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業務時間中の通院はどう取り扱うべき?/食器破損の弁償代の給与天引きは可能?ほか|労務のお仕事Q&A

公開日

この記事でわかること

  • 従業員の業務時間中の通院時の取り扱い方法
  • 食器破損などの弁償代を給与天引きできるか
  • 使用者が時季指定する5日の年次有給休暇を会社年度にあわせて管理できるか
目次

日ごろ、人事・労務業務を担当するなかで「これってどうしたらいいの?」という疑問もあるのではないでしょうか。そんな皆さまの疑問に、社労士・税理士・弁護士などの専門家がお答えします。

Q1:業務時間中の通院はどのように取り扱うべき?

相談者

業務時間中に通院したいと申し出た従業員がいます。身体のこともあるので認めないわけにもいかないのですが、戻る時間が読めないことが不安です。この場合、どのような取り扱いにするべきなのでしょうか。

総務担当・40歳/製造業界(広島県)

A1:協議のうえ、遅刻・早退や有給休暇使用などの対策が一般的です

吉田 崇

従業員の健康管理は重要ですので、通院が必要な場合は配慮が必要です。ただし、業務への影響を考慮し、通院時間や頻度などの詳細を事前に確認し、必要に応じて代替の人員を準備するなどの対策を検討してください。 なお、基本的には業務時間中の通院は私用とされ、労働時間外のものとして扱われます。従業員との協議のうえで、遅刻・早退扱いとしたり、有給休暇の使用などの対応が一般的です。

また、通院が必要な理由が労働災害の場合は、治療のための欠勤として取り扱え、労災の休業補償給付の対象となります。

本件の「教えて!専門家さん」吉田 崇

社会保険労務士

よしだ経営労務管理事務所代表。関西を中心に、社長と従業員が安心して働ける職場環境作りをモットーに多くの事業所と顧問契約し、 労務管理で成果を上げる。通常の社労士業務の他に、集客、ブランディングコンサルタントとしての実績も多数。一級カラーコーディネータの資格を有し、ポスターやロゴ等のデザイン業務やWeb制作も行う個性派社労士。

Q2:従業員の度重なる食器破損。弁償代を給与天引きできる?

相談者

飲食店で雇用中のあるアルバイトスタッフが、何度も食器を破損しており、指導しても改善の余地が見られません。粗治療として弁償代の請求を検討しているのですが、給与から天引きは可能なのでしょうか。

(総務担当・24歳/飲食業界 東京都)

A2:弁償代の給与天引きは不可。職場改善で過失を防ぎましょう

羽田 未希

給与は全額払いが原則です。給与から天引きできるのは、所得税や住民税、各種保険料、労使協定で定めたものなど例外的であり、ご質問のような弁償代は給与天引きできません。

そもそも、ご質問のケースで弁償代のスタッフへの請求が妥当か検討してください。損害賠償は、民法では「故意、過失」により相手方に損害を与えた場合です。食器の破損がスタッフの悪ふざけならともかく、ちょっとした不注意であるならば、弁償させるのは少し厳しいのではないかと思います。ある程度想定される(起こりうる)損害は、会社が負うべきものです。

・床が滑りやすい

・作業台が狭い

・人手不足でスピードが求められている

など、食器を破損するに至った原因はありませんか。備品を壊したら弁償させられるとびくびくしながら働くより、会社が働きやすい職場環境へ改善する方が、労使双方の良好な関係が築けると考えます。

本件の「教えて!専門家さん」羽田 未希

はた社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士

17年間の飲食業現場経験を持つ、異色の女性社会保険労務士として飲食業・小売業などサービス業を得意とする。パート・アルバイト活用、人材育成のコンサルティング、労使トラブルを未然に防ぐ就業規則作成、助成金申請など、中小企業の人材活用のサポートを行う。著書に『店長のための「稼ぐスタッフ」の育て方』(同文舘出版)がある。

Q3:年次有給休暇の年度管理は可能?

相談者

当社では入社日から6か月後に年次有給休暇を付与し、その後1年経過ごとに付与しています。毎月中途入社者がいるため、管理工数が増加している課題があります。使用者が時季指定する5日の年次有給休暇は、会社の年度で管理してもよいのでしょうか。

(労務担当・33歳/IT業界 大阪府)

A3:全労働者の統一基準日の年度管理も可能です

宮原 麻衣子

年次有給休暇の確実な取得については「使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません」と定められています。基準日が入社日に応答して労働者ごとに異なる場合は、それぞれの基準日を起点に取得管理する必要があります。

多数の労働者を雇用する場合や中途入社がある場合などは、全労働者の基準日を統一して取り扱うことも可能です(斉一的取り扱い)。

この場合、勤務期間は常に切り上げて計算することになります(初回付与については別途取り扱いを検討する必要あり)。本来の基準日より早く基準日が訪れることとなりますが、事務対応の簡素化を図る以上はやむを得ないことと考えられます。

(参考)年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説 - 厚生労働省 

本件の「教えて!専門家さん」宮原 麻衣子

野嶋社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士

2003年、メンタルヘルスの専門家である精神保健福祉士資格を取得し、精神科医療機関等で勤務。2015年に社会保険労務士登録、2017年に特定社会保険労務士となり、労働社会保険関係法に関する専門家として企業の労務管理のコンサルティング業務を担う。また精神保健福祉士養成の専門学校にて後進の育成に携わるほか、労務管理全般やストレスマネジメントに関する研修等において講師を務める。健康経営エキスパートアドバイザー。

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