給与明細とは?見方・記載項目・計算方法から作成方法、保管期間を解説
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目次
給与明細は、従業員が毎月受け取る賃金の内訳や控除内容が記載された重要な書類です。
給与明細の記載事項は、勤怠情報や支給項目、控除項目など多岐にわたるため、関連する制度に対する知識と正確な処理が不可欠です。
本記事では、給与明細の基本的な役割から各項目の見方・計算方法、作成手順、保管期間まで、人事・労務担当者が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。
給与明細とは
給与明細とは、企業が従業員に対して、毎月の賃金の内訳や控除内容を通知するための書類です。単に給与の内訳を伝えるだけでなく、以下の2つの役割があります。
従業員が給与計算根拠を確認するための資料
- 給与明細は、支給額や控除額の根拠を明らかにし、従業員が納得して自身の給与を受け取るための資料です。給与は従業員にとって生活を支える重要な収入であり、いつでも内容を確認できる状態にしておくことが求められます。
税金が法令どおりに控除されている証明
- 給与からは、所得税や住民税、社会保険料などが控除されます。給与明細は、これらが法令にもとづいて適正に処理されていることを示すものです。企業にとっては、適切に処理していることを証明する役割も担います。
給与明細の種類
給与明細の発行方法には、紙で交付する方法と電子(ウェブ)で交付する方法の2種類があります。
(1)紙での交付
紙の給与明細は、以前から広く使われてきた方法です。給与明細書を印刷し、直接従業員に手渡します。従業員や事業所の数が多い場合は、印刷コストや郵送代がかかる点がデメリットです。
(2)電子(ウェブ)での交付
電子(ウェブ)給与明細は、クラウド上で明細を発行し、従業員自身で閲覧する方法です。印刷や配布の手間が省けるほか、ペーパーレス化にもつながります。従業員側も紛失のリスクがなく、見たいときにいつでも確認できるのがメリットです。
ただし、電子で交付する場合は従業員の同意が必要です。同意してもらえない従業員へは紙で交付する必要があるため、注意しましょう。
給与明細の発行義務(所得税法231条)
給与明細の交付義務は、所得税法に定められています。所得税法第231条では、給与を支払う企業は、支払いの際に「給与等の支払明細書」を受給者に交付しなければならないと規定されています。
(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)
第二百三十一条 居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。
正社員だけでなくパートやアルバイトなど、雇用形態を問わずすべての従業員が対象です。また、派遣社員は、雇用契約を結んでいる派遣元企業から給与が支給されるため、派遣元企業が給与明細を発行する義務を負います。
給与明細と源泉徴収票の違い
給与明細と源泉徴収票は、どちらも給与に関する書類ですが、役割が異なります。
給与明細は毎月の賃金内訳と控除額を確認するための書類です。一方で、源泉徴収票は1年間の給与総額と、そこから源泉徴収された所得税額を証明する書類で、所得税に特化している点が特徴です。
源泉徴収票は、確定申告や転職時、住宅ローンを組むときなど、対外的な所得証明として必要な場面も多いです。
従業員から収入に関する書類の発行依頼があった場合は、両者の違いを理解し、適切に説明できるようにしておきましょう。
給与明細の見方(記載項目)
給与明細は一般的に、「勤怠項目」「支給項目」「控除項目」「差引支給額(手取り)」 の4つの区分で構成されています。
SmartHRの給与明細機能を見本に、それぞれの区分に記載されている内容を項目ごとに詳しく解説します。

画面はSmartHRの「給与明細」機能です(2026年5月現在)
(1)勤怠項目
勤怠項目には、給与計算の基礎となる労働実績が記載されています。記載されている時間数や日数をもとに、支給額や控除額が算出されます。項目の名称は、使用している勤怠管理システムなどにより、企業ごとに違いがあります。
勤怠項目の主な記載内容は、以下のとおりです。
支給項目/控除項目 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
