1. 人事・労務
  2. 労務管理

有害業務に伴う歯科健診義務化はいつからはじまる? 対象者・実施時期も解説

公開日
目次

こんにちは。社会保険労務士の山口です。

令和4年10月より、歯やその支持組織に有害な業務に労働者を従事させるすべての事業者に対し、歯科医師による歯科検診(歯科健康診断)の報告義務が課せられました。

今回は2022年10月に施行された「労働安全衛生規則」の改正内容と、労務担当者が施行時に注意するポイントを解説いたします。

労働安全衛生法における「歯科健康診断」

労働安全衛生法とは?

労働安全衛生法は、労働者の健康を守るため、事業者に健康診断の実施を義務付けています。雇入れ時や定期的に行う健康診断のほか、深夜業などの特定業務に従事する人の健康診断などさまざまな種類があります。

その一つが、歯などに有害な業務に従事する労働者に対して実施する「歯科医師による健康診断(労働安全衛生法第66条第3項)」です。

労働安全衛生法に基づく歯科医師による健康診断を実施しましょう

(参考)有害な業務における歯科医師による健康診断等の実施の徹底について(p.3) – 厚生労働省

対象となる労働者と実施時期

歯科医師による健康診断の対象となるのは、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄りん、その他歯またはその支持組織に有害な物のガス、蒸気または粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者です。

例としては、メッキ工場、バッテリー製造工場などの従業員です。

労働安全衛生法による有害業務

実施時期は、対象業務に常時従事する労働者に対して、

  • 雇入れの際
  • 対象業務への配置替えの際
  • 対象業務についた後6か月以内ごとに1回

のタイミングで実施する必要があります。

歯科医師による健康診断

(参考)リーフレット「忘れていませんか?歯科特殊健康診断」(p.2) – 日本歯科医師会

改正の背景・内容

対象業務に常時従事する労働者への歯科健康診断そのものについては、事業規模にかかわらず、法令で事業者に実施が義務付けられていましたが、実施状況を労働基準監督署へ報告する義務は、常時50人以上の労働者を使用する事業者のみに課せられていました。

そのため、報告義務のない50人未満の事業者の歯科健康診断の実施率は、令和元年度の調査で22.5%と非常に低調であることが問題視されていました。

令和元年度歯科健診実施状況自主点検の結果

(参考)有害な業務における歯科医師による健康診断等の実施の徹底について(p.2) – 厚生労働省

化学工業などの作業現場では、およそ7万種の化学物質が扱われ、その種類は年々増加しています。それに伴い、気づかないうちに労働者の健康が害される危険性も高まっています。

歯科健康診断の実施を徹底し、健康障害を防止するため、厚生労働省の労働政策審議会安全衛生分科会は今年3月、すべての事業者に対して、対象業務に常時従事する労働者の歯科健康診断の報告義務を課す労働安全規則の一部を改正する省令案を妥当と認め、労政審の答申としました。

労務担当者の注意点

酸などの取り扱い業務は、化学工業、窯(よう)業・土石製品製造業、 非金属製品製造業に多く見られます。これらの業種の労務担当者は、まずは歯科医師による健康診断を適切なタイミングで実施しているかを確認しましょう。

また、実施有無についても日ごろから管理しておきたいところです。適切な管理工数を確保するためにも、このタイミングで人事・労務領域で効率化するべき業務を整理してみてはいかがでしょうか。

効率するべき業務の洗い出しのヒントは、以下の資料を参考にしてください。

人事・労務領域 効率化すべき業務チェックリスト

労働者50人未満の事業所についても、2022年10月から労働基準監督署への報告が必要となりますので、実施後は報告漏れがないようにしましょう。

労働安全衛生規則の一部を改訂する省令案の概要

(参考)労働安全衛生規則の一部を改正する省令案概要 – 厚生労働省

おわりに

健康問題を発見するだけでなく、作業環境や作業方法の改善につなげることも歯科検診の目的です。

労務担当者は診断結果を必ず確認し、問題があれば作業時間の短縮や配置転換などを検討しましょう。

お役立ち資料

【2023年版】人事・労務向け 法改正&政策&ガイドラインまるごと解説

人気の記事