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労働基準法とは?労働時間・賃金・休憩などのルールや法改正をわかりやすく解説

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目次

人事労務担当者にとって、業務を遂行するうえで最も基本となり、重要な法律が「労働基準法」です。

労働者の権利を守り、良好な労使関係を築くには、労働基準法の正確な理解と遵守が欠かせません。近年は改正が相次いでおり、今後も見直しの動きが注目されています。

本記事では、労働基準法の基本から注意点、近年の法改正の流れまで、実務に役立つポイントを解説します。

労働基準法とは?

本来、労働条件は労使が対等な立場で自由に契約を結ぶべきものです。しかし、労働者は経済的に弱い立場にあるため、一方的に不利な条件を受け入れざるを得ない状況が生じかねません。そこで労働基準法は、賃金・労働時間・休憩・休日・年次有給休暇など労働条件の最低ラインを設け、労働者の生活を保障しています。

労働基準法で定められる主なルールは次のとおりです。

労働基準法で定められる主なルール

参考:労働基準に関する法制度‐厚生労働省

  1. 【働く時間】労働時間・休憩・休日・残業・年次有給休暇について
  2. 【労働契約の締結】労働条件の明示と就業規則
  3. 【解雇】やむを得ず辞めてもらうとき
  4. 【給料】賃金支払いと最低賃金
  5. 【特別な保護規定】年少者と妊産婦等
  6. 【違反と罰則】労働基準法に違反した場合

違反した場合の罰則については、「【違反と罰則】労働基準法に違反した場合」で詳しく解説しています。

労働基準法の目的

労働基準法の目的は、第1条に明記されています。

(労働条件の原則)第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。② この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

働く人に対して、日本国憲法第25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活(生存権)」を営める収入や休息の確保が、この法律の理念です。賃金や労働時間などの各種規定は、労働者の生活と健康を守る観点から定められています。

労働基準法で定められている基準はあくまでも、「最低基準」です。企業と労働者は、最低基準をクリアしたうえで、より高い労働条件で働きやすい環境を築くことが、この法律の目指すところです。

労働基準法は強行法規

労働基準法の大きな特徴の一つに、「強行法規」であることが挙げられます。強行法規は、当事者間の合意よりも、法律の規定が優先されます。

(この法律違反の契約)第十三条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

たとえば、企業と労働者が「残業代は支払わない」と合意しても、労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)に違反するため無効となり、自動的に労働基準法が定める基準に置き換えられます。

参考:労働基準法における「労働者」とは‐厚生労働省

このように、労働基準法は、労働者を保護する最低基準を強制的に確保する強い効力をもちます。

労働基準法における使用者

労働基準法では、法律を守る義務を負う「使用者」を以下のように定義しています。

  • 事業主:企業そのものや個人事業主
  • 事業の経営担当者:社長や役員など
  • 事業主のために行為をするすべての者:部長や課長、工場長など、一定の権限を与えられ、部下の労務管理や業務命令を行なう者

役職名にかかわらず、労働条件の決定や労務管理、業務上の指揮命令などの権限を実質的にもっているか否かで判断される点が重要です。管理職は労働者であると同時に、部下との関係においては「使用者」の立場にもなり得ます。

労働契約法の使用者との違い

労働契約法では、使用者は「その使用する労働者に対して賃金を支払う者」と定義されています。

労働契約の当事者である「企業(法人)そのもの」や「個人事業主」を指しており、労働基準法のように現場の管理職までを含むものではありません。

労働基準法における労働者

労働基準法によって保護される「労働者」は、以下のように定義されています。

第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

この定義に当てはまれば、正社員だけでなく、契約社員、パートタイマー、アルバイトなどすべての雇用形態の従業員が「労働者」として扱われます。また国籍による差別的取り扱いは許されず、外国人労働者であっても労働基準法による保護を受ける権利があります。

参考:労働基準法における「労働者」とは‐厚生労働省

適用除外となる労働者

企業で働いていても、労働基準法の規定が全部または一部適用除外となるケースがあります。

企業の取締役など経営者側の立場にある人や、業務委託契約・請負契約で働くフリーランス(個人事業主)などは、使用者から直接の指揮命令を受けていないため労働基準法上の「労働者」には該当しません。