支給項目の計算の基礎 | 所定労働日数 | 就業規則等で定められた出勤義務のある労働日数 |
出勤日数 | 実際に出勤した日数 | |
所定労働時間 | 就業規則や雇用契約で定められた労働時間 | |
残業時間 | 法定労働時間を超えた残業時間 | |
深夜労働時間 | 22時〜翌日5時の間に働いた時間 | |
休日労働時間 | 法定休日に働いた時間 | |
有給休暇取得日数 | 賃金計算期間中に取得した年次有給休暇の日数 | |
控除項目の計算の基礎 | 欠勤日数 | 欠勤した日数 |
遅刻早退時間(遅早時間) | 遅刻や早退により、労働できなかった時間数 |
(2)支給項目
支給項目は、企業から従業員に支払われる給与の内訳を示す欄です。基本給にくわえて、勤怠項目の時間数をもとに計算された割増賃金や、各種手当などが記載されています。
手当の内容や支給条件は企業ごとに異なるため、支給項目は会社ごとの違いが表れやすい部分です。支給項目の主な記載内容は、以下のとおりです。
区分 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
所定内賃金 | 基本給 | 雇用契約や就業規則で定められた、労働の対価として支払われる賃金の固定部分 |
通勤手当 | 従業員の通勤にかかる交通費を補助するために支給される手当 | |
その他手当 | 役職手当、住宅手当、資格手当、など企業独自に設定する手当 | |
所定外賃金 | 時間外手当 | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働に対して支払われる手当 |
深夜手当 | 22時〜翌日5時の間に労働した場合に支払われる手当 | |
休日手当 | 労働基準法に基づき、法定休日に出勤した場合に支払われる手当 |
手当は、所定内賃金と所定外賃金にわけられます。所定内賃金とは、毎月の支給額が一定のものを指します。一方で所定外賃金は、勤務実績により毎月変動する賃金で、時間外手当などの割増賃金が該当します。
基本給とそれぞれの手当について、詳細を解説します。
1.基本給
基本給は、従業員の勤続年数や能力に応じて決定され、毎月一定の金額が支給される給与の固定部分です。賞与や退職金の算定基礎となることが多い重要な要素です。
2.通勤手当
通勤手当は、従業員の通勤にかかる交通費を補助するために支給される手当です。法的な支払義務はありませんが、多くの企業で導入されています。支給方法は企業ごとに異なり、支給サイクルや金額(定期代の何か月分を基準とするか)、上限額などを定めて運用します。
また、通勤手当は一定額までは所得税が非課税とされており、公共交通機関を利用する場合は月15万円までが非課税となります。
令和7年(2025年)11月20日には非課税限度額の引き上げが実施されました。年末調整業務への影響など、実務上の注意点を以下記事で紹介しているので、あわせてご覧ください。
3.その他手当(住宅手当や役職手当など)
その他の手当は、企業ごとに支給対象や支給額が異なります。一般的に支給されることが多い手当は、以下のとおりです。
手当の種類 | 内容 | 主な支給要件・ポイント |
|---|---|---|
住宅手当 | 従業員の住居費負担を補助するための手当 | 世帯主のみ支給など条件が設けられることが多い。支給額は一律または家賃に応じて変動するケースあり |
役職手当 | 管理職やリーダーなど、役職に応じて支給される手当 | 役職に応じて金額が定められる。残業代の算定基礎に含めるかは企業ごとに異なる |
資格手当 | 業務に関連する資格を保有または取得した場合に支給される手当 | 対象資格や支給額は企業ごとに設定。資格取得の費用補助として、一時金を支給するケースもあり |
家族手当(扶養手当) | 扶養家族がいる従業員に対して支給される手当 | 配偶者や子の人数などに応じて支給。税務上の扶養とは別基準の場合もある |
残業代などの割増賃金を計算する際、手当を単価に含めるかは労働基準法のルールにもとづいて手当の性質ごとに判断します。一方で、賞与や退職金の算定に手当を含めるかは、各社の就業規則や賃金規程によって異なるため、計算の際は注意が必要です。
4.時間外手当
時間外手当は、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働に対して支払われる割増賃金です。割増率は通常25%以上で、月60時間を超える分については50%以上となります。
5.深夜手当
