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有休取得日の支払い金額の選び方は?/退勤後のメールチェックは労働時間?ほか|労務のお仕事Q&A

公開日

この記事でわかること

  • 年次有給休暇取得日の賃金支払い金額の選択
  • 退勤後のメールテェック時の労働時間の処理方法
  • 「支給日1か月以内の退職者には賞与不支給」と定めた規定の有効性
目次

日ごろ、人事・労務業務を担当するなかで「これってどうしたらいいの?」という疑問もあるのではないでしょうか。そんな皆さまの疑問に、社労士・税理士・弁護士などの専門家がお答えします。

Q1:年次有給休暇取得日の賃金支払い金額はどれを選べばよい?

相談者

年次有給休暇を取得した日の賃金の支払い金額は、

1.平均賃金

2.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

3.標準報酬月額の1/30の相当額以上

から選択できますが、一般的に選択されるのはどれなのでしょうか。また、基準はあるのでしょうか。

(労務担当・32歳/IT業界 東京都)

A1:「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」が多いように感じます

宮原 麻衣子

一般的にどの方法が選択されているかの統計データは公表されておりませんが、「2.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」が選択されていることが多いように感じます。

選択の基準は設けられておりませんので、会社が任意で決定します。また、その選択は労働者ごとやその都度ではなく、就業規則などであらかじめ定めておく必要があり、「3.標準報酬月額の1/30の相当額」を選択する場合は、労使間で締結する書面協定が必要です。

なお、シフト制で日によって所定労働時間が異なる時給者に対して、「2.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を選択する場合は、年次有給休暇取得日の所定労働時間に応じて支払います。

本件の「教えて!専門家さん」宮原 麻衣子

野嶋社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士

2003年、メンタルヘルスの専門家である精神保健福祉士資格を取得し、精神科医療機関等で勤務。2015年に社会保険労務士登録、2017年に特定社会保険労務士となり、労働社会保険関係法に関する専門家として企業の労務管理のコンサルティング業務を担う。また精神保健福祉士養成の専門学校にて後進の育成に携わるほか、労務管理全般やストレスマネジメントに関する研修等において講師を務める。健康経営エキスパートアドバイザー。

Q2:退勤後のメールチェックは労働時間になる? 残業代の計算方法は?

相談者

退勤後に会社支給の端末でメールをチェックした場合、労働時間に含まれるのでしょうか。また、その際の残業代はどのように計算するべきなのでしょうか。

(労務担当・26歳/建設業界 埼玉県)

A2:会社の指示でのメールチェックは労働時間に含まれます

吉田 崇

労働時間は「労働者が使用者の指揮命令下にある時間」と、労働基準法で定められています。退勤後でも、会社の指示でメールをチェックしている場合は、労働者の指揮命令下にあると考えられるため、労働時間に含まれます。

なお残業代の計算は、通常の時間外労働であれば割増賃金率が25%、22時以降の深夜労働であれば50%、休日労働であれば35%が加算されます。 また、労働時間の確認や記録は大切なので、退勤後の業務についてはきちんと時間を記録し、記録をもとに残業代を計算しましょう。

本件の「教えて!専門家さん」吉田 崇

社会保険労務士

よしだ経営労務管理事務所代表。関西を中心に、社長と従業員が安心して働ける職場環境作りをモットーに多くの事業所と顧問契約し、 労務管理で成果を上げる。通常の社労士業務の他に、集客、ブランディングコンサルタントとしての実績も多数。一級カラーコーディネータの資格を有し、ポスターやロゴ等のデザイン業務やWeb制作も行う個性派社労士。

Q3:「支給日前1か月以内の退職者には賞与不支給」と定めた規定は無効?

相談者

「支給日前1か月以内に退職届が提出された者および解雇が決定した者には賞与を支給しない」と定めた規定は無効でしょうか。

有効である場合、どのようなリスクがあるでしょうか。

(経理担当・42歳/運送業界 愛知県)

A3:労基法の趣旨に沿わないため望ましくありません

小菅 将樹

無効とまではいえないですが、労基法第16条の賠償予定の禁止と関連して、間接的に退職の自由を奪い、一定の条件のもとで退職金を受ける権利を奪うことをあらかじめ決めているという解釈もできます。

退職金不支給で紛争などになった場合、この規程の有効性が争点になる可能性も考えられます。労基法の趣旨に沿わない規程といえますので、このような定めは望ましくありません。

本件の「教えて!専門家さん」小菅 将樹

アヴァンテ社会保険労務士事務所 元労働基準監督官

明治大学法学部卒業後、労働事務官として労働省へ入省し、個別労働関係紛争解決促進法の策定や国会対応業務、労働安全衛生総合研究所で研究員の給与計算業務等を経て、労働基準監督官に転官。厚生労働本省、労働保険審査会事務局、神奈川県相模原署、川崎南署、神奈川労働局労働保険徴収課勤務後、厚生労働省を退職。現在は各企業の顧問業務、法定教育、各種セミナー、安全パトロールを行っている。サッカー、フットサルの競技における運動器障害や大けがの経験を経て、運動指導に関わるトレーナーライセンスを取得。アスリートや企業で働く方など幅広い方を対象に、頭と動作を鍛え、機能改善、運動パフォーマンス向上へ導く運動指導を行う。

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