ただし、形式上は業務委託でも実態として使用者の指揮下にある場合は、労働者と認められる場合もあるため注意が必要です。

労働時間・休憩・休日規定が適用除外となる労働者

労働基準法第41条では以下の3種類の労働者は、労働時間・休憩・休日に関する規定を適用しない旨が定められています。

  • 農業・畜産業・養蚕業・水産業に従事する労働者(業務が自然条件に左右され、労働時間や週休の規制になじまない者)
  • 管理監督者または機密事務取扱者(経営者と一体的な立場にある者)
  • 監視または断続的労働に従事する者で行政官庁の許可を受けたもの(業務の性質上、常態的に勤務が断続的・待機的である者)

上記に該当する労働者は、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の支払い義務も免除されます。ただし、労働基準法の適用が完全に外れるわけではありません。たとえば管理監督者であっても深夜業(22時〜翌5時)に対する割増賃金の支払い義務は免除されません

労働基準法の基本7原則とは?

労働基準法の第1章「総則」には、この法律全体の根幹をなす「基本7原則」が定められています。これらの原則は、個別の条文を理解するうえでの基礎となる重要な考え方であり、日々の労務管理における根本的な判断基準にもなります。

条文
原則
内容のポイント​
第1条

労働条件の原則

労働条件は、労働者が「人たるに値する生活」を営めなければならず、この法律が定める基準はあくまで最低限の基準である。

第2条

労働条件の決定

労働条件は、使用者と労働者が対等な立場で決定すべきである。また、決定した労働契約や就業規則は、双方が誠実に遵守する義務がある。

第3条

均等待遇

国籍、信条(宗教や政治的信条など)、社会的身分(生まれや家柄など)を理由として、賃金などの労働条件について差別的な取り扱いをしてはならない。

第4条

男女同一賃金の原則

労働者が女性であることを理由として、男性と賃金について差別的な取り扱いをしてはならない。

第5条

強制労働の禁止

暴行、脅迫、監禁といった不当な手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

第6条

中間搾取の排除

何人(いかなる人)も、法律で認められた場合(職業紹介事業など)を除き、他人の就業に介入して不当に利益を得てはならない。

第7条

公民権行使の保障

労働者が選挙権の行使(投票)や公の職務(裁判員など)を果たすために必要な時間を請求した場合、使用者はこれを拒否してはならない。

参考:e-Gov法令検索 - 厚生労働省

【働く時間】労働時間・休憩・休日・残業・有給について

【働く時間】労働時間・休憩・休日・残業・有給について

人事労務の実務において、最も頻繁に関わるのが「働く時間に関するルール」です。労働基準法は、労働者の健康と生活を守るため労働時間、休憩、休日などについて厳格な基準を設けています。ここでは、人事担当者が押さえておくべき基本ルールを解説します。

参考:労働時間・休日‐厚生労働省

労働時間のルール

労働基準法では、1日および1週間あたりの労働時間に上限を設けており、原則としてその上限を超えて労働させてはいけません。上限は法定労働時間と呼ばれ、1日8時間・週40時間と定められています。企業はこの範囲内で所定労働時間を設定する必要があります。所定労働時間とは、企業が就業規則や労働契約で定める労働時間です。

なお、商業・接客業・保健衛生業など一部業種の小規模事業場(常時10人未満)では週44時間までの労働が認められています。

また例外として、業務の繁閑にあわせて労働時間を柔軟に設定できる「変形労働時間制」や、始業・終業時刻を労働者の裁量に委ねる「フレックスタイム制」なども認められています。これらの制度を導入するには就業規則への規定や労使協定の締結が必要です。

休憩のルール

休憩とは、労働者が労働から離れて自由に過ごせる時間を指します。次のとおり、労働時間に応じて休憩時間を途中で与える必要があります。

  • 労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合:少なくとも45分
  • 労働時間が8時間を超える場合:少なくとも1時間