深夜手当は、22時から翌日5時の間に労働した場合に支払われる割増賃金です。割増率は25%以上で、時間外労働と深夜労働が重なる場合は、それぞれの割増率を合計した率で計算されます。
6.休日手当
休日手当は、法定休日に労働した場合に支払われる割増賃金です。割増率は35%以上と定められており、通常の時間外労働よりも高い割増率が適用されます。
(3)控除項目
控除項目は、総支給額(支給項目の合計)から差し引かれる金額の内訳を示す欄です。控除には、法令にもとづいて企業が給与天引きし従業員に代わって納付する税金と、不就労に応じて控除されるもの、企業独自に設定されるものがあります。
それぞれの内容と実務上のポイントについて、解説します。

社会保険料
給与から控除する社会保険料には、健康保険料、介護保険料(40歳〜65歳未満)、厚生年金保険料、雇用保険料の4つがあります。労災保険料は事業主が全額負担するため、給与明細に記載しないことが一般的です。
健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、企業から支給される賃金に応じて決定される標準報酬月額をもとに保険料額が定められており、その等級に応じた金額が毎月控除されます。
社会保険料は、原則従業員と事業主で折半して負担するため、企業は従業員から徴収した保険料を事業主負担分とあわせて納付します。
一方、雇用保険料は、実際に支払われた賃金額に保険料率を乗じて算出される仕組みで、毎月の給与額に応じて控除額が変動します。雇用保険料は、従業員負担と事業主負担の割合が異なる点にも注意が必要です。
社会保険は、1週間の所定労働日数や雇用期間などの条件を満たした場合に加入します。加入条件については、別記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
所得税
所得税は、当月の給与支給額をもとに「源泉徴収税額表」を参照して算出し、毎月の給与から天引きします。この金額はあくまで概算であり、年間の所得や各種控除を反映した最終的な税額とは一致しない場合があります。
そのため、年末調整により年間の所得税額を確定させ、これまでに天引きした税額との過不足を精算します。
住民税
住民税は前年(1月1日〜12月31日)の所得にもとづき、その年の年税額が決定されます。
前年の所得が少なかった新卒社員やパート社員など、住民税の徴収が不要な従業員もいます。企業が給与から住民税を徴収することを「特別徴収」といいます。原則として給与所得者は、特別徴収により納付しなければいけません。
特別徴収の場合、6月から翌年5月を1年とする年税額を12回にわけて毎月の給与から天引きし、企業が従業員に代わって各自治体へ納付します。
欠勤控除
欠勤控除は、ノーワーク・ノーペイの原則にもとづき、不就労日や不就労時間の賃金を差し引く項目です。不就労日・不就労時間を賃金から控除するかどうかは会社のルールによりますが、多くの企業で控除する方法が採用されています。
控除の計算方法も企業ごとに異なりますが、一般的には、所定労働日数・時間をもとに賃金日額や時間単価を算出し、そこに欠勤日数などを掛けて算出します。
代表的な計算方法は以下のとおりです。
欠勤控除の計算方法
- 1日あたりの賃金を計算
- 月給(欠勤控除の対象となる手当)÷月の平均所定労働日数
- 欠勤控除額を計算
- 1日あたりの賃金額(「1.」) × 欠勤日数
遅刻・早退控除の計算方法
- 1時間あたりの賃金を計算
- 月給(遅早控除の対象となる手当)÷月の平均所定労働時間
- 遅刻早退控除額を計算
- 1時間あたりの賃金額(「1.」)×遅刻早退時間
1日および1時間あたりの賃金を計算する際の月給にどの手当が含まれるかは、企業のルールによります。賃金規程に定められた計算式で計算しましょう。
その他の控除項目
法定の控除項目以外にも、社宅・寮の利用料、財形貯蓄の積立金、生命保険料、従業員持株会の拠出金など、企業独自の控除が給与明細に記載されるケースがあります。
社会保険料や所得税などの法令で定められたもの以外を控除する場合は、従業員に無断で控除できず、労使協定の締結が必要です。
なお、2026年4月から少子化対策の一環として導入された子ども・子育て支援金は、健康保険料とあわせて徴収されます。保険料率は、標準報酬月額×0.23%で、企業と従業員が折半で負担します。
子ども・子育て支援金は、給与明細への個別表示が法令で義務付けられていませんが、こども家庭庁は、従業員へのわかりやすい情報提供の観点から、給与明細などでの明示をするよう事業主に配慮を求めています。
