知らないとトラブルの元? 「みなし残業」を理解するための3つのポイント
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社会保険労務士表参道HRオフィスの山本純次です。
企業にとって、労務管理の主な問題点となる残業時間と残業代の管理は大きな悩みのタネです。
1日8時間、週40時間の範囲での給与を決定し普通に勤務した場合、定時に業務が終わることなく残業がどうしても発生してしまいます。
真正直に残業代を支給するのがルールではあるのですが、中小企業が残業代を全てを支給するには、体力的にも厳しいかったり、会社の存続にも関わる問題となることもあります。かといって支給しないことは違法であり、ブラック企業と認識をされるリスクもあります。
その中で、一つの改善策として、労働基準法ではいわゆるみなし残業と呼ばれる「みなし労働時間制度」を法的にも整備しています。
「みなし労働時間制度」を理解する3つのポイント
その内容は大きく分けて下記の3つに分類できます。
①事業場外労働のみなし労働時間制
②専門業務型裁量労働制
③企画業務型裁量労働制
これらについて、一つづつ説明していきましょう。
事業場外労働のみなし労働時間制
①の事業場外労働のみなし労働時間制は営業などの直行直帰で外回りをされる方など、事業場外での業務が主のため、労働時間がいつからいつまでというのが使用者が算定しがたいときに、労使協定で定めた時間働いたとみなすものです。
注意点としては、いくら外回りをしているからといっても、適宜会社に電話等で状況を連絡するなど、労働時間が把握できる場合はこの制度は適用できません。ITインフラが整っている昨今、この制度の存続理由は乏しくなってきていると個人的には感じます。
専門業務型裁量労働制
②の専門業務型裁量労働制は、世間一般的にも一番導入が多い制度です。これは法律が定める専門的な業務に就く従業員の方は労働時間に縛られることなく、専門知識や技術の提供をもとに大幅な裁量を認めたうえで勤務を行うというものです。
ポイントとしては、法律で導入できる職種が決まっているということです。主にはコピーライター、ITソフトウェアの開発、証券アナリスト、金融商品の開発、専門士業の業務などです。社内的にはどんなに専門的な業務ということであってもこの範囲でない職種の場合には導入できません。また、①と同様、労使協定を結び提出する必要があります。
また、この制度は専門性の高い従業員に裁量に任せた業務を行わせることが趣旨なので、細かい業務指示があったり、労働時間の制限を細かく管理しているような場合には、この制度の適用でないと判断されて、制度を導入できない場合もあります。
注意点として、この制度を導入した場合に、残業代を全く支払わなくて良いという訳ではなく、深夜勤務や法定休日に勤務した場合は、割増手当分を支給する必要があります。この点を理解されていない会社も多く、未払残業代として請求されてしまうケースもあります。
企画業務型裁量労働制
③の企画業務型裁量労働制は、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査及び分析の業務等を行っている従業員で労働時間等を大幅な裁量に任せて業務を行う者に適用できます。
導入するには、労使委員会を設置し、その4/5以上の多数による決議により、対象業務や対象労働の範囲、1日当たりの労働時間数や、苦情処理の対応などを決定する必要があります。②の専門業務型と違い、業務内容が特定されていないため、労使委員会で決議が整えば、企画的な業務をしている業種の従業員に適用できます。
この制度の問題点としては、労使委員会の設立と、決議の難易度があり、ハードルが高いことが挙げられます。また、企画運営業務であっても、本部系の業務というのは労働時間を管理して行う業務が多く、導入できる業務の範囲が狭いということが挙げられます。
こういった制度のメリット、デメリットを把握しながら、会社の業務内容に応じて導入していくのが望ましいと思います。
みなし残業手当を給与に含めて支給することのメリットとデメリット
また、上記の制度とは異なりますが、多くの会社で導入されているのは「みなし残業手当」を給与に含めて支給するというものです。
これは、例えば基本給20万円の人で1か月の所定労働時間が160時間の場合、月20時間の残業時間みなし分を先に手当として31,250円支給し、20時間以内の残業代は手当に含まれているという制度をとるものです。この制度のメリットは多少の残業であればみなし手当の範囲内なので、残業代を支給しなくてよく、人件費の管理が把握しやすくなることです。
問題点としては、月20時間の残業時間を超えた場合、その分の残業代は支給しないと違法になります。また、20時間の残業が深夜勤務や休日勤務が入る場合、割増率が高くなりますので、20時間未満でも手当を支給しなければならなくなることもあり、残業代の計算をしっかりと計算しなくてはなりません。
みなし残業手当をつけるので、残業代は一切支給しないという会社もありますが、これは違法としてとられる可能性が高くなります。
また、よくあるケースとしては20時間のみなし手当をつけているので、20時間以上の残業をつけさせないという運用をされているケースです。実際20時間を超えて勤務されている場合はサービス残業になりますので、未払い残業代として請求されるケースもあります。
このように、みなし残業制度や手当は各種ありますが、トラブルの種でもありますので、制度の趣旨や必要な手続き等をしっかり把握し、労務管理のリスクを低減できるような形での導入ができることが望ましいです。中途半端に導入することによって、余計にリスクが高まることもありますので、十分検討のうえ導入を進めてください。