3年ぶりに節電要請が見送りに。労務がやるべき熱中症対策を社労士が解説
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こんにちは。社会保険労務士の吉田です。
今年もいよいよ夏がやってきますね。海に、キャンプに、ビールがうまい! いくつになっても、夏が近づくとなんだかワクワクするものですね。
厳しい暑さが想定されている一方、今年の夏において、経済産業省の報告では、日本の全エリアで電力の安全供給に最低限必要な予備率を確保できる見込みであり、政府は節電要請を行わない方針を示しました。
しかしながら供給力の一部には老朽化した火力発電所が含まれており、設備トラブルのリスクが依然として存在し、企業や家庭には引き続き省エネ対策が推奨されています。
今回は、労務担当者が今夏施すべき熱中症対策について解説します。
2024年の気温傾向と熱中症傾向は?
日本気象協会によると、8月には、東北南部から沖縄にかけて「厳重警戒」ランクになる所が多い見込みです。9月は、関東から九州にかけて広く「警戒」ランクになる予想です。

梅雨明け後は、熱中症の危険性が特に高くなります。晴れの日だけでなく、曇りや雨の日も湿度が高いと熱中症の危険がありますので、早めの対策が重要です。
今年の夏は3年ぶりに節電要請が見送りに
2024年の夏の電力需給について、経済産業省は全国全ての地域で安定供給に最低限必要な余力を確保できる見通しが立ったとして、3年ぶりに節電要請を行わない方針を発表しました。
経済産業省は、7月から9月までの電力需給見通しを示し、10年に一度の厳しい暑さを想定しても、各地域で供給余力を確保できるとしています。また、ウクライナ侵攻以降強まっていた燃料調達の懸念が緩和されてきたことも背景にあります。
ただし、火力発電所には老朽化した設備が多く、構造的な課題が残っています。経済産業省は、発電事業者に保安管理の徹底を求めるとともに、企業や家庭には引き続き省エネ対策を推奨しています。
(参考)2024年度夏季の電力需給対策を取りまとめました - 経済産業省
事務所衛生基準規則について
では、法律的には事業所の温度設定などはどのように規定されているのでしょうか?
努力目標とはなりますが、事務所衛生基準規則第5条第3項で「事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が18度以上28度以下及び相対湿度が40パーセント以上70パーセント以下になるように努めなければならない」と規定されています。従来最低気温は17度以上でしたが、令和4年4月1日より18度に変わりました。

労務担当がやるべき具体的な対策は?
エアコン設定温度
さて、前述の室温の上限値である28度ですが、エアコンの設定値を28度にすればよいというわけではなく、あくまでも室温が「28度以下」である必要があります。
理化学研究所とダイキン工業株式会社の共同研究では、室温28度でも湿度を55%以下に保てば快適性が向上し、40%以下であれば疲労も軽減できることが実証されました。オフィス内の空気を循環させるために、サーキュレーターや除湿機などを活用して、室温28度以下、湿度55%以下を維持するようにしましょう。
STOP!熱中症 クールワークキャンペーン
2024年の夏季を迎え、職場における熱中症対策が重要視されています。厚生労働省が主唱している「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」で具体的な対策が示されていますので見ていきましょう。
暑さ指数(WBGT)の把握と対策の実施
暑さ指数(WBGT)は、熱中症予防のための指標であり、専用の測定器を用いて計測されます。職場では、WBGT値に基づき、冷房設備の設置やミストシャワー、日よけの設置などの環境対策を行い、定期的な水分や塩分の補給が推奨されています。また、WBGT基準値を超えないように、必要に応じて休憩を長めに取ることが重要です。人体の熱バランスに与える影響の大きい気温、湿度、輻射熱により以下の式で算出されます。
(屋外)WBGT(度)=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
(屋内)WBGT(度)=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
黒球温度:黒色に塗装された薄い銅板の球(中は空洞、直径約15cm)の中心に温度計を入れて観測
湿球温度:水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測
乾球温度:通常の温度計を用いて、そのまま気温を観測
健康管理と教育の徹底
職場では、労働者の健康状態を把握し、必要に応じた対策を講じることが求められます。糖尿病や高血圧などの持病を持つ者に対しては、医師の意見を踏まえた配慮を行うことが重要です。また、日々の健康管理として、朝食の摂取、十分な睡眠、過度な飲酒の回避などを指導します。労働者に対しては、熱中症の症状や予防方法についての教育を実施し、早期の気づきを促します。
緊急時の対応
緊急時の対応として、労働者が体調不良を訴えた場合の対応手順や病院の把握を事前に確認し、従業員に周知することが求められます。万が一、熱中症の疑いがある場合には、速やかに適切な応急処置を行い、必要に応じて医療機関への搬送を行います。
キャンペーンの実施期間
令和6年(2024年)の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」は、5月1日から9月30日まで実施されます。特に7月は重点取組期間とされ、各事業場における熱中症予防対策が強化されます
熱中症リスクとマスク着用
2024年現在、マスクの着用は個人の判断に委ねられています。特に屋外では、熱中症のリスクを考慮し、マスクの着用は推奨されていません。暑い環境下でのマスク着用は体温の上昇を招き、熱中症のリスクを高めます。そのため、特に気温が高い日や屋外での活動時には、無理にマスクを着用せず、適切な水分補給と休憩を心がけましょう。
なお、高齢者や重症化リスクの高い方が多く集まる場所や、医療機関を訪れる場合などでは引き続きマスクの着用が推奨されています。
おわりに
対策を取るためには、適切な管理者を選任したうえで実施・運営することはもちろんですが、現場ごとの責任者が確認を徹底し、個別に健康状態の確認や、巡視の頻度を増やすなどの対応が重要となります。また、職場の従業員同士で、お互いの健康状態を確認し合うことも大切です。
今年の夏も、こまめな熱中症対策を実施し、健康で安全な夏を過ごすことが求められます。
わずかな体調の変化にも注意し、少しでも異常を認めた場合には、ためらうことなく病院に搬送するようにしましょう