使用している給与計算ソフトが、個別の表示に対応しているかを確認し、自社の対応を検討しましょう。
参考:賃金控除に関する労使協定を締結していますか? - 厚生労働省
参考:こども未来戦略「加速化プラン」に基づく給付拡充と子ども・子育て支援金制度の周知について - こども家庭庁
(4)支給額(手取り)
差引支給額は、従業員本人が実際に受け取る金額で、「手取り額」や「振込支給額」ともよばれます。支給項目の合計額から、社会保険料や税金などの控除項目を差し引いて算出されます。
(5)氏名・所属部署など本人情報
給与明細には、賃金の内訳のほかに、以下のような従業員情報も記載されています。
- 会社名
- 従業員氏名
- 所属部署・役職
- 賃金対象期間・賃金支払日
- 社員番号
複数の事業所や部門を持つ企業では、所属部署や従業員番号を記載することで、配布ミスの防止にくわえて、データ管理や照合といった管理業務の効率化にもつながります。
給与明細に記載される金額の計算方法
ここまで「勤怠項目」「支給項目」「控除項目」にそれぞれどのような項目が表示されるのかを解説してきました。ここでは、実際に給与明細に記載される金額の計算方法を、主要な項目ごとに解説します。
残業代の計算方法
残業代は、1時間あたりの賃金単価に対して、割増率を掛けて算出します。割増率は、法令により最低基準が定められています。具体的には以下のとおりです。
種類 | 割増率 |
|---|---|
時間外労働(月60時間以内) | 25%以上 |
時間外労働(月60時間超) | 50%以上 |
深夜労働(22時〜翌日5時) | 25%以上 |
法定休日労働 | 35%以上 |
時間外+深夜労働 | 50%以上(時間外25%+深夜25%) |
法定休日+深夜労働 | 60%以上(法定休日35%+深夜25%) |
1時間あたりの賃金単価を算出する際の月給には通常すべての手当が含まれますが、以下の手当は、除外が可能です。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超えるごとに支払われる賃金
ただし、家族手当や住宅手当を扶養人数や家賃額などに応じた支給額ではなく、一律で支給する場合は、除外せず賃金単価に含める必要があります。どの手当を賃金単価の算定に含めるかは、就業規則等に明記し、実務上の取扱いを統一しましょう。
時間外労働(月60時間以内)の計算方法は、以下のとおりです。
- 月の所定労働時間:160時間
- 割増賃金の基礎となる月給:300,000円
- 残業時間:20時間
(1)時間単価を算出する
300,000円÷160時間=1,875円
(2)割増率(25%)を乗じた単価を算出
1,875円×1.25=2,344円(50銭以上切り上げ)
(3)単価に残業時間を乗じた金額が残業代
2,344円×20時間=46,880円
上記のとおり、残業代は46,860円となります。計算途中で生じた端数は、50銭未満を切り捨て、50銭以上を切り上げて処理します。
参考:残業手当の端数処理は、どのようにしたらよいですか。 - 厚生労働省
社会保険料の計算方法
給与明細から控除される社会保険料の計算方法を順に解説します。
(1)健康保険料
健康保険の保険料率や事業主および従業員負担の割合は、加入している健康保険組合によって異なります。加入している健康保険組合のルールにもとづき計算しましょう。本記事では労使折半を前提に説明します。
健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2
(2)介護保険料
介護保険料は、企業で社会保険に加入している場合、40歳以上65歳未満の従業員(第2号被保険者)が徴収対象となり、健康保険料とあわせて給与から控除します。
65歳以上になると第1号被保険者に区分が変わり、原則として市区町村が保険料を徴収するため、給与からの控除は必要ありません。介護保険料は健康保険料と一体で徴収されるため、加入している健康保険組合により料率が異なります。
介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率 ÷ 2
(3)厚生年金保険料
厚生年金保険料は、全国一律の保険料率が適用されており、事業主と従業員で折半して負担します。2026年4月現在の保険料率は18.3%です。
厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率(18.3%) ÷ 2
(4)雇用保険料
雇用保険料は、毎月支払われる賃金額に保険料率を掛けて計算します。実際の賃金額に応じて算出されるため、残業代の増減などにより毎月の保険料も変動します。
雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率
雇用保険料は、業種ごとに料率や事業主と従業員の負担割合が定められています。 令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)の雇用保険料率は以下の画像のとおりです。

所得税の計算方法
所得税は、その月の課税対象給与額(総支給額から非課税通勤手当や社会保険料を差し引いた額)と扶養人数をもとに、国税庁が定める「源泉徴収税額表」を参照して控除します。
毎月の控除額はあくまで概算のため、年末調整により年間の税額との差額を精算します。

住民税は前年の所得をもとに市区町村が税額を決定し、毎年5月頃に「特別徴収税額決定通知書」が送付されます。その後、通知書に記載された税額を、6月から翌年5月にかけて、毎月の給与から控除します。なお、税額は市区町村が計算するため、企業側で計算する必要はありません。
給与明細の作成方法
企業が給与明細を作成する際には、勤怠データの集計から支給額・控除額の計算、最終的な差引支給額の確定まで、いくつかの手順を踏む必要があります。
給与明細の作成方法は企業によって異なり、給与計算ソフトを利用するケースのほか、表計算ソフトのテンプレートを用いて作成する場合もあります。いずれの方法を選んだ場合でも、法令や自社の賃金規程にもとづき、正確な計算および記載が求められます。
ここでは、給与明細を作成する際の基本的な手順について解説します。
(1)勤怠データを集計する
はじめに、タイムカードや勤怠管理システムから出勤日数・労働時間・残業時間・有給休暇取得日数・欠勤日数などのデータを集計し、給与計算の基礎となる情報を確定させます。
日頃から従業員に対して正確な打刻を周知しておくことで、締め作業時の確認や修正工数の削減につながります。
紙のタイムカードの場合、集計作業に手間がかかることや、打刻漏れ・転記ミスが発生しやすいため、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
勤怠管理システムの活用により、集計の自動化やリアルタイムでの勤怠状況の把握が可能となり、業務効率化やミスの防止につながります。
(2)支給額を計算する
集計した勤怠データをもとに、基本給・時間外手当・各種手当など、従業員ごとの支給額を算出します。
月途中の入社・退職・休職がある場合は、在籍日数や労働日数に応じた日割り計算が必要です。前月に日割りした従業員の手当を満額に戻すのを忘れないようにしましょう。
基本給や役職手当などの所定内賃金は、原則として毎月変動しないため、改定がない限り前月の金額をベースに確認・反映します。一方で残業代などの変動部分は毎月計算し、反映が必要です。
退職者の給与は、支給後に次月での調整ができないため、日割り計算や最終支給額に誤りがないか、特に慎重に確認しましょう。
(3)控除額を計算する
続いて、社会保険料、所得税、住民税など、給与から差し引く金額を計算します。社会保険料は標準報酬月額や賃金額、税金は法令にもとづいた方法で算出します。また、社宅費や財形貯蓄など、企業独自の控除がある場合はあわせて反映します。
(4)給与明細を作成する
支給額と控除額が確定したら、差引支給額を算出し、給与明細に必要な情報がそろいます。給与計算ソフトやクラウドシステムを利用している場合は、データを入力・連携するだけで自動的に明細が生成されます。
作成後は、金額や氏名・所属部署などの基本情報に誤りがないか、必ず確認しましょう。
(5)従業員へ給与明細を交付する
作成した給与明細は、給与支払日までに従業員へ交付します。紙の場合は手渡しまたは郵送、電子の場合はウェブシステム上での公開やメール送付などの方法があります。
交付するファイル形式(PDFなど)に法律上の決まりはありませんが、従業員が確実に受け取れる方法を選ぶことが大切です。
給与明細の作成・交付時の注意点

給与明細の作成・交付時に、実務で間違いやすいポイントや押さえておきたい事項を中心に解説します。
【注意点1】給与明細の電子化(ウェブ明細)は従業員の同意が必要
