パート・アルバイトの時給はどうなる?店長なら知っておきたい「最低賃金」Q&A解説【弁護士が解説】
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こんにちは、弁護士の星野 宏明です。
2022年10月、東京都の最低賃金が超え1,072円となります。以前は「時給1050円」程度での求人も目立ちましたが、10月の改正をもって、見直しに迫られた方も多いのではないかと思います。
さて、この「最低賃金」ですが、わかりづらい点や誤解されやすい点も多く、注意が必要です。特にチェーン展開し、アルバイトを主戦力とする飲食・小売業の店長・店舗責任者の方は把握しておくべきことといえます。今回は、よくある質問等をもとに、Q&A形式でお送りします。
Q.1:「本社所在地の最低賃金で雇われたが、実際の勤務地が異なるのは許されるの?」
例:本社が千葉県の会社で時給868円でバイト採用されたものの、実際の勤務地が東京で、90円の差がある
A.1:実際の勤務地の最低賃金が適用されます
本社で一括採用している場合でも、実際の配属先事業所がある地域の最低賃金が適用されます。上記の千葉県の会社の例では、実際の勤務地である東京の時給1,072円が適用されるため、ご注意ください。
Q.2:「インターンシップを最低賃金以下で働かせるのは許されるの?」
A.2:労働者性の有無により異なります
時間的拘束をかけた上で、会社の指揮命令下に業務遂行を補助させることは、実体として労働契約と評価され、最低賃金の適用があります。アルバイトと変わらないような業務遂行の補助をさせる場合は、最低賃金以下で働かせることは違法となる可能性があります。
他方、職場体験という「インターンの本来の趣旨の範囲内」である場合は、研修、職場体験の域にとどまる限り、無給も可能です。
Q.3:「 “研修中” “未経験” だからと、最低賃金以下で働かせるのは許されるの?」
A.3:最低賃金は全ての労働者に適用されるので原則として最低賃金以下で働かせることはできません
しかし、例外的に、以下の場合に都道府県労働局長の許可を条件に、個別に最低賃金の減額が例外的に認められています。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
- 試の使用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
Q.4:「クリエイティブ職などで、長時間残業せざるをえず、実質的に最低賃金を下回るのは是正できないの?」
A.4:出来高払制などの請負誠でも違法となる可能性があります
出来高払制やその他の請負制によって賃金が定められている場合でも、賃金の総額を労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額を下回っている場合は、違法となる可能性があります。
ただし恒常的に続くようであれば、労基署等へ相談してみてください。
Q.5:「業務委託契約において、成果に対する現実的な工数で考えた時に、報酬額が最低賃金を下回ると考えられる場合は、労働契約ではないとはいえ許されるの?」
A.5:実体として労働者性と有している場合には最低賃金の適用があります
例えば、名目は業務委託であっても、作業時間や作業場所の拘束がある、業務受託の裁量がない、といった事情がある場合には、実質的には労働者性があるとして、最低賃金の適用があります。
他方、労働者と同様の拘束がない場合は、業務委託については最低賃金は適用されません。
Q.6:「固定残業代だけでは、最低賃金を下回る計算になるのって許されるの?」
A.6:違法です
固定残業代も通常の残業代と同じく時間外労働に対する対価ですから、最低賃金を超え、かつ、所定の割り増しも含む水準以上であることが必要です。
このように、「最低賃金」は、労使問わず様々な注意事項があります。
使用者は言わずもがなですが、従業員の方も、万が一現状の条件に不安や違和感があれば、厚労省が公開している計算方法等を参考に確認してみてください。