単なる交流会を超えた、学びと実践の場に。関西ユーザー交流会レポート
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SmartHRではユーザーさま同士の意見交換や交流を目的としたユーザー交流会を定期的に開催しています。今回は関西のエンタープライズ企業を中心とする人事部門担当者さまにお集まりいただきました。イベントはユーザー企業さまが「人事のデジタル化の裏側」を語るミニプレゼンから開発者との交流を行うバザール、人事担当者さまどうしの交流会など盛りだくさんの内容でした。終始なごやかな雰囲気のなか、活発な議論が交わされました。この記事では、当日のエッセンスをご紹介いたします。
登壇者紹介
エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社 IT・デジタル推進室 会計・人事システム企画開発推進部 部長
大手SIベンダー、三洋電機、パナソニック、コープこうべ、オムロンを経て2021年より現職。会計・人事領域のIT責任者として多くのプロジェクトを立ち上げ、グループ全体のDXを推進中。人事のデジタル化の一環としてSmartHRの導入を担当し、給与明細、文書配布、入社、申請、年末調整機能を活用している。
エイチ・ツー・オー リテイリング社の「人事のデジタル化の裏側」が語られたミニプレゼン
イベントのミニプレゼンにご登壇いただいたのは、エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社IT・デジタル推進室の堀内 裕行さん。同社におけるSmartHR導入までの経緯や導入の効果、今後の活用に関するビジョンなどをお話しいただきました。
働き方を変える第一歩は「人事のデジタル化」

エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社は百貨店、スーパーマーケットなど小売業を核とした、地域のみなさまの生活に貢献する生活総合産業グループです。百貨店事業、食品事業、商業施設事業のほか、コスメショップ事業やファイナンス事業も展開しています。百貨店事業では阪急百貨店と阪神百貨店を合計15店舗、食品事業ではイズミヤや阪急オアシス、関西スーパーを約230店舗運営しています。
SmartHRの導入を考えはじめたのは、紙ベースの業務による非効率を改善したかったからだったそうです。導入前は給与明細、雇用契約書、年末調整や身上変更といった人事関連の書類や諸手続きが紙ベースで行われていたため、従業員の業務が煩雑で負荷が非常に高い状態でした。それでなくても、当時働き方の見直しやオフィス移転を控えていた同社では、個人宛ての配布物を郵送や手渡し以外の方法で配布できる仕組みづくりが急務でした。
堀内さん
人事・労務関連の書類や手続きをデジタル化できれば、人事部門の業務負荷を減らせるうえ、個人宛ての配布物をスマホやパソコンで配布できる。時間・場所を問わない申請が可能になれば、従業員の利便性も向上する。そう考えたことが、SmartHR導入の決め手になりました。エイチ・ツー・オー グループ共通で人事機能の従業員フロントとしてSmartHRを導入することで、シェアードサービス会社の管理業務も含めた人事業務フロー全体のデジタル化を推進。グループ全体のライセンスのボリュームディスカウントの最大化を目指しました。

堀内さん
SmartHRは従業員の採用から退職後まで、さまざまなシーンで活用できます。採用・入社時には文書配布や電子申請の機能を使えば、従業員は自宅からスマートフォンで簡単に入社手続きができ、人事の書類回収もスムーズです。就業中は雇用契約書の配布・回収、お知らせや案内がオンラインでスムーズにでき、給与明細機能を使えば、毎月の給与明細もいつでもどこでも確認可能で紛失の心配もありません。
煩雑な記入が多い年末調整では、年末調整機能を使って従業員に事前に質問に答えてもらうことで負担を軽減できます。転居、結婚、出産などのライフイベント時にも、身上変更を簡単に届出できます。文書配布や電子申請、給与明細の機能のおかげで、従業員の退職後も人事が必要に応じて源泉徴収票、給与明細を閲覧できます。このように、SmartHRを利用することで従業員と人事のコミュニケーションがスムーズになることを想定していました。
SmartHRの導入で働き方改革の下地が整った

新しいツールをグループ全体に浸透させるため、SmartHRの導入は段階的に進めていったという堀内さん。まずはクイックスタートとして、2022年9月にエイチ・ツー・オー リテイリング社と阪急阪神百貨店向けに給与明細や文書配布などのアウトプット系機能をリリースし、ペーパーレス化を実現します。その後従業員や人事部門の反応や既存システムとの連携状況などを確認してから、同機能の導入範囲を食品事業やその他のグループ会社にも広げていきました。
2023年8月にはエイチ・ツー・オー リテイリング社と阪急阪神百貨店向けに入社機能や申請機能などのインプット系機能をリリースし、2か月後の2023年10月には食品事業に全機能を導入しました。これによって従業員が自分のスマートフォンから簡単に申請(セルフインプット)できるようになり、人事のデジタル化がさらに推進されました。
堀内さん
システム構成も工夫して設計を行いました。人事システム全体で見ると、従業員フロントにSmartHRをはじめとする各種SaaSを導入し、グループ人材データ基盤や給与計算、人的資本可視化を担うバックオフィスシステムと連携し、働き方改革やペーパーレス化、業務効率化を実現しています。なかでもSmartHRは、入社手続きや日常的な文書配布・申請手続き、給与明細や雇用契約書の発行、年末調整などの従業員フロントとして活用し、従業員と人事部門とのやり取りをスムーズにしたいと考えました。
SmartHR導入の効果は、大きく分けて下記の4つだったそうです。
電子化による効率化
機能の利便性
テレワークの促進
本人入力による利点
堀内さん
1つ目の「電子化による効率化」では、紙の給与明細送付にかかっていた時間が削減されたり、印刷会社への印刷・納品依頼にかかっていた費用が削減されたりといった効果が見られました。また、申請でも承認や差戻をすぐに行えるようになり、待ち時間が解消されました。年末調整では、基礎控除などは変更がなければチェックが不要になり、作業時間の短縮につながっています。紙の書類のように紛失の心配や返却の必要がないため、管理コストも大幅に軽減されました。過去の情報の検索が容易になったのも、大きな変化です。
2つ目の「機能の利便性」では、給与明細項目の追加登録がスムーズになりました。また、文書配布機能を使えば配布した文書が閲覧されたかどうかが簡単にわかるため、確認状況を把握しやすくなりました。
3つ目の「テレワークの促進」では、人事部門の従業員が紙の給与明細送付のために出勤する必要がなくなり、在宅で作業できるようになりました。4つめの「本人入力による利点」では、スマートフォンやパソコンで入力できるため申請・入社手続き時の入力ミスが減り、修正対応の負担も減っています。このような効果によって、テレワークやフリーアドレスといった新しい働き方に移行するための下地ができていきました。
人的資本経営にはゼロベースの人事改革が必要不可欠