この休憩には、守るべき「三原則」があります。

  1. 途中付与の原則:休憩は、必ず労働時間の「途中」に与えなければなりません。始業前や終業後に与えることは認められません。
  2. 一斉付与の原則:休憩は、原則として全労働者に一斉に与える必要があります。ただし、法令で定められた特定の業種や労使協定を締結した場合は交代で休憩を取得させることが可能です。
  3. 自由利用の原則:休憩は、労働者が業務から完全に解放される自由な時間でなければなりません。電話番や来客対応をさせる時間は休憩とはみなされません。

これら3原則を厳守し、休憩を与えるようにしましょう。休憩時間のルールについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

休日のルール

休日とは、労働契約上、労働義務のない日です。労働者に対して、少なくとも毎週1回、または4週間を通じ4日以上の休日を与えなければなりません。

この法律で定められた最低限の休日を「法定休日」といいます。一方、企業が法定休日を超えて独自に設定した休日を「所定休日(法定外休日)」といいます。たとえば、週休2日制の企業では、1日が法定休日、もう1日が所定休日となります。

どの曜日を法定休日にするかは法律で定められていませんが、トラブル防止のため就業規則で特定しておくことが望ましいでしょう。特定しない場合、1週間(日曜日~土曜日)のうち、最後の休日が法定休日として扱われます。

たとえば、週休2日(土日休み)の企業で法定休日を就業規則に定めていない場合、日曜より後に位置する土曜を法定休日、日曜を法定外休日(所定休日)と扱うのが一般的です。

時間外労働および休日労働のルール

時間外労働とは、法定労働時間を超える労働のことで、いわゆる残業を指します。また、休日労働とは法定休日に労働させることです。

時間外労働や休日労働をさせるには、36協定の締結・届け出と割増賃金の支払いが必須です。

36(サブロク)協定の締結と届出

36(サブロク)協定の締結と届出

出典:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 - 厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

労働基準法第36条では、法定労働時間を超えて労働させる場合や法定休日に労働させる場合、あらかじめ労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出が必要と定められています。この協定は労働基準法第36条にもとづくため、通称「36協定(サブロク協定)」と呼ばれます。

割増賃金の支払い

時間外労働、休日労働、深夜労働(22時~5時)に対しては、通常の賃金に以下の割増率を乗じた「割増賃金」を支払わなければなりません。

  • 時間外労働(法定労働時間超):25%以上
  • 時間外労働(法定労働時間の月60時間を超える部分):50%以上
  • 休日労働(法定休日):35%以上
  • 深夜労働(22時~5時):25%以上

ただし、36協定を結べば無制限に時間外労働ができるわけではありません。時間外労働には上限が定められており、原則として月45時間・年360時間が限度です

臨時的に特別な事情がある場合に限り、労使で「特別条項」付きの36協定を締結することで、原則の上限(月45時間・年360時間)を超える時間外労働が可能になります。ただし、この例外的な場合でも、労働者の健康確保のための上限が設けられており、万が一上限を超えた場合は罰則が課せられる可能性があります。

  • 時間外労働は年720時間以内、かつ単月では休日労働を含めて100時間未満
  • 複数月平均(2〜6か月平均)で休日労働を含め80時間以内
  • 月45時間超の時間外労働が認められるのは年6回まで

年次有給休暇のルール

年次有給休暇(以下、有給休暇)は、心身の疲労回復や仕事と生活の調和のために労働者に与えられる有給の休暇です。雇い入れから6か月間継続勤務し、出勤率が8割以上である労働者に対して、10日間の年次有給休暇を与える義務があります。

付与日数は、勤続勤務年数に応じて以下のとおりです。なお、週所定労働日数が少ないパートタイム労働者などには、所定労働日数に応じた日数が比例付与されます。

年次有給休暇のルール

出典:働き方・休み方改善ポータルサイト - 厚生労働省

時季指定権と時季変更権

有給休暇は労働者の任意のタイミングで取得でき、企業は原則として拒否できません。これを労働者の有する「時季指定権」といいます。ただし、請求された時季に休暇を取得されると事業の正常な運営に影響がある場合には、企業は「時季変更権」を用いて、ほかの時季へ変更できます。

