有給休暇「比例付与(ひれいふよ)」を解説!基礎知識と時季指定義務
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こんにちは、アクシス社会保険労務士事務所の大山敏和です。
2019年4月から施行された働き方改革関連法のうち、「年次有給休暇の時季指定」では、年10日以上の年次有給休暇を付与する労働者に対して、年5日以上の有給休暇を取得させることが義務化されました。
大きな注意点として、この時季指定の対象者は正社員に限らず、パートタイム労働者やアルバイトも含めた労働者が対象になります。
本稿では、具体的にどのような条件であれば年10日以上の年次有給休暇を付与する労働者となり、時季指定義務が生じるのかを「比例付与」をもとに解説します。
有給休暇の付与日数
労働基準法第39条では、第1項・第2項において、労働時間が下記のいずれかの働き方をする労働者に与える年次有給休暇日数を規定しています。
- 1週間に30時間以上
- 1週間に5日以上
- 1年間に217日以上
有給休暇日数は、雇い入れの日から6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤すれば、10日間。引き続く1年間にも8割以上出勤すれば、11日間というように、経過期間によって与えられる年次有給休暇日数が増えていきます。
なお、上限は雇い入れの日から6年半後に付与される“20日間”となっています。
有給休暇の「比例付与」とは?
労働基準法第39条第3項では、上記以外の働き方をする労働者にも、その労働日数に応じた有給休暇日数を「比例付与」することが規定されています。
例えば、第1項・第2項が適用される労働者の、1週間あたりの平均所定労働日数は、厚生労働省令で「5.2日」とされています。そのため、第3項が適用される、1週間に4日働くパートタイム労働者には、雇い入れの日から6か月経過とともに7日の有給休暇が与えられます。
これは、通常与えられる有給休暇日数が当初10日なので、この労働者には、4日 ÷ 5.2日 ≒ 77% となり、10日に対して7.7日。そして小数点以下を切り捨て「7日間」の有給休暇が比例付与されるという計算です。
「年10日以上」が比例付与される場合
上例では、通常の労働者の当初10日に対する比例付与日数が7日でしたが、雇い入れの日からの勤続期間とともに通常の労働者は、上限20日まで、付与される有給休暇日数が増加します。
したがって、比例付与の対象となるパートタイム労働者などでも、働き方によっては、年10日以上の有給休暇が比例付与されるケースがあります。
上表に赤字で示す部分が、10日以上の付与者となります。
つまり、下記のケースにおいて年10日以上の有給休暇が比例付与されることになり、パートタイム労働者なども年次有給休暇の時季指定の対象になることがわかります。
- 週4日または、年169日~216日勤務の労働者の場合、勤続期間が3年6か月以上
- 週3日または、年121日~168日勤務の労働者の場合、勤続期間が5年6か月以上
雇用形態を問わず、有給休暇を取得しやすい文化が根付いている企業への人気が高まっています。
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「有給休暇の時季指定義務」実務上の注意点
管理しなければならないケース
ここで改めて、2019年4月から施行された時季指定義務についてみてみます。
「年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、そのうちの年5日について、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられた」
すなわち、年次有給休暇を10日以上付与する労働者は、正社員であるか否かにかかわらず、年次有給休暇管理簿により対象者ごとに有給休暇の付与日、付与日数、有給休暇の取得日、取得日数などを管理し、年に5日の有給休暇を取得させる必要があるということです。
なお、対象労働者が自ら時季指定し、取得した有給休暇も管理し、この日数も含めて年5日以上とします。対象労働者が、朝突然「今日休みます」というのも時季指定の範疇です。会社は、この突然の時季指定でも、事業の正常な運営を妨げる場合以外、拒否することはできません。
管理する必要がないケース
なお「年次有給休暇が10日以上付与される労働者」以外は、年5日の時季指定による有給休暇を管理する必要はありません。
すなわち、下記に該当する労働者は、年次有給休暇の時季指定を管理する必要はありません。
- 雇い入れの日から6ヶ月経過する前の労働者
- 雇い入れの日から6ヶ月経過した場合でもその間の全労働日の8割以上出勤していない労働者
- 過去1年間に全労働日の8割以上出勤していない労働者
- 労働時間が週30時間未満で、労働日が週2日以下、または年120日以下の労働者
- 年次有給休暇の1年間の付与日数が10日未満の労働者
なお、ここまでの解説は、労働基準法に準拠した就業規則等での規定に基づく解説です。
会社によっては、入社とともに有給休暇を与える、あるいは雇い入れの日から6ヶ月経過しないうちに10日以上の有給休暇を与える場合もあります。
それぞれのケースで、「年次有給休暇が10日以上付与される労働者」を判断するようご注意ください。