なぜ労災認定まで時間がかかる? 労災の基準・申請手続きの手順まとめ
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過労死に関するニュースが連日報道されてますが、こうした事件が明るみになるまで数カ月から数年かかるというケースは少なくありません。
電通に勤めていた24歳女性の自殺事件に関しても、事件発生は2015年12月でしたが、報道が始まったのは2016年9月30日に三田労働基準監督署が労災認定した後の記者会見がキッカケでした。実に9ヶ月以上が経った後でした。
なぜこのような長い時間が経過してから認定されるのでしょうか。今回はこうした事件が発生した際に、どのように労災申請がなされ、認定までに至るのかを紐解いていきます。
そもそも労災の定義とは?
労災とは、業務中に怪我や病気や死亡するなどした場合や通勤中に怪我や病気や死亡するなどした場合のことをいいます。
ホワイトカラー労働者の過労死、過労自殺、パワハラ、セクハラなどの精神障害も労災に認定されます。
労災に認定められた場合に受けられる補償には、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、 遺族補償給付があります。
労災申請の手順
①労災保険の申請手続
原則、労働者自身または遺族が会社の所在地を管轄する労働基準監督署長に労災保険給付の支給請求をし、労働基準監督署長が支給決定をします。
支給請求書の事業主証明欄には、原則として、被災事実や賃金関係の証明印を得る必要があります。業務上の災害の提出書類の場合は、療養補償給付の給付請求書を作成します。
業務上の災害であるかどうかは、会社の支配管理下にある状況で、事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験則上認められるかどうかによって判断されます。
②労災の認定基準に則しているか、労働基準監督署による調査
労働基準監督署は、労災給付の請求書を受理した後、関連事実を調査し、労災の認定基準に則しているかどうかを判断します。
労災申請した労働者と事業主双方からの聴取や資料提出を受けます。さらに医療機関から、症状や治療の経過に関して意見や資料の提供も受けます。
最終的に、業務遂行性及び業務起因性があると判断されれば、労災として認定され、労災給付を受けられます。
労災認定までのカギは「死に至った証拠」の収集
実務上は、過労死や過労自殺の場合、業務起因性が問題になるケースが多いです。
タイムカードやパソコンのログイン日時などから勤務状況を把握し、業務起因性を裏付ける資料の収集準備をしておくことも必要です。
パワハラなどがあったケースでは、本人が残した日記や同僚など周囲にいた人の証言などの協力も必要になります。
過労死や過労自殺の原因が微妙なケースでは、労災認定がスムーズに決定されないこともあります。難しい場合は、早めに専門家に相談してみることをお勧めします。