年5日間の有給休暇取得義務

2019年4月からは、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年5日の取得が義務化されました労働者が自ら5日取得していない場合、使用者が時季を指定して取得させる必要があります。

日本の有給休暇取得率は国際的に低い水準にあることから、政府は取得促進を重要課題と位置づけており、取得義務化の法改正にいたりました。

有給休暇の時効と年次有給休暇管理簿の作成・保存義務

有給休暇の未消化分は翌年まで繰り越せますが、保持できるのは最大40日までです。

また、年次有給休暇の取得状況については、「年次有給休暇管理簿」に記録し、管理・保存することが義務づけられています。

【雇用前】労働条件の明示と就業規則

トラブルを未然に防ぐためには、労働契約を結ぶ段階のルール遵守がきわめて重要です。ここでは、労働条件の明示と就業規則に関するルールを解説します。

労働契約時に明示義務のある労働条件

使用者は、労働契約を結ぶ際に賃金や労働時間などの労働条件を明示する義務があります。

明示方法は原則として書面の交付が必要です。労働者が希望した場合はFAXや電子メール、SNSなど電子的な方法でも明示できます。なお、電子的な方法で明示する場合は、出力して書面として保存できる形式に限られます。

明示事項には、必ず明示しなければならない「絶対的明示事項」と、定めがある場合に明示が必要な「相対的明示事項」があります。

【絶対的明示事項】(書面での明示が必須)

  • 労働契約の期間
  • 就業場所と従事すべき業務内容(変更範囲を含む)
  • 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇など
  • 賃金の決定、計算・支払いの方法、締め切り・支払いの時期、昇給(※)
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  • 有期労働契約の場合:
    • 更新基準
    • 更新上限の有無とその内容
    • 契約期間内に無期転換申込権が発生する場合
      • 無期転換申込機会
      • 無期転換後の労働条件

※昇給に関する事項は口頭での明示が可能

相対的明示事項】(定めがある場合に明示が必要)

  • 退職手当の適用される労働者の範囲、決定、計算・支払いの方法、支払いの時期
  • 賞与など臨時の賃金、最低賃金額
  • 労働者に負担させる食費、作業用品そのほかに関する事項
  • 安全衛生
  • 職業訓練
  • 災害補償および業務外の傷病扶助
  • 表彰および制裁
  • 休職

相対的明示事項は、社内でルールや制度として定めている場合に限り、明示義務が発生します。口頭での明示も法律上は可能ですが、トラブル防止のため書面での明示が推奨されます。

就業規則の記載事項と提出義務

常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。記載事項には必ず定めなければならない「絶対的必要記載事項」と、制度を設ける場合に記載が必要な「相対的必要記載事項」があります。

【絶対的必要記載事項】

項目
概要
①労働時間

始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに交代制勤務の場合は就業時転換に関する事項


②賃金

賃金の決定、計算および支払の方法、賃金の締切り・支払の時期ならびに昇給に関する事項

③退職

退職に関する事項(解雇の事由を含む)

【相対的必要記載事項】

項目
概要
①退職手当

適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払の方法ならびに退職手当の支払時期に関する事項


②臨時の賃金・最低賃金額

臨時の賃金等(退職手当を除く)および最低賃金に関する事項

③費用負担

食費、作業用品などの費用負担に関する事項


④安全衛生

安全および衛生に関する事項

⑤職業訓練

職業訓練に関する事項

⑥災害補償・業務外の傷病扶助

災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項

⑦表彰・制裁

表彰および制裁の種類と程度に関する事項

⑧その他の事項

事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項

絶対的必要事項と相対的必要記載事項のほかに、企業の実態やルールにあわせて任意に定められる事項も存在します。一般的に、任意で規定していることが多い項目は下記のとおりです。

  • 服務規律に関する事項(遅刻・早退・欠勤など勤怠に関わること、身だしなみ、ハラスメントなど)
  • 副業・兼業に関する事項(許可制の有無、遵守事項など)
  • 評価制度に関わる事項(昇格や人事考課の基準など)

