【10/20更新版】新型コロナ 特例雇用調整助成金についてQ&Aで社労士が解説
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る雇用調整助成金の特例措置を講じた緊急対応期間が、9月までだったものが3ヶ月延長され、令和2年4月1日から12月31日までとなりました。
雇用調整助成金は、多くの事業者にとって関連する助成金であるにも関わらず、改正が多く、内容が複雑なため理解するのが簡単ではありません。
本稿では、雇用調整助成金に関して、現場の労務担当者や経営者からよく受ける質問を、社会保険労務士の観点からQ&A形式でお答えします。
※ 本稿は令和2年10月20日時点での政府、厚生労働省等の情報を元に解説しています。内容が変更されている可能性もありますので、政府や厚生労働省等の最新の情報を確認していただくようお願いします。
雇用調整助成金とは?
雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業等を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当相当額等を助成するものです。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、店舗のオープンができなかった飲食業や小売業、サービス業の方にとっては特に深く関わる助成金です。
出典:厚生労働省「雇用調整助成金の特例措置」
以下、雇用調整助成金に関して、社会保険労務士である私のもとによくお問い合わせを受ける質問について答えていきます。
【Q1】なぜ、緊急対応期間は12月31日まで延長されたの?
【Q1】なぜ、緊急対応期間は令和2年12月31日まで延長されたのですか?
【A1】企業が雇用調整助成金を活用して、雇用を含めた経営戦略を立てられるようにするために延長されました。
【Q2】12月31日までに実施される休業および教育訓練が対象?
【Q2】令和2年12月31日までに実施される休業および教育訓練が対象ですか?
【A2】いいえ。令和2年4月1日から令和2年12月31日までの期間を1日でも含む「判定基礎期間」に行われる休業および教育訓練が対象となります。
判定基礎期間とは、休業の実績を判定する1ヶ月単位の期間のこと。原則として、毎月の賃金の締め切り日の翌日から、その次の締め切り日までの期間です。ただし、毎月の賃金の締め切り日が特定されない場合などは暦月とします。
(例) 賃金の締め切り日:毎月末日
→ 判定基礎期間(休業実績を判定する1ヶ月間):〇月1日~〇月30日(30日)
参考:厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック」
【Q3】6月12日付けの特例措置も延長される?
【Q3】令和2年6月12日付けで発表された、雇用調整助成金の特例措置も延長されますか?
【A3】はい。次の主な特例措置は延長されます。
- 助成額の1人あたり日額上限を8,370円から15,000円に特例的に引き上げる。
- 解雇等を行わない中小企業の助成率を10/10(100%)に引き上げる。
【Q4】「解雇等」とは具体的にどういうこと?
【Q4】特例措置において「解雇等を行わない中小企業の助成率を10/10(100%)に引き上げる」と言われていますが、「解雇等」とは具体的にどういうことですか?
【A4】次の2つの要件を満たすことです。
- 事業主都合による解雇、雇止め、契約解除を行っていない。
- 判定基礎期間の末日時点の従業員数が、令和2年1月24日から判定基礎期間の末日までの各月末時点の従業員数の平均の5分の4以上であること
【Q5】これまでの特例措置は全て延長?
【Q5】これまでの特例措置は全て延長されますか?
【A5】具体的に次の特例が延長されます。
- 生産指標要件の緩和(5%以上低下)。
- 雇用指標要件の撤廃。
- 雇用調整助成金の連続使用を不可とする要件(クーリング期間)の撤廃。
- 雇用保険被保険者以外の休業も助成の対象に含める(緊急雇用安定助成金)。
- 被保険者期間要件の撤廃(継続雇用期間が6ヶ月未満の者も対象)。
- 助成率を 4/5(中小企業)、2/3(大企業)(解雇等を行わない場合は 3/4(大企業))。(従前は 2/3(中小企業)、1/2(大企業))。
- 教育訓練の加算額を 2,400 円(中小企業)、1,800 円(大企業)。(従前は1,200 円)。
- 支給限度日数とは別に緊急対応期間中の休業等の日数を使用できる。
- 事業所設置後1年未満の事業所についても助成対象とする。
- 短時間一斉休業の要件の緩和。
- 自宅での教育訓練等を可能とする。
- 残業相殺は行わない。
- 半日教育訓練と半日就業を可能とする。
- 休業等規模要件の緩和(中小企業 1/40、大企業 1/30)。
- 風俗関連事業者も限定なく対象とする。
- 生産指標要件の判断期間の弾力化 。
- 労働保険料の滞納に係る不支給要件は適用しないこととする。
- 労働関係法令違反に係る不支給要件は適用しないこととする。
【Q6】緊急雇用安定助成金も延長?
【Q6】緊急雇用安定助成金も雇用調整助成金同様、延長になりますか?
【A6】はい。緊急雇用安定助成金は、パートやアルバイトなど、雇用保険に加入していない労働者が対象となる助成金です。令和2年4月1日以降に開始され、令和2年12月31日までに終了する休業が対象となっているので、注意が必要です。
出典:厚生労働省「緊急雇用安定助成金支給申請マニュアル」
また、新型コロナウイルス感染症の影響により、休業させられたが、休業手当が受けられない中小企業の労働者個人に対して直接支給される「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」についても、同様に延長されています。
【Q7】会社全体が2週間のコロナ休業。これは助成金の対象?
【Q7】会社全体が2週間のコロナ休業となったのですが、助成金の対象となりますか?
【A7】休業手当を支給していれば対象となります。
【Q8】雇用調整助成金申請にあたっての注意点は?
【Q8】雇用調整助成金の申請にあたって、何か注意点があれば教えてください。
【A8】申請期限には注意してください。判定基礎期間の初日が令和2年6月30日以前の休業等に関する申請は、令和2年9月30日までという申請期限の特例が終了しています。
判定基礎期間の初日が7月1日以降の休業等に関する申請は、判定基礎期間の末日の翌日から2ヶ月以内となっていますので、注意が必要です。
【Q9】停止していたオンライン申請はどうなった?
【Q9】5月20日からトラブルで停止していたオンライン申請はどうなっていますか?
【A9】8月下旬から再開しています。賃金台帳、出勤簿等PDF化が可能であれば、さほど難しくはありませんし、24時間申請可能となりますのでオンライン申請は検討の余地ありです。
【Q10】令和3年1月以降も延長する可能性はある?
【Q10】令和3年1月以降も延長する可能性はあるのでしょうか?
【A10】厚生労働省によると、雇用情勢等を総合的に考慮して改めて判断するとされています。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係る 雇用調整助成金の特例措置を延長します」
【Q11】雇用調整助成金はいつ振り込まれる?
【Q11】雇用調整助成金はいつ振り込まれますか?
【A11】8月以降申請が急増しており、申請から支給まで1~1.5ヶ月かかることもあります。
おわりに
申請・支給状況(10/16時点)ですが、全国で162万件申請、150万件・1兆8千万円支給となっており、リーマンショック時1年分の支給額を約5ヶ月で上回っています。一方で会社が不正受給しているといった通報も増えているようです。
また、書類の不備不足も多いとのことで、不備不足があると審査・確認連絡に時間を要し、支給が遅くなります。適正かつ迅速な申請の一助になることを願います。