元ソニー株式会社総務センター長

    ソニー入社後、国内、海外の工場等建設の企画・監理業務を数多く経験。オフィス管理ではオフィススタンダード、社内家賃制度など新しい施策を展開。2003年総務センター長に就任しソニー国内総務部門を統括。経営層の理解のもと早くから戦略総務を推進し成果を上げる。2009年以降、寺田倉庫(株)、(株)デベロップの取締役、一般社団法人FOSC代表理事歴任。戦略総務のエキスパートとして現在も活躍。

  • 登壇者クレイグ カックス 氏

    株式会社エフエム・パートナーズ・ジャパン代表取締役社長

    戦略総務の推進者であり、FM CREDO(エフエム クレド)の発案者。1986年に富士通アメリカ入社し、シティグループジャパンやジョンソンコントロールズでFM(総務)ビジネスを成功させる。2008年には、株式会社エフエム・パートナーズ・ジャパン(FmP)を設立。総務プロフェッショナルの育成を目指し、「総務プロフェッショナルコース」という教材を開発。今後もFM(総務)の一人一人がプロフェッショナルとして企業に貢献できるようサポートを続ける。

  • モデレーター寺澤 康介 氏

    ProFuture株式会社代表取締役社長/ HR総研 所長

    1986年慶應義塾大学文学部卒業。同年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役等を経て、2007年採用プロドットコム株式会社(2010年にHRプロ株式会社、2015年4月ProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。8万人以上の会員を持つ日本最大級の人事ポータルサイト「HRプロ」、約1万5千人が参加する日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」を運営する。

本講演以外にも「SmartHR Connect」のイベントレポートを公開中。人的資本経営・エンゲージメント向上などのお悩みの解決にぜひお役立てください。

戦略総務は企業戦略に必要不可欠な存在

寺澤さん

まず、戦略総務とはどのようなものなのか、また、一般的な総務との違いについて教えてください。

小山さん

総務業務は、「オペレーション総務」「管理総務」「戦略総務」の3つのポジションに分類されます。

小山さん

小山さん

「オペレーション総務」は決められたことを決められたとおりに実行する総務です。オペレーション総務に、変化や異常を察知して適正な改善をする業務を加えたのが「管理総務」となります。

そして「戦略総務」は企業の現状を把握したうえで、BPR(ビジネスプロセス・エンジニアリング)や課題解決に向けて組織として改革を推進する総務で、企業の戦略部門として必要不可欠な存在です。

総務業務の3つのポジション

クレイグさん

現在の日本企業における総務は、ほとんどの場合オペレーション総務として決められた業務をするだけで、期待や評価がされにくい状況です。しかし、海外の企業では管理総務という、本来総務があるべき役割が専門職として認められており、この点では、日本は世界に30年遅れていると言えます。

クレイグさん
管理総務の実際

クレイグさん

管理総務が機能している企業では、「総務関連のコストの見える化」ができています。これができている日本の企業は非常に少ないでしょう。多くの日本企業は事業部制で、事業部が主体となって不動産賃貸契約や車をリースしています。経理が総務関連のコストだけをまとめてレポートできないシステムです。そのため、ほとんどの企業は総務関連全体のコストがどの程度かを把握できていないでしょう。

小山さん

戦略総務が注目される背景として、まず社員に対して、さらに活躍できる場や従業員同士のコミュニケーションの場の形成、また健康経営やウェルビーイングの推進、さらに従業員エンゲージメントの向上が期待できるためです。

次に経営面においても、総務の戦略的なコスト削減が会社の利益となるというメリットがあります。仮に総務が知恵を絞って企業の支出を100万円削減したとします。それと同等の利益を営業部門が売上高利益率1%で達成するためには、税金を抜きにしても1億円の売上を上げなければなりません。税金まで考えれば、2億円の売り上げが必要です。それだけ経費の削減効果は大きいのです。

クレイグさん

総務の目的は、社員満足度の向上だけではなく、会社を成功させることです。会社を成功させるために、総務は巨額の費用を使っています。ただ費用を削減するだけが総務にとっての正解ではありません。総務はお金を上手に使うプロとして、費用を正しい用途に使用していると証明しなければ、総務の責任をはたしているとは言えないでしょう。しかし、日本のほとんどの企業の経営層は総務からの情報を確認せずに、財務からくるデータだけで経営判断をしています。海外の企業のCEOは「ファシリティ・アニュアルレポート」という総務が作成する、財務とは別の観点から会社の状況やリスクを説明する資料をベースに経営をしていますが、日本ではこのような資料を導入している企業はまだみられません。

総務と他の部門との連携も重要

寺澤さん

小山さん、クレイグさん、ありがとうございます。私は、人事領域を専門としているのですが、2人のお話を聞いていて、総務と経営、人事が連携して経営に取り組んでいく姿勢が必要ではないかと思いました。小山さんいかがでしょう。

寺澤さん

小山さん

当然必要となります。人事という領域の中に労務を含めれば、労働組合との関係調整や働く場所、勤務の仕組みづくりなどを総務だけでできませんし、人事だけでもできません。組織として、人事と総務の連携がまさしく必要な領域ですので「戦略総務=戦略人事」というかたちになると思います。

寺澤さん

ありがとうございます。クレイグさん、いかがでしょうか。

クレイグさん

人事の悩みはお金がないことです。総務にはお金があります。ですから、両者は絶対に協力し合うべきです。ワークプレースをつくるのは、総務の資金です。人事がいくらワークプレースづくりのために予算の申請をしたとしても稟議はおりないでしょう。総務はお金を使う専門職なので、会社の生産責任はその道のプロフェッショナルである総務が考えるべきですが、人事も同じ思考をもって生産性を意識していくようになれば、両部門のシナジー効果で多くのことが実現できると考えられます。