労働条件通知書の明示事項と就業規則の記載事項は多くの部分で重なりますが、一部異なる事項もあるため混同しないよう注意しましょう。

なお、労働者が10人未満の事業場には、就業規則の作成・届出義務がありません。しかし、就業規則を整備していない場合、将来的に企業防衛上の大きなリスクを抱えることになりますトラブルを防ぐためにも、就業規則を作成し、社内周知が重要です。

【解雇】やむを得ず辞めてもらうとき

労働者にやむを得ず退職してもらう場合は、法律上のルールを正しく理解し、慎重に対応する必要があります。解雇は労働者の生活に大きな影響を与えるため、労働基準法でさまざまな制限や手続きが定められています。

労働基準法上の解雇予告・解雇制限のルールとは別に、労働契約法第16条では「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない解雇は無効」とされています。労働基準法のルールを遵守したからといって、自由に解雇できるわけではありません。

参考:e-Gov法令検索 - 厚生労働省

解雇に制限がある労働者

療養中や産休中など、保護が必要な労働者に対して、以下のとおり解雇が禁止される期間が設けられています。

  • 業務上の負傷や疾病により療養のために休業する期間、およびその後30日間
  • 産前産後休業の期間(産前6週間・産後8週間)、およびその後30日間

これらの期間中に行われた解雇は無効となります。

解雇予告と解雇予告手当

労働者を解雇する場合は、原則として以下のいずれかの措置をとらなければなりません。

  • 少なくとも30日前に解雇を予告する
  • 30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う

これらは組み合わせることも可能です。たとえば、20日後に解雇したい場合、足りない10日分の平均賃金を解雇予告手当として支払えば、労働基準法上は解雇が可能になります。

解雇予告と解雇予告手当の詳細は、以下の記事をご覧ください。

【給料】賃金支払いと最低賃金

賃金は労働者の生活基盤となる重要な労働条件です。そのため、労働基準法では支払い方法や最低額について厳格なルールを定めています。

賃金支払いの5原則

労働者が確実に賃金を受け取れるよう、「賃金支払いの5原則」が定められています。

原則
趣旨
例外
(1)通貨払いの原則

賃金は日本円の通貨(現金)で支払う必要がある。

現物支給は禁止されている。

労働者が同意した場合は給与の銀行振込など現金以外の方法も認められ、労働協約で定めた場合には現物支給も可能。

(2)直接払いの原則

賃金は原則として労働者本人に直接支払わなければならない。

労働者が病気などの際に使者(家族など)に受け取りを委任することは認められている。

(3)全額払いの原則

賃金はその全額を一度で支払う必要がある。

所得税や社会保険料など法令で定められた控除項目は差し引きが認められており、労使協定があればそれ以外の控除もできる。

(4)毎月1回以上払いの原則​

賃金は月に1回以上支払わなければならない。

臨時に支払われる賞与や一時金については対象外。

(5)一定期日払いの原則

賃金の支払日はあらかじめ一定の期日を定める必要がある。「毎月第4金曜日」など支払日が変動する定め方は認められない。

賞与など臨時の賃金については例外として期日を固定しなくてもよい。

参考:賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。 ‐ 厚生労働省

最低賃金

労働基準法第28条では「賃金の最低基準は最低賃金法による」と規定されており、最低賃金法にもとづいて国が最低賃金額を定めています。当事者間で最低賃金を下回る時給を定めても、その契約は無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされます。

最低賃金には2種類あり、両方が適用される場合は高いほうが適用されます

  • 地域別最低賃金:都道府県ごとに定められ、産業や職種を問わず、その地域で働くすべての労働者に適用されます。
  • 特定(産業別)最低賃金:特定の産業について、地域別最低賃金よりも高い水準で定められています。

各都道府県の最低賃金額は毎年見直されており、近年は賃金引き上げの流れを受けて大幅な改定が続いています。2025年度(令和7年度)の地域別最低賃金改定では、全国加重平均額が前年度より66円上昇し時給1,121円となり、過去最大の引き上げ幅を記録しました