今後SmartHRをさらに活用していくうえで、乗り越えなければならない壁もいくつかあるそうです。
堀内さん
1つ目は「人事部門や従業員への丁寧な説明」です。申請には操作の説明が必要ですが、出勤日が少ない従業員への説明の時間が確保できず、結局紙の書類で提出されてしまうことがありました。また、新しい申請方法に慣れていない従業員がシステム入力をしない場合は、人事部門が代理で入力する必要があります。グループ会社の中には文書配布の初期設定に手間取っているケースもあり、グループ会社によって活用の度合いに差があるのが現状です。人事部門や従業員への丁寧な説明を行うことで、こうした課題を解決していきたいと考えています。
2つ目は「新しい業務フローの確立」です。現在、年末調整において保険料控除の手続きには画面で確認してから原本を回収する必要があり、差戻などの際には紙ベースの申請よりも手間が増えている部分もあります。また、入社手続きでは給与システムに連携していない項目も多く、それを人事部門の従業員が把握できずに登録漏れが発生してしまいました。SmartHRの導入に伴って既存の業務フローや運用ルールをあらためて見直し、こうした手間や登録漏れをなくしていきたいと考えています。

エイチ・ツー・オー リテイリング社では2年ほど前に本社を移転した頃から働き方改革への取り組みを本格化しています。SmartHRの導入を開始したのはちょうどフリーアドレス化やリモートワークの導入を進めている最中のことでした。
堀内さん
SmartHRは操作画面も使いやすく、目まぐるしく変わる働き方にうまく対応できたので非常に助かりました。2025年2月にグループ会社導入を完了しましたが、今後はマイナンバー収集での活用や入力チェック(カスタム項目)の強化、蓄積した従業員データとさらなる活用も視野に入れています。
人事のデジタル化にはこれまでのやり方をゼロベースで見直すような思い切った改革が必要です。特に当社のように複数のグループ会社を抱える企業では、文化の違うグループ会社と足並みを揃える必要があり、改革がひと筋縄では進まないこともあるでしょう。しかし、人的資本の可視化と活用が必要不可欠になるこれからの時代、改革を避けては通れません。SmartHRのようなツールを活用しながら会社の垣根を越えて情報を共有し、人事部門とIT・デジタル部門、事業会社が一丸となって課題の解決に取り組むことが重要だと感じています。
他社の人事担当者やSmartHR開発者との交流時間も魅力
開発者と交流できる「バザール」も好評

ミニプレゼン後には、当日はプロダクト担当者と参加者のみなさまとの交流を行うバザールも開催。バザールは、ユーザーが集まる場に開発者が参加することで「顧客のプロダクト理解」と「開発チームのよりよいものづくり」の両方を加速させたいという思いから始まった企画です。当日は開発途中のプロトタイプや機能アップデートの紹介や、それに関する活発な意見交換が行われました。
参加者のおひとりからは「オフラインだからこそ、プロダクト担当に困っている点・改善してもらいたい点を直接伝えられる」というご感想をいただきました。「ほかの参加者の発言を聞いて、新たな疑問点や着眼点に気づいた」「他社の事例や活用方法を知ることで、自社で未活用の機能をどのように活用するかのアイデアが浮かんだ」という声もあり、開発者とのダイレクトな交流が新たな発想の糸口になったようです。

単なる交流会にとどまらない学びと実践の場に

当日は同じような課題感を持つ人事担当者と交流できる機会も多数設けられ、なごやかな雰囲気の中で積極的な意見交換がなされました。担当者同士で共感し合うと同時に、課題に対する新たな解決策やアプローチ方法が出てくるなど、単なる交流会にとどまらない学びと実践の場となりました。
ミニプレゼンでSmartHRの導入・活用方法を学び、それをサンプルとして参加者どうしで意見を交換する。さらに開発者とも交流し、機能についての課題や疑問点を解消するとともに、新たな活用のアイデアを見つける。今回のイベントが、こうしたサイクルを回すためのよい機会となったというお声を多くいただきました。
