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人事・労務担当が知っておきたいHRニュース|2024年7月振り返りと8月のポイント

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目次

こんにちは!社会保険労務士の岸本です。8月は、人事・労務に携わる方々にとって、ようやく繁忙期が過ぎて少しは落ち着いてきた頃かと思います。

今年は定額減税の対応もありましたので、例年以上に忙しかったのではないでしょうか。

そして、梅雨が明けてからはさらに暑い毎日が続いていますので、くれぐれも健康管理には気をつけながら、リフレッシュの時間もとれるといいですね。

今回も、他にはない人事・労務の実務目線で注目すべきニュースをピックアップして、皆さまのお役に立てるようにわかりやすくお届けしたいと思いますので、ぜひご覧ください!

7月のトピックを振り返る

7月は、労働保険の年度更新や社会保険の算定基礎届、ロクイチ(61)報告(高年齢者・障害者雇用状況報告)など、年次業務の対応にも追われた月だったかと思います。本当にお疲れさまでした!

いよいよ本格的に夏が到来し、どこかへ遊びに行ったりゆっくりと休みをとったりしながらも、秋から冬へ向けた次の繁忙期に備えて、必要情報のキャッチアップ等を並行して進めておきましょう。

今月も知っておきたいトピックがいくつかありますので、最後まで目を通していただければと思います。

トピック1:被用者保険の適用拡大に関する今後の方向性

今年10月からの社会保険の適用拡大(短時間労働者の加入義務化は従業員数51人以上の企業まで拡大)まであとわずかですが、将来へ向けたさらなる適用拡大の方向性も気になるところです。

これに関連して、厚生労働省から7月に公表された、第8回「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」では、有識者による被用者保険(健康保険・厚生年金保険)の今後の対応の在り方について、意見等がまとめられています。

参考:2024年7月3日 働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会 議論の取りまとめ

以下のとおり、ポイントをまとめてみましたのでご確認ください。

被用者保険の適用に関する基本的な視点

  1. 被用者保険の適用拡大を進めることは重要
  2. 勤め先や働き方等での社会保険制度の取り扱いの違いにより、不公平などが生じないような中立的な制度構築が重要
  3. 事業所等に対する事務や保険料の負担増加などへの配慮も必要

短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲の在り方

  • 労働時間要件
    • 雇用保険の適用拡大(2028年10月より被保険者要件の週所定労働時間を20時間以上から10時間以上へ変更)の施行状況等も慎重に見極めながら見直しを検討する必要がある
  • 賃金要件
    • さらなる適用拡大を進める観点から月額8.8万円以上の基準の引下げについて、労働時間要件と同様に保険料・事務負担の増加や、被用者保険における被用者の範囲の線引きなど、さまざまな論点をもとに見直しを検討する必要がある
  • 学生除外要件
    • 本要件については現状維持が望ましいとの意見が多く、見直しの必要性は低いと考えられる
  • 企業規模要件
    • 経過措置として設けられた本要件については、他の要件に優先して、撤廃の方向で検討を進めるべきである

個人事業所に係る被用者保険の適用範囲の在り方

常時5人以上を使用する個人事業所における非適用業種については、5人未満の個人事業所への適用の是非の検討に優先して、解消の方向で検討を進めるべきである。

多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方

  • 複数の事業所で勤務する者
    • 労働時間等を合算する是非は、マイナンバーの活用状況や雇用保険の施行状況等を参考に、実務における実行可能性等を見極めつつ、慎重に検討する必要がある
  • フリーランス等
    • 現行の労働基準法上の労働者については、被用者保険の適用要件を満たせば適用となることから、適用が確実なものとなるよう、その運用に着実に取り組んでいくべき

以上のように、あらゆる影響を考慮しながら慎重に検討が進められているようですが、いずれにしても被用者保険の適用拡大の動きそのものは、段階的かつ着実に進んでいくものと思われます。

また、こうした動きは人事・労務における実務面のみならず、人材戦略などの企業経営そのものにも大きな影響を与える重要なテーマでもあるため、引き続き注視しておきたいところです。

トピック2:副業・兼業における労働時間の通算管理の見直し

6月21日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」が内閣官房のホームページで公開されています。

こちらの「(3)大企業と中小・小規模企業・スタートアップの間の協力関係の確立」のなかでは、企業間での人材流動化等の促進や、それらを見据えた副業・兼業の導入加速を図る内容についても触れられています。

そして、副業・兼業における労務管理面でのもっとも大きな課題となっている、労働時間の通算管理に関しては以下の記載が見られます。

⑤副業・兼業における割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の見直し

労働者が副業・兼業を行う場合には、複数の事業場の労働時間を通算して管理する必要があり、割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理について、制度が複雑で企業側にとって重い負担となっているために、副業・兼業の許可が難しいとの指摘がある。
副業・兼業における割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方について、労働基準法等の関係法令における解釈の変更も含めて検討し、結論を得る。

以上からもわかるように、労働時間の通算管理のルール整備は今後より具体的に進んでいくものと思われます。企業側が副業・兼業を管理する際に必要な他の論点(競業避止、長時間労働、情報管理、反社チェックなど)についても、あらためて運用方法を確認しておくとよいでしょう。

8月は「今後やるべき重要事項」を要チェック!

