法定福利費を削減可能?「東京都情報サービス産業健康保険組合」(TJK)の概要・加入条件
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こんにちは。特定社会保険労務士の山本 純次です。
前回のコラムでは、関東ITソフトウェア健康保険組合(以降、関東ITS健保)の基本的概要を解説させていただきましたが、同じ業界の方に比較検討されることの多い「東京都情報サービス産業健康保険組合(以降TJK)」の概要についても、解説していきたいと思います。
TJKとは?
TJKは、加入事業所約1,600社、加入員(被保険者・被扶養者)約42万人を擁する、全国でも有数の健康保険組合です(令和4年4月現在)。
正式名称は「東京都情報サービス産業健康保険組合」で、関東ITS健保同様、低い保険料率や充実した福利厚生を持つIT企業向け健康保険組合です。
TJKの対象企業
加入対象としては、コンピュータのソフトウェア・システムの開発・販売、計算受託・データエントリー、およびこれら業務の要員派遣の企業を対象としています。
関東ITS健保と比べると、情報システムの範囲が広く、加入対象は幅広い情報サービス産業に広がっています。
基準として会社の売り上げの50%以上を情報サービス業としてのもので占めていることが前提となります。
関東ITS健保と違い、実際のソフトウェアの販売や利用だけでなく、そのシステムを利用しての売上も計上されるかたちになりますが、会社の定款で情報通信業とみなされない場合は、加入審査で落とされるケースもあります。
TJKの実務上の加入条件
TJKの加入条件は一般的に下記になります。ただし詳細は公開されていませんので、申請時に確認が必要です。
- 社会保険加入1年以上で、本社が関東近辺にあること
- 被保険者が概ね20名以上
- 被保険者の平均年齢が健保組合の平均を著しく上回らないこと
(概ね平均35歳以下が基準) - 扶養率が健保組合の平均を著しく上回らないこと
(被扶養者数/被保険者数が1.0以下、要は被保険者1人に対して1名以上の扶養者がいるかどうかを判断) - 過去1年間に法人税、消費税、所得税、事業所税、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の納入遅延がないこと
(1日でも遅れるとアウト) - 反社会的勢力でない
- 被保険者の標準報酬月額が概ね35万円以上
(平均年齢が低い場合これ以下でも認められるケースがあります) - 欠損金の繰越額が資本金以上でないこと
- その他、社会保険料を納入するに足りる会社の資金関係に問題がないか
特に⑤において、租税公課の納入で、所得税は毎月10日に振込みますが、遅れやすいので注意が必要です。
TJKのメリット
以下に、TJKの加入メリットを具体的にみていきます。
TJK加入のメリット その1「福利厚生の充実」
最大のメリットは、福利厚生の充実です。下記のようなサービスが受けられます。
企業が独自に準備するにはコストがかかりすぎるため、こういったサービスは従業員にとってもメリットであり、利用に関して利用料以外が追加でかかることはありません。
- 健康診断、人間ドックなどを低価格で実施
- 保養施設の利用、ハワイにも提携の保養所を保有
- スポーツクラブなどの利用
- 各種スポーツ施設の利用やイベントへの参加
- 飲食店などの補助を利用
- 出産育児一時金などで付加給付を実施
関東ITS健保と比べると、スポーツ施設の利用やイベントの実施が非常に多く、アクティブな従業員が多い場合、喜ばれることがあります。
TJK加入のメリット その2「低い社会保険料率」
また、もう一つの大きなメリットが「社会保険料が低くなること」です。
通常加入する協会けんぽと比べて保険料率が低くなります。下記は1ヶ月分のモデルケースですが、年間を通すとかなりの法定福利費の削減になります。
TJKの加入の流れ
加入を検討する場合、まず電話等で加入の意思を連絡します。
ケースによってですが、健保組合の担当の方が会社を訪問し、事業の確認のうえ加入申請書を配布いただきます。
必要な加入申請書と添付書類を準備のうえ提出すると、1ヶ月程度で最初の健康保険組合での審査が行われます。
この審査が通ると、被保険者情報の一覧や、各種誓約書など本審査に必要な書類の提出が求められます。
本審査は厚生労働省の厚生局で実施され、この審査が通れば、編入月が通知されることとなります。
概ね上記の書類提出から編入まで4ヶ月から6ヶ月程度かかることになります。
以上のように、加入基準を満たされている会社では加入メリットが非常に大きいため、是非検討を進めていただくことをお勧めいたします。
また関東ITS健保との加入基準の差異を把握し、どちらに加入申請ができるかなども詳細に検討ください。