最低賃金は毎年見直されるため、基準を満たしているか毎年欠かさず確認しましょう。

参考:e-Gov法令検索 - 厚生労働省

【特別な保護規定】年少者と妊産婦等

年少者(18歳未満の労働者)や妊産婦等(妊娠中または産後1年以内の女性労働者)には、一般の労働者よりも手厚い保護規定が設けられています。

年少者の保護

年少者とは労働基準法上18歳未満の労働者を指します。とくに義務教育中の児童(満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者)には、より厳格な就業制限があります。代表的な保護規定は以下のとおりです。

保護規定
内容
例外
最低年齢

原則として、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、労働者として使用できない。

児童の健康・福祉に有害でなく軽易な作業に限り、所轄労働基準監督署長の許可を得て例外的に使用可能(満13歳以上。映画・演劇など芸術関係では13歳未満も可能)。

年少者の証明書

年少者を雇入れる場合、その者の年齢を証明する書類(住民票の写しなど)を事業所に備え付けておかなければならない。

さらに15歳未満を使用する場合は、学校長の証明書と親権者または後見人の同意書もあわせて備えつける必要がある。

なし

労働時間・休日の制限

時間外労働および法定休日の労働をさせることは禁止されている。

また、変形労働時間制は適用不可。

満15歳以上18歳未満は、週40時間以内かつ週1日を4時間以内に短縮すれば、他の日を10時間まで延長可能。また、1日8時間・週48時間以内で1か月・1年単位の変形労働時間制も適用可能。

深夜業の禁止

22時から翌5時までの深夜勤務は禁止されている。

満16歳以上の男性年少者を交替制勤務で使用する場合や、農林水産業・保健衛生など一部業種では深夜業が認められる。

危険有害業務の就業制限

労働災害や健康障害のおそれが高い危険・有害な業務に就かせてはならない。

なし

参考:労働基準法における未成年者・年尐者・児童の区分と保護規定 - 労働基準監督署

妊産婦等の保護

「妊産婦等」とは妊娠中の女性および産後1年以内の女性労働者のことです。母体の安全と胎児・乳児の健康を守るため、特別な保護措置が定められています。以下は代表的な保護規定です。

保護規定
内容
産前・産後休業

産前休業として、出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)から本人が休業を請求した場合、就業させてはならない。

また産後休業として、出産後8週間は原則就業禁止。ただし産後6週間経過後、本人が希望し、医師が支障ないと認めた業務については就労が可能。

危険有害業務の就業制限

妊産婦を、重量物を取り扱う業務や有害ガスを発散する場所での業務など、妊娠・出産等に有害な業務に就かせることはできない。

時間外・休日・深夜業の制限

妊産婦が請求した場合、時間外労働、休日労働、深夜業をさせてはいけない。

他の軽易な業務への転換

妊娠中の女性は、今の仕事を続けることについて負担が大きいと感じる場合、ほかの軽い業務への転換を請求できる。請求があった場合は配置転換や作業内容の変更など、軽減措置を講じなければならない。

育児時間

生後1年未満の子を養育する女性労働者が請求した場合、通常の休憩時間とは別に1日2回、各30分以上の育児時間を与えなければならない。なお、育児時間取得中は賃金支払い義務はない。

参考:働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について - 厚生労働省

【違反と罰則】労働基準法に違反した場合

労働基準法は、違反した使用者に対して罰則を定めています。違反の重大性に応じて拘禁刑や罰金の上限が異なります。ここでは、罰則と違反にあたる例を解説します。

労働基準法違反の罰則

もっとも重い罰則は「強制労働の禁止」に違反するものです。それ以外の違反にも、程度に応じて「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」や「6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」などの罰則が規定されています。主な違反行為と罰則は以下のとおりです。