トピック1:育児休業給付金の支給対象期間延長手続きの変更点

直近では、厚生労働省から「2025年4月から、保育所等に入れなかったことを理由とする、育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります」といった重要な変更点が周知されていますので、必ずご確認ください。

育児休業給付金の延長手続きの際の変更点

  • これまで
    • 保育所等の利用を申し込んだものの、当面入所できないことについて、市区町村の発行する入所保留通知書などにより確認されていた
  • 2025年4月〜
    • これまでの確認に加え、保育所等の利用申し込みが、速やかな職場復帰のために行われたものであると認められていることが必要になる

具体的な手続き上での変更点は、これまでの申請書類に加えて、以下の2つが追加で必要となるため要注意です!

  • 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
  • 市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し

つまり、育児休業について原則(子が1歳に達するまで)の期間を超えて延長する場合、それに伴う給付金申請の際には、これまで以上にチェックが厳しくなる、ということです。

また、上記の追加書類が必要となるのは、「子が1歳(1歳2か月)に達する日または1歳6か月に達する日が、2025年4月1日以後となる方」となっています。

そのため、人事・労務担当者は、現在またはこれから産休・育休を取得する(すでに取得している場合も含む)方々に対して、事前に変更点を案内しておくなど、今後延長する場合に手続き面で支障が起きないようにしたいところです。

以上となりますが、まずは変更点をしっかりと把握・理解したうえで、早めに必要な対応を進めておくとよいでしょう。

トピック2:健康保険証の廃止に伴う必要な対応

すでにご存じの方も多いかと思いますが、今年12月2日に健康保険証が廃止されます。

今後は、マイナンバーカードを健康保険証(マイナ保険証)として利用する形が一般的になると思われますが、厚生労働省のホームページにも詳細が記載されていますのでご覧ください。

主なポイント

  • 今年12月2日以降は新規に健康保険証は発行されない
  • 発行済みの健康保険証は廃止後の最大1年間について従来どおり使用できる経過措置あり
  • マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)が推奨されている
  • マイナンバーカードを未取得の場合等には「資格確認書」が無償交付される予定
  • 協会けんぽからは今年9月以降に「資格情報のお知らせ及び加入者情報」が事業主宛に順次送付される予定
  • 到着した「資格情報のお知らせ及び加入者情報」は各従業員等へ配付する必要がある

なお、健康保険組合にご加入されている企業については、上記とは対応方法等が異なるケースもあると思われますので、個別にご確認いただくようご注意ください。

マイナ保険証への切り替えに関する業務については以下にまとめてありますので、あわせてご覧ください。

トピック3:11月1日施行のフリーランス保護新法

前回のHRニュースでも取り上げました「フリーランス保護新法」の施行に際しては、その特性から企業内で対応すべき部署や担当者があいまいにもなりやすい分野かと思われます。

そこで、今回は同新法をテーマにした人事・労務の実務目線でのわかりやすい記事も公開しておりますので、ぜひご覧ください!

人事・労務業務の重要性と難易度に大きな変化あり

近年は、人事・労務の業務にかかわる法改正等が多く、常に最新情報をキャッチアップしながら数々の必要事項に対応することも求められています。担当されている皆さまのご負担増と日々のご尽力についても実感しているところです。

また、私自身が企業内での人事・労務業務に加えて、社労士として税理士や弁護士など、その他士業の方々とも一緒に仕事をしているなかで確信していることは、企業における人事・労務の実務に携わる人材の重要性がますます高まってきているという点です。

ひと昔前の人事・労務担当というと、周囲からは社会保険手続きや給与計算などの定型事務を中心に淡々と対応している、といったイメージも一部あったかと思います。しかし現在では、その対応範囲や難易度が大きく変わってきたことは間違いないといえるでしょう。

ちなみに、私は開業社労士としての本格的な業務は今年からスタートしたばかりの身ではありますが、何かしらの形で人事・労務人材に対する世間での評価や価値の向上に少しでも貢献できるよう、全力で邁進していきたいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。それでは、次回もぜひご覧ください!

お役立ち資料

社労士解説つき 2024年版人事・労務向け法改正&実務対応カレンダー

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