標準報酬月額とは?決定と見直し方法を社労士が解説
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こんにちは、社会保険労務士の飯田 弘和です。
毎月給与から天引きされる、健康保険料や厚生年金保険料などのいわゆる社会保険料。この社会保険料は、標準報酬月額と標準賞与額をもとに決定します。
今回は「標準報酬月額」の決定について、解説します。
社会保険料の決定に関わる「標準報酬月額」
標準報酬月額とは、給与の月額を、一定の幅で区分した「標準報酬月額等級」に当てはめて決定します。
例えば、次のようになります。
- 報酬月額が、¥210,000 以上 ¥230,000 未満の場合の標準報酬月額は ¥220,000
- 報酬月額が、¥230,000 以上 ¥250,000 未満の場合の標準報酬月額は ¥240,000
- 報酬月額が、¥290,000 以上 ¥310,000 未満の場合の標準報酬月額は ¥300,000
報酬月額の注意点については、下記記事をご覧ください。
「標準賞与額」とは?
標準賞与額とは、賞与・ボーナス・期末手当などの金額から千円未満を切り捨てたものです。
健康保険は年間累計額573万円が上限、厚生年金保険は賞与の支給1回につき150万円が上限となっています。
この標準報酬月額や標準賞与額に、健康保険料率や厚生年金保険料率を掛け合わせたものが、健康保険料や厚生年金保険料であり、事業主と被保険者(従業員)とで折半して負担します。
「標準報酬月額」はどのように決まるのか?
では、標準報酬月額は、いつ、どのようにして決まるのでしょうか?
就職・転職時の「標準報酬月額」の決定
まずは、就職や転職などで新たに被保険者となった場合です。
この場合には、その被保険者が受けるであろう初任給をもとに標準報酬月額を決定します。
ここで決定した標準報酬月額は、1月~5月までに入社した場合にはその年の8月まで、6月~12月までに入社の場合は翌年の8月まで使われます。
「標準報酬月額」の見直し
その後は、毎年、被保険者の4月〜6月に実際に支払われた給与の平均額を標準報酬月額等級表に当てはめて、新たな標準報酬月額を決定します。
この新しい標準報酬月額は、その年の9月から翌年の8月まで使われます。
また、年の途中で大幅に給与額が変動した場合や、産前産後休業や育児休業等の終了後に給与が下がった場合には、標準報酬月額を見直すことになっています。
このように、適切に標準報酬月額を見直すためには、しっかりとした管理が重要になります。適切な管理工数を確保するためにも、このタイミングで人事・労務領域で効率化するべき業務を整理してみてはいかがでしょうか。
効率するべき業務の洗い出しのヒントは、以下の資料を参考にしてください。
「標準報酬月額」その他の基礎知識、注意点
4月〜6月の残業代と社会保険料の関係
4月〜6月の残業を極力減らすなどして、これらの月に受け取る給与を少なくすれば、社会保険料を抑えることが可能です。
ただし、この場合には、将来受け取る「老齢厚生年金」の金額も低下することになります。
傷病手当金や出産手当金も標準報酬月額がもととなる
被保険者が病気やケガ(私傷病)のために働くことができないとき、休業4日目から健康保険より傷病手当金が支給されるのですが、この支給額は標準報酬月額をもとに算出されます。
産前産後休業期間中に支払われる出産手当金についても同様です。
会社によっては、有給休暇取得時の賃金を標準報酬日額(標準報酬月額を30で割った金額)と定めている会社もあります。
ですから、社会保険料を抑えるために標準報酬月額を低くすることが、必ずしも、被保険者にとって得になるというわけではありません。
被保険者自身で標準報酬月額を確認する方法
ところで、もし、被保険者ご自身が標準報酬月額を確認したい場合にはどうすればよいでしょうか?
まずは、給与明細に書かれていないか確認してみましょう。
書かれていない場合、会社の給与計算等の担当者に聞いてみる方法もあります。
それでもわからない場合には、給与明細に記載された厚生年金保険料をもとに、日本年金機構のHP上にある厚生年金保険料額表で確認するなどの方法が考えられます。
ただし、事業主には、標準報酬月額の決定や改定があった場合には、被保険者に通知する義務があるので、何らかの形で通知がされるはずです。