未承認での時間外労働の賃金支払いは発生する?|労務のお仕事Q&A
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この記事でわかること
- 未承認での時間外労働分の賃金を支払うケース
- 賃金支払いを避けるための対応策
日ごろ、人事・労務業務を担当するなかで「これってどうなの?」という疑問もあるのではないでしょうか。そんな皆さまの疑問に、社労士・税理士・弁護士などの専門家がお答えします。今回は「未承認での時間外労働時間の賃金支払い」について、社労士が解説します。
承認制にもかかわらず未承認での時間外労働。時間外分の賃金支払いは発生する?
相談者
弊社の時間外勤務を承認制としています。承認を得ずに時間外勤務をしている従業員が散見されるのですが、この場合未払賃金の対象となるのでしょうか。
労務担当/製造業界(東京都)
「黙示の指示の有無」によっては支払い対象の可能性あり。管理方法の再検討を
宮原 麻衣子
未承認の時間外労働が労働時間であると認められた場合は、賃金の支払いが必要になります。
ここでポイントになるのは「黙示の指示の有無」です。「時間外労働をしなければ処理できない量の業務を命じていた場合」や、「時間外労働を黙認していた場合」は労働時間であると認められる可能性があります。
実際の裁判でも、未承認の時間外労働が労働時間であると認められた例は多数あり、「使用者が労働者らに対して業務を止め、退出するように指導したにもかかわらず労働を継続したといった事実がない限り、労働時間性は肯定される」とされた裁判もあります。
一方で、使用者が時間外労働を明示的に禁止し、黙示の指示も与えていなかった場合には、労働時間ではないと認められることもありますが、労働者が自宅や社外で密かに時間外労働を行なって、後から問題になる事例もあります。労働時間管理の方法を改めて検討していただくとよいかもしれません。
野嶋社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
2003年、メンタルヘルスの専門家である精神保健福祉士資格を取得し、精神科医療機関等で勤務。2015年に社会保険労務士登録、2017年に特定社会保険労務士となり、労働社会保険関係法に関する専門家として企業の労務管理のコンサルティング業務を担う。また精神保健福祉士養成の専門学校にて後進の育成に携わるほか、労務管理全般やストレスマネジメントに関する研修等において講師を務める。健康経営エキスパートアドバイザー。