給与明細を電子交付する際は、従業員の個別同意が必要です。同意を取得する際は、口頭ではなく書面や電子メールなど記録が残る形で実施しましょう。
同意しない従業員には引き続き紙で交付する必要があります。また、同意後も従業員が紙への変更を希望した場合は、速やかに対応できる体制を整えておくことが大切です。
また、DX推進によって経営への好影響も期待できます。企業の取り組み事例や進め方について、以下記事で紹介しているので、あわせてご覧ください。
【注意点2】保険料の変更反映タイミングに注意する
給与明細の控除額は、制度改正や標準報酬月額の変更に伴い定期的に見直しが必要です。とくに注意すべきタイミングを、控除項目ごとに解説します。
(1)健康保険料・厚生年金保険料
健康保険・厚生年金保険で、保険料率や標準報酬月額が変更されるケースが多いタイミングは、以下のとおりです。

3月分の保険料(通常は4月支給給与)
- 保険料率が改定されることが多いため、日本年金機構や協会けんぽ・健康保険組合からのお知らせを確認しましょう。
9月分の保険料(通常は10月支給給与)
- 定時決定(算定基礎届)により、標準報酬月額の等級が変更される可能性があります。
随時(給与改定時)
- 給与に大きな変動があったときは、随時改定(月額変更届)の対象となる可能性があります。随時改定に該当する場合、要件を満たした月の4か月目から保険料が変更されます。定期昇給がある場合は、改定のタイミングを事前に確認しておきましょう。
(2)雇用保険料
雇用保険の料率は、財政状況などを加味し、毎年見直しがされます。毎年4月1日から新しい料率が適用されますが、給与計算では支給日ではなく賃金の締め日(計算期間)を基準に適用する点に注意が必要です。4月1日以降を含む期間に対応する給与から、新しい保険料率を適用しましょう。
最新の雇用保険料率について、以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
(3)所得税
所得税は、扶養親族の人数や給与額など、従業員ごとの状況に応じて税額が決まります。とくに扶養親族の増減は、源泉徴収税額に影響するため、従業員から正しく申告してもらう必要があります。
また、源泉徴収に使用する税額表は、見直しにより1月から新しい税額表が適用される場合があります。年初の給与計算時には、税額表の変更有無を確認しておきましょう。
(4)住民税
前年の所得をもとに計算され、毎年6月から翌年5月までの12か月間で徴収します。そのため、6月に支給する給与から新年度の住民税額に切り替わる点に注意が必要です。
(5)その他
控除される税金は、法改正によって新たに追加・変更されるケースが多く、継続的な情報収集が欠かせません。近年の例としては、2024年に実施された定額減税が挙げられます。定額減税は、月次減税と年調減税の2段階で対応が必要となるなど、給与計算実務への影響が大きい制度改正でした。
また、2026年度から段階的に導入される子ども・子育て支援金は、健康保険料とあわせて徴収される新たな拠出金です。給与明細への表示方法や徴収開始時期など、実務上の対応が求められます。
国税庁や厚生労働省、日本年金機構などの公的機関から発信される情報を定期的に確認し、法改正への迅速な対応を心がけましょう。
【注意点3】出勤日数や残業時間など計算・反映ミスがないか確認する
出勤日数や残業時間などの勤怠データに誤りがあると、基本給や残業代の支給額に直接影響します。とくに残業時間の集計ミスは、未払い残業代や過払いの原因となるため注意が必要です。
勤怠データの確定時だけでなく、給与計算への反映時にも数値に誤りがないか、複数人でダブルチェックをするとよいでしょう。
【注意点4】退職者・休職者にも確実に交付する
給与明細の交付義務は、退職者や休職者にも適用されます。退職月の給与明細は、退職後に郵送するなど確実に届く方法で交付しましょう。
また、ウェブで交付する場合は、退職後も一定期間閲覧できるよう設定し、あらかじめ閲覧期限やダウンロード方法を案内しましょう。休職中や退職後に閲覧不可となる場合は、源泉徴収票とあわせて自宅へ郵送するなどの対応が必要です。
給与明細の保管が必要な理由

給与明細には作成・交付の義務はありますが、法的な保管義務はありません。ただし給与計算の根拠資料としての役割や、後日の確認・トラブル対応に備える観点からも、保管が推奨されています。
ここでは、給与明細の保管が必要とされる理由と保管方法を解説します。
関連書類の保管義務があるため