寺澤さん

ここからは、戦略人事をどのようにして実現していけばいいのかについて、過去のご経験にもとづいてお話いただきます。

小山さん

ソニーでは、30年ほど前から戦略総務を実践してきました。

戦略総務のポリシーとなる4つの項目を設定し、また、総務が実践するべき業務を「経営」「ユーザー」「関連事業所」「資産」の4つの大きなカテゴリーに分類して、それぞれに求められる具体的な業務内容を戦略機能ミッションとして考えていました。

戦略総務ポリシー
ソニー総務の戦略機能ミッション

クレイグさん

今、小山さんが説明されたようなビジョンは、みなさんが現在勤められている企業でも実現できていないでしょう。しかし、“総務の神様”と呼ばれる小山さんは、30年も前にこのような取り組みをしています。つまり、ほとんどの企業がやろうと思ったらできることをしていない状況なのです

経営と総務の効果的なコミュニケーション

小山さん

経営と総務の効果的なコミュニケーションをどのように実現すればいいかも大きなテーマです。

1つのキーワードは「総務の価値の顕在化」です。総務は非常に大きなお金を会社の中で任されています。人件費が1番大きな費用ですが、総務関連の経費は2番目に多くかかります。総務がそのような重要な仕事を担っていることを経営に伝えるために、適切なレポーティングが重要となります。

次に「投資、経費削減のデータベース」。私がファシリティを担当していた時は、知恵と工夫でコストを削減したり、ランニングコストを削減したりといった「いい仕事をした結果、コストの削減ができた」ことを経営陣にレポートしていました。また、「ベンチマーク」はやはり重要です。自分達の会社が一体どの位置にいるのか、同業他社に比べて優れているのか、あるいは足らない部分があるのかを把握し、よいところをどんどん伸ばし、どんどん理解し、足らないところを補っていく姿を経営にアピールしましょう。

「共通言語」も重要なキーワードです。経営も総務も同じ発想で物事の処理をしていくと非常に判断が早くスタートさせられます。そして、「リスキリング」によるレベルアップも必要です。自分自身の価値をどう向上させるかを見える化していくことは総務においても重要です。経営と総務の効果的なコミュニケーションについては、これらをぜひ意識してといただければいいのかなと思います。

クレイグさん

小山さんの話に関連する事例を資料で紹介します。

マイクロソフトの総務部門ミッションステートメント

クレイグさん

これはマイクロソフトの総務部門のミッションステートメントで、総務のあるべきビジョンが記されています。私がここで感心したのは、最初に「総務の仕事はマイクロソフトの社員を全員グレイトにすること」とある点です。このような発想はほかに聞いたことがありません。さすがマイクロソフトはレベルが非常に高いと思います。また、「失敗は早期に認めて、再度トライ」というチャレンジ精神を醸成する姿勢も素晴らしく、これが総務のあり方の1つの事例かと思います。

総務の難しさは、正常時の改善にあります。通常、改善は問題が起きた際に、それが再発しないために求められます。ですが、総務は昨日より今日、今日より明日の会社の成功を目指して上手にお金を使えるように改善を重ねていかなければなりません正常時にも、常に改善を目指す姿勢が求められるのです。

現状把握が戦略総務の第一歩

寺澤さん

ありがとうございます。小山さん、クレイグさんに戦略総務の実践例としてお話を聞いてきましたが、これまでそういった戦略的な総務ができていなかった企業がいきなりはじめるのは難しいと思います。第一歩、第二歩をどこからスタートするのがよいかアドバイスをいただけますでしょうか。

小山さん

まずは現状把握からはじめるべきです。現状をよく理解したうえで、自分達の価値を高めていけるように会社に貢献していくことが重要となります。そのための取り組みとして、何か1つでもいいからプロジェクトを立ち上げて目標をクリアしていきましょう。その動きそのものが戦略総務になると思っています

寺澤さんと小山さんとクレイグさん

寺澤さん

ありがとうございます。クレイグさんいかがでしょうか。

クレイグさん

小山さんが言ったように現状把握が重要となります。会社で実際に総務のコストをいくら使っているかを見える化するだけで大変有意義です。お金の動きを見える化して、総務から経営陣に「これだけ資金を使っているんですよ」と伝えると絶対にびっくりされるでしょう。そうすれば、「何とかしなければいけない」となるはずなので、お金の見える化の実践をお勧めします。

寺澤さん

ありがとうございます。最後に一言ずつ、メッセージをいただけますでしょうか。

小山さん

私が仕事をするうえで大事にしているキーワードは「TOGETHER」です。自分の部下を信頼して仕事を任せるのであれば、部下が行き詰ったときには一緒になって解決しなければなりません。そういう姿勢があれば、会社の中で戦略総務の構築はできてくる。そのように思います。

寺澤さん

ありがとうございます。クレイグさんお願いします。

クレイグさん

今日この話を聞いた総務担当者の責任は大きく増えました。皆さんの会社がしていない取り組みを今日知りました。実践するか、それとも関係ないと思って現状維持で満足するかは、皆さん次第だと、自覚してもらいたいと思います。

寺澤さん

ありがとうございます。総務部門の重要性が大きくなっているなかで、戦略総務が会社全体に好影響を与えることがご理解いただけたかと思います。最後までご視聴いただきまして、ありがとうございます。小山さん、クレイグさんありがとうございました。

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