罰則
主な違反行為
1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金

強制労働の禁止

1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

中間搾取の排除

最低年齢

坑内労働の禁止・制限など

6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

均等待遇、男女同一賃金の原則、解雇制限、解雇予告、時間外・休日労働・深夜労働の割増賃金支払い、有給休暇の取得拒否等、産前産後休業など

30万円以下の罰金

労働条件の明示、賃金支払いの5原則、就業規則の作成・届出・周知義務、年5日の有給休暇取得義務、労働者名簿の作成・整備など

参考:労働基準法の罰則 - 労働基準監督署対策相談室

労働基準法違反の例

人事労務管理において、意図せず労働基準法違反となるケースは少なくありません。下の表では、労働基準監督署の調査などで指摘されやすい違反例をまとめました。

残業代の未払い

固定残業代(みなし残業代)の誤った運用や、労働時間の把握不足による残業代の未払い

名ばかり管理職

実態は一般社員にもかかわらず、管理職の肩書きを理由に管理監督者として扱い、長時間労働や割増賃金の未払いが生じている状態

違法な長時間労働

36協定を締結せずに時間外労働や休日労働をさせる、または協定の上限を超えて働かせる行為

年次有給休暇の取得義務違反

年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年5日の取得をさせていないこと

休憩の不適切な運用

休憩中に電話番や来客対応をさせ、別途休憩を与えていない状態

労働基準法の法改正の流れ

労働基準法は、1947年に制定されて以来、社会情勢や働き方の変化に対応するため改正が重ねられてきました。ここでは、昨今の労働基準法改正の論点を解説します。

2018年:働き方改革関連法の成立

2018年6月に「働き方改革関連法」が成立し、労働基準法を含む8つの労働関係法令が大幅に改正されました。この法律の柱は以下の2つです。

  1. 労働時間制度の見直し(長時間労働の是正)と年次有給休暇の確実な取得
  2. 同一労働同一賃金の実現(雇用形態に関わらない公正な待遇の確保)

参考:「働き方改革」の実現に向けて‐厚生労働省

2019年:時間外労働の上限規制と年休取得義務

2019年4月1日(中小企業は2020年4月から)から、働き方改革関連法の主要な改正事項が施行されました。まず、時間外労働の上限規制が導入され、原則として時間外労働は「月45時間・年360時間以内」に収める必要が生じました。

臨時の特別な事情がある場合でも、年720時間以内・複数月平均80時間以内・単月100時間未満という絶対的な上限が定められ、これを超える時間外労働は違法となります。なお、複数月平均80時間以内・単月100時間未満には休日労働も含まれます。

また、年次有給休暇の取得義務化も実施されました。年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、毎年5日の有給休暇を確実に取得させなければなりません。

2023年:割増賃金率引上げとデジタル給与の解禁

2023年4月からは、主に2つの重要な改正が施行されました。

1つは、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率(50%以上)の中小企業への適用です。企業規模にかかわらず、すべての企業で割増率の引き上げに対応する必要が生じました。

もう1つは、賃金のデジタル払いの解禁です。 使用者が労働者の同意を得た場合、一定の要件を満たす資金移動業者の口座(電子マネー口座)へ賃金を支払うことが可能になり、賃金支払いの選択肢が広がりました。

参考:資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について‐厚生労働省

労働基準法の遵守が働きやすい職場づくりの第一歩

この記事では、労働基準法の目的から具体的なルール、罰則、そして法改正の流れまでを解説しました。労働基準法を正しく理解し遵守することは、重要な責務です。

とくに昨今は長時間労働の是正や多様な働き方の推進といった社会的要請が高まっており、労働基準法もそれに応える形で改正が進んでいます。最新の法改正情報を把握し、法令遵守に努めることが、労働者のエンゲージメント向上や生産性向上にもつながります。

労働基準法の遵守を土台として、安心・安全で働きやすいwell-workingな職場を実現していきましょう。

監修者蒼井まりえ

現役大手企業人事 兼 開業社会保険労務士

大手芸能事務所に人事として入社し、グループ企業全体の人事領域を担当。子企業の派遣企業立ち上げの際には社長直下の一人人事として採用以外の全ての人事業務を統括し、事業を軌道に乗せる。

その後、大手外資金融企業に転職し、人事戦略立案・人事制度設計・業務効率化・組織開発・D&I推進・社会保険対応など、多面的な人事課題にアプローチ。人的資本経営を実現する制度や仕組みづくりに携わる。

2013年社会保険労務士試験合格、2014年登録。現在は本業の傍ら兼業フリーランス社労士として企業や組織の成長を後押しする制度設計等などに取り組んでいる。

お役立ち資料

令和の労働時間管理ハンドブック

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