給与明細に関連する賃金台帳や労働者名簿などの書類は、法令により一定期間の保管義務があります。これらの書類と照合できる状態を保つためにも、給与明細も同等の期間保管しておくことが望ましいです。
書類名 | 保管期限 |
|---|---|
賃金台帳 | 5年(経過措置として当面3年) |
労働者名簿 | 5年(経過措置として当面3年) |
出勤簿・タイムカード | 5年(経過措置として当面3年) |
源泉徴収簿 | 7年 |
給与明細の再発行対応やトラブル対処のため
給与明細は、残業代を正しく計算し、賃金を間違いなく支払った証拠として機能します。また、従業員から再発行を求められた際のスムーズな対応のためにも、保管が推奨されます。
退職後のトラブルは数年後に発生する可能性もあるため、一定期間の保管が安心です。
給与明細の保管方法と期限の目安
保管方法は紙・電子データどちらでも問題ありません。ただし、紙媒体は保管スペースの確保が必要となるため、可能であれば電子データでの管理がおすすめです。
電子データで保管する場合は、従業員名や年月ごとに整理し、必要なときにすぐ検索・確認できる状態で保存しましょう。
保管期間の目安は、関連する法定三帳簿(賃金台帳・タイムカード・労働者名簿)にあわせて5年以上を基本とし、税務関連書類との整合性を考慮するならば7年を目安にするとよいでしょう。
給与明細に関するよくある質問
給与明細の交付方法や閲覧に関して、実務で迷いやすいポイントを中心にまとめました。日々の対応や判断に迷った際の参考としてご活用ください。
Q1. 給与明細に誤りを見つけたらどうする?
給与明細に誤りが見つかった場合は、まず実際の支給額と一致しているかを確認します。計算ミスが判明した場合は、正しい金額を再計算し、当月の給与で対応が可能であれば、極力当月給与で調整をします。
当月での修正が間にあわない場合は、翌月の給与で過不足分を調整したうえで、従業員に事情を説明し、丁重にお詫びしましょう。
修正後は、正しい内容を反映した給与明細を再発行し、従業員へ交付します。
Q2. 給与明細はいつまでに交付する必要がある?
所得税法では、「給与を支払う者は給与の支払を受ける者に支払明細書を交付しなくてはならない」と定められています(所得税法第231条)。交付のタイミングは、給与の支払いと同時、または支払い日までに交付するのが一般的です。交付が大幅に遅れると従業員の不信感につながります。
紙の明細書を交付する場合は、事前に発送し、給与支払日までに到着するよう手配しましょう。電子交付の場合、あらかじめ設定した日時に明細を公開でき、交付漏れの防止にも有効です。
Q3. 退職後ウェブ給与明細は閲覧できる?
退職後のウェブ給与明細の閲覧可否は、企業の運用方針やシステムの仕様によって異なります。退職後一定期間が経過するとアクセスできなくなるケースが多いため、退職前に必要な明細をダウンロード・印刷して保存するよう、従業員に事前に案内しておきましょう。
Q4. 給与明細がもらえない場合はどうする?
給与明細の交付は、所得税法第231条により事業者の義務です。給与明細が交付されない場合は、まず人事・給与担当者へ交付を求めましょう。
人事・給与担当者などへ問い合わせても対応されない場合は、税務署や労働基準監督署への相談を検討します。税務署に相談する際は、「給与支払明細書不交付の届出書」を提出し、受理されると、企業に対して指導などが実施されます。
Q5. 給与明細は再発行できる?
給与明細の再発行可否は企業の運用によりますが、給与計算システムなどを利用している場合は、過去のデータから再発行できるケースが多いです。
紙のみで管理している場合は再発行が難しいこともあるため、電子データでの保管・管理体制を整えておくことが大切です。
給与明細を正しく作成し、従業員が安心できる給与管理を実現しよう
給与明細は、毎月の賃金内訳を従業員に示す重要な書類であり、所得税法にもとづく交付義務があります。勤怠・支給・控除・差引支給額の各項目を正確に記載し、適切なタイミングで交付することが、給与管理の基本です。
また、給与明細の作成は、保険料率の変更や法改正への対応、退職者・休職者への確実な交付など、実務上の注意点も多岐にわたります。
給与計算システムの活用や社内規程の整備を通じて、ミスのない給与明細の作成体制を構築し、従業員との信頼関係の強化につなげましょう。

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